障がい者制度改革推進会議 第32回(H23.5.23) 資料1―4
第三十二回障がい者制度改革推進会議 意見提出フォーマット
災害と障害者
4、今回の災害において求められた被災障害者への支援について
① 災害後の必要な支援は障害種別ごとに特徴があると思われます。今回の災害において、求めれた支援について、下記に例示したような種別ごとに特に必要とされたものと障害の種別には関係なく求められたものを分かる範囲でお示しください。障害ゆえに必要なものか、それとも一般的に必要なものかという区別が困難な場合でも、具体的にお示しいただきたい。
(・肢体・視覚・聴覚・難聴・盲ろう・知的・精神・発達・難病・重心)
【大濱委員】
- 肢体
- 排泄・清拭等のできる個室と暖房
- ベッド
- 水
- 車椅子対応トイレ・シャワー
- 発電機・バッテリー(呼吸器・吸引器などのため)
- 障害独自の特殊な医療系などの消耗品調達のための衛星電話等通信手段
【尾上委員】
○肢体
- 独居の車いすユーザー、視覚障害者などは、警報が聞こえても、ヘルパーがいない時間帯であったため、避難ができず犠牲になった人がいる。
- 避難所等の居住環境や災害による道路等の破損による物理的障壁は、生活に多くの制限と制約をもたらす。
- 日常生活(食事、排泄、入浴、移動等々)に介助を要する場合は、その介助者が確保できないために生活自体が成立しなくなる。
○視覚・聴覚・難聴・盲ろう
- 津波警報が出されても、聴覚障害、盲ろう者等には分からなかった。
- 政府の記者会見で手話はつけられるようになったが、字幕がつけられていない。
- 避難生活において提供される様々な情報を入手することができない。
- 視覚及び盲ろうは、生活環境が一変するため、行動範囲の制限が高まる。
- 震災後の被災者むけ相談や生活支援ハンドブック等に記載される連絡先は、音声電話番号しかなくFAXやメール等での問い合わせができない。
○知的・精神・発達
- 特に、避難所生活など困難な状況が長期化する中で、障害に対する社会的偏見やその行動等から排除または差別を受けることが懸念される。また、精神の場合には、必要とする薬の入手等が困難な状況から状態の悪化等も想定される。
○難病・重心(医療的ケアや医療機器を使用している障害児・者を含む)
- 人工呼吸器等の電源及び代替機器や胃ろう等の医療用具や流動食及び人工透析体制等の確保は、生命維持に直結する。
●さらに、設問で示された障害種別だけでなく、「障害のある女性」という複合的な差別に置かれた立場からの検討も必要である。改正基本法の議論で「障害のある女性」という項目が設けられない理由に、これまでそうした視点からの施策がなかったことがあげられた。障害のある女性をとりまく複合的差別の視点からの対応が必要である。今後、課題を整理する際に、「障害のある女性」の視点を付け加えることを提起するとともに、以下のような要望があることを指摘しておく。
一、障害のある女性は、ふだんから情報が届きにくく、声をあげることがさらに難しい、ニーズを出しにくい立場におかれています。
二、介助や補助が必要な人や呼吸器をつけている人などのなかでも、特に女性は、生きる優先順位を自分でも低めがちです。平時の社会でも、人工呼吸器の装着が必要になった場合、女性のほうが男性より、呼吸器をつけて生きることを選ぶ人の割合が低いというデータがあります。
三、避難生活のなかでのトイレや着替え等、女性のプライバシーを確保し、安全対策をとることが必要です。
四、避難生活のなかで性暴力がおこるおそれがあり、とくに障害をもつ女性は暴力から逃れるのが困難なことがあります。性暴力の防止対策、被害があった場合の相談・支援体制を用意してください。
五、女性の身の回りの介助、とくに着替え・排泄・入浴は、女性による支援を徹底してください。
【川﨑委員】
○精神
- 医療と薬の提供
服薬を持続する必要がある精神障がい者には、震災等の後も速やかに医療と薬が提供される体制作りが求められる。 - 見えない障害にたいする支援
自分から精神障がい者であることを言い出せない人への支援はプライバシーを考慮した支援が必要である。避難所においては困ったことがあったら、連絡できるところを明記したチラシを配るなどの工夫がされていたが、重要なことと思う。
○一般的
- こころのケア
津波によって家や家族を失った人たちは、徐々にその苦しみを深めていく。また、原発からくる不安は先が見えない恐怖から、住民の精神的なストレスは増大していく。
このためには、こころの相談支援体制が必要。医療と保健、福祉が連携した多職種チームを身近なところに設置し、多様な被災者の状況に対応できるようにする。
【佐藤委員】
■<障害のある子どもたち>療育の現場
*障害種別のみならず、「ライフサイクル」的な視点も重要です。
乳幼児、学齢児を問わず、子どもを恐怖から解放し、遊びや楽しみを提供して、可能な限り子どもらしい日常を回復することが求められていました。とりわけ、乳幼児期の子どもたちの通う通園施設や児童デイサービスの場合、学校教育のように公的な態勢がないために復旧に困難があります。親も声をかけられなければ通園を再開しないという場合もあります。
■<仙台市内・療育施設の子どもたち>
- 余震も続く中、子どもたちの不安も大きく、障害をもった子どもはなおさらその思いをうまく表現できず、偏食がますますひどくなったとか、食がうまくとれない、夜泣きがある、暗いところやトイレに行けない、親から離れられず少しでも離れると奇声を上げるなどの状態があり、親も不安がつのるばかりなので、乳幼児の通園の場であるNでは3月23日から午前は在園児に午後は学童児に園を開放しました。
- ガス暖房が使えないので、一つの保育室だけに石油ストーブを3台借り入れて開放しています。毎日母と子が三々五々集まり、おしゃべりしたり園庭で遊んだりして通ってすごしました。
■<重症児の訪問教育宇都宮市>
- 隣接する国立病院機構宇都宮病院の重症心身障害病棟の子どもたちの教育を担当。現在小学部2人、中学部3人、高等部5人。3月10日が卒業式。
- 3月11日(木)は、2人の在校生の授業。帰りの会を終え、一人は病棟戻りベッドにおろそうとした時に、もう一人は教室にいた時に地震がきました。それぞれ、病院と学校の中庭に避難しました。
- 宇都宮病院のAとB病棟にそれぞれ40床ずつ80床のベッドがあります。
その後、病棟は半壊状態。特にA病棟は水びたしの状態。危険で病棟には戻れないため、学校の体育館に避難し、一夜を明かす。 - 翌日、比較的痛みの少なった、B病棟にA病棟の方たちも一緒にという形で戻る。ちょうど、1日間停電は続き、復電。
- 人工呼吸器をつけた方は栃木病院に救急車で転送。また、障害の重い方は、宇都宮病院の内視鏡センターや(生徒が2人)、C病棟(生徒は1人)に避難。
<日本難病・疾病団体協議会(JPA)>
人工呼吸器や酸素吸入による医学的管理が日常的に必要な患者、あるいは人工透析患者については、バッテリーや充電できる設備の確保、透析施設の確保がライフラインになります。
また、透析患者のように、定期的に必ず透析施設に通わなければならない患者の場合には、そのための足である車がライフラインです。石巻では、訪問看護ステーションの車を利用していた患者が、その施設が被災して車が使えなくなってしまったために病院に行けず、地域のボランティアによる通院支援に頼っている現状があること。その患者が通院するたびに「いつまでの居てください」と通院介助をするボランティアに懇願しているという話を聞きました。この支援グループには何の補助もないそうです。国でも自治体でも、とにかく何らかの支援がほしいというのが、支援グループのねがいでした。
一般の患者でも、被災して救急車は病院に患者を運ぶが、その後、病院から帰るのに足がない。そのための支援ボランティアが足りないという話も聞きました。「病院(石巻赤十字病院)には震災前にはたくさんの車いすの外来患者がいたが、震災後は見えない。どうしたのと聞くと、みんな初期のうちに安全なところに避難したから大丈夫と言うが、どこに行ったのかはわからない…」という、ゾッとする話も聞きました。
難病患者で、常に投薬治療が必要な患者の場合には、医師から処方されている薬の確保、専門医とのつながりが不可欠です。とくに希少難病の場合の薬は、一般の医療機関では処方してもらえないことも多く、被災して流されてしまった場合には、早急に専門医の適切な判断と薬の確保が求められます。また、食事や水分などの不足によって症状が悪化することも考えられますので、ある程度の生活環境の確保も必要になります。
医療機関には、患者のカルテなどの情報がありますが、医療機関から行政や患者団体には、このカルテによる情報の提供は通常は行えませんが、少なくともライフラインとしての緊急性のある患者に関しては、医療機関が災害時にはカルテなどの情報から患者を訪問する、人手が足りない場合には、政や患者団体に非常事態ということで情報を提供するなど、連携して初動対応をするなどのことも行うべきです。今回の震災で、そのような機敏で臨機応変な対応を行ったという事例はどこからも聞いていません。
腎臓透析施設や尿崩症患者の水の供給の緊急性が関係者に理解されず、水を求めたり供給するための車のガソリン入手が「緊急用」と認められずに苦慮したという報告が各地から多く寄られています。
心疾患患者(心臓機能障害)の場合、何よりも医療機関との交通手段が絶たれてしまったこと。薬が途絶えることで命に関わる問題になるということで、緊急避難車両で県外の病院まで薬をもらいに行ったという例もあります。
医療の集約化が進んだ結果、慢性疾患を治療体制できる病院は各県に1~2つと限られています。それゆえ、かかれる専門病院まで行くことができないということが一番の問題です。また、重症疾患の患者は県外の医療機関をかかりつけにしている方も多く、そうした方は受診を控えざるをえませんでした。病院までの移送手段の確保、ガソリンの供給は切実な要望でした。医療機関への巡回車両を出すとか、ガソリンの優先供給などが必要です。
震災当時は、情報が遮断されてしまったことが大きなハンディとなりました。在宅の慢性疾患患者や障害者へは必要な情報の提供は不足していたと言えます。
心疾患患者の場合には、特別な支援というよりは、他の人の必要としている援助をより手厚くしてほしいというのが要望になります。しかし、まわりの人たちが我慢している状況の中で、「うちの子をなんとかしてほしい」というのは言えない状況だったと聞きました。小児慢性特定疾患治療研究事業でつかんでいる名簿にもとづいて、何らかの手段で「どうしていますか?何か必要なことはありますか?」と一声かけてもらうだけでもかなり違ったと思います。
また、生活の見通しが立たない状況下では、病児を育てている親の負担は心身ともに大きいものがあります。疾患をかかえる子どもたちとその家族への心のケアは、たいへん重要です。
【新谷委員】
【中途失聴・難聴者】
①災害情報、避難情報、記者会見・ニュース・関連番組などに対する字幕付与を完全実施すること。
②政府機関の災害関連インターネット動画への字幕付与を完全実施する、その他民間インターネット動画への字幕付与を奨励・助成する対策を講じること。
③行政、テレビ局、電力会社その他関係機関のファックス番号を公開する、あるいは専用ファックス番号を設けること。
④エリアメールや要援護者への個別災害通知メール機能を充実させること。
⑤広報車の音声案内はゆっくり明瞭に話す。なお広報車等による避難情報の内容について、メール・ファックスでの連絡や個別の避難確認を行うこと。
⑥避難情報(避難準備、避難勧告、避難指示)に対応した避難形態等を明確にし、一時避難場所、避難所、避難経路を明示した防災マップを整備すること。
⑦聴覚障害者や情報保障が必要な障害者への配慮のために、一時避難場所、避難所での音声情報は原則すべて文字表示し、できるだけわかりやすい文章とする。また、一時避難場所、避難所では聴覚障害者のみならず高齢者、その他円滑なコミュニケーションが困難な人に対して筆談対応が非常に有効である点を現場や行政機関等で周知・徹底すること。
⑧避難所については、情報保障入手が大きな課題となることから、携帯電話やワンセグなどの情報が入りやすい環境での配置に配慮すること。また、携帯電話の充電対応、補聴器利用者に対する補聴器電池補充の対策をとること。
⑨地域生活支援事業によるコミュニケーション支援に関して、被災障害者は避難地自治体における手話通訳・要約筆記派遣などのコミュニケーション支援の利用者として当該地域の障害者と同等なサービスを享受できること。また、事態の緊急性にかんがみ利用者の範囲は柔軟に対応すること。
⑩厚生労働省が出している「補聴器や日常生活用具の再給付、再交付については、耐用年数未満でも行うこと」「身体障害者手帳の再発行については、過去の申請、診察の結果等により医師の判定等を省略して、すみやかに発行すること。」などの事務連絡に対して、実効性を確保する施策を講じること。
【関口委員】
精神障害者の場合
- 第一に、「衣」「食」「住」であり、これがなければ、当然のごとく体調の悪化に繋がる。
- 暇つぶしになるものや、役割が必要。
- 一般の避難所にいる人で、そこにいたい場合、福祉避難所への移動や施設収容にならないよう、本人の弁護をするアドボケイトが必要である。
- 薬が必要である。
- 精神障害のある人による相談の電話等が必要である。
- 一般の避難所に合理的配慮として、個室等の休息ができるスペースが必要である。
- 精神科医による訪問診療活動は、一概に評価できない。
- とりあえずの施設収容も一概に評価できない。
- カウンセリングも、傷口を穿り返すようなものも少なくないとの報告があり、一概に評価できない。
すなわち現在の支援においては、まず全体の状況を把握することが先決であり、障害者には在宅で確認されていない人たちもたくさん居るのではないかと思われる。
まず情報収集などの人手が必要ではないか。
【中西委員】
○肢体
- 移動手段、ならびにガソリンの確保
- 日常生活(食事、排泄、入浴、移動等々)に介助を要する人への介助者の派遣
- 当人に代わっての買い物、要望物資の提供
○視覚・聴覚・難聴・盲ろう
- 適切な手段での情報の提供
- 生活環境の正確な説明
○知的・精神・発達
○難病・重心(医療的ケアや医療機器を使用している障害児・者を含む)
- 人工呼吸器等の電源の確保
- 生命維持のための代替の医療機器や胃ろう等の医療用具、カテーテル、経口栄養剤、流動食及び人工透析体制等の確保は
○その他
障がい者に必要な生活空間を確保するためのベッド、トイレ、間仕切り、介助者や支援者の移動のためのガソリン、自転車、車
【久松委員】
・障害種別に関係なく支援が必要なもの
※日ごろから障害者の実態を行政として把握し、障害種別ごとにどのような支援が必要かを障害者団体と協議してマニュアルを作成し、緊急の場合に備える必要がある。
※災害が起きた場合、行政だけで障害者支援をすることは不可能である。
民間であっても、活動実績がある障害団体には障害者名簿を開示して協力を求めるべきである。
特に在宅の障害者の場合、情報がなく、手段もない場合、取り残され生命の危機に陥る危険がある。
すべての団体とは言わないが、日頃から障害者団体との連携を密にし、情報開示団体を決めておくことが必要である。
※障害者支援についてはそれを支える支援団体との連携が必要である。
社会福祉協議会は全国組織であるが、今回の震災で障害関係についてその機能が活かされているとは言い難い。日頃から障害者団体と地域社会福祉協議会との連携について、役割分担を文書で確認しておく必要がある。
※支援に当たる民間団体は資金がない。本来は行政の役割であるところを民間が役割の一部を担っていることから、行政からの支援が困難な場合は、共同募金会等寄付団体からの支援を行政または国が繋ぐべきである。
※避難所については、震災の規模等で一概には言えないが、障害別の避難所を検討することもよいのではないか。
・聴覚障害の場合
※正確な情報を速やかに提供することが必要である。
特に震災直後の場合、ライフライン、特に電気が止まり、テレビやファックスが使えなくなる。聞こえる場合はラジオがあるが、聴覚障害者の場合はラジオが聞こえない。携帯電話でのメールは使えるので、聴覚障害者専用の有線あるいは無線回線を設ける等の研究・開発を国として進めてほしい。
【松井委員】
この項目は、つぎのように整理してはどうか。
障害の有無に関係なく被災者共通に求められる支援(障害者を配慮したアクセシブルでインクルーシブな支援)の提供を前提としたうえで、
(1)障害者に求められる特有な支援
①障害の種別に関係なく共通に求められる(アクセシビリティを含む、合理的配慮および)支援
②障害種別ごとに必要とされる(アクセシビリティを含む、合理的配慮および)支援
② 被災地の状況(津波による被害地域か、地震のあった内陸部か、原発被害が重なった地域か)によっても、支援の在り方が異なるようにも思えるが、その点についてのご認識があれば、お示しいただきたい。
【尾上委員】
●今回の震災は、地震、津波と原発事故による複合災害であり、地域によって、それらのどの部分が大きく関係したかで、被害の状況が異なる。
●特に、まち全体が被害にあった地域や、さらには、未だに見通しの立たない原発事故によって集団避難が強いられる地域等、広範囲に及ぶエリアの避難と再生という視点が必要になってくる。旧来の形への復旧にとどまることなく、むしろ、制度改革がめざすインクルーシブ社会を先取りした地域への新生という視点が必要になってくる。
●また、原発事故の行方が見通せない中で、福島の人々は未だに「復興」という視点に立てず、取り残されていくような感覚をもたざるを得ないという。そうした点もふまえた、きめ細かな支援、提言が必要である。
さらに、避難地域が拡大されていく可能性もある中で、避難計画の中で障害者や高齢者への配慮がなされなければならない。バリアフリーな避難所や移動手段の確保等が必要である。また、避難命令が出されてパニックになる前に、先立って「災害時要援護者」に対して避難誘導・支援を行うこと等が必要である。
【佐藤委員】
■避難先の学校(障害児学校や学級、通級など)での教育は
■<新潟養護学校>
- 原発被害による避難で、新潟市北区の体育館に避難されている小学部2年生の本人とご両親が転学。自宅は南相馬市で学校は県立富岡養護学校。子どもにとっては、生活が安定しないなかでの転校に。地震時の電化製品等が上から落ちたのが大きな恐怖感になっているようで、一人にされるのが恐怖になっているとのこと。心のケアも大切な教育的な配慮になっている。
<日本難病・疾病団体協議会(JPA)>
三陸沿岸での津波被害は、沢を伝って何キロも奥までその爪痕は激烈なものであり、また平野部では、松林を超えて遮るものなくドーっと押し寄せる津波で飲み込まれた家屋や車があり、そのスケールと威力もすさまじいものがあったようです。これら直撃を受けた地域と、仙台市や水戸市など内陸部での地震被害では、当然、被害の様子も違いますが、ライフラインの確保と安否確認、救出救命という初動対応については、どの地域に、どういう状況の障害者が住んでいるか、一人暮らしなのか、家族と一緒なのか、ふだん通っている施設や医療機関はどこか、などのことが、地域内でのつながりや、保健所や保健福祉事務所を中心としたネットワークで日常的に把握されているかどうかで、救命はもちろん、その後の対応、支援にも差が出てくるであろうことを再認識しました。
また、このような広域の大災害時には、支援者各自の判断で、医療や福祉についての法の枠組みや決まりごとにとらわれず、被災障害者、患者の視点にたった柔軟な運用と機敏な判断が、生死を分けたこともこの震災での大事な教訓であると思います。
人工呼吸器装着者や重度障害児者など、短時間に避難が困難な人たちは、「座して死を待つしかないのか」という重い課題が突きつけられたのが今回の大津波でした。このような難病・障害者の日常的な居住条件として、津波被害の心配のない高台などへの移住についての行政の支援などを本格的に検討する必要があります。
原発は、「先ず命あっての生活・療養」という観点から、根本的に見直す必要があります。
【新谷委員】
今回の災害は、広域性に加え地震による倒壊、津波、原発事故、帰宅困難問題、計画停電による混乱、風評被害など多重な災害に見舞われている。特に原発関連の災害は、今まで経験のしたことのない災害なので、従来型災害とは異なった取り組みが必要と考える。
障害者権利条約第11条は「危険な状況及び人道上の緊急事態」の表題のもとに、「締約国は、国際法(国際人道法及び国際人権法含む。)に基づく自国の義務に従い、危険な状況(武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む。)において障害者の保護及び安全を確保するためのすべての必要な措置をとる。」としている。この意味で、原発事故は有事・緊急事態での障害者の在り方に関連した課題を投げかけていると考える。
【中西委員】
原発事故被害地域に住む障害者は、当初避難地域が同心円で示され、設定され30Kを超える地域からの避難は自主避難とみなされること、ならびにパニックを恐れて国、県から福島県下の行政への指示が開示されず大変不安な状況に置かれたことから、県外への避難を決意した人たちがいた。
この例からも、原発被害地域では避難は障害者にとっては必死の覚悟と機動力が必要であり、これを理解、対応できるように、行政・警察・消防・自衛隊の事前研修等を行うことは必要である。
さらに、原発事故の悪化、または収束しないことによる現状の長期化という事態に備えた以下の体制を早急に用意する必要がある。
1)障害者の原発事故特定避難所の設定、ならびに遊休公共施設やプレハブ住宅のバリアフリー仮設ルームなど国家的な準備体制
2)移動確保(各機関への理解と説明、空輸の想定、車両や燃料の確保)
3)国の責任において、障害者、高齢者、乳幼児の親等の避難困難者に対する避難命令を「一般」に先立っておこなうこと。
4)在宅支援等の福祉サービスは非常事態とする通達によって、柔軟な運営を担保すること(一定要件で無資格者のヘルパーを認める。支給量変更、体制変更、請求実務などの簡素化を行う)