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差別禁止部会 第19回(H24.5.25) 資料2

ADAに関する救済手続

北九州市立大学 植木淳

Ⅰ.市民権法の経験

・1964年 市民権法(Civil Rights Act)
 → 公共施設(第2編)、連邦拠出事業(第6編)、雇用(第7編)

・1973年 リハビリテーション法

・1990年 障害のあるアメリカ人に関する法律(ADA)
 → 雇用(第1編)、公的機関(第2編)、公共施設(第3編)

Ⅱ.ADA第1編に関する救済手続

1.ADA第1編「雇用差別の禁止」

 → 市民権法第7編の手続を準用

2.雇用機会均等委員会(EEOC)による救済

(1)EEOC ADA第1編に関する規則制定権を有する。
(2)申立 ADA第1編違反の被害者は、EEOCに対して申立(charge)を行う。申立は、違法行為の発生から180日以内になされなければならない。
州・地方自治体に救済手続がある場合には当該手続を経ることが必要である。
手続開始から60日以内あるいは手続終了まではEEOCに対する申立はできない(EEOCに対する申立は、手続終了から30日以内あるいは違法行為の発生から300日以内に行わなければならい)。
(3)調査 調査対象者の保有する証拠にアクセス・複写する権限
調査対象者には記録保全義務・報告書作成義務
(4)救済 120日以内の速やかな時期に申立の合理性を判断する。
①申立に合理性がない場合 却下 通知
②申立に合理性がある場合 協議・調整・説得などの手段によって違法行為の除去に努めなければならない。
※調停(mediation) 和解(settlement) 調整(conciliation)

3.連邦裁判所による救済

(1)EEOCによる訴訟提起 EEOCに対する申立から30日を経過していて、調整の合意を得られない場合には、EEOCが訴訟提起することができる。
(2)被害者による訴訟提起 EEOCが訴訟を提起しない場合、あるいは、申立から180日経過した場合には、申立人は訴権付与状(right to sue letter)を得て90日以内に訴訟提起できる。
裁判所の裁量による訴訟援助
(3)救済 ⅰ)インジャンクション(差止命令・義務付命令)
ⅱ)バックペイ【申立から2年前まで】
ⅲ)金銭賠償(補償的賠償・懲罰的賠償)
 ※意図的差別の場合に限られる。
 ※懲罰的賠償が認められるのは行為者に「悪意」あるいは「著しい懈怠」がある場合に限られる。
 ※金銭賠償の総額には使用者の規模に応じて上限が定められている(5万ドル~30万ドル)。
ⅳ)弁護士費用
 ※勝訴当事者(prevailing party)に認められる。

Ⅲ.ADA第2編に関する救済手続

1.ADA第2編「公的機関による差別禁止」

 → リハビリテーション法505条 → 市民権法第6編の手続を準用

2.行政機関による救済

(1)司法省(DOJ) ADA第2編に関する規則制定権を有する。
(2)不服申立 ADA第2編違反の被害者は、規則所定の連邦機関に不服申立(complaints)を行う。
不服申立は、違法行為から180日以内になされなければならない。
(3)調査・救済 担当機関は調査を開始する。
相手方と交渉して非公式な解決を試みる。
違法行為を認定したが非公式な解決ができなかった場合には、不服申立人・相手方に対して「事実認定書」(Letter of Findings)を送付する(①事実認定と法的結論、②侵害行為に対して行われるべき救済の内容、③利用可能な救済手続)。
「法令遵守合意」(voluntary compliance agreement)の締結を試みる(①当事者の署名・捺印、②違法行為の内容、③履行される救済の内容・期限、④差別行為を再発させない保証、⑤司法長官による執行規定、が含まれなければならない)。
(4)司法長官に対する移送 法令遵守合意が成立しなかった場合には、担当機関は当該事案を所見とともに司法長官に移送する。
※司法省による事案処理 司法長官を名宛人とする不服申立に関して、司法省は裁量的に救済権限を行使しうる。
※Project Civic Access 司法省が地方自治体と協力して障害のある人の公的活動に対する平等な参加を保障する。司法省の調査官が、地方自治体の施設(官公庁舎・会議場・警察署・公園・ウェブサイト等)を調査して、法適合のために必要な改善策を指摘して、地方自治体との協定を締結する。

3.連邦裁判所による救済

(1)訴訟提起 司法長官による訴訟提起
被害者による訴訟提起
(行政救済の申立を経る必要はない)
(2)救済 ⅰ)インジャンクション(差止命令・義務付命令)
ⅱ)金銭賠償(補償的賠償のみ)
 ※州を被告とする金銭賠償請求は、修正11条「主権免責」によって遮断される場合がある。
 ※金銭賠償は「意図的な差別」の場合しか認められない。
 ※懲罰的賠償(punitive damage)は認められない。
ⅲ)弁護士費用
 ※勝訴当事者(prevailing party)に認められる。

Ⅳ.ADA第3編に関する救済手続

1.ADA第3編「公共施設における差別禁止」

 → 市民権法第2編の手続を準用

2.司法省による救済

(1)司法省(DOJ) 州法・条例の法適合性に関する認証を行う。
(2)調査依頼 ADA第3編違反の被害者は、司法省に対して調査を依頼(request)することができる。
(3)調査・救済 司法長官は、調査を開始し、和解交渉・調整・調停などによって問題を解決することを試みる。
調査依頼に対する正式な応答義務は存在しない。

※「調停」(mediation)あるいは「交渉による合意」

※「和解合意」(settlement agreement)

※訴訟提起・訴訟参加・意見書提出 → 同意判決(consent decree)

3.連邦裁判所による救済

(1)司法長官による訴訟提起の場合
ⅰ)インジャンクション(差止命令・義務付命令)
  ※容易にアクセス可能で利用可能になるように公共施設を改造する命令
  ※補助的な援助及びサービス、運営方針の変更などの命令
ⅱ)金銭賠償(懲罰的賠償は含まない)
ⅲ)制裁金(civil penalty) 違反行為に関して初回5500ドル、次回以降11000ドルを上限とする制裁金を科せる。
(2)被害者による訴訟提起の場合 行政救済の申立を経る必要はない。
裁判所の裁量による訴訟援助
ⅰ)インジャンクション(差止命令・義務付命令)
  ※容易にアクセス可能で利用可能になるように公共施設を改造する命令
  ※補助的な援助及びサービス、運営方針の変更などの命令
ⅱ)弁護士費用
  ※勝訴当事者(prevailing party)に認められる。

Ⅴ.ADAの救済手続に関する評価

1.行政救済の実績

(1)EEOC(ADA第1編)(2007年~2011年)

・和解(settlement) 11621件(11.2%)
・相手方の譲歩による申立の撤回 6452件( 6.2%)
・調整(conciliation) 2022件( 2.0%)

(2)司法省(ADA第2編・第3編)(2006年4月~2011年3月)

・調停(mediation) 211件
・交渉による合意 363件
・和解同意(settled agreement) 119件

※事案処理策の定型化 → 社会規範の形成

2.司法救済に関する問題 ― 金銭救済の制限

  • 州に対する金銭賠償請求が制限されること(ADA第1編・第2編訴訟)
  • ADA第2編訴訟において懲罰的賠償が認められないこと
  • ADA第3編訴訟において金銭賠償請求が認められないこと
  • 弁護士費用を得られる「勝訴当事者」の範囲が限定されていること
    ※使用者の自発的態度変更による解決の場合には認められない

 → ADAの目的達成を阻害しているという指摘

  • 原告の訴訟提起を阻害する(弁護士のインセンティブを低下させる)
  • 所有者・管理者の法令遵守に対するインセンティブを低下させる