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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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小川委員提出資料

第3 回障がい者制度改革推進会議 「自立支援法」「雇用」意見

JDF 代表 小川榮一

※ 障害者権利条約の日本語仮訳については「2008 年5 月30 日付け川島聡=長瀬修仮訳」を引用
※ 東参与作成資料「たたき台」に基いて、障害者権利条約は「条約」と記した

分野 項 目 論 点 等 JDF意見
自立支援法 地域社会で生活する権利 1、権利規定を明文化する必要性についてどう考えるか 明文化すべきである。条約第19 条では地域生活の権利を規定し、どこ で誰と住むか選択することができ、特定の生活様式を義務付けられな い、としている。この規定に関して、国連人権高等弁務官事務所は、① 政府の政策を施設収容から、在宅や地域支援サービスへ転換することを 要求し、②障害者がどこで誰と住むか決定する権利を承認し、③自立生 活の確立のためには脱施設(de-institutionalization)だけでなく、社 会サービスや健康・住居、雇用サービスが要求され、④これらが法的権 利として確立される立法的枠組みが必要でありすなわちこれは政府や サービス提供者への義務となる、と解釈している(2009 年1 月)。少 なくとも障害者がどこで誰と住むかを請求することができる根拠とな る権利規定が必要である。
2、自立の概念についてどう考えるか 条約19条のタイトルに使用されている「自立した(independently)」 は自己決定(条約上のautonomy)の意で使用されている。これは、国 際人権条約上、本条約において初めて導入された新たな概念である。 さまざまな支援を受けながら自己決定して地域で自立した生活をする ことを意味するのであり、自立の概念は「一人で独立して」という意 ではない。
障害の定義、適用範囲 1、障害の範囲についてどう考えるか 条約は、社会参加が不利となる原因をいわゆる機能障害と見るので はなく、社会の環境との相互作用によるもの、とする障害の社会モデ ルを採用し、第1 条で「全ての障害のある人」の権利と尊厳を保護、 尊重する、とある。また、19 条の柱書きで「障害のある全ての人に対 し、他のものとの平等の選択の自由をもって地域社会で生活する平等 の権利を認める」とある。
2008 年以降、社会保障制度審議会障害者部会において、多数の委員、 ヒアリング団体から、障害者自立支援法の障害の範囲を、障害手帳を 持っていない、いわゆる発達障害、高次脳機能障害、軽中度難聴、難 病等についても対象となるように同法第4条の見直しが必要との見解 が示されていたところであるが、昨年3 月の改正法案にその旨が一部 しか反映されていなかった。いわゆる「谷間の障害」を生んでいると ころであり、上記条約の規定に明らかにそぐわない。現行の手帳制度 などの一律の医学的な認定基準でサービスの適用範囲を決定する現行 制度を見直すべきである
法定サービスメニュ 1、現行規定にない社会モデルの視点に立ったサービスメニューは必要か 教育や労働、政治参加など社会参加に関するサービスメニューが必要である。
2、自立支援給付と地域生活支援事業の区分けは必要なのか 全ての障害者の社会参加を保障し、権利を担保する法律とするために は、現行の区分けは再検討されるべきである。 例えば、情報保障に関連して、条約第21 条では、「手話、点字、拡 大代替〔補助代替〕コミュニケーション並びに自ら選択する他のすべ てのアクセシブルなコミュニケーションの手段、形態及び様式を用い ることを受け入れ及び容易にすること」を求めている。しかし、自立 支援法では、コミュニケーション支援など「市町村地域生活支援事業」 は裁量的経費の中に位置づけられており、「盲ろう者向け通訳・介助 員派遣事業」等の都道府県地域生活支援事業も同様である。手話通訳 者や要約筆記者、通訳・介助者等の派遣事業は、未実施の市町村や県 が多く残され一部自治体では有料化も始まっている。地域によってコ ミュニケーション支援の確保を困難にする事態が生じている。 また、第20 条では、「障害のある人が選択する方法で及び時に、か つ、負担可能な費用で、障害のある人の個人の移動性を容易にするこ と」とされている。しかし、障害者の社会参加に関わる移動支援事業 が裁量的経費の地域生活支援事業とされ、各種の利用制約や費用負担 により移動が困難になるなど条約の規定に抵触する状態も生じてい る。
3、法定メニューの障害者の生活構造に沿った再編成とシンプル化についてどう考えるか  
4、自己決定支援の必要性についてどう考えるか 全ての障害のある人の国際人権条約上の新しい概念たる「自立」した 生活を地域で実現するためには、自己決定支援は必須である。
支給決定プロセス 1、ニーズ把握の基本的視点をどこに置くか(例えば、本人の障害の状況、本人の自己決定・選択、置かれた環境、及びそれらの相互関係)  
2、障害程度区分の廃止とそれに代わる協議・調整による支給決定プロセスのための体制構築についてどう考えるか  
3、セルフマネジメント・本人 中心計画と相談支援機関、ピ アカウンセリング・ピアサポ ートの役割についてどう考 えるか ピア・サポートについては、条約26条1項で、地域における自立とインクルージョンの達成のためにピア・サポートを活用するとあり、制度の根幹の一つに位置づけるべきである。
4、不服の場合の異議申立手続きについてどう考えるか  
地域移行 1、重度障害者の24時間介護体制の構築についてどう考えるか 条約第19 条の「障害のある全ての人」のどこで誰と住むかを選択する ことができる権利を認める、という規定からも、24 時間の介護体制の 確立は必要となる。権利の問題である。 また、条約第19 条には、障害者の自己決定に基づく当事者主導のサー ビスである「パーソナル・アシスタンス」を含むサービスの確保が明 記された。今後の居宅介護の質的量的充実及び介護者の確保と、長時 間の見守りを含む重度訪問介護を知的障害者にも対象拡大する必要が ある。
2、地域移行プログラムの法定化と期限の設定についてどう考えるか
3、地域移行支援策の法定化についてどう考えるか
条約19 条は「地域移行」を国の政策とするように定めている。(a) 項では、障害者は特定の生活様式が義務付けられない、としている。 特定の生活様式とは、入所施設や病院などを指す事は、条約交渉の過 程からも明らかであり、特定の生活様式が実質的に強要されているこ とが即時的に是正すべき場合もあることも、権利条約の交渉過程から 明らかである。現在、13 万人の知的障害者、8 万人の身体障害者が入 所施設で生活しており、34 万人の精神障害者が精神科病棟での生活を 送っている。いわゆる他の先進国と比較しても非常に大きい数値であ る。それだけ、地域生活支援のための社会資源も不足している。こう した現状を変えるためには、諸外国の取り組みからも学び、地域移行 促進のための法律が必要である。
利用者負担 1、応益負担の廃止についてどう考えるか 正しい決定であると考える。条約第28 条2 項で、「締約国は、社会保 護についての障害のある人の権利及びこの権利を障害に基づく差別な しに享有することについての障害のある人の権利を認めるものとし、 この権利の実現を保障し及び促進するための適切な措置をとる。これ には、次の措置を含む。」とし、その(a)では、「障害のある人が、 清浄な水に平等にアクセスすることを確保するための措置、並びに障 害のある人が、障害に関連する必要に係る適切かつ負担可能なサービ ス、器具・装具〔福祉用具〕その他の支援にアクセスすることを確保 するための措置」とある。類似の規定が第19 条(c)や第20 条(a) にも存在する。障害福祉サービスの利用に対し、定率に負担を求める 自立支援法の規定と条約の規定は抵触する。
2、負担の有無についてどのような原則と考え方をとるのか 現時点では、能力に応じた負担という応能負担が原則であるべきと考 える。生活していくうえでの基本的権利であるコミュニケーション支 援等は財政上義務化とすべきであり、全市町村および全県での完全実 施、無料化を徹底すべきであると考える
3、新基準の設定についてどう考えるか  
医療支援 1、医療支援のあり方についてどう考えるか  
2、負担問題についてどう考えるか  
その他 1、現行の障害程度区分に基づく国庫負担基準の問題についてどう考えるか  
2、障害者の地域生活のための財政負担の強化についてどう考えるか 繰り返しになるが、条約は国の政策を施設収容から地域へとすることを求めている。 施設から地域へ」とのスローガンは掲げられても、未だに施設中心のサービス・財源構成となっているのが現実である。 そのため、厚生労働省の資料でも、過去2年間で「施設からの地域生活移行者」を倍する者が、 新たに施設に入所している状況が明らかになっている。 (2005 年→2007 年の地域生活移行者9,344 人に対して、新規入所者18,556 人。 2008 年5月社会保障審議会・障害者部会資料)。 以上のことからも施設や病院から地域への移行に関する現行の施策において、 実質的な地域移行は進んでいないと認識しており、障害福祉サービス予算の配分を地域生活に重点化すべきであると考える。
3、地域間格差をどのようになくしていくのか  
雇用 一般就労(雇用促進法) 1、適用範囲(手帳制度の問題点)についてどう考えるか 障害者雇用促進法の適用範囲は、障害種別の福祉法で規定されている医療モデルに基づく手帳制度を根拠としている。 労働場面での支援の必要性の実態と乖離している重度障害の定義及び障害の範囲の見直しが必要である。
2、障害の種別による制度的格差についてどう考えるか  
3、現行法定雇用率制度の問題点(雇用率、ダブルカウント 制度、特例子会社、雇用納付金制度等)についてどう考えるか ○法定雇用率
第27条(g)項に関連して、国及び地方自治体は、民間に率先し模範的に 障害者雇用促進をおこないかつ現行の雇用率の設定の引き上げも行う べきである。
○ダブルカウント制度
JDF加盟団体による調査によると、シングルカウントによる実際の雇用 率は2005年度で1.09%ということで、1993年の数値と大きな変化が無 いという結果が出ている。また、ダブルカウント制度は障害者の尊厳 に関わる問題であり、差別問題である。実際の雇用促進効果に疑問が もたれ、しかも差別性を帯びているダブルカウント制度に代わる制度 が必要である。
○特例子会社
障害者と障害のない人との分離された雇用体系と考えられる。条約第2 7条第1項柱書きでは、障害者への労働をもつ権利の中には、インクル ーシブでアクセシブルな環境において、障害のある人が自由に選択し 、引き受けた労働を通じて生計を立てる機会の権利も含まれる、とあ る。現行の特例子会社並びに支援法上の就労支援・就労移行体制は、 条約の規定にあるインクルーシブな環境であるといえず、障害のない 人と平等に職業や職場を選択する権利を保障する制度となっていない 。
○雇用納付金制度
4、職場における合理的配慮の実現プロセスと異議申立についてどう考えるか 今後、法制化されるべき差別禁止法の規定に則って、実現されるべきものであるべきと考える。
福祉的就労(自立支援法) 1、労働者性と労働法規の適用についてどう考えるか 条約第27 条(a)では、あらゆる形態の雇用に係るすべての事項に付き、 障害に基づく差別を禁止している。自立支援法上の就労移行事業や就 労継続支援事業は条約上の「あらゆる雇用形態」に含まれると思われ るが、特に、①利用者負担、②就労継続支援事業所への労働法規の適 用の問題が解決されないと条約に抵触すると考えられる。
2、最低賃金と賃金補填についてどう考えるか 最低賃金法の「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」 という最低賃金減額特例は、障害について直接言及しており、障害に 基くあらゆる分離、排除、制限を差別とする条約2 条に抵触しており、 改正すべきである。スウェーデンやオランダなどのように、労働対価 の不足分については、事業者に負担がかからないように国等で最低賃 金分を保証すべきである。
3、就労支援事業のあるべき姿についてどう考えるか  
4、一般就労における就労支援(通勤支援、身体介護、ジョブコーチ)についてどう考えるか  
シームレスな支援 1、一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービスの断絶の問題についてどう考えるか 至急是正の必要な部分であると思われる。例えば、自立支援法上の就労支援では、その制度の利用者は一定の負担を強いられ、一方、障害のない人の就労支援は無料の職業訓練校利用や日当も支給される。 障害のない人及び一般就労につながる障害者と、そうでない障害者の制度上の差別である。 権利条約第19 条(c)では、他の者と平等に障害者が地域社会サービス及び施設が利用可能であり、障害者のニーズに応ずることを確保する、とある。
雇用の創出 1、社会的事業所の法制度化についてどう考えるか  
2、いわゆるハート購入法についてどう考えるか  
その他 1.関連法体系全体をどう考えるか ①現行の障害別福祉法(身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保 健及び精神障害者福祉に関する法律、発達障害者支援法)と新たな「総 合的な福祉法制」との関連、②雇用政策と「福祉的就労政策」との関係 、③医療と福祉との関係、④障害のある子どもの法的な位置づけ 等を 総合的に再検討する必要がある。
2.授権法体系の問題 たたき台の項目「地域社会で生活する権利」の①に関連するが、現行法 体系は広範な裁量を行政機関に許容する授権法となっている。権利と してサービス等の提供を請求できる担保となる法制度とはなっていな いという問題がある。
3.雇用の継続および発展・職場復帰のための制度確立 雇用促進法の適用時期は永続的なものではなく、条約の規定上、現行 の雇用促進法を、雇用の継続および発展を明確に位置づけた法律に改 変すべきである。そのためには、障害者への個別の支援、受け入れ側 の体制整備も同時に行われなければならない。例えば、電動車椅子と 介助者を利用して社会生活をする障害者には、通勤に対する支援(例 えば介助者やガイドヘルパー利用のための支援)職場での合理的配慮、 職場介助が必要となる。国や自治体、企業がそれぞれの役割を分担す ることになるが、体系だった支援が必要となるのはいうまでも無い。 条約が規定する権利の実施にはこうした体系が必要であるということ である。しかし、現行体制では、自立支援法、雇用促進法が別体系で 施策が進められており、雇用の継続および発展のための法律は存在しない。 まず、自立支援法には社会参加への支援が規定されていない。