第11回部会時点(2011年12月9日)での私見と試案 差別禁止部会委員 川島聡 1)以下は、第11回部会時点での私見(試案を含む)である。これは第10 回部会での議論等を踏まえ、第10 回部会に提出した私見を変更したものである。今後の議論によって私見は勿論変更しうる。今回の私見での特に大きな変更として、1)第三条2項において、比較対象者の特定を必要とする直接差別については正当化の抗弁が認められない旨を定めた(直接差別という言葉は用いていない)。2)第二条1 項において、障害の定義から活動制限の要件を外すことを明記した。 2)総則(第一章)は「障害」「障害者」「障害を理由とする差別」「積極的措置」の定義を設ける。「障害を理由とする差別」の概念は「不均等待遇」(「直接差別」「間接差別」「関連差別」の要素を含む概念)と「合理的配慮の否定」の二つから成る。 3)「積極的措置」の義務は、「特定の障害者」の機会平等と社会参加を可能にさせる合理的配慮の義務とは異なる概念であり、「障害者一般」の機会均等と社会参加を積極的に前進させるための措置を講ずる義務をいう。合理的配慮が、事後的・個別的な措置であるのに対し、積極的措置は事前的・集団的な措置だと言える。 4)今回の私見では第二章以下は省略した。第二章以下の個々の規制分野を規制する章では、既存の他の法令との調整を図りながら、「差別禁止事項」「合理的配慮」「過重な負担」「積極的措置」の4つを軸に、ある程度の内容を規定すべきである。さらなる具体的内容は、命令等で定めることが考えられうる。また、実施機関の章を設けるべきである。 第一章 総則 第一条 目的:略 第二条 「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2 「障害」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。当該障害が日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるものか否かは問わない。次に掲げる場合も、「障害」とみなす。 一 障害の経歴がある場合 二 障害が将来生ずる可能性がある場合 三 障害があると他者からみなされている場合 四 外貌に損傷がある場合 3 「障害を理由とする差別」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。 一 不均等待遇 二 合理的配慮を行わないこと 第三条 「不均等待遇」とは、障害又は障害に起因する事由に関連する行為、基準又は慣行の存在又は適用が、平等な機会の享受を妨げ又は不利益を与えることをいう。ただし、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が適切である場合は、この限りでない。 2 障害に関連する行為が、ある者を他の者と比べてより不利に扱うものに該当するときは、当該行為の目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が適切である場合においても、「障害を理由とする差別」が生ずる。 第四条 「合理的配慮」とは、障害者又はその関係者が他の者と平等な機会を享受することができるように、その者の要求に応じて現状を変更することをいう。ただし、過重な負担が生じる場合は、この限りでない。 第五条 何人も、障害を理由とする差別を受けない。 第六条 第二章、第三章、第四章、第五章及び第六章において義務を負う主体は、障害者の平等な機会の享受を妨げ又は障害者に不利益を与える現状を全般的に改善するために、継続的な事前の積極的措置(以下、「積極的措置」という。)を障害の種別を考慮に入れて講じなければならない。積極的措置は、次に掲げる事項を含む。 一 基準又は慣行の変更 二 物的障壁の除去 三 補助手段の提供 四 教育、啓発及び研修の実施 以下略