障がい者制度改革推進会議 第20 回(H22.9.27) 資料4-3
ヒアリング項目に対する意見書
【府省名:文部科学省】
ヒ ア リ ン グ 項 目 |
【ヒアリング項目】 1.文化に関する施策の基本理念 (1)障害者権利条約は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する 権利を認めるものとしている(30条1)。 当該条項との関連において、わが国における施策の現状を理解するため、 まず、国民一般が広く文化を享受するための施策として、 どのようなものがあるか、またその基本理念はいかなるものかについて御教示いただきたい。 |
回 答 |
【結論】 文化芸術振興基本法(平成13年法律第148号)に基づく 「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」 (平成19年2月9日閣議決定)を踏まえ、文化芸術各分野における各般の施策を 講じている。 【根拠、理由】 1. 文化芸術振興基本法(関連条項抜粋)
2. 第2次基本方針(関連部分抜粋) 第1 文化芸術の振興の基本的方向 2.文化芸術の振興に当たっての基本的視点 (2)基本的視点 ⅲ)国,地方,民間が相互に連携して文化芸術を支える 文化芸術は,国民の身近な生活に密着しているものであり,国民一人一人が文化芸術を支え ていく環境を醸成し,文化芸術の享受,支援,創造,保護・継承のサイクル(循環)が実現す る社会を構築することが求められている。 文化芸術活動は国民の自発的,自主的な営みであることから,活動主体の個性や地域の特性 に応じたきめ細かい施策が大切である。 基本法制定後,地方公共団体では,新たに文化芸術振興のための条例の制定や推進計画等の 策定も数多くなされており,文化芸術の振興に当たっては,国民の生活に近い地方公共団体が 高い専門性と知識を備え,主たる役割を担うことが期待される。 一方,近年,企業のメセナ活動や文化芸術系特定非営利活動法人(アートNPO)をはじめ 民間団体による文化芸術への支援が活発化している。こうした自発性に基づく民間からの支援 は,我が国の文化芸術の振興に不可欠であり,それらの自立的な活動が一層促進されることが 望まれる。 国は,こうした認識の下,地方公共団体や民間による自主的な文化芸術振興に係る活動に対 して,支援や情報提供等の所要の措置を講ずる必要がある。同時に,伝統的な文化芸術の継承 ・発展や文化芸術の頂点の伸長,裾野の拡大など,国として保護・継承し,創造を促進してい くべきものに対しては,積極的に支援することが必要である。その際,厳しい財政事情の下で 適切な評価を行い,支援の重点化,効率化を図りつつ,必要な法制上,財政上の措置を講ずる とともに,税制上の措置等により,文化芸術活動の発展を支える環境づくりを進める必要があ る。 これらの観点を踏まえ,関係府省間の連携・協力を一層推進するとともに,個人,企業,団 体,地方公共団体,国などが相互に連携し,社会全体で文化芸術の振興を図っていくことが重 要である。 第2 文化芸術の振興に関する基本的施策 9.国民の文化芸術活動の充実 国民がその居住する地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞し,参加し,創造することができる 環境を整備し,心豊かな社会を実現していくため,特に,高齢者,障害者,青少年などへのきめ細 かい配慮等を図りつつ,次の施策を講ずる。 (1)国民の鑑賞等の機会の充実 国民が文化芸術を享受する機会の充実を図るため,次の施策を講ずる。
(2)高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実
(3)青少年の文化芸術活動の充実
11.その他の基盤の整備等 (4)関係機関等の連携等
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ヒ ア リ ン グ 項 目 |
【ヒアリング項目】 2.文化に関する障害者施策の現状と課題について (1)障害者権利条約は、締約国に障害者が利用可能な様式を通じて、 文化的な作品を享受するための適当な措置をとることを求めている(30条1(a))。 これと関連する貴省の施策として、どのようなものがあるか。 また、現実には博物館などでの情報保障などの面で課題 (例:音声案内がある場合に、ろう者はその情報にアクセスできない等) が指摘されているが、こうした課題への対応についてお考えがあれば御教示いただきたい。 |
回 答 |
【結論】 1.障害者権利条約第30条1(a)関連施策について (1)全国の美術館・歴史博物館における優れた取組等を支援する「美術館・歴史 博物館活動基盤整備支援事業」を実施している。例えば、障害者の作品鑑賞を サポートする取組等に対して、平成21年度は2件、平成22年度は4件に支援を実 施しているところである。 (2)東京国立博物館において、手話通訳つきガイドツアーの実施等、障害者基 本法に基づき障害者が文化的な作品を享受するための各種施策を講じている。 (3)平成19年12月から平成20年6月にかけて、厚生労働省と連携し、社会に生き る人たちすべてがかけがえのない存在として大切にされ、自分の個性や才能を いかしながら、社会に参加・貢献できる「ぬくもりのある日本」の実現を目指 し、障害のある人々による自由な芸術活動を推進するため、「障害者アート推 進のための懇談会」を6回開催し、広く関係者が意見交換を行い、必要な社会的 取組について提言を行った。 また、「障害者アート」の普及促進、鑑賞機会の提供のため、全国高等学校 総合文化祭において、特別支援学校の生徒作品の展示会やワークショップを開催 している。 2.博物館などにおける情報保障などの面での課題に対する対応について 文部科学省としては、「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」 (告示)(平成15年)において、設置者に対し、 その実施する事業への障害者などの参加を促進するよう努めるよう促している。 各地の博物館においては、各館でスロープ等の設備の設置を行っており(社会 教育調査参照)、今後も障害者の受け入れ態勢の整備が進むことを期待。 なお、国立科学博物館等における対応事例として、総合案内に筆談器の用意、 貸出用車イスの配備、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)を伴う入館 を可能とするなどの対応をしている。 【根拠、理由】 1.(2)について 障害者基本法 第22条(文化的諸条件の整備等) 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起 こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツ を行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等 に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。 2.について ①公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準(平成15年6月6日文部科学省告示第113号) (学校、家庭及び地域社会との連携等) 第7条 (略) 2 博物館は、その実施する事業への青少年、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、 外国人等の参加を促進するよう努めるものとする。 (以下略) (施設及び設備等) 第11条 博物館は、その目的を達成するため、必要な施設及び設備を備えるものとする。 2 博物館は、青少年、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、外国人等の利用の促進 を図るため必要な施設及び設備を備えるよう努めるものとする。 (以下略) ②平成20年度社会教育調査報告書(別添) |
ヒ ア リ ン グ 項 目 |
【ヒアリング項目】 2.文化に関する障害者施策の現状と課題について (2)障害者権利条約は、締約国に利用可能な様式を通じて、テレビジョン番組、 映画、演劇その他の文化的な活動を享受するための適当な措置をとることを求めている (30条1(b))。これと関連する貴省の施策として、どのようなものがあるか。 |
回 答 |
【結論】 1.文化芸術団体が行う芸術水準の向上に資すると認められる舞台芸術や日本映画の製作 活動等に対し支援を行う「芸術創造活動特別推進事業」等の事業において、団体等から の申請に応じ、字幕作成にかかる経費等を助成対象経費に含めて支援を行っている。 2.(独)日本芸術文化振興会が運営する国立劇場等の施設において、字幕表示の実施等、 障害者基本法に基づき、障害者の利用環境向上に努めている。 【根拠、理由】 2.障害者基本法 第18条 国及び地方公共団体は、障害者の利用の便宜を図ることによって障害者の自立及び社会参加を 支援するため、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設について、障害者が円滑に 利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならない。 第21条 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意志を表示できるようにする ため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信 及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備 等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。 第22条(文化的諸条件の整備等) 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こ させ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行 うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する 活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。 |
ヒ ア リ ン グ 項 目 |
【ヒアリング項目】 2.文化に関する障害者施策の現状と課題について (3)障害者権利条約は、締約国に文化的な公演又はサービスが行われる場所へのアクセスを享受し、 並びにできる限り自国の文化的に重要な記念物及び遺跡へのアクセスを享受する ための適当な措置を講じることを求めている(30条1(c))。 これと関連する貴省の施策として、どのようなものがあるか。 また、現実には歴史的建造物などのバリアフリー化をすすめようとすると、 景観を損なうなどの理由で出来ないことがあるが、こうしたバリアフリー化の可否に関して、 それを判断するための統一的な基準はあるのかどうか、御教示いただきたい。 |
回 答 |
【結論】 1. 文化的な公演又はサービスが行われる場所へのアクセスについて 2.自国の文化的に重要な記念物及び遺跡へのアクセスについて 3.歴史的建造物のバリアフリー化について 【根拠、理由】 1. 文化的な公演又はサービスが行われる場所へのアクセスについて 障害者基本法
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ヒ ア リ ン グ 項 目 |
【ヒアリング項目】2.文化に関する障害者施策の現状と課題について (4)障害者権利条約は、締約国に知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作 品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのす べての適当な措置をとることを求めている(30条3)。しかし、現実には著作権などの問 題で、例えば知的障害のある人が理解しやすくするために、作品にルビをふる形での複 製はできないなどの問題が指摘されている。こうした課題への対応についてお考えがあ れば御教示いただきたい。 |
回 答 |
【結論】 現行著作権法上、「作品にルビをふる」形での複製が直ちに著作権者の権利侵害とな るものではなく、こうした複製が可能である場合もあるものと考えられる。 著作権法の考え方として、「作品にルビをふる」ことと、同一性保持権(著作権法 第20条)との関係が問題意識になることが考えられ、「ルビをふる」ことは、同条第 1項の「意に反する」改変にあたらないと解される余地や、同一性保持権の例外を規 定した同条第2項第4号の「やむを得ないと認められる」改変にあたると解される余地 があるものと考えられる。 【根拠、理由】 著作権法 第20 条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの 変更、切除その他の改変を受けないものとする。 2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。 一から三 (略) 四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを 得ないと認められる改変 |
別添
博物館等のバリアフリー対応状況
登録博物館・相当施設
博物館のスロープ等設備の保有館数
区 分 | 設置率 | 全館数 | 計 | 国 | 独立行政法人 | 都道府県 | 市(区) | 町 | 村 | 組合 | 民法第34条の法人 | その他 | |
スロープ | 登録博物館 | 64% | 907 | 582 | - | - | 107 | 276 | 42 | 2 | 1 | 146 | 8 |
相当施設 | 64% | 341 | 217 | - | 1 | 25 | 66 | 10 | 2 | 2 | 19 | 75 | |
計 | 64% | 1248 | 799 | - | 18 | 132 | 342 | 52 | 4 | 3 | 165 | 83 | |
障害者用トイレ | 登録博物館 | 75% | 907 | 681 | - | - | 121 | 329 | 49 | 2 | 2 | 168 | 10 |
相当施設 | 73% | 341 | 249 | 1 | 17 | 27 | 82 | 10 | 2 | 2 | 23 | 85 | |
計 | 75% | 1248 | 930 | 1 | 17 | 148 | 411 | 59 | 4 | 4 | 191 | 95 | |
エレベーター | 登録博物館 | 57% | 907 | 516 | - | - | 101 | 247 | 28 | - | 1 | 131 | 8 |
相当施設 | 49% | 341 | 167 | 1 | 19 | 23 | 40 | 7 | 2 | 2 | 13 | 60 | |
計 | 55% | 1248 | 683 | 1 | 19 | 124 | 287 | 35 | 2 | 3 | 144 | 68 | |
簡易昇降機 | 登録博物館 | 11% | 907 | 97 | - | - | 28 | 39 | 4 | - | - | 23 | 3 |
相当施設 | 11% | 341 | 37 | - | 6 | 2 | 11 | - | - | 1 | 4 | 13 | |
計 | 11% | 1248 | 134 | - | 6 | 30 | 50 | 4 | - | 1 | 27 | 16 | |
点字による案内 | 登録博物館 | 15% | 907 | 140 | - | - | 50 | 70 | 3 | - | - | 15 | 2 |
相当施設 | 14% | 341 | 47 | - | 5 | 10 | 18 | 1 | - | 1 | - | 12 | |
計 | 15% | 1248 | 187 | - | 5 | 60 | 88 | 4 | - | 1 | 15 | 14 | |
外国人向け案内 | 登録博物館 | 30% | 907 | 275 | - | - | 63 | 89 | 14 | - | 1 | 100 | 8 |
相当施設 | 35% | 341 | 120 | 1 | 12 | 17 | 28 | 1 | 1 | 2 | 13 | 45 | |
計 | 32% | 1248 | 395 | 1 | 12 | 80 | 117 | 15 | 1 | 3 | 113 | 53 |
出典:平成20年度文部科学省社会教育調査報告書