第21回差別禁止部会(H24.7.13) 浅倉、池原、大谷委員提出資料 障害者差別禁止法要綱(案) 2012年7月10日 浅倉むつ子・池原毅和・大谷恭子 第一章 総則  1 目的    この法律は,障害に基づく差別の具体的内容を定めるとともに,国,地方公共団体,個人及び事業者がかかる差別を行うことを禁止し,差別を受けた者が適正かつ迅速な救済を受けるための措置と相まって,政治的,経済的,社会的,文化的,市民的その他のあらゆる分野における障害のある人の自立,完全参加と平等,そして権利の確立を図ることを目的とする。  2 障害の定義   (1)この法律で障害とは,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)を言う。   (2)過去に前項の障害があったこと,及び将来前号の障害をもつ蓋然性があることも、(1)の障害に含めるものとする。  3 障害に基づく差別の禁止    何人も、障害のある人または障害のある人に関係する人に対し、障害に基づく差別をしてはならない。  4 障害に基づく差別の定義    この法律で,障害に基づく差別とは,以下のことを言う。   (1)障害に基づいて,又は障害に関連して,直接又は間接に,区別,排除,制限若しくは不利益な取扱い(以下「不均等取扱い等」という)をすること。   (2)当該不均等取扱い等に正当な目的があり,かつ,その目的を達するために必要やむを得ない場合は,(1)に規定する差別とはならない。   (3)障害のある人が障害のない人と平等に権利を行使し,又は均等な機会や待遇を保障するために必要となる現状の変更若しくは調整(社会的障壁の除去又は人的及び物的支援を含む)又はその他の配慮(以下「合理的配慮」という。)を行わないこと。   (4)当該合理的配慮を行うことが業務の本質を損ない,又は過度の負担となる場合は,(3)に規定する差別とはならない。  5 国及び地方公共団体の責務    国及び地方公共団体は,障害に基づく差別がおこなわれることがないように,総合的かつ計画的に施策を実施する責務を有する。当該責務には,以下の内容を含むものとする。   (1)妊娠,出産,避妊,家族形成等に関して,障害に基づく差別が行われないようにすること。   (2)学校,職場,施設,地域社会等において,障害のある人又は障害のある人に関係する者に対して,障害に基づく侮蔑等の嫌がらせが行われないようにすること。   (3)業務の本質に関連しない事由を基準として,障害に基づき,その業務が必要とする資格を制限されないようにすること。   (4)障害のある女性が複合的差別を受けていることを認識し,障害のある女性が差別を受けることなく全ての基本的人権を享有するために必要な施策を講じること。   (5)障害に対する国民の理解を深めるために,学校教育等あらゆる機会を通じて啓発活動を行うこと。  6 この法律に違反する合意    この法律に反し、障害のある人又は障害に関係する人が障害に基づき不利となる合意は,その部分については無効とし,この法律の定める調整・紛争解決機関により示される基準をもって合意内容とする。 第二章 差別の禁止(各論―次回提出予定) 第三章 合理的配慮の調整及び紛争解決  1 相談及び救済   (1)障害のある人は,本法に定める差別を受けたときは,障害者基本法36条により都道府県に置かれる合議制の機関(以下「都道府県機関」という。)に,相談を行うことができる。相談には,合理的配慮の内容について調整を求める申立て及び障害を理由とする不利な契約について契約内容の決定を求める申立てを含む。   (2)前項の相談及び申立ては,障害のある人を支援する家族及び支援者等もこれを行うことができる。   (3)相談又は申立てを受けた都道府県機関は,これについて調査を行うことができる。相手方及び関係者は,都道府県機関の調査に協力しなければならない。   (4)都道府県機関は,相談又は申立てを受けた件について,調停又は仲裁を行うことができる。   (5)都道府県機関は,(3)の調査の結果,又は(4)の調停若しくは仲裁が功を奏しない場合,相手方に対し,必要な勧告を行うことができる。   (6)相手方が(5)の勧告に従わない場合,都道府県機関は,これを公表することができる。  2 障害者政策委員会   (1)前条の相談又は申立ては,それが都道府県にまたがる事案である場合,障害者政策委員会に対して行うことができる。   (2)(1)の場合障害者政策委員会は,前条に定められる同内容の権限を行使し,調整及び紛争解決にあたるものとする。   (3)(1)の場合の他,案件の難易度等に鑑み,都道府県機関が障害者政策委員会において処理されるべき案件であると判断する場合,当事者等の意見を聞いた上で,障害者政策委員に案件を回付することができる。  3 実施    障害者政策委員会は,本法に基づいて次に掲げる事務を行うものとする。   @ 規則の制定   A 解釈指針及び実務指針の策定   B 立法及び行政に関する提言   C 実施状況の調査   D 国民に対する広報及び啓発   E 公務に携わる者に対する教育及び指導   F 差別を受けたものが行う裁判手続又は救済機関での手続に必要とされる弁護士その他の適切な補助者の斡旋,その他の援助   G その他この法律を実施するために必要な事務 以上