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障害者基本法改正に関する条文のイメージ素案(総則関係部分)「たたき台」に対する意見書

2010年10月12日

大谷 恭子

1、目的

「検討・精査を要するポイント」

  • 実現すべき社会のあり方に関する規定ぶり

「たたき台」は「障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会」としているが、この内容では不十分である。

「分け隔てられることなく、差異と多様性が尊重された共生社会」と明記し、「定義」に「共生社会」を規定するべきである。

2、定義

「共生社会」を定義すべきである。

「共生社会」の定義のイメージ

「共生社会とは、全ての障害者が社会の対等な構成員として位置づけられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無にかかわらず差異と多様性が尊重されて、地域社会で共に生活することが確保された社会のことをいう」

3、基本的理念

条文イメージ(2)

  • 「地域において生活する権利」の具体的な中身の整理(誰に対して何を求めるのか。)

「地域において生活する権利」は、障害者施策の基本理念として確認されるのであり、この基本理念に基づき、国および地方公共団体に対し、障害者が地域で生活することができるよう、具体的な施策を講ずることを権利として要求でき、国等に義務づけるものである。

これは前項の「その尊厳にふさわしい生活を保障される権利」と同じく、障害者の人権であり、第一義的には国等に対する権利である。

  • 同権利を明文化する必要性を基礎づける事実

「地域において生活する権利」は共生社会(インクルーシブ社会)を実現するための個人が有する重要な権利である。共生社会は、この個人の権利と差別の禁止、差別の定義に合理的配慮の不存在を認めること、さらに分離と排除が差別であり、特定な生活様式を強制されないこと、これらの個人の権利が保障されることによって実現される。

障害のないものは生まれたところで家族とともに、あるいは自分で選択した地域で生活することを当たり前のこととしているが、障害者が地域で生活するためには、住宅、移動のみならず生活全般にわたって様々な配慮および支援が不可欠である。障害のない人にとっては自由権である居住・移動の自由も、障害者にとってはその自由を確保するために国等にさまざまな合理的配慮と支援を要求せざるを得ないのである。また国民の障害者に対する理解も不可欠である。国等だけの支援で日常生活をするのではなく、地域社会での生活とは地域の人々とともに生活するということなのであるから、国民の理解および差別と偏見のない社会の構築も不可欠である。

これらのことを国等に要求するためには、障害者がこれらを要求する権利を有していることが必要である。この根拠となるのが「地域社会で生活する権利」である。

ちなみに、この権利は障害者権利条約19条に明記されたものである。障害者権利条約は言うまでもなく人権条約であり、ここで規定された権利は、障害者の人権として保障されなければならないものとして規定されている。

また講学上、自己決定権、肖像権、環境権など「人格的生存に不可欠なもの」が「新しい人権」として認められるとされているが、障害者にとって「地域社会で生活する」ということはまさに生存そのものに係るものである。この観点からも、人権として「地域社会で生活する権利」を明記するべきである。

また障害者にだけことさらに「地域社会で生活すること」に権利性を持たせることについては、たとえば少数民族の権利である「自己の言語を使用する権利」(国際人権規約B規約27条)、子どもの権利として「意見表明権」(子どもの権利条約12条)と同じく、マイノリティである障害者にとってそれを実現することに困難が伴うことが共通の認識としてあるからである。

ただし、わが国政府および最高裁は、時代の変化に伴って新たな人権を認めることに慎重であり、実態的にはそれら権利が存することを認めつつも文言上は環境権という文言を避け、人格権としか表現されなかったり(大阪空港訴訟)、環境基本法においても環境権の概念は盛り込まれていない。

しかし、最低限人権条約において明記された人権は批准と同時にその遵守が義務づけられるのであるから、これを国内法においても明記するべきである。障害者権利条約もすでに署名され批准が約束されているのであるから、条約上明記された「地域社会で生活する権利」を、インクルーシブ社会(共生社会)を実現するために個人の有する権利として、障害者基本法の基本理念として明記するべきである。

4、たたき台に記載のないもの

総則に以下の規定を盛り込むべきである。

  • 障害女性に対する配慮
  • 障害児の権利
  • 事業者等の責務
  • 法制上の措置等