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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

Enjoy Daisy 読めるって楽しい!

公益財団法人日本リハビリテーション協会は国際シンボルマークの取扱いを行なっています。

障害者福祉の総合月刊情報誌『ノーマライゼーション』発売中

マルチメディアDAISYのCD-ROM付き絵本『赤いハイヒール』発売中

障がい者制度改革推進会議
第16回(H22.7.12) 資料5

障害のある女性について意見一覧

大谷委員提出意見

大濱委員提出意見

尾上委員提出意見

勝又委員提出意見

清原委員提出意見

佐藤委員提出意見

新谷委員提出意見

関口委員提出意見

竹下委員提出意見

土本委員提出意見

中西委員提出意見

長瀬委員提出意見

松井委員提出意見

障害のある女性について

【大谷委員】

○ 検討されるべき分野

1、総論(権利条約6条)

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害のある女性は障害があることに加え女性であることによっても差別を受けているのであり、これは日常生活全般にわたっている。よって個別分野における各施策だけではなく、総論としてもその立場を明確に位置付け、例えば実態調査においても性別を意識したものにするための根拠を規定するべきである。

○ 検討されるべき分野

2、搾取・暴力・虐待からの自由(権利条約16条)

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害のある女性は性的暴力・虐待をふくめ、被害を受けやすい。これに関し、権利条約は16条においてジェンダーを意識した規定を設けているのであり、すべての立法上、行政上、社会上、教育上その他の適切な措置を取るとし、網羅的な施策義務を規定している。よって虐待防止法においてはこれを盛り込む規定を設けるべきであり、具体的に、虐待の定義、防止義務、保護についてもジェンダーを配慮した規定が必要である。例えば、防止義務として施設内での同性介助の原則の徹底、保護の端緒として相談機関におけるコミュニケーション保障、シェルターのバリアフリー化など、障害を配慮したものを設けるなどが必要である。

○ 検討されるべき分野

3、性と生殖に関する健康と権利

  • 家庭および家族の尊重(権利条約23条)
  • 健康についての権利(権利条約25条)

○ 上記分野における具体的施策についての提案

権利条約23条、25条は、障害のある女性の性と生殖に関する権利と健康について規定している。これに基づき、以下の施策を設けるべきである。

  • 1) わが国は、1996年まで優生保護法を有し、優生思想に基づく不妊手術を是認してきた。これは現在では廃止されているが、いまだ明確な反省と謝罪がなされないため、広く国民が優生思想の反人権性について認識しえていない状況がある。よって、障害のある女性の不可侵の人権として、性と生殖に関する権利を明文化する必要がある。
  • 2) また1998年国連に人権委員会は日本政府に対し、以下の勧告をしていることを踏まえ、過去の障害のある女性に対する不妊手術の実態調査をし、謝罪と補償をするべきである。
    「31、委員会は、障害を持つ女性の強制不妊の廃止を認識する一方、法律が強制不妊の対象となった人たちの補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置が取られることを勧告する」
  • 3) 子育てに関する権利を意識した施策が必要である。少子化のなか、子育て支援が図られているが、障害のある女性が子育てをするにあたっては固有の支援はなく、逆に障害のある女性が子を持つことへの反発・無理解が存する。障害のある女性が、地域社会において、母子分離されることなく、子どもを育てることができる施策を具体的に進めるべきである。
  • 4) 障害のある女性に対し女性医療を保障するべきである。近時、女性の体のライフステージにあった健康管理・医療の必要性が意識され、女性医療が各医療機関において実施されているところであるが、これは障害のある女性にとっても必要であり、情報へのアクセス保障を含めて施策として進められるべきである。

○ 検討されるべき分野

4、相当な生活水準の保障

  • 就労・雇用の平等(権利条約27条)
  • 社会保護計画・貧困削減計画へのアクセス権(権利条約28条2項b)

○ 上記分野における具体的施策についての提案

わが国の女性の就労の機会は未だに不平等であり、またその賃金格差は依然として大きい。そして障害のある女性は、まさに複合的差別によってさらに就労の機会も狭く、賃金格差も大きい。これに対する施策の必要と、また政府による各種社会保障および貧困対策からも、障害のある女性は社会との接点が少ないがゆえにアクセスしにくい傾向にある。よって障害のある女性がこれらにアクセスし、保護(保障)を受けることができるよう、配慮と支援が保障されていなければならない。これらの施策も必要である。

【大濱委員】

○ 検討されるべき分野

重度全身性障害者の医療を受ける権利、介護を受ける権利

○ 上記分野における具体的施策についての提案

重度全身性障害者の女性の場合、男性と違って家族支援を受けられない状況が多い。この場合、家族と医師は施設へ本人を誘導する傾向が顕著である。

特に、人工呼吸器使用者の場合、医師から「人工呼吸器をつけると家族が24時間の介護をしなければならない」などの説明を受け、施設入所を勧められるのが現状である。

特に問題なのは、進行性のALSや筋ジスの場合、医師は家族の過大な介護負担を強調し、過大な家族負担を心配し本人が人工呼吸器装着などの積極的な治療を選択しづらい状況に本人を誘導する傾向がる。

このような状況改善、打破のためには、「重度全身性障害者(人工呼吸器を装着)が24時間の介護の状況下となっても家族に過重な負担を負わせることなく外部のヘルパー支援が受けられる状況を制度として国の責務(特に財政的な)として構築する必要がる。」

(説明)

・たとえば、人工呼吸器使用者の割合は男性患者のほうが圧倒的に多い(7対1)。つまり女性のALSなど重度全身性障害者の多くは人工呼吸器をつけることをできずに亡くなっている実態がある。

家族と同居の重度障害者の場合、男性が障害を持った場合は家族内に妻や娘などの介護者を確保しやすいのに比して、女性が障害を持った場合は家族に介護を期待できないため、「人工呼吸器をつけると家族が24時間の介護をしなければならない」などの説明を受け、本人が人工呼吸器装着などの積極的な治療を選択しない(できない)状況がある。

家族同居の女性の重度障害者も介護される権利、医療を受ける権利、生きる権利を確立するためにも、他人による介護制度を推進すべきである。

具体的には、家族と同居の最重度障害者であっても、家族が健康を維持したまま介護をできる時間を詳細に調査検討し、家族の介護が受けられない時間は、重度訪問介護等の支給をすべきである。

○ 検討されるべき分野

障害者に関する計画づくり等への女性障害者の参画

○ 上記分野における具体的施策についての提案

国・自治体問わず、行政の審議会・検討会等の障害者施策に関するあらゆる会議では、障害者を過半数とすべきで、その障害者委員の半数は女性にするように努力するべきである。(ジェンダーバランスの配慮)

○ 検討されるべき分野

病院や入所施設等での女性障害者の異性介護について

○ 上記分野における具体的施策についての提案

病院や入所施設等で重度の女性障害者の入浴や排せつ介護を男性職員が行う事例が増えているが、これは禁止すべき。

○ 検討されるべき分野

公共の場所での車いす用トイレについて

○ 上記分野における具体的施策についての提案

  • 1 女性の全身性障害者の外出介護ヘルパーは女性なので、公共の車いす用トイレで体格の大きな女性障害者の便器への移乗等が困難であることが多い。公共のトイレにつりさげ型の介護リフトを公共事業として整備することも新たな課題として配慮すべき。
  • 2 公共の場のバリアフリートイレにおいて、座ることのできない男性障害者 の小用で汚れた便器を、より多く使うのは女性障害者であるとの指摘があ る。
    高速道路のパーキングエリア、道の駅、鉄道駅等の車いす用トイレをより頻繁に掃除するための人件費の補助を国が積極的に行うべき。

○ 検討されるべき分野

女性障害者の人権・権利・子育て支援

○ 上記分野における具体的施策についての提案

  • 外出介護・子育て支援も含めたヘルパー制度の充実
  • 山間・離島・農村地帯・過疎地域などへのヘルパー制度への財政支援

沖縄県での実例(ある障害者の声)

① 障害者・女性・地方・宗教からの差別・偏見等

障害者は人としてあたり前の生と性を大切にされないといわれる。その中でも女性障害者は、人として、女性として、家庭を守る、子どもを生み育てる役割からも除外視される社会づくりがある。

沖縄地方は祖先崇拝で各自宅に仏前をもつ人たちが多い。年に10回の祖先を供養する行事に、うちなー料理の重箱をお供えし、親族が集まり情報交換をする。その場の裏方は常に女性が台所に立ち、料理をつくることも重労働である。それが出来ない障害者女性や障害者を家族の中にいると、守秘義務もなく肩身が狭い思いをしてきた。

沖縄県は本島以外に39離島もあり、沖縄県の福祉予算の地域格差も大きい。また、小さな市町村では、介護保険主体のサービス事業所で障害者サービスを提供しているため、障害者のニーズや障害特性には合わない。島を出て本島の施設入所している人たちも多い。
障害者福祉制度やサービスを使いながら生活している人たちに対し、「税金の無駄遣いをする障害者」と、いわれる事もある。

これまでの教育・社会からの差別意識が深く根付いた価値観をどのように変えるのか、かえればいいのか。

② 女性障害者の結婚・出産・育児の未整備な支援体制

障害者自身に恋人ができ結婚の話がでると、家族からは子どもをつくってはならないと避妊をさせられた。障害者には子どもが育てられない。子どもにも障害を持っていたら家族の恥になると言われた人もいる。

子どもを生み育てていけるだけの制度がない。児童福祉法と障害者自立支援法は個人個人の身体状況から判断され支給決定されるシステムでは、障害者が子どもを安心して生み育てられる環境ではない。

乳幼児は常に目が離せず、ミルクを飲む、おむつを替える、お風呂に入れる、掃除をする、洗濯をする、家族の食事をつくる等と終わることのない育児に、障害のない女性もノイローゼになる人たちがいる。障害をもつ女性はこれ以上に、泣くわが子を自由に抱っこできない、母親としは失格のような気持ちになる。抱っこを周りの人たちに頼りっぱなしになると、子どもは抱っこをしてくれる人たちを母親と勘違いしてしまう。これも障害者の自分を恨む瞬間。

幼児期になると、保育園や幼稚園の親子での行事が多くなり、ボランティアでは継続性がなく子どもの特徴が分からない。本来の母親と子どもの主体性がボランティアに気を使い過ぎてなくなってしまう。また、ボランティアでは守秘義務が守られずにトラブルの原因にもなる。

私事ですが、子どもが夜中に熱を出して救急病院へ行かなければならない時に、泣きやまないわが子を抱っこできず、病院へもどうして行けばいいのか分からずに、ただただ朝まで一緒に泣き崩れた頃を思い出す。この精神状態は、わが子を殺してもおかしくない心理になる。虐待がマスコミで流れる度に、私はその頃の自分を思い出す。子育てをしてきた私は、制度の不備を何とかするべきだと強く思う。

上記の理由で、障害をもつ親の子どもへの愛情や子育て方法をうまくサポート(母親の介助と子どもの支援)を同時に受けられる制度が必要でなる。

③ 介護は「女性の仕事」という社会の価値観に対して

家事、育児、親せきづきあい等は女性の役割だといわれ、不況で収入が少ない夫を支えるために朝から夜中まで働き続ける美化された間違った女性像。その家族の中に介護が必要になった人が出た場合は、女性が介護をするシステムと行政・政策に怒りがこみ上げる。

私が児童養護施設入所していた頃は殆どの職員は女性であった。思春期の子どもたちの性を大切にされない福祉・医療現場は人権侵害の何物でもない。医療・福祉業界でも女性の地位は低く扱われている状況に対し、人間の尊厳を理念にするのであれば、医療・福祉の根本的育成過程から変えることだと強く願う。男性でも働き、家族を支えられるだけの報酬単価にすべきである。

女性は男性の付属品ではないし、女性障害者は人としては価値がない者と扱われる福祉社会に対しもの申す。

これまでの社会を健常者主体で考えられ、差別は多くは男性社会が戦前・戦後・現在とつくりだしてきた考えが根本にあり、障害者施策も男性優位と思う。

男女の生と性、障害者でも人として平等になりたい、障害者の男女であっても生と性を大切にされるべきだと考える。

【尾上委員】

○ 検討されるべき分野

今後検討される障害者差別禁止法における「障害のある女性」や「性と生殖」についての項目

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害者権利条約第6条の「締約国は、障害のある女性及び少女が複合的な差別を受けていることを認識し、…障害のある女性及び少女がすべての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置をとる」との規定をふまえて、今後検討予定の障害者差別禁止法の中で、「障害のある女性」や「性と生殖」の項目について盛り込むべきである。

○ 検討されるべき分野

女性障害者のエンパワメント、並びに政策決定過程への参画の保障

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害者権利条約第16条2では、「締約国は、この条約に定める人権及び基本的自由の行使及び享有を女性に保障することを目的として、女性の完全な発展、地位の向上及びエンパワーメントを確保するためのすべての適切な措置をとる」こととされている。これをふまえて、女性障害者のエンパワメント並びに政策決定過程への参画保障のための施策が進められなければならない。

女性障害者に対する複合的差別の中、自己への信頼を喪失、否定するプレッシャーがふだんにかかる社会的状況にある。

エンパワメントは、今後の障害者政策全体のキーワードであるが、その中でも、特に、女性障害者のエンパワメント支援を推進していくべきである。また、そのために女性当事者の自主的活動の発展を促進していく方策も検討されるべきである。

また、障害者権利条約や当推進会議の基本精神は、「私たち抜きに私たちのことを決めてはならない!」である。

そのことは、複合的差別の中、声をあげること自体にプレッシャーがかかる女性障害者の分野で、より一層強調されなければならない。

各種審議会、委員会、検討会等をはじめとする政策決定プロセスの中での女性障害者の参画を確保するために、クォーター制度の導入をはじめとした参画保障の仕組みと方策が必要である。

【勝又委員】

○ 検討されるべき分野

① 障害のある女性の現況や課題を把握するための統計データの開示と整備

② 障害のある女性の政策決定プロセスへの参画の推進

③ 障害のある女性の性と生殖の権利の確立

④ 障害のある女性の自尊心を取り戻す活動

⑤ 国際協力における障害のある女性への重点援助計画の策定

○ 上記分野における具体的施策についての提案

① モニタリング(監視)活動において、男女別データの開示を義務付ける。男女別データが整備されていない統計については、一定期限内にその整備を義務付ける。(男女共同参画会議との連携が重要)

② 割り当て制(クオータ制)の導入。障がい者政策に関連する国および地方自治体が召集する委員会等の障がい当事者委員の半数を女性とする。すべての障がい当事者団体にその理事等の幹部に女性を一定割合以上任命することを期限を設けて義務付ける。(例:その団体の理事等の幹部定員の3割以上を女性とする。同時に障がい当事者幹部の3割以上を女性とする。)

③ 優性保護法下における強制不妊手術の実地調査の実施と国連自由人権規約委員会1998年勧告への対応をただちに実施する。障害のある女性の子どもを産み育てる権利を保障するため、病院・保育所・学校等の場において障がいのある親の参加を妨げる条件を合理的配慮によって排除する。(例:義務教育における手話通訳・移動介助等を学校設置者に義務付ける。)

④ 精神病院及び施設における女性利用者の介助には女性担当者を準備することを義務付ける。DV被害者の対応において障がいをもつ女性の自尊心を傷つけない対応方法を、継続的な研修を通じて関係機関(自治体窓口、警察、法務省等)の職員に習得を義務付ける。

⑤ UNESCAP 2012年インチョン会議における重点施策としての「障がいのある女性」の問題への積極的な参加と協力。

ADB等日本の国際援助において障がい者援助を促進するにあたり、女性の状況改善のための具体的提案を行うことを事業策定の必要条件として義務付ける。

【清原委員】

男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」であると規定されています(男女共同参画社会基本法第2条)。

障がい者においても、このことは重要であり、適切な方法でその推進が図られなければなりません。しかし、現実には女性の障がい者は、障がい者全体が受けている社会的な差別等の問題のほかに、女性としての社会的な差別等の問題を同時に負わされており、このことが、女性の障がい者の人権の尊重、社会参加と自立の促進を阻害している要因になっていると考えられます。

一般に女性が抱えている、教育、就労、結婚、出産、育児、家事、家族介護といった面での問題に、女性障がい者も直面しています。女性障がい者が、このような問題の解決者であることが期待されながら、それらを解決するための手段や支援を適切に受けられているかどうかを明らかにしなければなりません。

今般、国の男女共同参画会議における中間整理において、女性障がい者の問題に言及されていることは、評価すべきと考えます。

三鷹市の場合、「三鷹市障がい者地域自立支援協議会」では、女性の障がい者、女性の支援者が参加し、活発な議論が行われています。このことは、具体的な推進活動において、大変有効であると考えています。まずは、女性障がい者が直面している問題や課題について、当事者である女性障がい者の声を聞き、それを明らかにすることが求められます。そして、どのように解決することが女性障がい者にとって望ましいのかを、整理し、体系化することが必要です。こうした過程によって、問題解決の糸口を見出し、その政策化と具体的な推進を図ることが期待されていると考えます。

今後の障がい者制度の改革推進にあたり、男女共同参画社会の実現の観点から、女性障がい者が直面している諸問題を解決するための基本的視点を持つとともに、その解決支援に向けた具体的な政策の実現を図ることが重要であると考えます。

【佐藤委員】

○ 検討されるべき分野

統計およびデータ収集

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害者白書などで提供される障害者統計にはほとんど性別の記述がない。このため雇用、所得、福祉サービス利用などの分野で女性障害者がどのような二重の不利益を負っているのかほとんど不明である。この状態は障害者権利協約第31条(統計およびデータ収集)で、「適切な場合には分類される」としていることに反している。

従って、基本的な障害者統計には性別の分類を記載すべきである。

○ 検討されるべき分野

障害者福祉

○ 上記分野における具体的施策についての提案

障害者福祉の目的が「日常生活(動作)」の自立や介護ではなく、(それらは手段の一つにすぎず)、「社会参加」であることを明確にし、障害者の社会参加のための支援(その人の社会的役割の遂行の支援を含む)を行うべきである。

介護保険と横並びで実施されているために、社会参加支援が部分的にしかなされず、現状では女性障害者の場合にとくに問題が大きくなっている。次のような問題がある。

  • ホームヘルパー派遣は原則として障害者本人に対して行われるので、家族の洗濯物を干したりたたんだりしてくれない、ふとん干しもだめ等々、家庭で女性が一定の役割を担っていることが多い家事への援助を本人に対することに限定すると使えない。
  • 子育てにも同様のことがある。調乳やおむつ交換、沐浴など乳児の世話に対する支援が制限される。保育園への送り迎えのさいに移動支援が使えない(視覚障害者)

○ 検討されるべき分野

雇用・就労

○ 上記分野における具体的施策についての提案

『障害者生活実態調査』(勝又幸子・他2008『障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究 平成17-19年度調査報告書・平成19年度総括研究報告書』(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、単身世帯の年間所得(賃金、工賃、障害基礎年金、手当等含む)は、男性全体が409.6万、女性全体270.4万、男性障害者191.4万、女性障害者92万円しかない。

政府はこの格差は労働時間の差や(パートなど)社会的身分の差によるものであって性別や障害の有無による差別とは認識していないようであるが、結果としての平等という視点からはとうてい放置できない格差である。ここの企業が差別をしていない場合であっても、政府としてこの現状を詳細に調査するとともに、改善する方策を講じるべきである。

○ 検討されるべき分野

物理的環境へのアクセス

○ 上記分野における具体的施策についての提案

一般のトイレは男女が完全に区分されているのに、障害者用トイレだけは男女の区分がされていない場合がほとんどである。今後建築される公共の場所に於いてはすべての男女トイレ内にそれぞれ障害者用トイレを置くべきである。

【新谷委員】

○ 検討されるべき分野

中途失聴、難聴の女性の場合、今なお色濃く残る男性優位の社会的環境、文化、因習の元で、加えて社会の理解がほとんどない難聴、中途失聴の障害のために、地域社会はもとより夫婦や家族の間にすら関係の断絶が起こり、家庭内差別的言動、無視が日常的にあり、離婚の危機にある例は少なくなく、また就職や就労においても差別が厳然する。

1.「女性の差別撤廃条約」、「男女共同参画社会基本法」と「障害者権利条約」の規定を比較検討する必要がある。

2.具体的には、「男女共同参画基本計画」(第2次)が掲げている下記の12の分野を参考に「障害のある女性」について個別検討を進めるのが実際的と考える。

① 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

② 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革

③ 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保

④ 活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の確立

⑤ 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援

⑥ 高齢者等が安心して暮らせる条件の整備

⑦ 女性に対するあらゆる暴力の根絶

⑧ 生涯を通じた女性の健康支援

⑨ メディアにおける男女共同参画の推進

⑩ 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

⑪ 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

⑫ 新たな取組を必要とする分野における男女共同参画の推進

(科学技術/防災(災害復興を含む)/地域おこし、まちづくり、観光/環境

○ 上記分野における具体的施策についての提案

1.第6回報告(日本)に対する国連女子差別撤廃委員会見解について、その対応を男女共同参画会議、男女共同参画局などと協議、またはヒアリング実施する。また、法務省・外務省に対しては第6回報告にある「7.女子差別撤廃条約選択議定書103.女子差別撤廃条約選択議定書には個人通報制度が定められているが、我が国は国際人権諸条約の下での同制度については締結・受入れを行っておらず、現在検討中である。」ことについて、協議を行う。

2.障害者権利条約第6条を受けて、障害者基本法に「障害のある女性」の規定を新設する。また、男女共同参画社会基本法の改正も検討する。その際、障害のある女性が権利主体であり、社会の構成員として自由に生きることを保障され、そのために自己開発・自己研鑽する権利をもつことを明記する。

3.障がい者制度改革推進会議と男女共同参画会議の合同会議等の開催を定例化する。

4.障害者差別禁止法で「障害のある女性」の規定を設ける。その際、障害のある女性の社会進出に必要な支援を欠くことが差別に該当することを明記する。とくに、育児・介護・家事など欠くべからざる社会サービスが女性によって担われている現状から、中途で障害をもった女性は家庭内においても深刻な差別状態(離婚、家庭内暴力、遺棄など)に置かれることが多いことに留意する必要がある。職場や社会生活にとどまらない家庭生活での障害をもつ女性への相談・支援を具体化する必要がある。

5.男女雇用機会均等化法に「障害を理由とする不利益取り扱いの禁止」を明文化するほか、その他障害に関係のある法令において「障害のある女性」への具体的な施策を明文化する。

【関口委員】

○ 検討されるべき分野

リプロダクティブライツについて確保すること(他のものと平等に)不妊手術・人工中絶手術への誘導ではなく、障害を持って育児できる支援体制を確保すること

○ 上記分野における具体的施策についての提案

○ 検討されるべき分野

障害を持って育児して親となっている役割モデルの紹介等、エンパワーメントに関する情報提供を、教育課程でも行うこと親権および離婚についての民法上の差別をなくすこと、親権については障害のみを根拠にうばわないいこと

○ 上記分野における具体的施策についての提案

○ 検討されるべき分野

性的虐待・強制わいせつ等に対抗するための性教育を統合された環境ですべての子供に保障すること

○ 上記分野における具体的施策についての提案

【竹下委員】

○ 検討されるべき分野

● 障害のある女性の性を中心とした人格権の保障の必要性

障害のある女性に対する介護(介助)ないしサポートを行う場合に、当然のことながら性に対する配慮が必要である。また、これまでに障害のある女性に対し、不妊手術や生殖器摘出といった信じがたい行為が現実に行われてきた例がある。そうした歴史的事実に立って障害のある女性の人格権を保障するための施策が検討されるべきである。

○ 上記分野における具体的施策についての提案

● 同性のヘルパーによる介護(介助)制度の確立

トイレ、入浴、着脱、排泄または生理における援助は、同性によるサポートでなければならないことは当然のことである。

○ 検討されるべき分野

● 障害のある女性の出産と子育てに対する支援

重度の障害のある女性が出産することを否定する意見がこれまで存在した。あたかもそれが「本人の負担を避けるため」であるとか、「生まれてくる子どもの幸せのため」であるなどとして、正当化されても来た。しかし、当該女性が出産を希望する限りは、子育てにおける十分な支援を前提として、その希望は実現されなければならないことは当然の権利である(憲法13条)。

○ 上記分野における具体的施策についての提案

● 出産事故を防ぎ、安全に出産するための産科的支援

たとえば、自然分娩が困難な女性に対しては、帝王切開をも含めた医学的支援を確立する。また、重度障害のある女性の下で、保育や子育てができるようにするためのサポート体制を確保されていれば、障害のある女性は安心して出産することができるのである。

【土本委員】

○ 検討されるべき分野

こそだてを している 母おや(ひとりおや)への ひつよう とするてきせつな 支援

○ 上記分野における具体的施策についての提案

女性の しょうがいと いわれている 仲間に たいして こそだての 支援が できてない こともあります。
自分たちの 仲間たちは こそだてをし 自分の こんなんの ことも かかえている ことも 支援をして もらっているけど こそだての 支援が もっと あれば いればいいですが はんぶん いじょうは ボランティアで やっている。
これも支援として みとめられていくべきである。
女性のしょうがいしゃと いわている仲間たちは にじゅう さんじゅうの こんなんを かかえて生活をしていく。
すこしでも かかえることが なくなること じゃなかと おもいます。

【中西委員】

○ 検討されるべき分野

第三次男女共同参画基本計画

○ 上記分野における具体的施策についての提案

「第三次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理案)」の基本的な考え方の中では、「改めて強調すべき視点」の一つとして「困難を抱える人々への対応」があり、複合的困難を抱えている障害がある女性障害その中に含まれている。また5年間の計画期間において取り組む喫緊の課題の一つである「雇用・セーフティネットの構築」の中にも、女性障害には適切な支援が必要であるとされている。これらを初めとして中間整理案には障害がある女性という言葉が明示されたことは歓迎する。

第7重点分野「高齢者、障害者、外国人など様々な困難を抱える人々が安心して暮らせる環境の整備」においてさらに具体的な記述が見えるが、「高齢者、障害者、外国人など」としてひとくくりにされ、個別の問題を抱えている集団の中に置かれることには問題がある。例えば脳性まひの障害をもつ女性は、小児病院から療育施設、養護学校、重度身障者授産施設を経て、自立生活に至る過程を振り返って、「障害をもつ女性」ということで、一人暮らしは無理であるとか、結婚しても妊娠・出産はできなのだと思い込ませるような生活環境、社会だったと言っている。彼女は重度障害者としてしては当たり前の環境の中で育ち、暮らしてきていたが、それは非障害者と全くかけ離れた環境である。隔離された状況で一般社会での「常識」とされる考え方を周囲から押しつけられる、それを跳ね返し、悩みながらも自分の意志を貫いていくことに膨大なエネルギーを費やしている。

第7分野Ⅰ「これまでの施策の効果と、「様々な困難を抱える人々が安心して暮らせる環境の整備」が十分に進まなかった理由」における障害に関して言えば、現状の障害者雇用や障害者年金の受給者の統計などでは、性別による違いを読み取ることができないことが理由としてあげられるか。これまでの基本計画は、性別、年齢別データの収集・分析に基づく障害女性の情報、及びそこから見えてくるさまざまな問題への対処措置には全く触れず、障害のある女性の課題を把握できていない。

また、ここでは「高齢者」の課題と「障害者」の課題が同様に扱われているが、異なる点が多々あることに留意すべきである。障害者の自立生活運動は、障害を持つ者が成人となっても家族や施設のなかで暮らすことが当然とされてきた従来の考えかたを覆し、権利に基づく生活への道を開いた。「身辺自立」や「経済的自立」といった既存の「自立」の概念を転換させ、どんなに重い障害がある人も、望むサービスを受け、望む生活を送る権利があるとの主張は徐々に社会に受け入れられている。第三次計画では、「家族や地域の支え」が弱体化したことが高齢者の自立を妨げる要因となってきたとされている。しかし、家族、特に女性の家族、親族に介護の責任の多くを負わせる状況が作られてきたことが、介護をする側・される側双方の「自立」を妨げてきたという点も重視すべきである。「家族が支えることができた」状態が、決して理想的状態ではなかったということがまず最初に認識されるべきである。

障害がある女性が複合的な困難を抱えているという認識が示されたことは重要である。しかし具体的に障害のある男女それぞれのニーズを明らかにしなければ、障害者のなかの性差別という複合差別に対する具体的な取り組みが立てられないはずである。現存するデータからは、障害者の、そのなかでも障害女性の、就業率や収入が際立って低いことが明らかになっているにすぎない。つまり命を保つことは可能でも、やむなく家族の中の稼ぎ手への経済的依存ひいては従属関係を伴う生活を強いられている人が大半とみられる。このような経済的困窮や限られた社会的諸関係は、DVの温床となりえ、さらにDVの当事者となったときにも誰にも相談できない状況に追い詰められる可能性が高い。性別によって実際にどのような違いがあるかを明らかにできるような基礎データの情報公開、新たな調査の実施から結果の分析は勿論のこと、政策立案とその評価までの全てのプロセスに、障害女性当事者の参画を確保しなければこの問題の解決はのぞめない。そのようなプロセスを経ての、障害に加えて女性であることで複合的な困難を抱える人の状況・ニーズに対応する政策立案に早急に取り組んでほしい。

重点分野第8「女性に対するあらゆる暴力の根絶」においては、「子ども、高齢者、障害者、外国人等はそれぞれ異なる背景事情や影響を有しており、被害者の支援に当たり様々な困難を伴うものとなっていることにも十分配慮し、暴力の形態や被害者の属性等に応じてきめ細かく対応する視点が不可欠となっている」として障害者に対する特記が示されたことは歓迎する。そのためには、障害がある女性への合理的配慮の必要性を次期計画でも明確に示し、障害者に関しても特記した施策を書きこんでいく必要がある。音声電話ではやりとりができない聴覚言語障害をもつ被害者への相談体制の構築や、シェルター等の緊急一時保護施設の物理的バリアの解消等のすぐにでも取り組みが必要ない課題が多数ある。

児童養護施設での性暴力などについても触れられているが、同様に障害者施設内においても閉ざされた環境ゆえなかなか表面化していこない性暴力事件やセクシュアル・ハラスメント、異性介助の横行などが行われている。これらも同様に明らかにし、対策を講じるべきである。

DV被害を初めとする性暴力にあった障害女性の支援にあたっては、障害のある女性のニーズに沿った相談支援がおこなえるように十分な知識、経験を有した職員の存在が重要である。講師には、障害当事者等が運営する障害者自立生活センターや障害当事者団体などで日頃から障害者の生活相談・支援にあたっている障害女性を任命して、職員研修を行うことが急務である。そのような女性障害者を、関係機関等の職員として採用し、相談・支援をおこなえるようにすることも重要である。

第10分野「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」においては、具体的な取り組みとして、「多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会」の充実がうたわれている。しかし多くの障害がある女性は、前述の脳性まひの女性のように「主体的に進路を選択する能力や態度を身につけるようにする」機会を逸してきた。計画のなかに学習機会を確保するための前提となる合理的配慮を整える仕組みを明記すると同時に、女性障害者を講師とする学習の機会も設けなければならい。視覚障害をもつ女性は、自分のマッサージという職業では性的暴力にであう危険も多いので、対応方法を後輩に伝えていきたいが、現在の職業訓練の体制では自分の経験を分かち合う機会が閉ざされていると報告している。

教育機関のなかで人権教育等の一環として行われている障害者問題に関する啓発講座での女性障害者の取り上げられ方にも問題がある。講座は、しばしば障害者が援助される対象として登場し、障害がない一般の人に、障害者についての固定観念や偏見を植え付けてしまう。さらに女性は男性より保護されるべき存在とされている現状では、女性障害者についてあやまった固定的イメージや偏見が教育によってつくられる危険をはらんでいる。

○ 検討されるべき分野

優生保護

○ 上記分野における具体的施策についての提案

1996年まであった優生保護法に、障害者本人の同意なしで不妊手術ができる規定があり、1994年までの統計だけでも16,520人が対象となり68%が女性だった。母体保護法に変わった現在も「経済的な理由」を拡大解釈して違法な不妊化が行われている可能性がある。1998 年には、国連自由権規約委員会が強制不妊の対象となった障害女性が補償を受ける権利を法律で規定するよう日本政府に勧告した(総括所見31)。しかし現在に至るまで政府による必要な法的措置や実態調査、補償も実施されていない。

障害を持つことを否定する社会に対する啓発活動は勿論のことであるが、推進会議が提案する諸制度に基づいての障害者も平等な生活が普通に実現できる社会の構築がなければ、この問題は解決されない。

○ 検討されるべき分野

統計の整備

○ 上記分野における具体的施策についての提案

現在、障害の有無では所得保障や就業率の統計があるが、障害者の中で「男性」「女性」に分けて取られた統計はまだ少ない。研究者がそれぞれの地域で行った研究・調査結果は存在し、その中では、所得の大きい順位に男性非障害者、女性非障害者、男性障害者、女性障害者となることが明らかにされている。しかし、国レベルでの詳細な調査はまだ行われていない。国連女性差別撤廃委員会からも、再三「日本政府報告の『障害を持つ女性のための施策』には、障害女性に向けた施策は何も書かれていない。実際に施策は無いに等しい。障害者権利条約は第6条で、障害女性が受ける複合的差別への認識と人権確保の必要を明記したが、日本の現状はほど遠い。また、日本政府の各種の障害者実態調査は性別集計をしていない。そのため、障害女性の問題を把握できず、必要な施策ができない。」という問題点を指摘され、「日本政府は、障害女性の複合差別を認識し人権を確保する施策、とくにDV 被害防止と強制不妊への補償を行うべきだ。そのために、障害者実態調査で性別集計が不可欠だ。」という勧告を出されているにも関わらず、「障害のある女性」に特化した項目を設けていない。国レベルでの問題意識の認識、具体的な取り組みが必要である。

○ 検討されるべき分野

教育

○ 上記分野における具体的施策についての提案

学校教育において、中学校、高等学校で家庭科や保健科等の学習指導要領や教科書において男女平等やジェンダーに関する学習が用意されているが、特別支援学校・特別支援学級においては教育課程の弾力的な運用により、また教員の消極的意識により実施されていないことが多いという調査がある。しかしながら、障害のある女性・女児にとって、これらの知識や態度の育成は特に重要であり、自身の性を否定しない意識態度の育成が必要である。施策によって、このような学習の場の保障や教員研修の場を確保しなければならない。

現在の教育形態はインクルーシブ教育には程遠く、特別支援教育のもと隔離された場所での教育が実施されている。2003年に起きた浦安市の特別支援学級担任による性被害の裁判の過程からも明らかなように、障害をもつ女児が性的被害にあうリスクが高くなっている。これに関しては、平成20年度 教育職員に係る懲戒処分等の状況について(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1288132.htm)、および、教職員のわいせつ行為に関する具体的な状況について(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/12/25/1288132_16.pdf)の資料から、明らかである。インクルーシブ教育の実施は当然のことであるが、性被害が大人と子どもの少人数の密室で起きている点、身近な人間の犯行が多い点などの特性により、早急にジェンダーバランスを考慮した人員配置や性被害防止教育等、防止策を講じるべきである。県教育委員会等で研修が行われているが、これには、被害を負いやすい障害のある子どもの意見を取り入れる必要がある。

○ 検討されるべき分野

国際協力

○ 上記分野における具体的施策についての提案

国際協力においては女性障害者は不可視化されている。これは、障害分野の支援において障害女性が対象となる支援が皆無に等しいこと、および、ジェンダー関連分野の支援においても障害女性が対象となっている支援が少ないことからくる。また、女性障害者の抱える問題(強制不妊手術、教育や雇用の機会の欠如、性的暴力、高い感染症の羅漢率、意思決定力の剥奪、無性の存在としての扱い等)を援助機関の職員が認識していないこともその原因である。宗教的、文化的理由で女性障害者を対象とすることは、内政干渉と見なされる危険もはらんでいる。

無意識に排除している場合も多いと考えられることから、女性障害者の意識化そして支援方法の変化が必要性である。そのためには、障害者の権利条約での政府仮訳における women with disabilities 及び gender の不適切な訳語の修正も必要と考えられる。

その他の具体的施策としては、以下のことを提案したい。

  • 1 援助機関の職員研修(障害女性の外部講師による講義の実施)
  • 2 援助機関におけるジェンダー及び障害の主流化の積極的な推進
  • 3 援助の計画立案から実施、評価のすべての段階まで障害女性の参加枠の設置
  • 4 障害分野の国際協力プロジェクトでの裨益者、特に研修における参加者の半数の女性への割り振り

○ 検討されるべき分野

虐待防止

○ 上記分野における具体的施策についての提案

内閣府男女共同参画局では、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)の改正時に、被害者支援に関する留意事項の中に障害がある被害者への対応方法を下記のように特記していることは歓迎する。

障害をもつ被害者への対応上の留意事項

被害者が障害を持っている方である場合もあります。このような方たちへの対応に際しては、以下の点に配慮することが望まれます。

1 基本的な対応の姿勢

コミュニケーションや認知に障害のある方からの相談に応じるに当たっては、その障害の特性に即した情報伝達に配慮し、相手のペースでその訴えに耳を傾けるとともに、十分時間をかけて分かりやすい説明に努めることが必要です。

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2 FAX等による相談

聴覚障害や言語障害を持つ被害者からの相談に配慮し、電話だけでなく、FAX又は電子メールによる相談にも対応することが望ましいです。(なお、できれば「24時間受付であること」が望ましいです。)

3 点字資料等の作成

視覚障害を持つ被害者のために、点字やカセットテープなど音声によるパンフレットや資料を作成することが望ましいです。また、知的障害者のためにわかりやすい資料等を準備することも望ましいです。

4 施設のバリアフリー化

車椅子に乗られた方が安心して相談機関等の施設を利用できるよう、これをバリアフリー化することが望ましいです。

5 関係機関との連携

各障害分野の関係機関と連携を密にして、被害者からの相談へ対応し、手話通訳やガイドヘルパー、介助者などを派遣してもらうことが望ましいです。

6 周知

パンフレットやホームページ等において、各施設のFAX番号及びメールアドレス、点字資料等の設置場所、バリアフリー施設等の周知を行うことが望ましいです。また、被害者の中には、「障害を持っていることで各施設が適切に対応してくれないのではないか」と不安を感じている方もおられるので、障害を持つ方からの相談等にも対応できる態勢にあることを周知することも望ましいです。

http://www.gender.go.jp/e-vaw/siensya/09.html

しかし、その留意事項も、結局のところ努力目標にとどまっているので、DV被害を受けた障害者が適切な支援を受けられる状況はまったく整っていないというのが現実である。推進会議の第一次意見に基づいて内容の充実を図ると同時に、すでに存在するDV 防止策において第1次意見の浸透を図っていくことが必要である。

【長瀬委員】

○ 検討されるべき分野

性と生殖に関する権利(リプロダクティブライツ)の推進

○ 上記分野における具体的施策についての提案

現在の母体保護法の前身である優生保護法による規定に基づいて、障害者本人の同意のない不妊手術が1996年まで合法であり、16520人以上が対象となり、7割近くが女性だった。この件に関して、国連自由権規約委員会は1998年の勧告で、「法律が強制不妊の対象となった人達の補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置がとられること」を勧告しているが、現在に至るも何らの措置もとられていない。被害者の実態調査と補償が必要である。

さらに、障害者の交際、結婚支援の前提として、不妊手術が推奨、要請される事例が報告されている。こうした障害女性をはじめとする障害者の性と生殖に関する権利の保障に関する実態調査も必要である。

○ 検討されるべき分野

統計・調査(実態調査)

○ 上記分野における具体的施策についての提案

第1次意見の「基礎的な課題における改革の方向性」の「8)実態調査」とも関連する点として、障害者に関する調査における性別集計が必須である。これに関連する最近の国連の動きとしては、国連女性差別撤廃委員会による日本政府への総括所見(2009年8月)があり、そこでは、障害女性に関するデータの提供が求められている。

【松井委員】

○ 検討されるべき分野

雇用・就労

○ 上記分野における具体的施策についての提案

2008年に厚労省が実施した、障害者雇用実態調査によれば、調査対象となったのは、身体障害者では、男性79.4%、女性20.0%、知的障害者では、男性72.3%、女性23.3%、精神障害者では、男性67.4%、女性31.4%と、障害種別をとわず、女性の就業者は、男性にくらべ、圧倒的に少ない。

1985年に男女雇用機会均等法が公布された結果、雇用者全体にしめる女性の割合は、1985年の35.9%から2004年の41.1%に増えているが、所定内給付額の男女の賃金格差はいまだ男性100に対し女性は67.6と開きがある。

障害のある女性についても当然男女雇用機会均等法の対象となるはずにもかかわらず、障害者雇用実態調査でみるかぎり、障害のある女性は、その法ではカバーされていないように思われる。したがって、障害のある女性についても男女機会均等法の対象としてきちんと位置づけられるべきである。

しかし、前述したように、いまだ男女間に相当の賃金格差があることからもわかるように、同法だけでは十分ではない。障害のあるなしにかかわらず、男女間の格差を是正するためには、同一労働、同一報酬の原則が遵守されるべきである。