差別禁止部会 第11回(H23.12.9) 参考資料3 知的障害、発達障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック ハンドブックの使い方  本ハンドブックは、公共交通機関、公共施設、商業施設などの建築物、公園や駐車場などで利用者に接する方々が、知的障害、発達障害、精神障害のある利用者の困難さを理解し、状況に応じて、適切な応対をするためのポイントを記載した参考書です。本ハンドブックは、右記で構成されています。特に『基本の応対』の部分は、様々な場面において共通の対応のノウハウとして重要な部分です。 目次 本ハンドブックの目的 障害の理解 基本の応対 ・コミュニケーション ・パニック時 ・緊急時 場面ごとの応対 参考資料 本ハンドブックの目的  外見からは障害があることがわかりにくい知的障害、発達障害、精神障害のある人は、人とのかかわりあいやコミュニケーションが苦手であるといった特徴があります。公共交通機関や公共施設、商業施設などを利用する際に、障害により手を貸してほしい場面があり、また、コミュニケーションの困難さから通常と違う応対が必要な場合もあります。  このハンドブックでは、知的障害、発達障害、精神障害のある人にみられる代表的なケースと、その場合の応対について説明しています。なお、その症状や反応は多様であるので、ここに掲げたケースを参考にしつつも、それにとらわれない柔軟な応対が求められますが、応対の基本として、「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」をあげることができます。  また、このような応対は、子どもや高齢者、外国人など、すべての方に対して活用可能といえます。  このハンドブックが広く活用されることによって、障害を特別視しないユニバーサル社会の実現の一助となることを目指しています。 障害者の数  知的障害者数は、54.7万人、精神障害者数は302.8万人。知的障害者数と精神障害者数を合計した357.5万人は、身体障害者数366.3万人と同程度です。また、発達障害者数は、義務教育段階の全児童生徒数1,086万人のうち、6.3%程度(約68万人)と推計されています。(高校生以上の発達障害者数は含まれていません。) 【H20 障害者白書データ、文科省データ(H14 年調査に基づく推計値)】 障害の理解  知的障害、発達障害、精神障害の原因は多様です。また、重複した障害がある人もいます。  以降では「障害の特徴」として主なものを挙げました。ただし、障害の現れ方は人によって異なることに留意が必要です。 知的障害とは? ・ダウン症 など  知的障害とは、先天性または出生時などに、脳になんらかの障害を受けたために知的な発達が遅れ、他人とのコミュニケーションなどの社会生活に困難が生じる障害です。  支援を必要としていても社会で活躍されている方もいます。また多くの支援を必要としない方も大勢います。 主な特徴 ●話の内容を理解できなかったり、自分の考えや気持ちを表現することが難しく、コミュニケーションを上手にとれないことがあります。 ●複雑な話や抽象的な概念の理解が不得手な人もいます。 ●判断したり、見通しをもって考えることが苦手な人もいます。 ●読み書きや計算が苦手な人もいます。 ●困ったことが起きても自分から助けを求めることができない人もいます。 豆知識1 知的障害 「知的障害」という語は福祉用語であり、医学用語では「精神遅滞」という。両者はほぼ同義である。福祉用語である「知的障害」に法律の明確な定義はない。各都道府県が基準を設け、申請に基づきIQとコミュニケーション能力、日常生活能力などを総合して程度を判定し療育手帳を交付している。 発達障害とは? ・自閉症 ・学習障害(LD) ・注意欠陥多動性障害(ADHD) など  発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群等の広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等、脳機能の障害であって、通常は低年齢において症状が発現する障害です。大人の方でも同様の障害のある方がいます。また、発達障害は重複することが特に多いという特徴があります。 主な特徴 ●こだわりが強く、突発的な出来事や予定の変更への対応が苦手な人もいます。(PDDなど) ●時間の感覚がわかりにくかったり、不快と感じる音を聞き流せない人もいます。(PDDなど) ●相手の話が理解できない、思っていることをうまく伝えられない人もいます。(LDなど) ●読み書きや計算が苦手な人もいます。(LD など) ●興味のあるものをすぐに触ったり、手に取ったりせずにはいられない人もいます。(ADHDなど) ●目的もなく歩き回ったり、そわそわして休みなく動いている人もいます。(ADHDなど) 豆知識2 自閉症 自閉症には、知的障害を伴う自閉症、知的障害を伴わない高機能自閉症、自閉症の特徴をもちながらも知的障害がなく言葉の発達に遅れもないアスペルガー症候群があり、これらを総称して広汎性発達障害(PDD)という。 精神障害とは? ・統合失調症 ・気分障害(うつ病など) など  精神障害とは、統合失調症、気分障害(うつ病など)等の様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱える障害です。適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば症状をコントロールできるため、大半の方は地域社会の中で生活しています。 主な特徴 ●ストレスに弱く、緊張したり、疲れやすかったりします。 ●人と対面することや対人関係、コミュニケーションが苦手な人もいます。 ●警戒心が強かったり、自分に関係ないことでも自分に関係づけて考えたりすることがあります。 ●若年期の発病や長期入院のために社会生活に慣れていない人もいます。 ●統合失調症には、幻覚や妄想の症状のある人もいます。 豆知識3 精神障害 精神障害者とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」第5条に「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう」と定義されている 基本の応対<コミュニケーション> 話しかける聞く説明する 障害によって様々な困っている状況があります! ●困っていても、自分から声をかけることができないでいる人 ●状況を説明できないために、どうして良いか分からず、その場で動けない人 ●声をかけることができず、モジモジしたり、ウロウロしたり、その場で動けなかったり、独り言を言ったりする人 ●状況が判断できないため、混乱して、ウロウロする人 応対ポイント まず、笑顔でゆっくり、やさしい口調で声をかけます ●ゆっくり、やさしい口調で声をかけます。また、顔の表情も重要です。強い口調や相手をとがめるような表情、口調はしないようにします。 ●声は、困っている人の前からかけます。後ろから声をかけるとびっくりして、パニックになってしまう人もいます。 ●まずは自分の立場や名前などを伝え、「何かお手伝いすることはありますか?」などと、声をかけます。状況によっては、具体的に「切符を買うのですか?」などと声をかけます。 応対ポイント 声をかけたら、様子をみて応対します ●様子を見て、その人の状況に応じた応対をします。 ●顔色、けがなどについても注意して様子を見ます。 こんな事で困っています <行くべきところがわからない> ○案内サインが見つからず、どこへ行けばよいか分からない ○表示が漢字だけだと読めない ○情報が多すぎてわからない ○長く物事を覚えていることができないため、目的の場所を探せない ○目的の場所までの行き方が複雑なため、分からない ○初めての場所で迷ってしまう <自分から上手く話せない> ○自分から声をかけることができない ○行き先を上手く伝えられない ○初対面の人に話をすることに慣れていないため、緊張してしまう ○緊張して、混乱してしまうために話せない 基本のコミュニケーション 話を聞くとき 応対ポイント リラックスした雰囲気をつくり、相手の様子にあわせて、話をよく聞きます ●安心して話ができるよう、リラックスした雰囲気を作ります。 ●話すのに時間がかかっている場合であっても、ゆっくり待って応対します。 ●断片的な言葉からでも、相手の状況、気持ちなどを推測し、話の内容を理解するように努めます。その後、やさしく話の内容を確認します。 ●声量の調節がつきにくく大きな声を出している時には、小さめの声で話しかけるとよい場合もあります。 応対ポイント 必要に応じて、質問により相手の気持ちを確認します ●言葉が出ずに困っている様子のときは、相手の状況や気持ちを推測して、こちらから質問をし、気持ちを確認します。この場合、「はい」「いいえ」で答えられるように質問します。 応対ポイント 必要に応じて、コミュニケーションボードを利用します 自分の気持ちを言葉にできない人には、絵記号などを用いた「コミュニケーションボード」を使うとやりとりができる人もいます。 ※コミュニケーションボードの使い方が分からなかったり、慣れていない人もいます。 こんな事で困っています <話や回答がうまくできない> ○話がうまくまとまらない ○言葉がうまく出ない ○緊張して話ができない ○思っていることをうまく伝えられない ○言葉、用語、表現などがあいまい ○話している言葉が思っていることと違うことがある ○返答していてもわかっているとは限らない ○音声言語によるコミュニケーションがとれない ○幻覚や妄想と思われる話をする 基本のコミュニケーション 話や説明をするとき 応対ポイント ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話し、内容を理解しているか確認します ●たくさんのことを一度に言われると分からなくなってしまう人もいるので、ポイントを絞って、ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話します。 ●相手が理解できるように、必要に応じて分かりやすい言葉に言いかえます。「もうちょっと」「あそこ」といった抽象的な表現ではなく、「あと5 分」「黄色の柱」のように具体的な言葉で説明します。 ●説明した内容を理解しているか確認します。時には確認のために復唱してもらうことも必要です。 ●伝わっていないと感じたら、ポイントをくりかえして伝える、視覚的に分かる方法で伝えるなど、伝え方を工夫します。 応対ポイント 言葉での説明以外の方法により理解を助けます ●一度にたくさんのことが覚えられない人もいるので、大切なことはメモに書いて渡します。 ●コミュニケーションボードの活用や、絵や図を用いる、実物を見せるなどの工夫により理解を助けるようにします。 応対ポイント 本人を尊重するように話をします ●話す際に幼児扱いせず、困っている人の顔をよく見て話をします。 ●確認のために、介助者に話しかける場合もありますが、その場合も本人の意志を尊重するように配慮します。 ★その他の配慮すべき事項 ■ざわざわした所では、聞き取れない人や落ち着かなくなる人もいるので、静かな場所を選んで話をします。 ■訪問の目的を的確に把握します。「たらい回し」にしてはいけません。 ■幻覚や妄想と思われる話をする人に対しては、内容の正否にかかわらず、まず耳を傾けます。話の内容を頭から否定したり、安易に同意したりしてはいけません。話を聞き、落ち着く様子が見られたら、「ところで用件は・・・ですよね」と話題の転換を図ってみます。 こんな事で困っています <話や説明が理解できない> ○一度にたくさんのことを言われるとわからなくなってしまう ○複雑な会話や文章は分かりづらく理解に時間がかかる ○言ったことを反復する「オウム返し」の行動をとる人もいる ○質問の内容が十分に分からなくても何となく答えてしまう ○伝わっていないのに相づちをうってしまう <記憶することが難しい> ○口頭の説明だけでは忘れてしまう ○聞いたことを全て覚えることができない ○周囲のことに気をとられ、今何を聞いていたのかを忘れてしまう 基本の応対<パニック時の応対> こんな様子が見えたらパニックになっている可能性があります ●わーっと走っていってしまう ●大声を出したり、奇声をあげる ●飛び跳ねたり、泣き叫ぶ ●耳をふさいで固まってしまう ●柱などに頭をゴンゴンとぶつけ出す ●怒り出したり、暴れて、周囲の人に乱暴をする ●動悸、胸の痛み、めまい、吐き気、息苦しさの訴えがある ●急に気分が悪くなり、早く乗り物から降りたいという希望がある 応対ポイント まず、生命の危険を回避し、怪我などをしないように応対します ●走っていく方向によって危険を感じたら(例えばホームから転落しそうだったら)、後を追い、止めます。 ●危険な場所や物から遠ざけることが必要です。「大丈夫です」と声をかけ、「危ないので一緒に○○(具体的に)へ行きます」など、何をするのかを具体的に伝え、安全な場所に誘導します。 応対ポイント 次に、落ち着けるように不安などを取り除きます ●強引な応対はかえって不安が増大する場合があるので、安全な場所ならば、そのまま落ち着くまで見守ります。 ●しばらく休めば治る場合もあるので、安心して休養ができるようその場から離します。必要に応じて救護室や別室に案内し、静かなところで落ち着けるようにします。 応対ポイント 必要があれば保護者等へ連絡をとります ●「連絡先を教えてください」と本人に尋ねます。答えられない場合は、「連絡先を知りたいので、一緒にカバンを見ましょう」などと不安にさせないように声をかけ、一緒に確認します。 ●本人の障害への配慮や連絡先を記載した連絡用のカード(「サポートカード」や「助けてカード」)を持っている場合がありますので、確認してください。 ●胸の痛みなど、体調の異常を訴える場合は、救急車を要請します。その他体調や精神症状の異常がみてとれたときは、地域の精神保健福祉センター、障害者支援センター、特別支援学校などへ連絡します。そのため、事前に地域の主要な連絡先を確認しておくことが求められます。 ★なぜパニックになるのでしょうか? ■予定外のことが起きたり、こだわりの強いことが思うとおりにならないことでパニックになる人もいます。 ■聴覚過敏により音に敏感で、大きな音などに反応してパニックになる人もいます。知覚過敏としては、においに反応したり、急に知らない人に触れられてパニックになる人もいます。 ■狭いところ、人混みなど苦手なものに対してパニックになる人がいます。 ■体調が悪い場合や過去に怖い経験をしたなど不安になるきっかけがあるのかもしれません。 基本の応対<緊急時の応対1> 地震・災害が発生したら? 普段からの心構え 障害のために、避難誘導の指示が伝わらない人がいることを前提とした取組みが必要です。 応対ポイント 声をかけて、状況を伝え、安全な場所へ誘導します。 ●誘導の指示がわからずウロウロしていたら、声をかけて周囲の状況や避難誘導の内容を伝えます。 ●避難誘導の指示を理解できないときには、付き添って安全な場所へ誘導します。 応対ポイント パニックになっている人がいたら、安全を確保した上で、誘導します。 ●まず、生命の危険を回避し、怪我等をしないように対応し、やさしく「大丈夫ですよ」と声をかけ、避難誘導をします。 基本の応対<緊急時の応対2> 普段と異なる状況<列車やバスの運転の中止・遅延など>が発生したら? 応対ポイント アナウンスが聞き取れなかったり内容がわからないため、普段と異なる状況であることを理解できない人がいることを前提とした取組みが必要です。 応対ポイント どうするべきかわからない人がいたら、目的地に到達するために必要な情報をわかりやすく説明します。 どうするべきかわからずウロウロしている、ホームに立ったままなど、状況判断ができなかったり、困ったりしているようなら、「どこへ行かれるのですか?」と聞いて、目的地に到達するのに必要な乗り場所や乗り方をゆっくりていねいにわかりやすく説明します。 交通機関、物販施設などで 目的の場所や乗り場を自分で探せず、戸惑っている人がいます 応対ポイント 声をかけ、必要に応じ目的の場所まで同行します ●まず、声をかけます。 ●目的の場所や乗り場への行き方が分からない人に、一緒に目的の場所まで付き添ったり、図や行き方のメモを渡すなど理解度に応じて対応をします。 こんな事で困っています ○案内表示(サインや案内図、交通路線図、運賃表など)を見落として乗り場など目的の場所が分からなくなってしまう人もいます。 ○自分の座席がどこか分からず、迷ってしまう人もいます。(劇場の座席表等) 交通機関などで 列車やバスで降車駅・バス停がわからなくなり、終点でも降りなかったり、途中でモジモジしています 応対ポイント 降車駅、バス停などを尋ね、分からない場合は推測できることを尋ねます ●強い口調ではなく、ゆっくりやさしい口調で「どこで降りますか?」と降車駅・バス停を尋ねます。 ●降車駅やバス停がわかった場合には、「この電車(バス)の○○駅(バス停)で降ります」、「○○番線の電車にのり、○○駅で降ります」などと、行き方をわかりやすく伝えます。 ●降車駅やバス停がわからない場合は、「お家はどこですか?」「どこに行くところです か?」というように自宅又は行き先等から降車駅・バス停を推測することも試みます。 ●パニックになっているようであれば、「お名前は」「お家は」と具体的に聞き、連絡先カードを見せてもらう等の応対をします。バスなどの場合は、「お客様に対応中です。」などと車内にアナウンスした後、直接応対をします。 こんな事で困っています ○乗り物が好きなため、列車やバスを乗り継いで予定以外のコースをとってしまい、車窓の風景がいつもと違ったり、普段使わない知らない駅に降りて、自分がどこにいるのかわからなくなりパニックを起こすこともあります。 ○自分が迷っていることを理解できず、終点になっても降りないことや、折り返して何回も乗ったままのことがあります。 物販施設・レストランなどで 注文がうまくできずに時間がかかったり、商品がうまく探せないためにウロウロしています 応対ポイント あせらないよう、せかさず応対し、必要に応じて図や写真、実物などわかりやすい資料を示します。 ●品物を選ぶときには、ゆっくりと時間を取って、あせらずに決められるように配慮します。 ●マニュアルどおりに一気に話をされると混乱する人もいるので、ゆっくり、ていねいに話します。 ●商品名などだけでは、どんな商品かわからない人がいるので、実物や写真、絵、メニューなどを示して確認します。 ●目的のものがどこにあるか探せない人には、目的の場所を図などで示し、必要に応じて目的の場所まで案内します。 ●注文するときに、店員に言われていることが理解できず、全てのことに「ハイ」と答えてしまい、必要ないものまで注文してしまうことがあるので、本当に必要か確認します。 物販施設・レストランなどで レジでお金を支払うとき、うまくできず時間がかかったり、固まっています 応対ポイント 会計のときには、せかさず必要な代金やおつりをわかりやすく伝えます。 ●お金の支払いが上手くできない人がいるときは、せかさないで応対します。 ●お金やコミュニケーションボードを使って示すとわかりやすくなります。計算が苦手でも「100円玉が6 枚、10円玉が3枚」と聞けば、その通りに硬貨を選んで支払うことができる人もいます。 こんな事で困っています ○大まかなお金については理解していても、細かなお金の単位が十分に理解できない人や500円と600円のどちらが大きい額かといったことを理解できない人もいます。 ○代金やおつりの計算が苦手な人や計算を間違いがちな人もいます。 ○暗算が苦手な人もいます。 交通機関などで バスの乗降車の際にお金の支払いがうまくできず、戸惑っています 応対ポイント やさしい口調で何にとまどっているかを端的にたずねます ●支払いがうまくできなくても、いきなり叱ったり、強い言葉で接すると、驚いてよけいにうまくできなくなる場合があるので、やさしい口調で応対します。 ●切符や整理券を持っていない場合でも、強い口調で尋ねたりせず、やさしく接します。 ●簡単、明瞭に、何を知りたいのか(金額や行き先など)具体的に聞きます。 こんな事で困っています ○利用するバス会社により、運賃の収受方法(前払い/後払い)が違うため、とまどう人もいます。 ○整理券を紛失したり、取り忘れる人もいます。 ○不器用で、うまく財布からお金やカードが出せない、投入口に入れられないことがあります。 ○福祉特別乗車券を見せるときなどに、障害があることを周囲に知られたくない人もいます。 交通機関・劇場などで 券売機などの機械の前で、立ち往生しています 応対ポイント 料金の投入や乗車券の購入などが難しい人には、必要に応じて手助けをします。 ●機械の使い方(券売機など)で困っていそうな人を見かけたら、「何かお手伝いすることはありますか?」と積極的に声をかけます。 ●声をかける時には「どうしましたか?」と声をかけるより、「切符を買われるのですか?」などと、次に何をしたいのかを具体的に聞く方が答えやすくなります。 こんな事で困っています ○お札を入れるところにコインを入れようとする、器用でないため小銭を投入する際に落としてしまうなど、道具や機械の利用が難しい人もいます。 ○自動券売機の形がいつも使っている券売機と異なっていると操作が難しくなることがあります。 ○ボタンが多すぎると、使い方がわからないことがあります。 ○券売機に書いてある表示を読むことが難しい人もいます。 公共施設・宿泊施設などで 設備の使い方を説明しても、理解できないようです 応対ポイント 設備の使い方などわかりやすく記載された資料を用意しておきます。 ●客室の設備などで使い方が分かりにくいものは、使い方をわかりやすく記載した資料(大切なことを図や絵などにすると分かりやすい)などをあらかじめ用意しておきます。 ●説明だけではわからない人には、実際に客室内の設備などを使って見せます。 各種窓口などで 書類を持ってウロウロしていたり、書類の前で動きが止まっています 応対ポイント 書類の記載内容をわかりやすく説明し、必要に応じて記入の手助けをします ○「お手伝いしましょうか?」などとやさしく声をかけ、説明する場合には、難しい言葉を平易な言葉に替えたり、漢字にふりがなをふります。また、記入例や図などを用いた説明資料を使います。 ○書類の記入方法は、記入例も含めてわかりやすく表示します。また、必要事項を書類の正しい位置にかけない人に記入箇所を示すなど、記入の手助けをします。 ○書類の記入に非常に時間がかかる場合は、ゆっくり書くことができるように、少し離れた場所など落ち着ける場所に案内し、そこで記入してもらいます。 こんな事で困っています ○単語や短い文であっても、読み書きが苦手な人がいます。また、漢字、行政用語、抽象的な言葉だと理解しづらい人もいます。ただし、氏名・住所など身近な事項ならば、ひらがなを使って書ける人もいます。 ○氏名・住所・電話番号などを思い出して書くことが困難な人もいます。 ○たくさんある選択肢から自分がどれに該当するか選ぶ作業が苦手であったり、記入する位置を見落としてしまう人もいます。 各種窓口などで 待つことができずに不安そうにしていたり、動きが止まっていることがあります 応対ポイント 待ち時間などの状況を説明し、必要に応じて別の場所に案内します ●まず声をかけ、必要に応じて状況を説明します。 ●すぐに対応できないときは、どのくらい待てばよいか、窓口がどこで、誰が担当者かなどを伝えます。(「私、○○がお手伝いしますので、○○分ほどお待ちください。お声をかけますから」と話し、メモも渡すとよい)。 ●時計のように残りの時間が視覚的にわかりやすいものを示すと安心できる人もいます。 ●その場所で待つことが難しいようであれば、別の落ち着ける場所に案内します。 こんな事で困っています ○生活経験の不足や状況判断が苦手なため、待つことができない人もいます。 ○待ち時間が長くなるとどの位待てばよいのか理解できず、不安に感じたり落ち着きがなくなる人もいます。 ○周りの人々の態度や言動から、不安になったり、自分はきちんと相手にしてもらってないなど、深刻に受け止めすぎることがあります。 トラブル時の応対 利用のルールがよくわからず、店内をうろついたり、列に並ばないことがあります 応対ポイント 状況に応じてルールを理解できるように伝えます ●ルールが分からず困っているので、「ここでは、皆さんに〜のようにしていただいております」など簡潔にルールを伝えます。 ●混雑していて並び方が分からないときは「列の後ろにお並びください」などと声をかけます。 ●店内をウロウロしている場合は、「用件をうかがいます」「商品をお買い上げですか?」などと具体的に話しかけます。 ●勝手に商品を並べ替えるなどの行動をとっているときには、「○○してはいけません」 という行為を禁止する言葉ではなく、「並べ替えは終わりましょう」「○○は終わります」などと声をかけます。 こんな事で困っています ○レジでの支払いなどの際に、列に並ばなかったり、並び順が一列なのか並列なのかわかりづらく戸惑う人もいます。 ○整理券を取って待つなどの仕組みが理解できず、番号を呼ばれても聞き取れなかったり、意味がわからない人もいます。 ○ラベルがそろっていないことや、間が空いていることが気になったり、以前に来たときと少しでも違うと不安になって、安心したいために勝手に商品を並び替えてしまうことがあります。 ○商品を破損したり、試食コーナーなどでその場に立ち続けたりして困らせることがあります。一度認めると別の場所でも同じことをしてしまうことがあります。 ○支払いをする必要があることが理解できず、商品を持ち帰ってしまうことがあります。 ○降りるところでなくても、バスの停車ボタンを毎回押してしまうことがあります。 ○他の人と違う行動をしている時、自分の行動の理由や自分の思いをうまく人に伝えられない人がいます。 グッドプラクティス<良い応対例> レジなどでの並び方 一列で順番待ちをして、空いたレジなどから順番に利用できる並び方があります。 レジの他にも、公衆トイレや銀行のATMなどを待つときに、このような並び方を見ることがあります。このような方法は、様々な人に対して利用しやすい並び方です。 こんな効果があります ○お金の支払いなどがうまくできず、時間がかかっている人がいても、後ろの人はイライラすることなく会計ができます。 ○並び方をわかりやすく明示することで、列の並び方がわからない人に対してわかりやすくなります。 大声を出したり、独り言を言ったり、走り回ったりして周りの人に迷惑をかけることがあります 応対ポイント 最初にやさしい口調で話しかけ、落ち着いたら、やさしい言葉で注意します ●「どうしましたか?」とやさしく、ていねいに話しかけて落ち着かせます。 ●注意するときは、「走ってはいけません」というような否定的な言葉をつかわず、「歩きましょう」、「小さな声で話しましょう」という肯定的な言葉でやさしく注意します。 ●レストランなどで事前に申し出があれば、落ち着ける席へ案内します。 ●場合によっては、別室に案内します。どうしても対応が困難な場合は、保護者等へ連絡します。 自分のこだわりを押し通そうとして、周囲の人とトラブルになることがあります 応対ポイント 両者の間に入り、周囲の人に簡潔に状況を説明し、障害のある人に状況が理解できるよう説明します ●可能であれば2 人以上で応対するようにします。 ●自分の行動の理由や自分の思いをうまく伝えられない人がいるので、根気よく話を聞きます。その上で、状況に対する理解を得られるよう説明します。 ●いけないことをしている場合には、「あなたのものではありません」「ここはあなたの家ではありません」などとはっきり言います。 ●周囲の人に対しても、障害のある人の行動について理解が得られるよう説明します。 ●気に入った席に座りたがっている場合には、「空いている席に座ってください」などと声をかけます。通勤・通学は毎日同じ時間帯に交通機関を利用するので、職員の間で申し送りをして適切な応対をします。 こんな場合があります ○他の客が注文した料理に手を出そうとして周囲の人を驚かせることがあります。 ○自分の気に入った席に座りたがり、既に座っている人に迷惑をかけることがあります。 ○正義感の強さからストレートな表現で注意をしてしまい、周囲の人の反感を買ってトラブルになることがあります。 参考資料 ★コミュニケーションボード  知的障害者や自閉症の人など、自分の気持ちを言葉にできない、言葉が理解できない人もいます。そういった方でも、絵記号や写真等を用いて、自分の意思を指さすだけで伝えることができます。  コミュニケーションボードは、様々な自治体や商業施設などに導入されてきています。場面に応じていくつかのパターン(鉄道駅用、お店用など)が準備されてきています。 コミュニケーション支援ボードの例(東京IEP研究会) 公共交通機関におけるコミュニケーション支援ボードの例(交通エコロジー・モビリティ財団) ★連絡用カード  緊急時のために連絡用のカードを持っている方がいます。  氏名、所属、連絡先、移動経路、症状などが記載されています。  障害者手帳等でも分かる場合があります。 連絡用カードの例「助けてカード」(日本自閉症協会) ★ホームページもご覧ください。 東京IEP研究会 http://www.my-kokoro.jp/communication/pdf/shien_board.pdf 交通エコロジー・モビリティ財団 http://www.ecomo.or.jp/ コミュニケーションボード(横浜市) http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/shogai/kankoubutu/board/kyukyu.html 助けてカード(日本自閉症協会) http://www.autism.or.jp/bousai/help-card.pdf 参考資料  パニック時やトラブルの際の応対で協力が必要な場合には、地域の支援団体等に問合せることが有効です。下記の団体等のホームページに掲載されている障害の特徴や地域の障害者団体の連絡先、相談窓口などの情報を参考にしてください。 ○障害者団体 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 http://www.ikuseikai-japan.jp/ 電話:03-3431-0668 ・関連組織のリンク ・相談窓口 ・関連資料 社団法人日本自閉症協会 http://www.autism.or.jp/ 電話:03-3545-3380 ・関連組織のリンク ・障害の理解 ・相談窓口 ・関連資料 特定非営利活動法人全国精神障害者団体連合会 http://www18.ocn.ne.jp/~zenseirn/ 電話:03-5438-5591 ・障害の理解 JDDネット(日本発達障害者ネットワーク) http://jddnet.jp 電話:03-6240-0674 ・障害の理解 ・関連資料 特定非営利活動法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議 http://www.dpi-japan.org/index.html 電話:03-5282-3730 ・関連組織のリンク ・相談窓口 ・関連資料 全国自立生活センター協議会 http://www.j-il.jp/index.html 電話:0426-60-7747 ・関連組織のリンク ・関連資料 ○障害者関連情報 発達障害情報センター http://www.rehab.go.jp/ddis/index.html ・関連組織のリンク ・障害の理解 ・関連資料 発達障害教育情報センター http://icedd.nise.go.jp/blog/index.html ・関連組織のリンク ・障害の理解 ・関連資料 障害者情報ネットワーク http://www.normanet.ne.jp/index.html 電話:03-5273-0796 ・関連組織のリンク 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 http://www.nise.go.jp/ 電話:046-839-6803 ・関連組織のリンク ・相談窓口 ・関連資料 ○行政 国土交通省バリアフリー・ユニバーサルデザイン http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/index.html ・関連資料 内閣府 バリアフリー・ユニバーサルデザイン http://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/bf-index.html ・関連資料 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/index.html ・関連資料 文部科学省 http://www.mext.go.jp/ ・関連資料 ★近隣の連絡先をあらかじめ把握し、記入しておきましょう。 支援センター(障害者支援センター、精神保健福祉センター など) 施設名: 連絡先(電話番号): 学校や施設(特別支援学校、知的障害者通所施設 など) 施設名: 連絡先(電話番号): ------------ 知的障害、発達障害、精神障害のある方との コミュニケーションハンドブック 知的障害者、発達障害者、精神障害者に対応したバリアフリー化施策に係る調査研究検討委員会編 発行:国土交通省総合政策局安心生活政策課 〒100-8918 東京都千代田区霞ヶ関2-1-3 TEL:03-5253-8111 作業協力:(財)国土技術研究センター <ご覧になった方へ> 「もっとこういう冊子に」「もっとこういう情報が欲しい」などのご要望・ご意見がありましたらご連絡ください。 スパイラルアップ(継続的改善)の観点から、適時この冊子を見直し、皆様の声でよりよいものにしていきたいと考えております。