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障がい者基本法の改正について・その1

2010年1月22日
大 谷 恭 子

 障害者基本法を、障害者権利条約を国内で実効力あるものにするための基 本法と位置づけ、障がい者権利法に抜本的に改正する必要がある。(とりあえ ず、その1として提案します。)

1、基本法を障がい者の権利章典とすること

 権利条約に明記された人権を国内法レベルで確認し、今後各関連法規にお いて整備・保障されるそれぞれの権利の根拠となるべきものとすること。 具体的には以下のことが不可欠となると思われる。

(1)前文を設け理念・哲学を指し示すこと
 前文に基本法が権利条約を受けたものであることを明記し、法の運用・ 解釈の指針を、障がい者の尊厳と人権の尊重にそうものとすることを確固 たる理念・哲学をもって提示すること。
(2)権利法とすること
法の目的を、福祉の増進ではなく尊厳と人権の尊重の促進とし、福祉 を権利として位置づけること。
(3)権利の主体を明らかにすること
各条項を、障がいのある人が権利の主体であることを明らかにし、法 文上も「障がいのある人は・・・」と規定すること。

2、権利条約に確認された従来国内法には明記されていない概念を定義し、 今後各関連法令の改正の総則を規定すること。

 具体的には最低限以下のことが不可欠になると思われる。

(1)障がいの定義を社会モデルとすること。
 障がいの定義は、単なる概念の問題ではなく、広く国民に障がいとは社 会の関係で「発症」もしくは「軽減」するものであり、排他的な社会にあ っては障がいはより困難を伴い、逆に障がいのある人もない人も共に生き る社会にあっては、障がいは軽減あるいは意識されることもないものとし て啓蒙することを意識して規定すること。

(2)インクルージョン
 インクルージョンは、政府仮訳文では、「社会に受け入れらること」と されているが、これを基本理念として確認すること。権利条約3条は、イ ンクルージョンを権利条約全体を貫く一般原則とし、尊厳、非差別と同列 に位置付けている。
 インクルージョンの訳および定義については未だ確定したものはない が、これについても条約の理念に則り適切に規定する必要がある。

(3)合理的配慮
 権利条約は障がいのある人の人権及び自由を確保するために社会に合 理的配慮義務を課し、これが保障されていないことは差別であると明言し た。これについても基本法に盛り込み定義を明確にする必要がある。

 以上、障がいとは社会との関係によって生じるものであり、また障がい のある人を社会が受け入れなければならず、そのためには社会が障がいの ある人のために合理的配慮をしなければならないこと、これを三位一体と して国民が理解しうるように、基本法に盛り込む必要がある。

3、権利条約に確認された従来国内法では明記されていない権利(憲法13 条幸福追求権によって認められていたものを含む)について、明文で保障 すること。

 具体的には以下の権利についての規定が不可欠であると思われる。

(1)個人のインテグリティ(不可侵性)の保護
権利条約17条は障がいのある人の身体的・精神的なインテグリティ (不可侵性)を尊重される権利を保障しているが、インテグリティの訳に ついては、政府仮訳文が誤訳とも思われる内容であったことから、この訳 を検討したうえで、権利として定義し規定する必要がある。

(2)自立(自律)した生活及び地域社会で生活する権利
権利条約19条は地域社会で生活する権利を、その内容を含めて具体的 に保障している。これを基本法に盛り込むことは不可欠である。

(3)言語(手話)に関する権利
権利条約は手話を言語として位置づけ、手話の習得をアイデンティティ 形成のための権利として位置づけている。ろう、盲ろうの人の教育につい ての権利(24条3項b、c)についても関連しているので、その前提と しても規定する必要がある。

4、権利主体として脆弱な女性および子どもについて、条項を設けること

(1)障がいのある女性
 権利条約は障がいのある女性が複合的差別を受けていることを認め、第 6条のみならず、搾取および暴力虐待からの自由(16条)、健康(25 条)、十分な生活水準および社会保護(28条)、障がいのある人の権利に 関する委員会(34条)に、各ジェンダーを意識した文言を入れている。 よって基本法にもこれを受ける総合的規定が必要である。

(2)障がいのある子ども
 権利条約は障がいのある子どもについて、一般原則(3条)として障が いのある子どもの発達しつつある能力の尊重およびアイデンティティを 保持する権利の尊重を規定し、さらに個別に障がいのある子どもの権利 (7条)について規定している。その内容はほぼすでに批准している子ど もの権利条約に規定されていることではあるが、わが国は子供の権利条約 の批准時に国内法整備としての法を制定しなかったことにより、例えば子 供の意見表明権についても明確な規定を有していない。よってこの点につ いても基本法に盛り込む必要がある。

5、各権利の内容について、従来国内法において明確になっていないことを 明らかにすること

(1)差別の禁止
 基本法3条3項は差別の禁止をうたっているが、差別の定義もなく、裁 判規範性も有していない。よって、別条を設けて、合理的配慮の欠如も含 め差別の定義を明確にする必要がある。なお、裁判規範性を有する差別禁 止法の制定の必要性については、別途意見を述べることとする。

(2)教育
 基本法14条は教育について「年齢、能力および障害の状態に応じ」保 障するとしている。また3項においては、障害のある児童とない児童との 交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進し なければならないとしている。このように、わが国の学校教育法は原則分 離別学となっている。しかし、これは権利条約がインクルーシブ教育を保 障していることと決定的に抵触する。このことにより特別支援教育は、権 利条約の理念に則り再編成されるべきである。
 権利条約24条はインクルーシブ教育を保障し、障がいのある人が障が いを理由として一般教育制度から排除されないこと、自己の住む地域社会 において、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアク セスすることができること、個人が必要とする合理的配慮と支援を一般教 育制度内で保障している。また手話を含む適切な言語並びにコミュニケー ション手段での教育を保障している。
 よって、この条項を国内法とするためには、学校教育法など関連法規を 原則統合に改める必要があるが、その前提として、以下の内容(要旨)を 基本法に規定することが不可欠である。

 
①障がいのある人は障がいを理由に差別を受けることなく教育を受け る権利を有している
②障がいのある子どもは自己の住む地域社会で障がいのない子どもと 分け隔てられることなく教育を受ける権利を有し、地域の小中学校に 学籍を有し、就学することを保障され、これは高校以降の教育につい ても準用される。
③障がいのある人(子ども)は個人の必要に応じ合理的配慮と支援が 保障される。
④障がいのある人(子ども)は、特別支援教育を希望するときにはそ れが保障され、障がいのある人(子ども)もしくは保護者の承諾なく して強制されることはない。
⑤盲、盲ろう、ろうの子どもの教育は、個人にとって最も適切な言語 並びにコミュニケーション手段によってなされることを保障する。

 なおこの内容は、「障がい者政策PT 中間報告」の改革17項目「その6 共に学び共に育つ教育に転換します」とほぼ重なる。 「学校教育制度は、あらゆる段階において障がい児が障がい児以外の者と原則 分けられず、インクルーシブ教育(共に学び共に育つ教育)とすることを基本と するとともに、障がい児又はその保護者が希望するときは、特別支援教育を受け ることを保障する。

 手話、点字又は文字表記(要約筆記)等のコミュニケーション手段の支援、教 材、施設及び設備等のバリアフリー化、教職員の体制整備など、障がい児が学ぶ 地域の学校も含む教育現場での支援体制の強化を図る。

 義務教育のみならず後期中等教育(中等教育のうち義務教育終了後に行われる ものをいう。)及び高等教育等の教育制度においても、インクルーシブ教育に相当 する施策を推進する。」

(その1、以上)