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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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平成22年2月2日

障がい者制度改革推進会議
構成員 各位

社団法人全国脊髄損傷者連合会
副理事長 大濱 眞

障害者基本法の改正等についての意見

1.障害者基本法の改正について

(1)総論
○基本的に日本障害フォーラムの「論点のたたき台」の「JDFの見解」に賛同します。
○このなかでも、以下の点については特に気をつけなければならないと考えます。

  • 差別の定義を障害者基本法に書き込むこと。
  • 権利条約の理念に基づいて障害者施策を実施すべきこと。
  • それぞれの条項を、国や地方自治体の責務として書くのではなくて、 障害者を権利の主体として書き直すこと。

(2)各論その1:地域生活の権利
○障害者の地域生活について、障害者自立支援法では以下のような規定があります。

第2条(市町村等の責務)
 第1項 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
一 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児(以下「障害者等」という。) がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよ う、…必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。

また、厚生労働省も、1人1人の障害者が必要とする時間数の訪問系サービスをきち んと支給決定しなければならないと、何度も自治体に注意を呼びかけています。

○しかし、市町村は給付額の25%を負担するので、長時間の訪問系サービスを必要と する重度障害者に、必要な時間数の訪問系サービスを支給決定すると、財政にとって 重荷となってしまいます。このため、市町村が自立支援法の理念を守らずに、必要 な時間数を支給決定しない事例が全国的に生じています。

○一方、障害者権利条約では以下のような規定があります。

第19条 自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのインクルージョン
 この条約の締約国は、障害のあるすべての人に対し、他の者と平等の選択 の自由をもって地域社会で生活する平等の権利を認める。締約国は、障害 のある人によるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の 完全なインクルージョン及び参加を容易にするための効果的かつ適切な措 置をとるものとし、特に次のことを確保する。
 (a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで 誰と生活するかを選択する機会を有すること、並びに特定の生活様 式で生活するよう義務づけられないこと。
 (b) 障害のある人が、地域社会における生活及びインクルージョンを支 援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために 必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス (パーソナル・アシスタンスを含む。)にアクセスすること。
 ※川島聡氏・長瀬修氏による2008年5月30日付の仮訳による。

○また、障害者自立支援法違憲訴訟原告団と厚生労働省との基本合意のなかにも以下の ように書いてあります。

三 新法制定に当たっての論点
原告団・弁護団からは、利用者負担のあり方等に関して、以下の指摘がさ れた。
 ⑥ どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量 を保障し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるように、支給 決定の過程に障害者が参画する協議の場を設置するなど、その意向が 十分に反映される制度とすること。
そのために国庫負担制度、障害程度区分制度の廃止を含めた抜本的 な検討を行うこと。

⇒これらのことから、障害者基本法の規定を改正して、

  • どんなに重い障害を持っていても、障害者のあるすべての人に地域で生活する権 利があること。
  • そのために、市町村は、1人1人の障害者が必要とする時間数の訪問系サービス をきちんと支給決定しなければならないこと。
  • そのために、国は、きちんと財政負担を行う義務があること。 と書き直す必要があると考えます。
第8条(施策の基本方針)
 第2項 障害者の福祉に関する施策を講ずるに当たつては、障害者の自主性 が十分に尊重され、かつ、障害者が、可能な限り、地域において自 立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。
第12条(医療、介護等)
 第3項 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢及び障害の状態に応じ、 医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられる よう必要な施策を講じなければならない。

(3)各論その2:リハビリテーション
○脊髄損傷者のリハビリテーションは、病院側の手間が非常にかかるのに比べて、診療 報酬が安いため、患者が病院から敬遠されて十分なリハビリをなかなか受けられない のが現状です。
○また、現在の健康保険の決まりでは、リハビリ患者の在院日数が長くなると病院に支 払われる診療報酬が大幅に減ってしまいます。このため、リハビリの効果が十分に現 れる前に病院を退院しなければならず、リハビリを続けるには転院を繰り返さなけれ ばならない問題も生じています。
○さらに、労災病院など専門の医師がいる病院の統廃合によって、脊髄損傷者のリハビ リの拠点も急速に減っています。
○一方で、権利条約では以下の規定があります。

第25条 健康
 締約国は、障害のある人が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の 健康を享受する権利を有することを認める。締約国は、障害のある人がジ ェンダーを考慮した保健サービス(保健に関連するリハビリテーションを 含む。)にアクセスすることを確保するためのすべての適切な措置をとる。 締約国は、特に、次のことを行う。
(b) 障害のある人が特にその障害のために必要とする保健サービスを提 供すること。…
(c) 当該保健サービスを、障害のある人自身が属する地域社会(農村を 含む。)に可能な限り近くで提供すること。

 

第26条 ハビリテーション及びリハビリテーション
 1 締約国は、障害のある人が、最大限の自立〔自律〕、十分な身体的、精 神的、社会的及び職業的な能力、並びに生活のあらゆる側面への完全な インクルージョン及び参加を達成しかつ維持することを可能とするた め、特にピア・サポート〔障害のある人相互による支援〕を活用して、 効果的かつ適切な措置をとる。このため、締約国は、特に保健、雇用、 教育及び社会サービスの分野において、ハビリテーション及びリハビリ テーションについての包括的〔多様〕なサービス及び計画を企画し、強 化し及び拡張する。この場合において、これらのサービス及び計画は、 次のとおりとする。
 (a) 可能な限り最も早い段階で開始すること、並びに個人の必要〔ニ ーズ〕及び能力〔長所〕に関する学際的な評価に基づくこと。
 (b) 地域社会及び社会のあらゆる側面への障害のある人の参加及びイ ンクルージョンを容易にするものであること、障害のある人によ り任意〔自由〕に受け入れられるものであること、並びに障害の ある人により自己の属する地域社会(農村を含む。)に可能な限り 近くで利用されることができること。
2 締約国は、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事 する専門家及び職員に対する初期訓練及び継続訓練の充実を促進する。
3 締約国は、障害のある人向けの補装具〔補助器具〕及び支援技術〔支援 機器〕であって、ハビリテーション及びリハビリテーションを容易にす るものの供給、知識及び使用を促進する。
※川島聡氏・長瀬修氏による2008年5月30日付の仮訳による。

⇒これらのことから、障害者基本法の規定を改正して、

  • 障害者には必要なリハビリテーションを十分に受ける権利があること。
  • 国や市町村は、そのために必要な条件をきちんと整備する義務があること。
    と書き直す必要があると考えます。
第12条(医療、介護等)
第1項 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、取得し、 又は維持するために必要な医療の給付及びリハビリテーションの提供を行うよう必要な施策を講じなければならない。
第2項 国及び地方公共団体は、前項に規定する医療及びリハビリテーションの研究、 開発及び普及を促進しなければならない。

(4)各論その3:特に人工呼吸器利用者について
○筋ジストロフィー、ALS、高位頸髄損傷などによって人工呼吸器を使用している重 度障害者は、

  • 十分に対応してくれる専門病院が少ない。
  • リハビリも十分に受けられない。
  • 都市部でも地方でも、ヘルパー派遣を引き受けてくれる事業所が見つからない。 など、医療や地域生活を含むあらゆる側面で、(それ以外の障害者と比べても)公平 な取り扱いがされていません。

⇒このように、人工呼吸器使用者をはじめとした重度障害者は特に権利が侵害されやす いので、障害程度が重いことを理由とした差別を禁止することについて、基本法に盛 り込むべきだと考えます。

2.障がい者制度改革推進会議での今後の審議について

(1)推進会議で検討する政策分野の順番
○訴訟原告団と厚生労働省との基本合意では、「遅くとも平成25年8月までに、障害者 自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」と書かれています。しかし、 新しい法案を平成24年の通常国会に提出する場合でも、あと2年しか時間がありま せん。
○また、基本合意では、「自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重 要な課題とする」と書かれています。

⇒よって、

  • 障害福祉サービスや教育など、制度改革の規模が大きくなると考えられる政策分 野
  • 自立支援医療など、緊急に対応しなければならない課題がある政策分野 から優先して検討しなければならないと考えます。

(2)「精神医療」だけではなく「障害者医療」全般の議論を
○前回の会合で提出された東参与の作成資料では、検討項目の1つとして「精神医療」 が挙げられています。
○しかし、障害者に関する医療の問題は、精神医療だけではなく、

  • 難病の原因や治療方法、不治障害の再生医療、対象者の少ない病気に対する薬 (希少疾病用医薬品、オーファン・ドラッグ)の開発などの研究がなかなか進ん でいないこと。
  • 気管切開を行わない方法(非侵襲的陽圧換気、NPPV)で重度障害者の生活を支 援する手法がなかなか普及していないこと。
  • 尊厳死や着床前診断の問題。

などもあります。

⇒よって、

  • 精神医療(強制収容や強制介入の問題、地域生活支援の推進など)に限定するの ではなく、広く「障害者医療」全般について検討するべき。
  • または、「精神医療」とは別に「障害者医療」全般について検討するべき。 だと考えます。