障がい者制度改革推進会議 第22回(H22.10.27) 資料1
第21回推進会議資料「障害者基本法の改正に関する条文イメージ素案(総則関係部分)」に関する新たな意見一覧
目次
1.目的
<条文イメージ>
この法律は、障害者が、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体であることを確認し、かつ、障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。(現行法第1条関係)
【中西委員】
(結論)
「障害者が、障害者でない者と等しく」という箇所は、「障害者が、他の者と等しく」に変える。
(理由)
「障害」が繰り返し出てきて意味を反って理解しにくくしているので簡略して表現するので十分である。
2.定義
<条文イメージ>
(1)障害の定義を、身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷とすること。
(2)障害者の定義を、障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者とすること。(現行法第2条関係)
【尾上委員】
(結論)
たたき台(1)の「障害」を、「機能障害」とした上で、当日述べた意見の通り、「身体的障害、知的障害、精神障害」など、障害者権利条約第1 条の書きぶりにならい「~的」を入れる。
それに伴い、(2)を、「前項の機能障害を有し…」と変更する。
(理由)
「障害者権利条約(以下、権利条約)」の英語の原文では、機能障害をあらわす「Impairment」と表記するとともに、機能障害等によってその人の生活や行動が制限・制約されることを「Disability」と表記している。
これは、障害者の社会参加の制限や制約の原因が、個人の属性としての「Impairment」にあるのではなく、「Impairment」と社会との相互作用によって生じるものであることを示している。そして、その表記として使用されているのが「Disability」である。
そうした「Impairment」と「Disability」の区別をふまえて、できるだけ社会モデル的な定義とする必要があるから。
【佐藤委員 1】
(結論)
この法律において障害とは、国際生活機能分類(ICF)が示す機能障害(構造障害を含む)、活動制限(活動障害)および参加制約(参加障害)の総称である。
(理由)
「障害」という言葉は、10月12日の第21回推進会議の資料1(総則部分の条文イメージ素案)だけみても数多く使われている。従って、この言葉を使うのか、別な言葉を使うのかの検討の余地はあるが、「障害」の定義はなくし「障害者」の定義のみですませるという意見には無理があろう。
条文イメージ素案の1の「目的」や8の「国民の責務」では、「障害の有無にかかわらず」、3の「基本的理念」では「障害の種類に応じた意思疎通の手段」、10の「施策の基本方針」では「障害の種類と程度」となっている。
これらは「障害」=(条文イメージ素案の表現を使えば)「心身機能の損傷」の意味であり、権利条約やICFの表現を使えば機能障害である。なお、ICFではより詳しくは「機能障害(構造障害を含む)」(厚労省訳)とされる。
さらに4の「差別の禁止」では「障害を理由とする差別」という表記がある。ここでの「障害」は、1,3,8,10での「障害」と全く同じとはいえない。「障害を理由とする差別」における「障害」を「心身機能の損傷」(機能障害)と理解することとした場合には、次のようなことが起きる。すなわち、視覚障害者を差別しても「障害(機能障害)によるものではない。字が読めないことが理由だ。」と言い逃れを許しかねない。また「精神障害が不採用の理由ではない。長期の失業者であるから断った」と抗弁されるかもしれない。
この問題を解決するには2つの方法がある。1つ目はICFの障害概念の活用である。ICF では障害を機能障害(構造障害を含む、impairment)、活動制限(activity limitation)、参加制約(participation restriction)の総称としている。わかりやすい表現を使えば、障害は機能障害、活動障害、参加障害の総称である。このような障害概念とすれば上記のような抗弁は阻止できる。
もう一つは、障害=機能障害という定義を設けつつ、「障害に基づく差別には、障害のために補装具を使用していることや活動や参加の困難があることなど、障害に関連したできごとを理由とした差別が含まれる」という規定を設けることである。
しかしこれら2つの方法をとってもなお、障害者権利条約の障害の概念との根本的な違いはどうにもならない。
条約に基づけば、障害の種類とは参加障害の分野の違いであり、労働の障害、スポーツの障害、住宅確保の障害、情報入手の障害などと種類が列挙される。これに対して条文イメージ素案の障害=機能障害(心身機能の損傷)という定義では、障害の種類は視覚障害、肢体不自由、知的障害等々となる。
こうした全く異なる障害の定義を条約と基本法といういずれも実体法の上位に位置づけられる法律に設けることは、法律の実施過程で大きな混乱が生まれることになろうし、論理性という点から国民の信頼を得にくくするものであろう。
この(1)の提案は、権利条約の(社会モデル的な?)障害の概念を含みつつ、かつ現状の日本の法律の定義や人々の障害理解である障害=機能障害をも継続する、統合型の定義である。従来通り障害=機能障害とすれば、新障害者基本法は医学モデルを変えないばかりか逆にそれを明確に定義し固定化したと批判される。権利条約の定義そのものを採用すれば、今度は機能障害が含まれずにいろいろな混乱と不利益が生じる。
ICFの活用については旧政権時代の障害者基本計画(2002年策定)でも、「WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)については、障害の理解や適切な施策推進等の観点からその活用方策を検討する。」としてきたものであり、唐突なものとはいえない。
【佐藤委員 2】
(結論)
この法律において障害者とは、身体的又は精神的な機能障害があり、かつ社会におけるさまざまな障壁との相互作用により、日常生活又は社会生活における相当な制限を受ける者とする。
(理由)
障害者権利条約は、障害者には、障壁と相互作用して参加障害を生み出す可能性のある機能障害のある人が含まれるとしている。この考え方をふまえた定義の提案である。
ただし単に機能障害としたのでは理解されにくい面があり、かといって10月12日の条文イメージ素案のように「身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷」としても、「身体障害、知的障害、精神障害又は感覚障害その他の心身機能の損傷」としても、具体例を列挙すればするほど列挙されないタイプの機能障害が無視される危険性が生じてしまう。
なお、権利条約が身体・知的・精神・感覚の4タイプを列挙しているので、日本でもそのまま採用をとの意見に一理はあるが、日本では一つの法律上の区分となっている発達障害が宙に浮きかねない。また、英語圏では一般に慢性疾患にともなう障害が身体障害に含まれ、感覚障害が身体障害に含まれるか否かあいまいであるためにしばしば身体障害または感覚障害(physical or sensory disability)と表現されるのに対して、日本では歴史的に身体障害に肢体不自由と感覚障害が含まれるのが一般的であり、内部障害や慢性疾患に伴う障害が身体障害に含まれるかどうかの理解があいまいであるという、ねじれともいえる表現上の差異がある。
(2)のように「身体的又は精神的な機能障害があり・・・」と幅広いイメージを示すのが最善であり、これは1975年の障害者権利条約で「身体的又は精神的能力の不全のために・・・」としていることとほぼ同じである。
ICF の「機能障害」の概念を採用することによって、従来「谷間」に置かれがちであった各種内部臓器機能の障害(ICF のb4「心血管系・血液系・免疫系・呼吸器系」、b5「消化器系・代謝系・内分泌系」、b6「尿路・性・生殖系」)が含まれることになり、また、「痛みの感覚」(b280)、「易疲労性」(b4552)、「皮膚及び関連部位の構造」(S8、火傷の痕などを含む),「運動に関連した構造」(s7、小人症などを含む)も含まれる。
【中西委員】
(結論)
(2)原文に「環境」を追加し、「様々な障壁と環境との相互作用」とし、「相当な」を削除した単純に「制限を受ける」とする。
(理由)
たんなる障壁との相互作用ではなく、人ごみや、込み合った公共交通機関、緊張する雰囲気などの環境によってパニックや混乱が生じるので環境要因を追加すべきである。
「継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受けるもの」との表現は、「相当な」の意味の解釈の仕方によって、障害者として認定されない者を産み出す結果となる。出来る限り障害の範囲を広くとるために「相当な」を削除した。これで行政側に障害者でないことを証明する義務が発生することになる。原文では証明責任は障害者本人に帰することになる。
3.基本的理念
<条文イメージ>
(1)すべて障害者は、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有するものとすること。(現行法第3条第1項関係)
【中西委員】
(結論)
「目的」の箇所と同様に、「障害者が、障害者でない者と等しく」という箇所は、「障害者が、他の者と等しく」に変える。
(理由)
「障害」が繰り返し出てきて意味を反って理解しにくくしているので簡略して表現するので十分である。
<条文イメージ>
(2)すべて障害者は、障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有するとともに、自らの決定に基づき、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を有するものとすること。(現行法第3条第2項関係)
【大久保委員】
(結論)
挿入した「障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有するとともに、自らの決定に基づき、」は、修正する必要があると考える。
(理由)
「自らの判断により」という文言が、「判断能力」と結びつけられ、知的障害のある人たちにとって逆に不利益を生ずる危険がある。また、文章上も特に入れる必要性も感じられないため削除することが適当と考える。さらに、「自らの決定に基づき」も、同様に、文章上からも、その文言を入れる必要性は感じられないため、削除してよいと考える。
【尾上委員】
(結論)
「自らの判断により」を削除し、「居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有し」を挿入する。 「あらゆる分野の活動に参加する機会を有する」を、「あらゆる分野の活動に参加する権利を有する」に変更する。
(理由)
障害者権利条約第19 条では、「(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること、並びに特定の生活様式で生活するよう義務づけられないこと」とされている。
たたき台原文では、「自らの判断により」と障害者の側の判断が強調された形になっているが、一つには、「支援を受けながらの自己決定」というニュアンスが読み取りにくいこと、二つには、地域で暮らせる条件・選択肢の整備という客体的条件の問題が焦点化されにくいという難点があると考える。
そうした点から、「自らの判断により」を削除するとともに、権利条約第19条(a)を受けて、「居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有する」という文章を挿入することで、そうした点が改善されると考えるから。
また、これまでの推進会議での議論で確認されてきた通り、障害者権利条約は「障害者を保護の客体から権利の主体へ」というパラダイムの転換を求めている。
そうしたパラダイム転換を象徴的に示しているのが、障害者権利条約の第19条である。今回の障害者基本法の抜本改正は、障害者権利条約の批准に向けた制度改革の一環として行われるものであるから、「障害者の地域において暮らす権利」の明記は必須である。
さらに、「保護の客体から権利の主体」へのパラダイム転換からすると、「参加の権利を有する」との表記がよいと考える。
【中西委員】
(結論)
「必要な場合に支援を受けて」を追加し、「必要な支援を受けて参加する機会」とする。
(理由)
社会参加ができるのは当然のことであるが、これまでは支援がなかったために、実質的な参加の機会を奪われてきた。そのため必要な場合に支援を受けを追加する。
<条文イメージ>
(3)すべて障害者は、手話等の言語その他の障害の種類に応じた意思疎通の手段の確保の重要性にかんがみ、日常生活及び社会生活において、可能な限り容易にそれを使用することができるよう配慮されなければならないこと。(新設)
【門川委員】
(結論)
すべての障害者にとって、音声言語、手話、その他の非音声言語、その他、感覚機能障害と環境との関係で生じる障害のニーズに応じた意思疎通の手段が確保されることの重要性をかんがみ、日常生活及び社会生活のあらゆる場面において、可能な限り容易にこれらを使用することができるよう配慮されなければならない。
(理由)
手話を言語であると明記することにより、日常生活及び社会生活のあらゆる場面における手話通訳やコミュニケーションの保障を行う。手話による通訳、またはコミュニケーションの保障とは、聴覚障害者のみを対象としているのではなく、盲ろう者の接近手話や触手話、難聴者がノートテイクや補聴システムと併用する場合の手話も広く対象となる。
障害者権利条約第2条の言語の定義では、「言語とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」と規定されている。先天性の重度重複盲ろう児・者が使用している身振りやサイン等は非音声言語に属するが、これらも言語として音声言語や手話と同等に扱われるべきである。
現行法では、障害の種類が盲ろうなど独自の障害として位置づけられていないものがある。したがって、障害の種類という表現は谷間の障害者を生み出すことにもつながりかねない。障害の種類ではなく、機能障害と環境との関係で生じる障害のニーズに応じてという表現のしかたが望ましい。
【中西委員】
(結論)
「障害者」に「障害のない者」を追加し、「すべて障害者と障害のないものは」とする。
(理由)
手話等の意志疎通手段は、障害のない者にとっても障害のある者とのコミュニケーションに必要なものであり、主語をすべての障害者に限定せず、障害のない者ともに主語とすべきである。
4.差別の禁止
<条文イメージ>
(1)何人も、障害を理由とする差別(障害者が、障害者でない者と実質的に平等に活動することを可能とするため、個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないことを含む。以下同じ。)その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと。(現行法第3条第3項関係)
【中西委員】
(結論)
括弧内に「またその場合に均衡を失した又は過度の負担を課さないこと」を追加し、「個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないこと、またその場合に、均衡を失した又は過度の負担を課さないことを含む。以下同じ。」
(理由)
何人も障害を理由とする差別を行ってはならないことは規定すべきであるが、その場合に均衡を失くした過度の負担を課すべきとは思わない。差別禁止法を、実効あるものにするためには、経済的な過度の負担を企業などに課すことはその実効性を損なうものである。ただし行政に関してはその限りではないと考える。
【遠藤オブザーバー】
(結論)
基本法としての位置づけを踏まえた規定とすべきである。過度の負担のあり方を含めて差別禁止の類型や定義など、予見可能性を担保できるような具体的な議論が今後求められており、設置予定の差別禁止部会(仮称)での議論に委ねるべきであると考える。
<条文イメージ>
(2)国は、障害を理由とする差別の防止に関する普及啓発を図るため、障害を理由とする差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行うものとすること。(新設)
委員からの意見なし
5.国民の理解
<条文イメージ>
国及び地方公共団体は、第三条に定める基本的理念に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講じなければならないこと。(現行法第5条関係)
委員からの意見なし
6.国際的協調
<条文イメージ>
障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援が国際社会における取組と密接な関係を有していることにかんがみ、障害者に関する施策は、国際的協調の下に行われなければならないこと。(新設)
【中西委員】
(結論)
「あわせて、国際協力活動を推進し、諸外国の障害者の自立および参加の支援に取り組むこと」を追加する。
(理由)
国際協力も国際協調との関連で実施されるべきものであることを鑑み、追加した。
7.国及び地方公共団体の責務
<条文イメージ>
国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援する責務を有すること。(現行法第4条)
委員からの意見なし
8.国民の責務
<条文イメージ>
国民は、障害の有無にかかわらず、分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができるよう努めなければならないこと。(現行法第6条関係)
委員からの意見なし
9.障害者週間
<条文イメージ>
国民の間に広く障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加することを促進するため、障害者週間を設けること。(現行法第7条関係)
【中西委員】
(結論)
{ }内を追加し、「積極的に」を削除して「障害者が{希望を妨げられることなく}社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加できる環境を促進する」と変更する。
(理由)
障害者週間がお仕着せの啓発活動を実施する堅苦しい週間とならないように表現を追加し、障害者の自由意思による参加であるべきであるので「積極的」は削除した。
10.施策の基本方針
<条文イメージ>
(1)障害者に関する施策は、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならないこと。(現行法第8条第1項関係)
委員からの意見なし
<条文イメージ>
(2)障害者に関する施策を講ずるに当たつては、障害の種類及び程度による支援の格差が生ずることのないよう配慮がなされるとともに、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、自らの判断により地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならないこと。(現行法第8条第2項関係)
【長瀬委員】
(結論)
「かつ、障害者が、自らの判断により地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならないこと」から「自らの判断により」を削除する。
(理由)
障害者の主体性を尊重するという積極的な意味での加筆と解されるが、地域生活の促進という障害者の権利条約や「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(第1 次意見)ならびに(閣議決定)が求める方向性に基づき、不要であるため。
<条文イメージ>
(3)障害者に関する施策を講ずるに当たつては、障害者その他の関係者の意見を聴き、当該意見が尊重されなければならないこと。(新設)
委員からの意見なし
11.障害者基本計画等
<条文イメージ>
政府は、障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならないこと。(現行法第9条第1項関係)
委員からの意見なし
12.その他
(1)地方モニタリング機関
【関口委員】
(結論)
地方委員会はモニタリングのみでなく、施策の推進の役割があることから、自治体に勧告するだけでなく、その結果を中央委員会に報告する。中央委員会はそれを受けて、国連の条約体に報告する。なお、モニタリング及び推進は条約上は、国の義務であることから、中央委員会は自治体に直接調査し勧告することができるものとする。
(理由)
施策の進行度が中央に報告されないと勧告の実効性が担保されないことから。
その他は上記の通り。
【森委員】
(結論)
地方モニタリング機関の設置は必要と考えるが、但し、地方公共団体には、既にモニタリングの役割に相当する機関が設置されていることを考えると、その既存の機関との調整(整合性)を十分に調査または精査を含め、地方モニタリング機関の在り方を検討するべきと考える。
(2)新しい権利規定について
【竹下委員】
(結論)
障害のある人の生存権を保障するために「地域で人間らしく暮らす権利」などは新しい権利という側面を有するとしても、それは従来の憲法上の権利を障害のある人の生存権及び基本的人権の保障という場面で変形(変容)されたものにすぎないと見るべきである。
(理由)
障害のある人の権利条約も「新しい権利の創設」ではなく、障害のある人の生存と基本的人権(あるいは人間らしい生活)を保障するものとしてこれまでの諸権利の具体化に過ぎないとされていると見るべきである。たとえば、わが国において「禁煙権」や「環境権」は新しい権利としての側面を有するとともに、それらは憲法13条に基づく基本的人権の一作用として位置づけられてきたことも参考にすべきである。
(3)法制上の措置等
【松井委員】
(結論)
現在の障害者基本法の総則の第10条にある「法制上の措置等」は、改正法でも残すべきであろう。
(理由)
基本法に基づく施策をすすめるには、法制上及び財政上の措置が不可欠であるため。
(4)障害者相談・支援部門の設置
【新谷委員】
(結論)
国・地方自治体に障害者相談・支援部門の設置を義務つける。医療機関、民間事業体にも同様な部門設置を義務つける。