障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)(素案2)
Ⅰ はじめに
(P)
Ⅱ 障害者制度改革の基本的考え方
障害者権利条約の締結に向け、国内法制をその理念・趣旨に沿う形で整備するとともに、日本が目指すべき社会である、障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う「共生社会」を実現することを目的とし、制度改革を進めるに当たっての基本的な考え方は次のとおりとする。
1.「権利の主体」たる社会の一員
すべての障害者を、福祉・医療等を中心とした「施策の客体」に留めることなく、「権利の主体」たる社会の一員としてその責任を分担し、必要な支援を受けながら、自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加、参画する主体としてとらえる。
2.「差別」のない社会づくり
何人も障害を理由とする差別を受けない権利を有することを確認するとともに、差別の禁止や権利の侵害から救済を受ける法制度を構築し、差別のない社会づくりを目指すものとする。なお、差別には合理的配慮が提供されない場合も含むものとする。また、女性であることによって複合的差別を受けるおそれのある障害のある女性の基本的人権に配慮する。
3.「社会モデル」的観点からの新たな位置付け
障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、様々な社会環境との相互作用や社会との関係性のあり方によって生ずるものであるという「社会モデル」的認識を踏まえ障害の捉え方や障害者の範囲、障害者への各種支援制度等を見直すとともに、障害者の日常生活及び社会生活のあらゆる分野への参加を可能かつ容易にするため、公共的施設、輸送機関、情報通信等の社会環境の改善を図る。
4.「地域生活」を可能とするための支援
すべての障害者が、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のための支援制度の構築を目指す。制度の構築にあたっては、地域間格差が生じないよう十分に留意する。
5.「共生社会」の実現
障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者への支援と人権の確保を図ることにより、障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の実現を図る。
Ⅲ 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
Ⅱの基本的考え方を踏まえ、障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方については次のとおりとする。
1.全体的な当面の進め方
1)平成22年内の進め方
- 推進会議は、第一次意見を基に、障害者基本法の抜本改正を始め、改革が必要な分野について個別に部会や作業チーム等を設け、分野別課題の検討に着手する。また、推進会議は、改革の推進体制、モニタリング機関の在り方、これまで議論していない事項を含め各分野において更に検討すべき課題等の事項について引き続き議論を行い、平成22年秋から年末を目途に、制度改革の重要方針に関する第二次意見を取りまとめる。
- 政府は、第一次意見を踏まえ、速やかに制度改革の方向性を決定するとともに、第二次意見を踏まえ、制度改革の重要方針を決定すべきである。
2)平成23年以降の進め方
- 政府は、制度改革の重要方針に基づき、障害者基本法の抜本改正や制度改革の推進体制等に関する法律案を平成23年の常会に提出すべきである。
- 推進会議は、改革集中期間※内において、改革が必要な分野の制度・施策の在り方や次期障害者基本計画の在り方・方向性等を具体化するため、部会・作業チーム等での議論を踏まえ、必要に応じ政府に対する意見提出を行っていくこととする。
- 上記の法律案が成立し、施行された後は、3.の1)-2において後述する、推進会議の機能を継承する審議会組織において、検討すべき課題について引き続き議論を行い、必要に応じ政府に対する意見提出等を行っていくべきである。
2.基礎的な課題における改革の方向性
1)地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築
国際障害者年以降、ノーマライゼーションの理念が日本にも紹介され、地域福祉が進んできたことは事実であるが、社会一般とは異なる生活をしている障害者が依然として多くいる。障害に応じたきめ細やかな支援が必要であることはもちろんであるが、それは、限りなく一般社会生活に近い形で提供されなければならず、一般の社会生活とは異なる生活形態を強いられ、社会から分離・排除されてはならない。
こうした観点から、教育、福祉、医療等における制度設計に当たっては、分離や排除の傾向や地域間格差を限りなく取り除き、誰もが有する地域で暮らす権利を実現するため、地域移行や地域生活支援の充実を柱に据えた施策を展開していくことが求められる。また、そのために必要な財源を確保し、財政上の措置を講ずるべきである。
2)障害の捉え方
障害の捉え方について世界保健機関(WHO)が提唱した国際障害分類が、環境との相互作用によるものとする生活機能分類(ICF)に改められ、また、障害者権利条約では、より社会モデルに近い捉え方が示されている。
社会モデルは、障害という属性を有する人をありのままで受け入れようとしない社会の有り様そのものを問うものである。
こうした障害の捉え方は、障害者施策全般に及ばなければならず、より根本的には国民全体の意識変革に結びつかなければ、真の共生社会の実現には至らない。
※「改革集中期間」は、「障がい者制度改革推進本部の設置について」(平成21年12月8日閣議決定)に定める「障害者の制度に係る改革の集中期間」をいう。
3)障害の定義
障害の捉え方は障害の定義に影響を及ぼし、障害の定義は障害の種類、範囲、障害者の総数、障害者施策の内容や対象を画するものとなる。
医学モデルによると障害の原因となる疾患や症状とその程度によって障害が規定され、それをもとに障害者施策の内容や対象範囲が限定されることになるが、社会モデルによると疾患や症状を有する、あるいは有するものとみなされる人々が負うところの社会的不利の種類やその程度に応じて障害が規定されることになる。
また、障害の定義は障害者施策の入り口を画する機能を有するので、疾患や症状の違いにかかわらずサービスを必要としている障害者をあまねく含めることが重要である。
こうした観点から、障害者基本法やその他の法制における諸定義は見直すことが求められる。
4)差別の定義
これまでの社会は、障害者に対する社会の異なる取扱は個人の障害に起因するものとして、これを差別であるとは認識してこなかった。しかし、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」制定に向けて行った千葉県の差別事例の募集や内閣府の調査によっても、きわめて多くの差別事象が存在し、救済されることなく放置されている実態が明らかとなった。
こうした実態からすると、障害者に対する差別の定義(合理的配慮を提供しないことを含む。)を明らかにし、新たに策定される障害者差別禁止法制に取り込むだけでなく、既存の法律に散在する差別禁止条項にも障害に基づく差別禁止を盛り込むことが求められる。
5)言語・コミュニケーションの保障
これまで、手話や要約筆記、指点字等を含めた多様な言語・コミュニケーションの選択を保障することの重要性及び必要性は省みられることがなかったため、それらの明確な定義を伴う法制度が求められる。
6)障害の表記
「障害」の表記については、「障害」のほか、「障がい」「障碍」「しょうがい」等の様々な見解があることを踏まえ、推進会議としては、今後とも、学識経験者等の意見を聴取するとともに、国民各層における議論の動向を見守りつつ、それぞれの考え方を整理するなど、引き続き審議を行う。
3.横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方
1)-1 障害者基本法の抜本的改正
障害者基本法は、もともと心身障害者対策基本法を出発点としており、改正後も障害者施策の基本を定めるという枠組みを出るものではない。
しかし、障害者権利条約で示された障害者の人権とその確保のための締約国の義務履行を担保する受け皿として、障害者基本法を抜本改正して社会権や自由権を実現するための基本法として位置付け、障害者の人権を確保するための諸施策を規定すべきである。
具体的には、制度の谷間を生まない包括的な障害の定義、合理的配慮を提供しないことが差別であることを含む差別の定義、手話及びその他の非音声言語が言語であること、障害ゆえに侵されやすい基本的人権などを総則で確認し、さらに、人権の確保及び障害を持つ女性が複合的差別を受けやすい状況に配慮するといった観点から既存の諸施策に関する規定を見直すとともに、政治参加や国際協力等の現行法の規定にない施策分野について新たな規定を追加することを検討すべきである。
また、改革期間終了後、障害者権利条約の実施状況の監視を始めとした次の機能を担う審議会組織をいわゆるモニタリング機関として法的に位置付けることを検討すべきである。
- ○所掌事務
- 障害者施策の推進に係る調査審議、障害者施策の実施状況の監視(モニタリング)等
- ○権限
- 関係各大臣等に対する勧告、資料提出要求等
1)-2 改革集中期間における推進体制
改革集中期間内における改革の推進等のため、中央障害者施策推進協議会及び推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成する、次の機能を担う審議会組織を新たに内閣府に設置すべきである。
なお、改革集中期間終了後に、同組織は、前出のモニタリング機関へと改組されるべきである。
- ○所掌事務
- 障害者制度の集中的な改革の推進、障害者施策の推進に係る調査審議、障害者施策の実施状況の監視 等
- ○権限
- 関係各大臣等に対する勧告、資料提出要求 等
(今後の進め方)
推進会議又は作業チームによる検討を経て、平成22年内に取りまとめを予定する第二次意見を踏まえ、政府は平成23年の常会への法案提出を目指すべきである。
2)「障害者差別禁止法」(仮称)等の制定
あらゆる分野における障害者に対する差別類型を明らかにしてこれを包括的に禁止し、また、障害者がこれらの人権被害を受けた場合の救済等を目的とした「障害者差別禁止法」(仮称)の制定に向けた検討を進める。検討に当たっては、現在法務省において検討中の人権救済制度の検討状況にも留意するものとする。なお、差別禁止の検討に併せて、障害者制度改革の推進に必要な他の関係法律を一括して整備するための法案の検討も行うものとする。
また、政府は、障害者に対する差別を防止するため、当該差別に該当するおそれのあるものについて事例収集を行い、その結果を公表すべきである。
(今後の進め方)
本年夏頃に、推進会議の下に「差別禁止部会」(仮称)を設け、「障害者差別禁止法」(仮称)の制定に向けた検討(※)を開始し、平成24年度末を目途にその結論を得る。これを受けて、政府は25年の常会への法案提出を目指すべきである。併せて、現在法務省において検討中の人権救済制度に関する法律案についても、遅くとも25年の常会への提出を目指すべきである。
※ 労働及び雇用、教育、建物利用・交通アクセス等の各分野における合理的配慮の内容等についての検討も行う。
3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定
現行の障害者自立支援法を廃止して、新たな障害者総合福祉法(仮称)を制定する。
この制定に当たっては、制度の谷間を生まない障害の定義のもとに、すべての障害者が地域において自立した生活を営むことができる制度構築を目指すべきである。具体的には、医学モデルに偏った障害程度区分を見直すとともに応益負担を廃止し、一人一人のニーズに基づいた地域生活支援体系を整備し、最重度であっても、どの地域であっても安心して暮らせる、24時間介助制度を始めとするサービスを提供するものとする。そのためにも、入所者・入院者の地域移行を可能とする仕組みを整備するものとする。
(今後の進め方)
本年4月から推進会議の下に「総合福祉部会」を設けたところである。当面対応が必要な課題について、同部会において整理された意見を踏まえ、政府は必要な対応策を講ずるべきである。同部会では、推進会議における大枠の議論の枠内で、障害者に係る総合的な福祉法制である「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向けた検討に着手しているところであり、平成23年夏から秋までを目途に結論を得る。これを受けて、政府は、24年の常会への法案提出、25年8月までの施行を目指すべきである。
4.個別分野における基本的方向と今後の進め方
1)労働及び雇用
(推進会議の問題認識)
障害者が地域において自立した生活を営み、より一層社会参加ができるようにするためには、他と等しく障害者が職業等を選択でき、働く機会が確保されるとともに、多様で利用可能な労働条件・環境が整備されることが不可欠である。 |
【障害者の雇用の促進】 現状において障害者の雇用状況は、障害者雇用促進法に基づく法定雇用率を達成している企業が全体の半数に満たないなど、厳しい状況にあり、また、障害の種別・程度によって職域や雇用義務の有無、さらには雇用の機会等に格差がある等、障害者の雇用の促進を図るために大幅な改善が求められている。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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【福祉的就労に従事する障害者に対する支援】 福祉的就労に就いている障害者の月額工賃は平均して約一万二千円程度であり、地域で自立した生活を送るには困難な低水準にあるほか、労働法規で定められているような措置の対象とならない場合がある等の問題がある。このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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【職場における合理的配慮や必要な支援の整備】 障害者が自らの能力を最大限に発揮し、障害のない者と同様に安全かつ健康的な労働環境を確保するためには、障害を理由とする差別が禁止され、職場において必要な合理的配慮や支援がなされる必要がある。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
2)教育
(推進会議の問題認識)
障害者権利条約においては、あらゆる教育段階において、障害者にとってインクルーシブな教育制度を確保することが必要とされている。 障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者と障害のない者が差別を受けることなく、共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない者にとっても生きる力を育むことにつながる。 また、義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育及び就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育等についても、教育の機会均等が保障されなければならない。 |
【教育の機会均等】 現行の教育基本法の第4条第1項においては、教育上差別されないものの例示として、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地」が明記されているが、「障害」が明記されていない。 したがって、教育基本法の第4条第1項について、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地」と同様に、「障害」によって教育上差別されないことを明文化するため、平成23年常会に提出することを予定している障害者基本法の改正に関する法案の附則において改正することを検討すべきである。 【文部科学省関係】 |
【地域における就学と合理的配慮の確保】 我が国における障害者に対する公教育は、特別支援教育によることになっており、就学先や就学形態の決定に当たっては、制度上、保護者の意見聴取の義務はあるものの、本人・保護者の同意を必ずしも前提とせず、教育委員会が行う仕組みであり、本人・保護者にとってそれらの決定に当たって自らの希望や選択を法的に保障する仕組みが確保されていない。 また、特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における子ども期にふさわしい生活の機会を奪ったり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に強いる要因ともなっている。 障害者が地域の学校に就学し、多大な負担(保護者の付き添いが求められたり、本人が授業やそれ以外の教育活動に参加しにくいまま放置される等)を強いられることなく、その学校において適切な教育を受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、学習評価の在り方の見直し、教員の加配、通訳・介助者等の配置、施設・設備の整備、拡大文字・点字等の用意等の必要な合理的配慮と支援が不可欠である。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】 障害者の人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力を可能な限り発達させるためには、教育が本人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段によって行うことが確保されなければならない。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
3)所得保障等
(推進会議の問題認識)
障害者は、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有しており、障害者が地域で自立した生活を営むためには、一定水準の所得を保障することが不可欠である。 |
【公的年金制度改革における検討】 厚生労働省において平成25年常会に法案提出を予定している新たな年金制度創設に向けた議論の中で、障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担、並びに稼働所得との調整の在り方を含めて検討を行うべきである。 【厚生労働省関係】 |
【無年金障害者の所得保障】 国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情等により、障害基礎年金の支給対象から除外されている無年金障害者(20歳以前の初診日認定ができない者、国籍条項撤廃時(1982年)に20歳以上の在日外国人障害者等)が、現在多数存在している。 このような現状を受けて、学生無年金障害者等を福祉的措置によって救済するために設けられた「特別障害給付金」の給付対象範囲の拡大を含め、無年金障害者の困窮状態の改善を図る措置を早急に講ずるべきである。 【厚生労働省関係】 |
【住宅の確保】 障害者が地域において自立した生活をするためには、住居の確保が不可欠であるが、家賃等の負担が大きく、地域での生活が困難になっているという現状がある。したがって、住宅確保のための支援の在り方について、引き続き総合福祉部会における議論と整合性を図りつつ検討を行うべきである。 【厚生労働省・国土交通省関係】 |
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
4)医療
(推進会議の問題認識)
障害者が地域において安心して自立した生活が送れるためには、障害者が障害に基づく差別なしに可能な限り最高水準の健康を享受できるよう、必要な医療やリハビリテーション等が提供さなければならない。 |
【精神障害者に対する強制入院等の見直し】 現行制度では、精神障害者に対する措置入院、医療保護入院、裁判所の決定による入院、強制医療介入等については、一定の要件の下で、本人の同意を必要とせずに、強制的な入院・医療措置をとることが可能となっており、自由の剥奪という観点から検討すべき問題がある。 このため、現行の精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討すべきである。 【厚生労働省関係】 |
【地域医療の充実と地域生活への移行】 精神科病院においては、入院治療の必要がないにもかかわらず、長期入院による自立生活の困難等の問題により入院せざるを得ない、いわゆる「社会的入院」患者が厚生労働省の統計から推定される人数でも約7万人いるといわれている。 このような現状を改善するため、入院中の精神障害者に対する退院支援の充実を図るべきである。退院支援や地域生活への移行後における医療、生活面からのサポート(医療付きショートステイ等を含む)の在り方については、総合福祉部会で検討を進める。 【厚生労働省関係】 |
【精神医療の一般医療体系への編入】 現行制度においては、精神疾患のある患者は、臨時応急の場合を除いて、原則として精神病室以外の病室には入院できないこととなっており、このことが精神障害者とって一般医療サービスを受けることを困難にしている。また、精神科医療の現場においては、いわゆる「精神科特例」により一般医療に比して医師や看護師が少ない状況にある。 このような状況を踏まえ、以下を実施すべきである。
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【医療に係る経済的負担の軽減】 障害者は健康面における特段の配慮や対応を必要とする場合が多いが、継続的な治療等に要する費用負担が大きいため、必要な医療を受けることが困難な状況がある。 このような状況を改善するため、障害者がその健康状態を保持し、自立した日常生活等を営むために必要な医療を受けたときに要する費用負担については、本人の負担能力に応じたものとする方向で、総合福祉部会において引き続き検討する。 【厚生労働省関係】 |
【地域生活を容易にするための医療の在り方】 日常生活における医療的ケア(たん吸引、経管栄養(注入開始から終了まで(胃ろう含む))、摘便、褥瘡の処置、人工呼吸器の操作や着脱等)等についても、一部はホームヘルパー等によって行われているが、原則として医師・看護師等のみに限定されているため、単身での在宅生活の途が閉ざされ、また同居の場合その家族にとって重い介護が負担となっている。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
5)障害児支援
(推進会議の問題認識)
障害児は、一人の子どもとして尊重され、すべての人権、基本的自由を享受しているという観点から、障害児の最善の利益を考慮した施策が講じられる必要がある。 |
【障害児やその保護者に対する相談支援】 相談支援については、障害児の出生直後又は「気になる」・「育てにくい」段階から、医療及び福祉関係者からの適切な情報提供、心理的サポートが不足しており、障害児を含め、その家族に対する十分な支援が提供されていない。 このような現状を改善するため、以下を実施すべきである。
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【児童福祉における障害児支援の位置付け】 障害児支援は、早期に必要な専門的支援が求められる反面、その支援が障害児のみに注目した形でのサービス提供になりがちであるため、その家族への支援や地域社会との関係が置き去りになっている場合がある。また、障害の軽減のみが重視されがちであり、そのことが本人の障害に対する否定的な認識を助長してしまうという問題もある。 このような現状を改善するため、障害児支援については、家族への子育て支援や一般児童と共にする「育ち」が地域において保障されるよう、一般の児童福祉施策の中で講じられるようにすべきである。 【厚生労働省関係】 |
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
6)虐待防止
(推進会議の問題認識)
入所施設や家庭内、労働現場や精神科病院等の医療現場等において障害者に対する虐待の例もみられるところであり、虐待の防止やその救済等に関する法整備が急務となっている。立法府においては、障害者の虐待防止に係る制度の法制化に向けた検討がなされているが、今後の法整備に当たっては、政府が行う場合も含め、次の方針に沿って検討されるべきである。 (防止すべき虐待行為)
障害者権利条約の趣旨を踏まえ、虐待を未然に防止するため、効果的な監視が可能な体制を整える。 【厚生労働省・文部科学省関係】 |
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
7)建物利用・交通アクセス
(推進会議の問題認識)
障害者が、日常生活又は社会生活において、公共的施設・設備、交通機関等を円滑に利用できるようにすることは、障害者の社会参加を促進する観点から不可欠である。 平成18年に制定された「高齢者、障害者等の移動の円滑化の促進等に関する法律」(バリアフリー新法)の制定等により、バリアフリーの取組においては、一定の進展はみられるものの、地方部より大都市部におけるバリアフリー整備が優先されてきたことにより、地方における整備の遅れが顕著となっている。また、障害者が公共交通機関を利用するに当たって、乗車拒否や利用拒否等の不当な対応もみられるところであり、障害者にとって、円滑かつ安全に公共的施設・設備、交通機関等を利用できる環境が十分に整っているとはいえない状況がある。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
8)情報アクセス・コミュニケーション保障
(推進会議の問題認識)
障害者は、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、必要な情報及びコミュニケーションが保障される権利を有する。 障害者も、障害のない人と同様に、表現の自由や知る権利の保障の下で、情報サービスを受ける権利を有しており、自ら必要とする言語及びコミュニケーションを選択できるようにするとともに、障害者が円滑に情報を利用し、その意思を表示できるようにすることが不可欠である。 国及び地方公共団体は、障害者が選択するコミュニケーション手段を使用することができるよう必要な施策を講じなければならない。 |
【情報バリアフリーの取組】 我が国においては、情報や考えのやりとりに必要なサービス(手話通訳者、要約筆記者等)を利用できないことや、障害に配慮した情報提供(点字化、字幕を付ける、ルビを振る等)を受けられないこと等、障害者は、生活の様々な場面で情報へのアクセスやコミュニケーションにおける困難に直面している。 この十年間、日本は高度な情報・コミュニケーション技術(ICT)を発展させてきたが、障害者がそれを十分に利用できないという事態も生じている。 このような状況は、障害者に不利益を負わせるだけでなく、障害者と交流する障害のない人にも不利益を生じさせるものである。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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【災害時における緊急情報等の提供】 災害時における緊急情報等は、生命に関わる極めて重要性の高いものであるが、現状では、被害情報や避難情報等の提供が障害者に配慮された形で行われているとは言い難く、市町村によってもその対応にはばらつきがみられる。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
9)政治参加
(推進会議の問題認識)
民主政治の健全な発達を期するためには、すべての国民が自由な意思の下で、公明かつ適正な選挙等の実施を確保されることが不可欠である。 そのため、障害者についても、選挙等に関する情報における「知る権利」の保障の下で、障害のない人と平等に自己の自由な意思により政治参加の機会が実現されるべきである。 しかしながら、現状では、障害者の選挙権や投票権の保障が、制度の運用において、障害のない人と同等程度に保障されていない問題が多々あり、早急に必要な改善措置を講ずるべきである。 |
【選挙等に関する情報へのアクセス】 選挙等に関する情報の提供においては、点字及び音声による選挙公報等の発行が十分にはなされていないことや、政見放送において字幕・ 手話の付与が十分にはなされていない等、障害のある人が情報を得ることが困難な状況がある。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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【投票所へのアクセス】 地域によっては、投票所へ移動する際の困難なアクセスや投票所における物理的バリア等により、障害者の投票機会の確保が容易でない状況がある。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。
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【選挙活動における配慮等】 障害者による選挙活動への必要な配慮等についても改善を図る必要があるが、選挙制度の在り方については、議会政治の根幹にかかわる問題であり、各党各会派における議論に委ねられるべきものであることから、以下の事項について、立法府においても真摯な検討を期待する。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
10)司法手続
(推進会議の問題認識)
刑事訴訟手続や民事訴訟手続を始めとする司法手続において、障害者がその手続上の権利が保障され、他と平等に参加できるようにするためには、障害の特性に応じた手続上の配慮の提供が不可欠である。 しかしながら、特に、適正手続として保障される刑事訴訟法上の各種の権利行使において、そもそも法制度自体が障害者の存在を想定していないとの指摘があり、また運用の実態においても大きな問題が存在している。さらに、刑事被拘禁施設内における処遇においても、障害特性が理解されていないが故の不利益取扱いについて指摘がある。 |
【刑事訴訟手続における配慮】 (捜査段階) 障害の特性に配慮した適切な方法による情報の提供等が確保されていないため、令状主義の趣旨がいかされず、弁護人選任権や黙秘権の告知が告知としての機能を果たしておらず、さらには、取調べの適正を欠くといった事態を招いている場合がある。 このような現状を改善するため、以下を実施すべきである。
(公判段階) 手続的な保障がないままに自白がなされた場合には、証拠として採用されないような仕組みが検討されるべきである。 また、障害者が被告人や証人として、質問や尋問を受ける場合には、障害の特性に対応した適切な情報提供やそのために必要な手話通訳者、要約筆記者、知的障害者に対する支援者等の支援がされるよう必要な手続上の措置を講ずるべきである。 【法務省関係】 【被拘禁中の処遇】 受刑中の障害者の処遇に関して、障害の状況に応じた合理的配慮がなされていない状況がある。 このような状況を改善するため、被拘禁者の有する外部交通権等の諸権利の行使及び刑務作業を含めた施設内の生活全般について、物的な設備や情報提供におけるアクセス、医療面での配慮等がされるよう必要な措置を講ずるべきである。 【法務省関係】 【コミュニケーション確保に係る費用】 司法手続が適正になされるためには、障害を理由とした特別な負担を要することなく、当事者のコミュニケーションが十分に確保されることが不可欠である。 このような観点から、民事訴訟手続や刑事訴訟手続等における障害者のコミュニケーションの確保のために必要な人的、物理的支援に係る費用については、原則として公的負担とすべきである。 【法務省関係】 【司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)の研修】 司法関係者の障害についての無知・無理解による様々な問題が指摘されており、これを改善するため、障害の特性、手話言語や障害に配慮したコミュニケーション、生活支援の基本などについての理解等を深める研修の一層の充実を図るべきである。 【法務省・警察庁・裁判所関係】 上記の他、判決が知的障害者に対してなされる場合に本人に理解できる内容や言葉遣いでなされていないことや、それが視覚障害者に対してなされる場合にも点字による判決が交付されないこと等の問題がある。また、裁判傍聴に当たっては、パソコン要約筆記による全体投影や磁気ループの設置がなされていない等障害者による傍聴に際しての配慮がなされていない。さらに、民事訴訟手続においては、障害者の稼働能力が低く認定される結果、逸失利益の認定が低くおさえられるという指摘がなされており、これらの在り方について裁判所における真摯な検討が望まれる。 【裁判所関係】 |
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)
11)国際協力
(推進会議の問題認識)
障害者施策における国際協力は、日本が国際社会の一員としての責務として諸外国・地域における障害者の地位の向上に寄与し、併せて国内の障害者施策の推進にも資するものである。こうした観点から、障害当事者の権利を尊重した国際交流の推進に当たっては、障害者の能力構築、自立生活技能の提供、アクセシビリティの確保等を重視した取組を進めることが重要である。 日本は、第1次及び第2次アジア太平洋障害者の十年(1993-2002、2003-2012)の提唱国として、NGO等と協力しつつ、「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」の採択等に積極的に貢献してきている。 他方で、現在、政府開発援助大綱においては、社会的弱者の状況を考慮する旨が規定されているのみで、障害者については明確に位置付けられておらず、援助が障害者の地位の向上に資するものになっているとは言いがたい。 今後、障害者権利条約の締結を見据え、我が国の障害者施策分野における国際協力について法律等において明確に位置付けた上で、より一層の推進を図る必要がある。 このような観点から、以下を実施すべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)