差別禁止部会 第13回 (H24.2.10) 参考資料2 「障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査」 (平成21年3月内閣府委託調査) (抜粋) ◆ 「情報・コミュニケーション」(差別関係) ◆ 「情報・コミュニケーション」(配慮工夫関係) ◆ 「教育・育成」(差別関係) ◆ 「教育・育成」(配慮工夫関係) ※ 下記の事例・事案は、「障害を理由とする差別に当たると考え、してほしくないこと」及び「障害によって区別や排除が制限されないように、配慮や工夫をしてほしいこと」を障害者に自由記述で尋ね、収集したものの一部である。 ◆ 6-1「情報・コミュニケーション」(差別関係) 1 対人のコミュニケーションで差別的に取り扱う ○ 耳が聞こえない、口頭での会話ができない、相手が理解できないだろうという思いこみなどで、コミュニケーションを拒否すること、無視すること、情報を伝えないこと ○ 介助者などにだけ話しかけること ○ 口頭での発言・発表しか認めず、代読、コミュニケーション機器などの使用を拒むことなど 【記述の例】 ・視覚障害者は見えないのでどうせわからないだろうと考え、挨拶もせずに無視する。みんなに配っている名刺や資料を視覚障害者には渡さない。補助犬と一緒に近づくと大げさに嫌がる。(視覚障害、50代、女性) ・聞えないから書いて下さいというと無視されたり、遠ざかったりされる。(聴覚障害、60代、女性) 2 講演会や大勢が利用する施設などで差別的に取り扱う ○ 講演会や映画館などで、聴覚障害や精神障害などの障害をもっているという理由で参加や入館を拒否したり制限したりすること ○ 障害者だけ見えづらい・聞こえづらい・参加しにくい特別な座席に案内することなど 【記述の例】 ・どんなにすいていても20分前に来てください、と言われる。(肢体不自由、30代、女性) ・講演会場で殆どの関係者は、私を案内する時に、周囲に誰もいない席につれて行く。(視覚障害、70代以上、男性) 3 文化活動・報道活動などのなかで差別的に取り扱う ○ 障害について偏った・間違ったイメージ(暗い悲惨なイメージ、反社会的イメージ、かわいそうだというイメージ、半人前だというイメージなど)で描いたり報道すること ○ 犯罪報道などで障害名や通院歴を強調すること ○ 障害者を蔑んで取り扱うこと ○ プライバシーや個人情報を勝手に流すこと など 【記述の例】 ・特定の障害と犯罪が結びついているような報道をする・障害をよく知らないクセに間違った話をしたり、悪いイメージを話すコメンテーターがいる(発達障害、10代、男性) ・障害者=がんばるというイメージを報道により加速している(肢体不自由、20代、男性) 4 制度について差別的に取り扱う ○ 録音図書を貸し出さないなど、障害種別や手帳の有無によって情報支援を行わないこと ○ 手話通訳・要約筆記・盲ろう者通訳などの制度が、手帳の有無や地域によって異なり、利用できない・利用しづらい状況にあること など 【記述の例】 ・学習障害者や知的障害者が、情報提供施設にある膨大な録音資料を利用できないこと。著作権者の許可がないと、図書を音訳できないこと。著作権者の許可がないと、せっかくのデジタル図書をネットで利用できないこと。行政などが進んで視覚障害者に情報を提供するシステムが不足しているため、重要な情報が届かないこと。たとえば「声の広報」があっても、それがあるという情報自体が届かない。(視覚障害、50代、女性) ・手帳のない難聴者に対して情報支援はできないとすることがある。(聴覚障害、30代、男性) ◆ 6-2「情報・コミュニケーション」(配慮工夫関係) 1 対人のコミュニケーションについて配慮や工夫をしてほしい ○ わかるまできちんと話を聞くこと ○ 手話通訳・要約筆記・筆談・指点字・触手話などを使って会話すること ○ ゆっくり、はっきり、わかりやすく話すこと・相手に通じるよう、さまざまな手段を使うこと など 【記述の例】 ・私は盲ろうで人工内耳をつけています。ゆっくり大きな声で話して下されば、ほぼ50〜70%まで聞き取れる。ですが健常者の方の多くは早口でしゃべりまくる人が多いので、20〜30%、しかもとぎれとぎれなので困る。講演会でも役に立たない。(盲ろう、50代、女性) ・視覚障害者に対しては、自分の名前を言って話しかけること。周りの状況を言葉で伝えること。会議などのおり、その中に視覚障害者がいる場合は、それぞれ自分の名前を言って発言すること。手助けの仕方がわからないときは本人に聞いておこない、勝手におこなわない。(視覚障害、50代、女性) ・中途失聴・難聴者には「筆談」が確実な伝達方法です。要約筆談が出来る方をおくか、一般の職員の方々は面倒臭がらずに応待して欲しい(これは切実) (聴覚障害、70代、男性) 2 テレビ、出版などマスメディアの利用について配慮や工夫をしてほしい ○ テロップや外国語の翻訳字幕などの文字情報を読み上げること ○ ニュースなどにはふりがなをつけること、難しい内容はわかりやすくすること ○ 印刷物は点字版や録音版・拡大文字版を作る、音声コードを付けること、テキストデータを提供すること ○ テレビでは字幕放送、解説放送、手話放送を行うこと など 【記述の例】 ・TV番組については、生放送以外の収録番組に字幕付与する際にはリアルタイム字幕でなく、あらかじめ字幕をつけて作成してほしい。遅れが出るため、映像が消えてしまったり移ってしまう。生放送のみにしてほしい。 ・邦画DVDに日本語字幕をつけてほしい。既存のものも、字幕が観れるようなシステムを。 ・全ての邦画に日本語字幕付与してほしい。字幕版については全国どの映画館でも観れるように。(聴覚障害、30代、男性) ・印刷物は点字版やパソコンのテキストデータでも読めるようにしてほしい。ホームページに載せる場合、音声ソフト利用でも読めるよう工夫してほしい。(視覚障害、30代、女性) 3 情報通信や機器の利用について配慮や工夫をしてほしい ○ 通信の内容や機器を音声読み上げ・点字表示対応にすること ○ 表示の文字や絵柄を見やすくしたり、利用者が自由に変えられるようにすること ○ パソコンやインターネットの利用講座を充実すること ○ 機器やソフトウェアの購入、プロバイダ料金の割引や補助をすること ○ 電話のリレーサービスなどを行うこと など 【記述の例】 ・盲ろう者のインターネット講習会を増やしてほしい。・盲ろう者向けのソフトや点字ピンディスプレイ、特にブレイルセンス等の特別補助や給付がほしい。(盲ろう、50代、女性) ・タッチパネルの代替手段を用意すること。(視覚障害、20代、男性) 4 講演会や大勢が利用する施設などで配慮や工夫をしてほしい ○ 講演ではスライドで示すだけでなく言葉や音声で説明すること ○ 手話通訳、要約筆記、盲ろう者通訳を付けること・磁気ループなどの補聴装置を設置すること ○ 必要資料を点訳すること、視覚障害者にも墨字資料を渡すこと など 【記述の例】 ・精神障がいがあると、長時間集中するのが、著しく難しい(薬の副作用)ので、会場の出入口のそばに、背もたれのある、ベンチを置いてほしい。(精神障害、40代、女性) ・美術館の音声案内を無料にして欲しい。(視覚障害、50代、女性) ・難聴者にとって磁気ループは健聴と共に講演を聞くことのできるありがたい設備です。公的な施設にはぜひつけてほしいが、私の市ではつけたが、全く機能していません。つけた以上は使えるかどうか、責任をもって管理して下さい。(聴覚障害、70代、女性) 5 文化活動・報道活動について配慮や工夫をしてほしい ○ 障害者に関する情報(啓発情報やパラリンピック・デフリンピック・スペシャルオリンピックなどの番組)を増やすこと ○ 政治などの難しい内容をわかりやすくすること ○ 邦画にも字幕をつけること など 【記述の例】 ・番組制作やアクセシブルな番組づくりに、障害者が参画できるようにすること。美術館や博物館は、視覚障害者を含む障害者が平等に鑑賞できるよう、工夫や配慮をすること。講演会や文化活動などへの参加を呼びかける募集記事などには、障害者の参加が可能である旨の言葉を書き添えること。(視覚障害、50代、女性) ・邦画の映像時字幕があまりない。見たくても日本語でしゃべっててもわからない。邦画も字幕を増やしてほしい。(聴覚障害、20代、男性) ※ 下記の事例・事案は、「障害を理由とする差別に当たると考え、してほしくないこと」及び「障害によって区別や排除が制限されないように、配慮や工夫をしてほしいこと」を障害者に自由記述で尋ね、収集したものの一部である。 ◆ 教育・育成」(差別関係) 1 本人などの意向を無視して就学先や教育の内容を決める ○ 本人や保護者の意見を聞くことなく、教育委員会や学校長、教員などの判断で就学先を決めること など 【記述の例】 ・障害を理由に養護学校に入学させたり、1クラスの人数が少ないという理由で1学年下の生徒とクラスを一緒にされ、勉強内容も1学年下の勉強をさせられた。(肢体不自由、20代、男性) ・「障害者が大学に行ってどうする?」、「障害者には手に技術をつけて働けるようになるべきだ。」と、校長をはじめほとんどの教師に大学入試挑戦を反対された。(肢体不自由、年齢記載なし、女性) 2 教育・育成への受け入れを拒否する ○ 特別支援学校の定員がいっぱいということで入学を認めないこと ○ 点字受験などの対応が難しい、環境が整備されていない、障害者が入学した前例がない、手話通訳者や要約筆記ができないなどの理由で受験を認めないこと など 【記載の例】 ・脳性マヒで普通の高校を受験した時、受ける前から「うちは養ゴ学校ではありません。他の人より点数が良くなければ落とします」と言われた。(肢体不自由、30代、女性) ・幼稚園・小学校と普通校で教育を受けてきた全盲生徒が、普通中学への進学を希望した際、教育委員会に呼び出され、階段はのぼりおりできるのか?計算は難しくなるけどついていけるのか?調理実習はやれるのか?など、攻めるように質問された上、特別支援学校を勧められた。(視覚障害、50代、女性) 3 教育・育成への受け入れを制限する ○ 家族の同伴・付き添いを前提に入学を認めること ○ 就学中に障害に関する支援を求めないことを条件とすること など 【記載の例】 ・安全が確保出来ないので、親の付き添いが必要と言われた。(知的障害、10代、男性) ・ある教科を特別支援学級で受けようと思うとすべての教科を特別支援学級で受けなければならず、他のクラスの生徒と関わる時間が制限される(視覚障害、20代、女性) 4 授業や学校生活のなかで差別的に取り扱う ○ 障害があるので無理だから、危険だからということで、一方的に行事、クラブ活動、体育などの授業、実習などに参加させないこと ○ カリキュラムなどを必要以上に特別扱いすること ○ 校外学習などで特別支援学級だけで班編制すること ○ 交流学級などで名簿番号や席順を特別扱いすること など 【記述の例】 ・中学校時代担任がどうせできないから、と体育祭にも参加課目がなかった。卆業式にさわぐかも、うるさいかもという理由で出席を拒否されました。(発達障害、30代、男性) ・課外活動に参加できないと判断され、その代わりに違う課題(問題集などを解く)を与えられた。(肢体不自由、20代、男性) 5 授業や学校生活のなかで差別的な言動をする ○ 「どうせ理解できないから」「聞こえないから」と、授業中に障害児を無視すること ○ 障害があることについて、ことさらにガンバレと声をかけること など 【記述の例】 ・教員が「あいつ(障害児)でもこんなにがんばっているんだから、君らももっとがんばらないといけない」というように、他の子どもをしかる材料として障害児を取り扱うこと。教員が、他の子どもには呼び捨てするのに、視覚障害児には「○○ちゃん」と猫なで声で呼ぶこと(視覚障害、30代、男性) ・「できないのは当たり前、障害があるのだから。」と言われる。(肢体不自由、20代、男性) ◆ 4-2「教育・育成」(配慮工夫関係) 1 施設や設備について配慮や工夫をしてほしい ○ 点字ブロックや音声ガイドの設置、点字表示をすること ○ 段差の解消、スロープの設置、エレベーターの設置、車いす用・オストメイト用トイレの設置をすること ○ 電光掲示や、磁気ループなど補聴システムを設置すること。 ○ 見やすい案内表示や照明、障害に応じた机・イス、補装具交換などができる部屋を設置すること など 【記述の例】 ・就学中のオストメイトも多く 学校へのオストメイト対応トイレを設置してほしい(内部障害、60代、男性) ・図書室には蛍光灯、拡大読書機など、見えにくい児童・生徒のための配慮をすること。階段の降り口などには黄色い点字ブロックを設置すること。弱視児童にとって必要な場合はホワイトボードなどを使うこと。夜盲の児童・生徒がいる場合は照明に配慮すること。(視覚障害、50代、女性) 2 教材について配慮や工夫をしてほしい ○点字や音声・拡大文字の資料を用意すること、音声で確認できるようにテキストデータを用意すること、工夫した入力装置を用意すること ○デイジーなどマルチメディアの教材を用意すること など 【記述の例】 ・視覚障害児・学習障害児などが共に使えるデイジー教科書の配布を検討すること。触図・拡大図など、障害の特性にあった教材を用意すること。音の出るボール・盲人用卓球台など、盲人用スポーツ用具を必要に応じて取り入れる。(視覚障害、50代、女性) ・知的障害者にも、かなをふってあげたりするのを多くしてほしい。(知的障害、30代、男性) 3 介助について配慮や工夫をしてほしい ○ 授業や行事参加については親が同伴しなくてもよいように介助サービスを提供すること ○ 呼吸器利用者の医療的ケアを、担当の介助者や教員などが行うこと ○ 通学や移動のための介助サービスを提供すること など 【記述の例】 ・黒板に書いたものをノートにかいてくれる介助者がほしい。レポートを書いてくれる介助者がほしい。(肢体不自由、60代、男性) ・教育行事の時は必ず介助者を準備してほしい。(盲ろう、50代、女性) 4 コミュニケーションや情報のやりとりについて配慮や工夫をしてほしい ○ 学校、大学、市民講座などにおいて手話通訳者、要約筆記者を配置すること、またはその同行を認めること ○ 点字資料、音声資料、拡大資料を用意すること、拡大読書器や、音声・点字対応のパソコンの利用を認めること ○ 板書すること など 【記述の例】 ・黒板が見えず、ノートが写せないことに対して配慮をしてほしい。難聴の生徒に授業以外の連絡もちゃんと伝わるように工夫してほしい。(盲ろう、20代、女性) ・知的障害者の場合は見守りや付き添い、口ぞえといった。介助(支援)者の同行を認めること。(知的障害、30代、男性) 5 手話の使用について配慮や工夫をしてほしい ○ 手話を理解できる教員を配置したり増やすこと ○ 手話による授業を行うこと など 【記述の例】 ・希望していない教員を無理矢理に異動させないでほしい。手話経験もった教員に教育してほしい。(聴覚障害、20代、女性) ・ろう児の集団学習の場(ろう学校)を保障してほしい。ろう児を教える教員は手話を必ず習得するようにしてほしい(聴覚障害、40代、男性) 6 教員や児童、生徒が障害を理解するために配慮や工夫をしてほしい ○ 教員や児童、生徒が自閉症、学習障害、精神疾患、てんかんなどの障害について研修し学習すること ○ 障害児と一般児童が交流できる時間を多くすること ○ 障害当事者による講話を行うこと など 【記述の例】 ・普通学校の普通学級に様々な障害のある子どもが入学することを前提として、教員養成課程において、障害を理解できるカリキュラムを位置づけること。また障害児の入学が決まった際に、障害理解のために必要な研修を容易に受けられるようにすること。さらに、普通学級において障害児教育を経験した教員同士が経験の共有などができるような仕組みを公的に作ること。(視覚障害、30代、男性) ・障害児が普通学級にいるケースは少ない。大人になる前に身近に障害児と関った経験は、その後にも活きる。障害を理解するには、その障害のある人と同じ時間を過ごすことが一番良い。(肢体不自由、20代、男性) ・聴障害のコミュニケーション手段の多様性を理解してもらうため、手話、筆談、要約筆記についての学習を入れてもらう(聴覚障害、30代、男性) 7 そのほか障害の特性に応じてきめ細かく配慮や工夫をしてほしい ○ 障害の特性に応じた個別の支援計画、指導計画を作成し学習指導すること ○ 学校での試験や資格試験などは、障害に応じて時間を延長すること など 【記述の例】 ・教育委員会、学校、教師、生徒がそれぞれの障害の特性を理解し特性に応じた個々の教育が必要。(聴覚障害、60代、女性) ・筆記試験でマークシート方式だったが義手使用の私は義手には神経は通っていないので、一ヶ所マークシートを塗りつぶすのに時間がかかったが延長配慮はなかった(肢体不自由、60代、男性)