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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第32回(H23.5.23) 森祐司委員提出意見

第32回(H23.5.23)障がい者制度改革推進会議 森祐司委員提出資料

第三十二回障がい者制度改革推進会議 意見提出フォーマット
災害と障害者

委員名 森 祐司 

1、安否や被災状況の確認及び必要なニーズ把握の現状について

① 行政の対応

行政は、障害者に関する情報(障害者手帳に関するデータ、自立支援法上のサービスに関する個人データ、災害時要援護者名簿)を有しているが、これに基づく障害者の被災状況の把握はどの程度進んでいると考えるか。
行政自身も被災した中での取り組みについて、具体例をご存じであれば挙げていただきたい。

災害時要援護者名簿等は自治体の安否確認等に使われた。しかし、その詳細な内容については不明である。

② 行政と障害者団体との連携の現状

障害者の個人情報を保有している行政と障害者団体との連携が実際に行われているか、この連携的な取り組みについて具体的な状況を把握されているケースがあれば、お示しいただきたい。

JDFみやぎ支援センターでは宮城県の沿岸部自治体を訪問して活動を行っているが、行政との連携は自治体ごとに異なる。保健師等とともに在宅障害者を訪問、支援に結びついたり、行政からの依頼を受けて書類等を届ける業務を担ったりしている事例もある。個人情報の問題が壁になって行政との十分な連携が行われていない場合が多い。各自治体の条例には「人の命、身体または財産の安全を確保するため、緊急かつやむをえないと認められるとき」には個人情報の利用及び提供を行いうることが示されているので、それらを検討して今後十分な連携を図るべきと考えられる。

行政からの名簿の提供ではなく、障害当事者団体の依頼を受けて数日にわたって直接訪問などを行って安否確認等を行った事例もある。また、社会福祉協議会の依頼をもとに通所作業所の運営の支援などを行っている事例などがある。

また、ご本人の了解のもと、障害者団体が福祉避難所の利用、仮設住宅の利用などについて支援している事例がある。

③ 属されている障害者団体の取り組みの現状

所属の障害者団体の救援活動において念頭に置かれた調査の対象を、下記の例示を参考にして示していただいたうえで、現状をどの程度把握できているのか、又は、把握が困難であるのかについて、ご報告いただきたい。

ア) 入所関係
イ) 通所関係
当協会では運営している自立訓練事業の利用者全員の安否確認を行った。その後、事業所自体が福祉避難所として機能したが、現在は自立訓練事業を再開している。
ウ) 精神病院に通院していた障がい者関係
エ) 在宅で訪問系のサービスを受けていた障害者
当協会が委託を受けて運営している重度視覚障害者や全身性障害者などのガイドヘルプ事業の利用者、福祉有償運送などの利用者などの安否確認などを行った。
オ) 在宅で訪問系のサービスを受けていない障害者
カ) 障害関連団体に属する会員
当協会では加入団体から名簿の提供を受け、安否確認活動を行った。ただし、個人情報の取り扱いに慎重で独自に安否確認に取り組んだ団体もあった。
今後、大災害発生時の安否確認やその後の支援を行うために、会員名簿の取り扱いについて検討を行う必要性を強く感じた。

2、避難所での障害者の現状について

① 避難所で生活している障害者の現状について、具体的な状況を把握されているケースがあれば、お示しいただきたい。

地震発生当初は避難所に避難したものの、避難所での生活に困難を感じて、被害を受けている自宅に戻ったり、親戚の家を頼りに移動したりした。また、自治体によっては一般の避難所から保健師のアドバイスによって福祉避難所に移動して生活する場合もあった。

避難所生活を余儀なくされた障害者は一般避難者よりも多くのスペースを利用せざるを得なかったり、トイレ使用等に長時間要することを気にしたり、多くの人がいる空間の中でポータブルのトイレを使用せざるを得ないことなどを気にしたりなど、一般の避難所生活にしづらさを感じる場合が多かった。

食料品の支給、支援物資の支給、そしてその後の仮設住宅などの説明会は避難所で行われるため、避難所を退去した障害者が必要な情報にアクセスできない状況がもたらされた。

② 避難所に障害者はいない、又は少ないという報告もあるが、実態はどうか。

実際にそうだとした場合、避難所を利用できなかった理由及び利用できない障害者はどこで生活しているのかについて、具体事例があれば、お示しいただきたい。

災害発生当初、避難所に避難した障害者の多くは、避難所での生活しづらさのために自主的に移動せざるを得なかった例が多かった。

そのような障害者の場合には、一階部分が浸水した自宅に戻ったり、親戚などを頼って移動したり、仮設住宅の利用を待たずにアパートを借りて入居したりした。福祉避難所が機能している自治体では、保健師などのアドバイスによって福祉避難所利用に至った。

体温コントロールに困難をもつ障害者の場合には、暖房、入浴設備が整わない地元の福祉避難所での生活を断念し、障害者団体間、行政との連携の下に県外の障害者団体が運営している温泉ホテルに移動したケースもある。その場合、その後、県外障害者団体による同県への働きかけにより、同ホテルが福祉避難所に指定された。

3、福祉避難所での障害者の現状について

福祉避難所はどの程度開設され、どのように機能しているのかなど、情報をお持ちの方は、その実態をお示しいただきたい。

仙台市内では特別養護老人ホーム、老人福祉センター、障害者福祉センターなど52箇所が福祉避難所に指定されていたが、そのうち約30箇所が福祉避難所として機能した。同市内には、4箇所の区障害者福祉センターがあるが、4箇所全てが福祉避難所となった。福祉避難所は二次避難所として位置づけられ、一般の避難所を巡回した保健師などが必要と判断した障害者・高齢者等が利用した。24時間体制となる福祉避難所は、地元他法人の支援などによって運営されたが、長期にわたる疲労の蓄積のおそれが認められた。その後、仙台市障害者福祉協会の運営する福祉避難所においては、福岡市身体障害者福祉協会、JDFや日身連など、介護福祉士養成課程の大学生などの支援を受けた。

4、今回の災害において求められた被災障害者への支援について

① 災害後の必要な支援は障害種別ごとに特徴があると思われます。今回の災害において、求められた支援について、下記に例示したような種別ごとに特に必要とされたものと障害の種別には関係なく求められたものを分かる範囲でお示しください。障害ゆえに必要なものか、それとも一般的に必要なものかという区別が困難な場合でも、具体的にお示しいただきたい。
(・肢体・視覚・聴覚・難聴・盲ろう・知的・精神・発達・難病・重心)

・肢体
避難所におけるスペースの確保(とくに車いすの場合、乗り降りの問題等)、トイレの問題、体育館の床等では寝ることなどに支障がある場合。人の込み合う状況における移動の問題。室温の低い体育館での体温調節の問題。
・視覚
情報・情報伝達手段の不足、人の込み合う避難所におけるトイレ等への移動の困難性など。孤立化の問題。
・聴覚・難聴・盲ろう
情報・情報伝達手段の不足、孤立化の問題。
・知的
人の込み合う環境への適応の問題、避難所における周囲の無理解。
・精神
薬等の入手の問題。避難所における周囲の無理解。障害を開示できない問題。
・発達
人の込み合う環境への適応の問題、避難所における周囲の無理解。
他の人とのかかわりが難しいという問題。
・難病
電源確保の問題、医薬品入手の問題、適切な食事の確保。身体状況によっては体育館の床などに寝ることができないという問題。避難所における周囲の無理解。
・重心
人の込み合う環境への適応の問題、避難所における周囲の無理解。

障害の種別には関係なく求められたもの

被災直後からニーズは時系列的に変化した。食料・日用品の確保、ガソリン不足による移動制限、物資輸送の問題などを経過して、避難所では物資も届くようになったが、自宅で過ごす場合には食料・日用品の確保などに不便が続いた。また、都市ガス開栓前には入浴ができないなど清潔を保つための環境が整わなかった。そして、その後も情報不足が続いている。

② 被災地の状況(津波による被害地域か、地震のあった内陸部か、原発被害が重なった地域か)によっても、支援の在り方が異なるようにも思えるが、その点についてのご認識があれば、お示しいただきたい。

災害発生当初は避難所への移動に関する支援、食料や電源のない場合における不安の解消などが共通した大きな問題であった。とくに津波発生時の避難に関しては想定外のこととはいえ、対応が不十分であった。

その後、内陸部では自宅の利用可能性、電源回復等が確認されるとともに自宅に戻る方が多かった。ただし、その場合には食料品・日用品の確保、燃料、ガソリンの確保の難しさがあった。

津波による被害地域では、先の見えない不安が大きかったが、不安を抱えながらも現在は仮設住宅、民間借り上げ方住宅の活用などへの取り組みが行われている。

しかし、原発被害によって自宅を離れて避難している人々は住み慣れた地域から離れ、遠方、他県への避難を行っていることからさらに将来に向けての不安が大きいと考えられる。そのような場合等は、障害者団体の活動を行うことは事実上困難な状況にあり、どのようにして必要な情報を伝えるかが大きな課題になっている。

5、被災障害者にとっての被害とは

以上の現状を踏まえ、災害時に必要な支援を体系的に考えるには、改めて障害者にとって震災による被害とは何かを検討する必要があると思われる。下記は、被害を類型化した場合の例示である。

① 生命、身体、財産への直接的被害。
② 従来から福祉・医療のサービスを受けて生活を営んでいた障害者がこれらのサービスを利用出来なくなること。
③ 公的サービスを受けず、家族や地域社会の支えで生きてきた障害者が、こうした支えを失うことによって、生活が困難になること。
④ 家族や地域社会の支えがなくとも生活できていた障害者にとっても、生活環境、社会環境の急激な変化によって、生活が困難になること。
⑤ さまざまな支援の欠如が、障害者を社会生活から排除する要因を生み出すこと。

このような整理の仕方について、その必要性や妥当性も含め、ご意見を伺いたい。

上記のような整理は重要であると考えられる。

とくに、③、④にあたる被災者についてはその実態がみえてこない現状がある。今後はこのような障害者が顕在化するに従い、対応する支援をいかに構築するかが大きな課題になると考えられる。

また、仮設住宅などでの生活が継続するに従い、障害者が取り残されてくる状況が予想される。そのようなときに適切な支援が行われるように障害者団体・障害者相談員等は仮設住宅利用障害者とのかかわりを継続していく必要がある。

6、被災障害者に対する支援を行う上での基本的課題

① 安否や被災状況の確認及び必要なニーズの把握を行う体制整備

被災を受けた障がい者の状態は被害全体の陰に隠れて顕在化しにくい特徴があると思われるが、どうすれば早期に現状の把握ができるのか、市町村による災害時要援護者に対する避難支援の取り組みなど、現状の問題点を摘示したうえで、ご意見を伺いたい。

東日本大震災が発生した時間帯が午後2時46分であったこともあり、通所事業利用の状況把握は行われた。その一方、施設を利用していない在宅障害者の安否確認などはきわめて困難な状況にあった。

災害時要援護者登録はその活用に関するコンセンサスを明確にしなければならない。これまでのところ、災害発生時における避難所への避難時の活用であり、その情報についても民生委員には情報が届いているものの、町内会役員などは情報にアクセスできないという自治体が多い。地域を良く知っているとしても、民生委員が、果たしてどのくらいの避難の支援を担うことができるのであろうか。災害時要援護者登録を行った場合に、どのような支援が、誰によってもたらされるか、その情報はどの範囲で活用されるのか。避難所を去らざるを得ない障害者とどのようにつながっていくべきなど、現実的な取り組みについて再点検していく必要がある。

② 福祉避難所や避難所の在り方

一般の避難所がなぜ利用しがたいのか、現状の問題点を摘示したうえで、ご意見を伺いたい。また、一般の避難所との関係で福祉避難所をどう位置付けるべきか、その在り方について、ご意見を伺いたい。

一般の避難所生活を余儀なくされた障害者は一般避難者よりも多くのスペースを利用せざるを得なかったり、トイレ利用時間が長かったり、ポータブルのトイレ使用などを気にしたり、生活しづらさを感じる場合が多かった。また、車いすの乗り降り、体育館の床などでは体の状況により寝にくい場合もある。視覚障害者や聴覚障害者は、情報の確保に困難を有し、孤立感を持つ場合も多い。知的障害者などでは周囲の無理解より、本人・家族ともに一般の避難所における過ごしにくさを感じ、孤立感を深める状況にあった。また、スペース確保が難しくて身体運動に制限を受けたりして、からだを動かさなかったりするために、生活不活発病に陥った場合等が見受けられる傾向にあった。

障害特性により一般の避難所での生活に困難が生じる場合、食事補助、医療的ケアなどが必要な場合等には、一般の避難所において保健師等のアドバイスを受けて福祉避難所を利用した。

③ 従来のサービスの維持、確保について

従来受けていた福祉・医療のサービスシステム自体が大震災で大きな打撃を受けた場合に、いかにこれらのサービスを継続的に確保するかが重要だが、この点に関して、被災事業者への物的または人的支援、または、従来のシステム回復までに緊急的に必要な対策といった視点から、ご意見を伺いたい。

施設建物が全壊・半壊などのために利用できなくなった場合などには、その再建のための土地の確保、建設資金などの支援を行うとともに、再建できるまでの間の利用建物の確保を行う必要があり、福祉施設同士の連携とともに、行政の大きな関与が求められる。

福祉施設内に福祉避難所を開設した場合には、食料品・日用品・寝泊りする用具等の物的な支援とともに、人的支援が求められた。

また、通所事業などの通常のサービスが途絶えている期間には、施設職員によるサービス利用者宅への訪問、支援が必要である。

④ 新たなニーズについて

従来はサービスを受けていなかったが、身内や地域の支えを失ったり、急激に生活環境が変化することなどにより、新たに生まれた支援のニーズを緊急に公的サービスに結び付けるうえでの問題点や課題について、支給決定のプロセス、または新たな人材確保による雇用創出、さらには市町村財政の支援といった面から、ご意見を伺いたい。

従来の支援の枠組みだけで考えるのではなく、柔軟な支援に取り組むべきと考える。

「継続的な日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」だからこそ、社会資源を整備して、さまざまな選択肢を設けて支援を行ってきた。多くの社会資源が失われた地域においては、新たなニーズが生じ、これまでの公的サービスを利用してこなかった障害者もサービスを利用せざるを得ない状況になると考えられる。

新たなニーズの発掘のためには、町内会や地域包括支援センター、民生員、障害者相談支援センター、行政、障害者団体、障害者相談員等の連携が必要である。地域自立支援協議会の機能が問われることになると考えられる。

現在、行政機関は新たに取り組むべき諸手続きなどに忙殺されており、考えるゆとりすらない状況であると想定される。しかし、連携のためのネットワークづくりは早期に行うべきであり、ネットワークが構築されれば、互いに相互の役割を担い合うことにより、行政機能も円滑に行われるようになると考えられる。

このような状況下であるからこそ、ソーシャルインクルージョンの理念のもと、誰もが社会の中でその人に応じた役割を持てる社会システムを構築すべきである。

⑤ 行政と障害関連団体との連携について

災害が大規模であり、また広域にわたるものであればあるほど、市町村の行政機能にも被害が発生することを考えると、上記の課題を含め、行政とNGOとの連携が必要となってくるが、この連携に当たっての諸課題について、ご意見を伺いたい(特に、①については、情報公開とプライバシーの保護をどう考えるかも含めて)。

行政とNGOとの連携については、個人情報保護の壁が大きな支障となる場合が多くあった。しかし、NGOの努力と行政との理解をもとに、やがて連携が進んだ地域もあり、そのような地域においてはNGOが保健師などとともに協働の取り組みを行った例、行政の求めに応じて被災障害者宅を訪問、書類などを届けた例もある。

各自治体の条例によって個人情報の利用及び提供に関する制限があるが、条例には「人の命、身体または財産の安全を確保するため、緊急かつやむをえないと認められるとき」など運用を可能とする条項もあり、自治体の適切な判断によってNGOとの連携を行うべきである。

7、復旧、復興のプロセスの中で、特に大事なことがあれば指摘していただきたい。

復旧、復興のプロセスについても当初は地域(同じ自治体内)のボランティアを主とした支援、やがて県外ボランティアの参入、ゴールデンウィーク時の大勢のボランティアの支援を経て、現在は学校も始まったこともあり学生は学校に戻り、ボランティアの絶対数が減少している。このようなときだからこそ、現在、行政と障害者団体を含めた(県内外の)支援団体との連携が重要である。

やがて被災地での生活がある程度安定してくるにしたがい、県外(被災地外)からの支援団体の役割が少なくなってくる。そして、障害者団体をはじめ被災地内の地元支援団体、地元組織(連合町内会、地区社会福祉協議会など)との連携のシステムが構築されてくると考えられるが、地元障害者団体は現状をしっかり認識して、主体的に地域の不便性の解消に向けての提言やピアとしての障害者支援の役割を担う必要がある。

8、その他、救援の在り方、制度、仕組みなど、大枠について、ご意見があれば述べていただきたい。

従来の枠組みにとらわれない柔軟な制度の活用をもとに、長期にわたる計画的な取り組みが求められる。

今後の復興計画や総合的な計画、障害者計画などの策定に当たっては、地元障害者団体は現状をしっかり認識して、主体的に地域の不便性の解消に向けての提言などを行う必要がある。障害者の権利条約に示されている合理的配慮等をもとに、東日本大震災以前よりも、さらに誰もが暮らしやすい地域社会の構築を目指した取り組みが求められる。