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障害のある人々の生涯における暴力と虐待:黙従の終わり?
第10章 法と法執行機関 (仮訳)

ディック・ソブセイ(カナダ・アルバータ大学・教育心理学)

(中略)

法執行機関と障害者に対する犯罪

犯罪が発生すれば、警察が捜査と法執行の責任を負う。虐待の多くは、少なくとも酷い場合においては、刑法上の犯罪となる。障害のある人に対する犯罪とない人に対する犯罪を明確に比較した情報は殆どないが、オーストラリアでの研究は、福祉作業所に通う軽度から重度の知的障害がある大人に対する個人に対する身体犯(personal offenses)は他のオーストラリア人に対する身体犯の割合より2.7倍も高いことを示している(Wilson & Brewer,1992)。表1を見ると、人に対して行われた身体犯において、被害者に知的障害がある場合は強盗(12.7倍)、強姦(10.7倍)暴行(2.9倍)と高くなっていることがわかる。自動車窃盗のみ知的障害者のグループに対して低いが、車を持っている人が少ないので、盗まれる割合が低いのも不思議なことではない。

Wilson & Brewer(1992)は知的障害がより重くなると、身体犯の被害に遭う危険性の度合いが増すが、家庭内犯罪は減るという相関関係がみられると指摘している。両方の犯罪について共通して、実の家族と同居している者が被害を受ける割合が一番低く、施設、グループホーム、または一人住まいの者が被害を受ける割合が一番高くなっている。介助サービスを受けている身体障害者に対する調査においても(Ulicoy,White,Bradford,& Mathews,1990)、犯罪に遭う危険性が同様に高くなっている。この著者たちは、調査対象の10%は付添い人に身体的暴行を受けたことがあり、40%は介助者による窃盗、または強盗の被害に遭っているという結果を出している。

このように犯罪に巻き込まれる危険性が高いにもかかわらず、障害者に対する犯罪の多くは警察の注意を引くことがなかった(Sobsey & Doe,1991)。Wilson and Brewer(1882)の研究によると、軽度から中度の知的障害者に対する犯罪の40%は警察に通報されておらず、より重度の知的障害者に対する犯罪では71%が通報されていなかった。時折、障害者に対する犯罪が通報されることがあっても、警察は事件に関与するのを渋ることがある。この不承不承という態度になる理由はいろいろある。警察が障害者に対して前向きな姿勢をもっていない、または、障害者に対応する経験がない場合がある(Yuker,1986)。警察では、被害者の障害を理由に、検事が事件を拒否するものと信じている場合があり(Gunn,1989)、または事件が複雑であるため、時間と資源を多量に使うことになりそうだと見た場合もある。第1章で示したように、警察が、他の省庁に属する問題に首を突っ込まぬように、上層部から指示を受けることがある(例:精神衛生、保健衛生、または知的障害などの所轄省庁)。多くの場合、これらの要因が複数重なり合って存在し、その結果この種の事件の優先順位は低く置かれることとなる。

表1 知的障害者に対する犯罪とそれ以外の者に対する犯罪の比較 ウィルソンとブロウ(1992)
犯罪 知的障害ある被害者 その他の被害者 倍率
身体犯 強盗 5.1% 0.4% 12.7倍
性犯罪 3.2% 0.3% 10.7倍
暴行 11.4% 4.0% 2.9倍
窃盗 7.6% 6.4% 1.2倍
自動車盗 0.6% 0.7% 0.9倍
住居犯罪 住居侵入 11.4% 6.4% 1.8倍
侵入盗 4.4% 3.7% 1.2倍

※ 女性被害者のみに基づく

(後略)