第25回障がい者制度改革推進会議(H22.11.15) 佐藤久夫委員提出資料
障害者基本法改正における障害・障害者の定義について
2010年11月5日
日本社会事業大学 佐藤久夫
前回(10月12日)提出した佐藤案
(1)この法律において障害とは、国際生活機能分類(ICF)が示す機能障害(構造障害を含む)、活動制限(活動障害)および参加制約(参加障害)の総称である。
(2)この法律において障害者とは、身体的又は精神的な機能障害があり、かつ社会におけるさまざまな障壁との相互作用により、日常生活又は社会生活における相当な制限を受ける者とする。
今回の佐藤案
(1)-1 この法律において障害とは、身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、活動制限(活動障害)または参加制約(参加障害)を意味する。
(1)-2 この法律において障害とは、身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、日常生活又は社会生活における相当な制限を意味する。
(2) この法律において障害者とは、前項の障害を有する者を意味する。
説明
まず、障害を定義し、障害を有する者を障害者という、とするのが素直でわかりやすい。
我が国でも国際的にも、1980年のWHO国際障害分類以降は、障害とは機能障害、能力低下、社会的不利の3つの次元からなるとの理解が定着してきている。
一方、障害=身体障害、知的障害、精神障害など機能障害とする医学モデル伝統が日本の法制では一般的で、このため法律でも地域や施設の現場でも「障害の種類と程度」などの表現はもっぱら機能障害を意味している。
これは障害者権利条約の障害の考え方と正反対であり、このままでは権利条約に照らして見直したことにならない。また制度改革とも矛盾が生じる。たとえば、6月29日の閣議決定では「障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について、就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討する」としており、機能障害以上に職業生活の困難さを重視してみるよう促している。
こうして、3つの次元からなる障害という見方を法律に規定することが適切である。同時に権利条約が強調する障壁との相互作用という理解も導入する。
なお、(1)―1はICFの表現を採用し、(1)-2は、現行基本法の規定ぶりを残したもので、実質はほぼ同じである。