差別禁止部会 第11回(H23.12.9) 資料3 委員提出資料 ○永野仁美専門協力委員 アクセシビリティ 【アメリカ】 ○建築物障壁撤去法(The Architectural Barriers Act:ABA)(1968 年) ・連邦政府の予算で設計、建築あるいは改修される施設、又は、連邦機関により貸与された施設のアクセシビリティの確保を目的とする法律 (例えば、郵便局、社会保険事務所、刑務所、国立公園、非政府系の施設として、一定の学校や、公営住宅、公共交通機関等が含まれる)。 ・ABAは、同法施行前の施設には適用されない。しかし同法施行後になされる改修や、賃貸借は、ABA 適用のきっかけとなりうる。 ・ABAの施行のための独立連邦機関として、Access Board が創設されている。Access Boardは、基準となるアクセシビリティに関するガイドラインを作成すると同時に、寄せられたれた苦情の調査を通じて、ABA を遵守させる。Access Board への苦情申立ては、容易に行うことができる。 ○ADA ・ADAは、第1 編で「雇用上の差別」、第2 編で「公共サービスや公共交通機関によるサービスの提供上の差別」、第3 編で「民間企業によって運営されている施設、サービス提供上の差別」」を禁止し、第4 編において「テレコミュニケーション」に関する規定を置いている。 ・ABAとは異なり、ADA の適用範囲は、連邦予算の存在にしばられない。 ・第3編における訴訟の多くが、公に供されている施設などへのアクセシビリティに関するものである。また、第2 編においても、アクセシビリティが問題となりうる。 ○公正住宅法 ・1988年の改正で、障害を理由とする住宅に関する差別を禁止。 ・公的・民間セクターの住宅が、その適用範囲となり(連邦政府と直接関係のない民間住 宅部門もカバー)、住宅の売買や賃貸における差別が禁止されている(ただし、適用除外 もあり)。 ・この法律のもと、新築の集合住宅は、ガイドラインに従ったアクセシビリティを確保す ることが求められる。 ・公正住宅法のもと、住宅の貸主に対しては、特に、以下のことが要請されている。 *住宅の改造が必要な場合、障害者の費用負担により原状回復可能な範囲で行われるも のであれば、貸主は賃貸及び改造を拒んではならない。 *住宅改造以外にも、他の入居者にはない特別な配慮が求められる場合、貸主は必要に 応じて合理的な範囲で便宜供与しなければならない。 ○航空アクセス法 ・1986年の航空アクセス法は、飛行機への搭乗における障害者への差別的取扱いを禁止。 ・同法のもと運輸省によって作成される規則が、障害者に提供されるべきサービスの基準を定めている。右規則は、搭乗支援や、新しく作られる飛行機のアクセス確保など、幅広い事項をカバーしている。 ・航空会社は、各空港に紛争解決局(Complaints Resolution Officials:CRO)を設置し、障害を抱える乗客に対して、その存在及び利用方法を教示しなければならない。実際に障害を抱える状況の権利侵害が生じてしまった場合、CRO は、不服申立人に対して、30 日以内に、書面にて、事実の概要と侵害行為に対して航空会社が取るべき対応を記し提供しなければならない。 【フランス】 ○刑法典:以下の行為を差別として規定 1)財・サービスの支給拒否 2)何らかの経済活動の正常な遂行の妨害 3)採用拒否、懲戒、解雇 4)財・サービスの支給に条件を付すこと 5)募集、研修申請、企業内職業訓練の期間について条件を付すこと 6)社会保障法典が定める研修への受入れ拒否 ○建築・住居法典 ・アクセシビリティの保障を規定。これにより、障害者のある場所からの排除を予防。 ・差別禁止に関する明文規定は置いていない。 ・公私を問わず、住居用の建物や、公に供される施設、労働のための作業所について、アクセシビリティの確保を要請。 ・既存の建物の場合と、新築の建物の場合とで、区別あり。 *既存の建物:建造物遺産保護の要請による制約実現される改善と結果との間に明らかな不均衡が生じる場合 ・アクセシビリティ保障のための法制に違反した場合、45000 ユーロの罰金が科せられる。 再犯の場合は、6ヶ月の拘禁刑も科せられ得る。 (参考資料) ・平成20年度内閣府「障害者の社会参加推進に関する国際比較調査研究」委託報告書「障害者の社会参加推進に関する国際比較調査研究 調査研究報告書」(2009年3月) ・関川芳孝「障害者の生活環境に関する諸問題−アメリカ公正住宅法との比較を中心として−」社会保障法11 号(1996 年)75 頁 ・その他、HP