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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

Enjoy Daisy 読めるって楽しい!

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マルチメディアDAISYのCD-ROM付き絵本『赤いハイヒール』発売中

文化・スポーツに関する意見一覧

  1. 文化やスポーツに対する基本的考え方
  2. 文化やスポーツに関する問題点
  3. 行政による支援
  4. 一般の文化・スポーツとの関係
  5. 現行障害者基本法
  6. その他

障がい者制度改革推進会議
第19 回(H22.9.6) 資料4

第19回障がい者制度改革推進会議 意見提出書式

障害者基本法 各則(論点表、議論が不足している分野)

文化・スポーツ

1、文化やスポーツに対する基本的考え方
(1)文化やスポーツをどう位置づけるのか。その際、参加という視点のみな らず、享受という視点も必要ではないか。また、文化やスポーツの目的をどう 考えるか(例えば、リハビリ、楽しみ、競技、啓発など)

【小川委員】

 人が人らしく生きるうえで、障害を理由として文化的な生活に参加できない ことがあってはならず、この意味から、条約でもこれを権利として定めている。
このことを障害者基本法でも明記すべきである。

 芸術作品等の享受、アクセスという面から考えても、もちろん享受という視 点は欠かせない。

 障害者スポーツは、従来、リハビリテーションという側面で捉えられる傾向 にあったが、むしろ今では社会の構成員として、自らを表現する重要なツール となっている。これらへの参加の権利は当然保障されるべきであり、アクセス の保障や合理的配慮が様々な場面でなされるべきである。

【尾上委員】

 ここで指摘している参加と享受の区分けの問題意識をもう少し聴きたいが、 文化・スポーツについても条約の規定にもとづき、障害を理由として制限・制 約の解消と障害のない人々と同様の機会を保障するための施策や対応の確保を 関係法例等において明確にすることは必要である。また、その目的については、 障害のない人と同様の内容とすることが必要と思われる。

 リハビリテーション的な効果については、別の項目に移して整理すべきでは ないか。

【川﨑委員】

 障害者権利条約では、障害がある人が他の人との平等を基礎として、文化的 な活動に参加する権利があるとしている。障がい者が芸術作品やスポーツなど にかかわりその成果、喜び、参加の機会を享受することは他の人と等しく重要 なことである。文化やスポーツの目的は、参加ということよりも当たり前の生 活の一部であると考える。

 文化やスポーツを障がい者が享受する場をもつときに、障がい者が「健常者 に近づくよう努力する」ことを目的とするのではなく、障がい者がもつ「あり のまま」「独特」の力や個性が発揮できる場を、健常者側に広げていくという双 方向の視点も重要である。(例:ブラインドサッカーなど)

【新谷委員】

 文化的な資産を享受することが人としての喜びを与える。優れた文化的な資 産、作品等は音楽、絵画、建築物等種類を問わず、見るもの、触れるものに感 動を与える。こうした作品や著作物の作成は、障害の有無に関わらずに可能で ある。障害者が優れた作品や技能を発揮することは珍しくない。参加のみでは なく、享受の視点も重要である。

【中西委員】

 参加を強調することで権利が認められることになるが、人間としての充足と 言う観点も必要である。

【長瀬委員】

 まず、文化やスポーツは生きていくうえで、非常に重要な要素であり、贅沢 品とみなされるべきではない。障害者の権利条約が独立した条文(第30 条)を 設けているように、文化的な生活、レクリエーション、余暇(レジャー)、ス ポーツは非常に重要な分野である。障害のない人と同様に、文化やスポーツ、 レクリエーション、余暇(レジャー)への参加と享受が重要である。

 文化的生活の権利については、社会権規約第15 条が規定しているほか、スポ ーツの権利については、1978 年に採択された体育・スポーツ国際憲章が体育・ スポーツを基本的権利として認めていることが、今回の改革に当たっても根拠となる。

【久松委員】

 人間が人間として生きるうえで、障害を理由として文化的で生活を営むこと やスポーツ活動に参加することができないことはあってはならず、文化活動や スポーツ活動に参加することを権利として障害者基本法に明記すべきである。

 障害者スポーツは、従来、リハビリテーションの側面が強かったが、スポー ツを楽しむこと、競技としてのスポーツ等、幅を広げていくことが必要であり、 それらの参加を明記する必要がある。

 機会の享受という視点の場合、学校教育でのスポーツ活動の制限の問題が挙 げられる。

 ろう学校では、児童数の減少により、スポーツ活動が地域の学校と比べ大幅 に制限されている。(部活動は陸上、卓球、バレーが中心。野球・サッカーとい った地域校にある部活動の体験ができない。)

 競技体験の少なさはチームワーク・忍耐力といった学童期にスポーツを通し て体験できる人間的な成長の機会を奪うものであり、その機会の保障は国の義 務である。

 ろう学校は地域の学校と交流事業を行っているが、一時的であり、その中で 友情が育まれるというほどの体験を得ることは難しい。ろう学校の生徒もまた、 地域校の生徒の人間的発達を促すうえでも年間を通した学校交流を定期的かつ 長期の実施を義務化するなどの施策が必要である。

 地域の学校に通う障害をもつ子どもでも、学校の体育の時間や放課後のスポ ーツ活動に参加できないことが多い。障害の特性に合ったスポーツを楽しむ機 会をつくり、ろう学校、盲学校、特別支援学校でのスポーツ活動に参加する機 会を提供する必要がある。

【森委員】

 文化活動やスポーツ活動には、さまざまな環境面における支援が大きく求め られる。しかし、活動を行うことによって、医学的リハビリテーションだけで はない社会的リハビリテーション、楽しみ、達成感、課題解決能力の向上など が図られ、さらには障害理解にもつながる効用は極めて大きい。

 一人ひとりの潜在的能力を発掘、開発するための様々な環境面の支援システ ムが必須であることを考えてもその重要性と支援の充実について位置づけてお く必要があると考えられる。

(2)文化とスポーツは項目を分けて議論すべきかどうか

【尾上委員】

 それぞれ本来独自の領域であり、分けて議論すべきである。

【川﨑委員】

 文化やスポーツを享受する権利、機会の平等という総論的な観点からは同等 に議論できるが、個別に議論すべき点もあると考える。

 たとえば、競技スポーツでは全国規模、世界規模の大会参加やスポーツのル ールに関する規制などを「障がい者の参加」の観点から議論する必要がある。

【新谷委員】

 人の高度の知的生産活動と身体的健康維持活動として、一体的に議論すべきである。

【中西委員】

 従来から一緒に扱われているが、ともに論じることは可能である。

【久松委員】

 文化とスポーツはその内容と目的が異なるので、項目を分けて議論をする必要がある。

【森委員】

 項目を分けて議論すべきである。

(3)レクリエーション、余暇、観光といったことに触れなくていいか

【小川委員】

 権利条約でも、「文化的な生活」という言い方の中で、レクリエーションや余暇、 観光等に言及しており、これらも広く含めて議論すべきである。

【尾上委員】

 観光については、移動・宿舎・施設のアクセスに大きな問題があることから、 その具体的問題の明確化と、改善のための短期的・長期的な施策等の検討と実施が必要である。 また、余暇についてもその過ごし方によっては、同様である

【川﨑委員】

 触れるべきであると思う。レクリエーション、余暇、観光を実際に行うために、施設等周囲の合理的配慮も重要になる。

【新谷委員】

 触れるべきである。

【中西委員】

 レクリエーション、余暇は含める。
観光はこれらに含まれる場合もあるので、特記しなくともよい。

【長瀬委員】

 障害者の権利条約第30 条がカバーしているように、レクリエーションと余暇 (レジャー)そして、観光についても触れるべきである。

【久松委員】

 権利条約で「レクリエーション」「余暇」「観光」に言及しているので、議論する必要がある。

【森委員】

 レクリエーション、余暇、観光などは、生活を豊かにし、心の健康づくりにも大きな役割を果たすとともに、 楽しみや達成感、また、課題解決能力(エンパワメント)の向上にもつながることであり、それらについては、きちんと触れるべきである。また、そのことは障害者権利条約第30条に述べられており、しっかりと議論する必要性がある。

2、文化やスポーツに関する問題点
(1)文化やスポーツを行う上での物理的な環境や社会的理解等について、どのような問題があるか

【小川委員】

 下記(2)とも関連するが、公共施設等での環境整備(視聴覚障害者等への情報保障を含む) が行き届かないことや、施設やサービスの規定上障害者の利用が拒否されているなどの事例はまだあり、 そのような事例の調査等が求められる。

 さらに、著作物の利用のための情報保障が、著作権法上の理由でできない問題はなお残されており、 広く社会的理解と対話を深めながら、制度的な面での解決が求められる。

【尾上委員】

 公共施設において大会や各種イベントなどでの利用に関する配慮はあるが、 個別利用に関する利用には、多くの制限がある。また、物理的障壁のために利用できない施設や設備、 機器等も多数存在している。

【川﨑委員】

 障がい者専用の文化施設やスポーツ施設は、活動の活性化に役立ち、重要であると考えるが、 一般の文化・スポーツ施設が広く障がい者に対して開かれたものであることも必要である。

【新谷委員】

 音環境の整備が不充分である。

【中西委員】

 まずは合理的配慮が求められる。
その上で、これらを享受する機会の均等化が問題となる。

【長瀬委員】

 文化的生活やスポーツへの障壁は依然として大きい。それは物理的障壁の存在や、情報保障の欠如 (例えば、日本映画の字幕の問題)などがあるためである。そうしたバリアの前提として存在している、 文化やスポーツは贅沢であるという社会的通念を変えていくことが私達の課題である。

【久松委員】

 ろう者や難聴者のスポーツに対するバリアは他の障害と比べ低いとよく言われている。

 それは「聞こえない、聞こえにくい」という点以外が健常者と変わらず、 身体的機能についてはほかの障害者と比べ健常者とほぼ同じである。 実際、聴覚を補う視覚的な競技ルール以外については、健常者とほぼ同じルールで、 同じように競技することが可能である。しかし一方で、選手たちの競技力は決して高くはない。

 今年、バンクーバー冬季パラリンピックが開催され、さまざまな障害のある選手達が熱戦を繰り広げる姿が 新聞やテレビで連日報道され、その競技性が急激に高まっている。 リハビリの一環として始められた障害者スポーツも、現在ではその競技性を高めるための努力がなされるようになっており、 中にはスポンサーがつく選手もいる。 一方、ろう者のオリンピックと言われているデフリンピック日本代表選手も、 国庫金による選手派遣が行われるようになり、以前と比べても選手の推薦基準が厳しくなっているものの、 上記パラリンピックのレベルには及ばないのが現状である。

 日本代表として選手に選ばれることは、当人たちには大変晴れがましいこと であっても、実際にそれを受け止める社会的な認知や理解に大きな隔たりがあ り、それらが、ろう者(デフ)アスリートの競技活動を制限している。

 例えば、デフリンピックの日本代表選手のうち、その多くは会社員および公 務員である。普段の練習は、週末や夜など、仕事の空き時間を利用する選手が 多く、週に3 日以上の活動時間が確保できている選手は少なく、合宿や遠征に ついても、その多くが有給休暇を利用しており、日本代表レベルの選手といえ ども、職場の支援はなかなか受けにくい状況である(中村他2008)。

 さらに、デフリンピックの選手はアマチュアの選手であり、練習や試合にかかる費用から、 手話通訳費から遠征費まで、あらゆる費用を選手自身が負担している。負担費用は平均で50万円となっており (中村他2008)、健聴者の選手やほかの障害者アスリートと比べ決して高額ではないが、 障害者の平均年間所得額から考えると決して軽い負担ではない。 聴覚障害者スポーツの場合、他の障害と異なり、見た目が健常者と変わらないため、 他を圧倒するような競技パフォーマンスを身に着けなければ、スポンサー等は獲得しにくい現状である。

 そういった諸問題が積み重なり、結果としてろう者(デフ)アスリートがほかの障害者アスリートと比べ、 過酷な状況におかれることとなり、ろう者、難聴者スポーツのすそ野が広がらない大きな要因となっている。

【森委員】

 文化やスポーツを行う上での物理的な環境や社会的理解等に関する問題として、下記のことが考えられる。

① 文化施設、スポーツ施設のハード面としてのバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化のみならず、 ソフト面の充実が求められること。
② 文化施設、スポーツ施設などへの交通アクセスの確保をすること。
③ 知的財産権を保護する法律による不当または差別的な障壁に対する適当な措置 (著作物の利用のための情報保障)をすること。

(2)文化やスポーツの機会を享受する上で、利用拒否などの問題点があるか

【尾上委員】

 車いすマラソンは、障害者スポーツとしては、一般的な競技であるが、 一般のマラソン大会に車いす使用者の参加が拒否された経験が多数ある。 また、一般的に実施されているスポーツ教室等についての参加拒否や設備的に利用できない現状もある。

【川﨑委員】

 障がい者の活動拠点としての利用を拒むなど、賃貸物件において差別偏見がある場合がある。 スポーツクラブの利用を障がいを理由に断られる場合もある。 そうしたことのないよう、業界団体などへの指導を徹底すべきである。

【新谷委員】

 人工内耳や補聴器を装用したままでは不可能なスポーツがある。

【関口委員】

 解決したが、公共機関のプールを精神障害ゆえに、執拗な尋問を受け、その日には使えなかったた例がある またプール利用中は公的介助が使えないという問題がある

【中西委員】

 公的施設においては表面上はないが、物理的な整備が鳴動との理由での拒否 は民間の施設では時々ある。

【長瀬委員】

 障害を理由として閉ざされている文化的機会やスポーツの機会があるため、 社会的参加の拡大の一環としても、文化やスポーツに関して、合理的配慮の欠 如を含む差別禁止施策が必要である。 ただ、平成19 年度内閣府障害者施策総合調査結果によれば、調査対象の障害 者が、スポーツや文化に現在参加できない理由をみると、①「地域に希望する スポーツ・芸術活動がない」が28.3%で最も多く、次いで②「時間がないため 参加できない」が27.4%、③「スポーツ・芸術活動の情報がない」が23.3%と なっている。①はバリアの問題が考えられるが、③は参加できる活動があるに も関わらず、そうした情報が届いていない場合も考えられるため、いっそうの 情報提供が求められる。なお、スポーツ・文化芸術活動の参加状況をみると、 「参加している」が40.5%、「参加していない」が55.1%となっている。

【久松委員】

 今でも、聴覚障害を理由にスポーツクラブへの入会を断られることは少なく ない。そこには「聴覚障害」そのものに対する理解の不足があり、スポーツ分 野のみならず、障害者に対する啓発活動の強化が必要である。

 競技活動において、コーチの指導をはじめとする様々なサポートは必要不可 欠なものであり、選手は優秀な指導者に師事することにより、飛躍的に選手の 競技パフォーマンスが向上するため、アスリートの多くは優秀な師を求めて海 外にまで出向くことは少なくない。

 しかし、ろう者、難聴者のスポーツにおける指導やサポート環境を見ると、 チームのコーチ・トレーナーの多くはボランティアとして活動しており、日本 代表という観点からすると非常に劣悪な状況に置かれている(中村他2008)。 また、地域クラブや行政が開催する一般のスポーツイベントやスポーツ教室の 場合であっても、手話通訳が最初から用意されている、または希望することに より手話通訳を配置することが可能であるという例はまれである。中には聴覚 障害を理由に参加の拒否を受ける、手話通訳の派遣・帯同の拒否といった問題 が、全国レベルの大会でも発生している。

 これらの問題から垣間見えることは、競技スポーツとして、アスリートとし ての活動のみならず、生涯スポーツとして、一般市民の参加が可能なレクレー ションスポーツにおいても、ろう者や難聴者は実質的に参加が制限されていて、 その機会を享受できていない。

 手話通訳等の情報保障はろう者のあらゆる活動に必要不可欠であり、手話通 訳が「いつでも、どこでも、だれでも」利用できることが、ろう者(デフ)ス ポーツ活動においても必要な条件であり、それを社会が認知できる利用体制や 行政の在り方が求められている。

【森委員】

 文化・スポーツ施設関係者や他の利用者の無理解などによって、文化、 スポーツの機会を得られないことも多くあるとともに、障害の特性に応じた道具やルールの開発を行うとともに、 それらについての知識などを文化・スポーツ施設関係者に普及する必要性もある。 また、安全性に極度に不安を持つ文化・スポーツ施設関係者等への活動の理解を促進することも重要である。 (プールを利用する際などに安全性の確保のために付き添いがいないで場合は、 一人では利用できませんという説明や子どもたちが多く利用しているので 今は利用できませんという説明がある場合があるときく)。

3、行政による支援
(1)文化やスポーツを行う上でどのような行政的な支援が必要とされるか

【小川委員】

 啓発、条件・環境等の整備、先駆的取り組みへの支援、研究開発などが考えられる。

 なお文化的生活への参加が権利であるという視点に基づき、これを保障する ための支援となるような制度設計がなされるべきである。

【尾上委員】

<地域間格差の解消>

【川﨑委員】

文化的なイベントやスポーツ大会を行う上での財政的な支援が必要である。 会場設備、運営スタッフ、遠征費用など、柔軟に活用できるものが望まれる。 障がい者の所得保障が不十分な中で、文化・スポーツを享受したり、自ら企 画運営したりするには、財政的支援が欠かせない。

【中西委員】

合理的配慮の提供

【久松委員】

幼少期から、教育機関をはじめとする、すべての生活に手話通訳をはじめと する本人の希望するコミュニケーション手段を選択し情報保障に対応できるこ と。これにより、地域校に障害者が編入した場合、本人の希望する情報保障に 対応できる人材を教育機関は常に確保しなければならない。その結果、地域校 内での障害認知が飛躍的に向上する。 また、大学もそれに対応する教育課程の作成が必要になる。 地域の学校の場合、学童期からのろう学校・盲学校等との交流プログラムの 義務化を図る。そこには手話通訳や介助者などが必ず同行し、そのための予算 措置を行政が責任をもって行う。 一般のスポーツイベントにおいて、参加者の人数にかかわらず必要な情報保 障の提供を義務付ける。国や公共団体の行事のみならず、国や地方公共団体の 補助を受ける法人も同様とする。 企業の場合、社会貢献活動に支出した費用に応じ減税を行う、もしくは情報 保障体制について明記のない、あるいは実施されない大会には後援名義を出さ ない等、国を挙げて、情報保障の確保、機会の享受について、政策に明記する。 また障害者スポーツや障害に特化した文化(手話言語文化等)を楽しむ機会 を提供できるよう行政が支援(補助)する必要がある。例えば、CS障害者放 送統一機構が放送している「目で聴くテレビ」と同じように、通常のテレビ番 組では提供できない障害者スポーツや障害に特化した文化を放送できるよう財 政的支援を行い、普及を図ることが必要である。

【森委員】

文化的な生活に参加する権利が確保されるためには、文化施設、スポーツ施 設自体のハード面、ソフト面の充実のみならず、自宅からの移動を含めた活動 を果たすためのすべての過程において、支援体制が整っているかどうかの調査 が必要である。その上で、整備については、大都市部に偏在する傾向が多いと いう地域格差が大きいことにも留意しつつ、都市機能の規模の小さい地域では、 住民の助け合い、地縁があるので、それらの特性に応じた行政的支援を図るべ きと考える。

4、一般の文化・スポーツとの関係
(1)障害に特化した文化やスポーツ育成の必要性をどう考えるか

【小川委員】

 障害者の文化やスポーツは、これまでも障害者の生きがいや社会参加のため に大きな役割を果たしてきている。また、近年のパラリンピックにみるような、 社会への啓発の効果も大きく、必要であると考える。

【尾上委員】

 肢体や視覚等の機能障害を想定したスポーツ指導者や練習環境等の整備は、 必要であるが、スポーツ指導者については、欧米では、障害の有無に関わりな く同じ指導者が対応している現状もある。

【川﨑委員】

 同じ障がいをもつ者同士、技術を高めあい、競いあいたいという当事者の気 持ちは尊重すべきであると考える。

【新谷委員】

 シニアスポーツが一般化しているように、心身機能、身体構造の違いから、 文化やスポーツの独自の発展のための支援が必要である。

【関口委員】

 必要なのは他のものと平等にスポーツ文化活動に参加できる合理的配慮や所 得保障、介助保障である。 ただし、車いすバスケット等、独自のものを否定するものではない。

【中西委員】

 基本的には障害に特化したスポーツはあるべきではないと考える。 文化に関しては、特定集団で発展する文化があり、それが権利の侵害でない 限りみとめられるべきである。

【長瀬委員】

 障害者の権利条約は文化について、第30 条4 項で、手話とろう文化をはじめ とする独自の文化的なアイデンティティの承認と支持の権利を認めている。ま た、スポーツについては、同第30 条5 項で、(a)主流(一般)のスポーツ活動 への参加と並んで、(b)障害に特有のスポーツ及びレクリエーションの組織 や発展、参加を規定している。このように、障害の持つ文化的側面への配慮と して、障害に特化した文化とスポーツへの支援は重要であり、必要である。一 般の文化やスポーツへの参加が閉ざされていないことが大前提であり、独自の 文化やスポーツが「選択肢」として存在することが重要である。

【久松委員】

 多くの課題を抱えながらも、ろう者(デフ)アスリートたちは、デフリンピ ックをはじめとする、聴覚障害者によるスポーツ大会の重要性を感じており、 同じ障害を持つ仲間と集い、ともに競技をし、体験を共有するという機会とし て、スポーツを必要としている。それは同一コミュニケーションで開催される 大会の大きな意義でもある。

 ろう者の競技大会が開催されるためには、手話通訳をはじめとする、多くの 協力者の存在が必要となる。それは聴覚障害についての理解が広まることと同 義であり、それによって、社会福祉の向上や選手たちのモチベーションだけで なく、将来的な競技環境の整備、そして、競技レベルの向上につながるものと 確信している。

 ひいては、そういった社会基盤の整備により、次の世代の子どもたちに夢を 与え、望ましいロールモデルとして、ごく自然に成人ろう者、難聴者との交流 が行われるようになる。

 障害者が、地域コミュニティで生活していくためにも、同一障害者同士のコ ミュニティが必要であり、その1つの手段として「ろう者、難聴者スポーツ」 は必要不可欠な存在であることを社会に啓発する必要がある。

 障害に特化した文化やスポーツの育成は、障害を持つ当事者が主体となって 担うことが必要であり、障害者の障害者による障害者のための文化・スポーツ 政策・運用が行われなければならないと考える。

【森委員】

 障害者の文化やスポーツの分野が遅れていることからも、障害に特化した育 成も必要であると考えられる。

(2)一方、一般の文化やスポーツとの間で区別すべきではないという考え方 について、どう考えるか

【小川委員】

 一般の文化やスポーツにおいても、インクルージョンが進められることは望 ましい。芸術の分野では、古くから障害者が優れた作品を多く残し、スポーツ の分野でも、障害者が一般のチームに参加する事例は知られている。

 一方、スポーツでは、マラソンと車いすマラソンが同じ大会の中で行われ、 それぞれ競技として成立している例もあり、区別することが一概に悪いとは言 えない。男女で競技が分けられることと同様と考えられないか。

【尾上委員】

 基本的には、区別すべきではないが、障害に基づく必要な環境の整備と遅れ ている現状を踏まえ、一方で一般施設やサービス利用での合理的配慮が確保で きるようにするとともに、積極的是正措置の内容の検証と施策の推進が必要で ある。

【川﨑委員】

 「障がい者は、障がい者同士の枠組みの中でのみ文化やスポーツ活動をすれ ばよい」というような考え方があるとすれば、それには反対である。当事者の 希望にもとづいた障がい種別ごとの大会が行われることはあってよいが、一般 の文化・スポーツのイベントに障がい者部門を設けることで、自然な交流が生 まれ、ノーマライゼーションを推進する場合もある。そうした機会を積極的に 設定するよう促すべきである。

 また、障がい者自身が望む場合には、障がいを理由に一律に排除することな く、一般の大会やイベントに参加する機会を保障すべきである。

【新谷委員】

 能力や可能性に付いては、区別すべきではない。

【関口委員】

 考え方としては、原則として、区別するべきではない

【中西委員】

 スポーツに関しては、そう考える。

【長瀬委員】

 インクルージョンにたどり着くための道筋は多様であり、独自の文化やスポ ーツが「選択肢」としてあることと、共生社会やインクルーシブな社会である ことは矛盾していない。一般の文化やスポーツのバリアフリー化を進めること と、障害独自の文化やスポーツの振興は、車の両輪のように両方が求められる。

 なお、一般の文化やスポーツのバリアフリー化だけでなく、障害独自の文化 やスポーツも開かれていくことによって、私達の社会の多様性がさらに豊かに なる。

【久松委員】

 本来、身体的欠損があったとしても、それを補う手段があれば、「障害者」 と「健常者」という区分は不要ではないかという意見があがるが、それである なら、あらゆる障害特性に対応することを当たり前とすべきであり、そこに対 する予算的な措置も含め、国や行政が明確な姿勢を示す必要がある。

 例えば、ろう者(デフ)アスリートがオリンピックに出場する場合、手話通 訳を含めたあらゆる「障害特性に対応するサービス」を「選手のパフォーマン スに影響する」という理由で受けることができない。

 それは本来の「平等」という概念とはかけ離れた非常に差別的であり、 そこでろう者が健常者並みの結果を出すためには、超人的な努力が必要となる。 そのような努力を障害者に求めるのではなく、障害者がスポーツや文化活動に参加する場合、 どのような配慮を必要とするか、それが日常生活においてごく当たり前となる社会のための施策を構築する必要がある。

【森委員】

 一般の文化やスポーツ活動と区別しなくても取り組める活動もあり、 そのような場合には、障害者権利条約に述べられているように、一般の人々とともに取り組むべきである。 一方、障害特性によっては、特別な道具の開発、ルール の改正、指導や審判によるコミュニケーションに工夫が必要なこともある。

(3)行政上、特にスポーツについて一般と異なる省庁が担当しているが、問題はあるか

【尾上委員】

 障害の有無ではなくスポーツそのものが多様なものとなっていることから福祉とか教育という限定的なものではなく、 省庁横断的な仕組みの創設を検討することが必要である

【川﨑委員】

 一般のスポーツを扱う省庁の中に障がい者スポーツの部門を置くことには意 義があると考える。また、関係省庁同士の連携をしっかりはかってもらいたい。

【新谷委員】

本来は、障害の有無に関わらず、ともに同じ部局が担当すべきである。

【中西委員】

 高齢者や障害者対象のスポーツが福祉センターで実施される場合には、事前 の血圧測定など医療的色彩が濃い。

【長瀬委員】

 文部科学省が基本的に担当すべきと考える。ただし、リハビリテーションや 健康維持等の側面を考慮し、厚生労働省も一定の役割を引き続き、継続すべき である。

【久松委員】

 デフリンピックの存在意義について、多くのろう者(デフ)アスリートがそ の存在意義を認めている一方で、オリンピックやパラリンピックとの違いを選 手たちは感じている。

 日本代表として戦いながらも、特にパラリンピックとは、同じ障害者スポー ツであるにもかかわらず、「国や行政からの評価」が大きく異なることや、人々 の注目や評価の違いを選手たちは敏感に察知しており、そこに大きな違和感を 覚えている。

 日本の障害者スポーツはリハビリ的な観点から出発しており、そのため、諸 外国とは異なり、同じスポーツであっても一般スポーツは「文部科学省」、障 害者スポーツは「厚生労働省」という異なる省庁が担当してきた経緯がある。

 これにより「障害福祉とスポーツ活動は異なるもの」という認識が生じ、同 じスポーツ分野であっても、競技スポーツとなった場合、福祉サービスを受け 取ることが困難となり、行政や一般スポーツ競技団体から、十分な協力や情報 共有がなされない状況に陥りがちである。

 文部科学省と厚生労働省がそれぞれ所管の競技団体へ行っている強化費額の 違いやナショナルトレーニングセンターといった、日本のトップアスリートの みが利用できる施設(ハード面)の利用が、障害者アスリートのトップレベル であっても許可されていないといった差別で現れている。

 スポーツを1つの分野としてとらえる場合、障害特性に応じた配慮や施策を 一元で行うことが必要である。そのためにも1つの分野を複数省で管理するの ではなく、1つの省庁で管理することは早急な課題として、新省庁の設立、も しくは文部科学省内による障害者スポーツの包括が望まれる。

【森委員】

 スポーツ活動においては厚生労働省と文部科学省との役割を密にして、相互 補完的に取り組む必要がある。

5、現行障害者基本法
(1)現行障害者基本法について、上記のほか、問題点があればご指摘をお願いしたい。

【小川委員】

 文化的な生活への参加が権利であることを、法文上明記すべきである。

【川﨑委員】

 第7条の障害者週間について:毎年行われているが、国民への周知が少ない。 障害者を国民が理解する良い機会とすべきで、効果的に事業が展開されるよう、 一考の必要があるように思う。

【関口委員】

 宗教活動および政治活動について

 他のものと平等な活動保障を介助も含め保障すべき。

 現行の自立支援法の地域支援事業の移動介助は多くの市町村で、宗教活動政 治活動をのぞくとなっているのは明白な憲法違反であり、健常者であれば、い かなる政党の選挙カーもいかなる宗教の布教も、道路を使うのに特別に通行税 を払っていない。

【久松委員】

 文化的な活動への参加、文化的な生活を営むことが権利であることを、明記 すべきである。

6、その他

【尾上委員】

 障害者スポーツ団体や文化活動を進められているところからのヒアリングが 必要である

【久松委員】

 ろう者や難聴者の場合、そのコミュニケーション特性やほかの障害者団体と は、障害者運動の形態が異なっていることもあり、行政からの万全のサポート を得ながら競技活動を行っているわけではない。

 ろう者(デフ)アスリートが競技を続ける上で最も励みになることは、「家 族の応援」、「競技仲間との励ましあい」、「在学校や勤務先からの応援」な ど、特に身近な人からの応援が中心になっている(中村他2008)。

 競技活動を周囲の人から理解され、応援されるということは、ろう者や難聴 者に対する理解があって初めて成り立つものである。人々の理解と支援は、社 会の障害者福祉に対する理解度と比例しており、社会基盤がないと、競技を続 けることは困難を極める。

 しかし、それら障害者に対する理解の向上は、本来行政が大きな方針をもっ て施策として推し進めるものであり、個人の努力や資質によるものではないこ とを障害者基本法に強く明記すべきである。

【参考文献】

中村有紀・及川力・大杉豊(2008) デフリンピック選手候補の競技環境と意 識に関 するアンケート調査報告書 筑波技術大学障害者高等教育研究支援セ ンター