障がい者制度改革推進会議 第35回(H23.9.26) 資料2
障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言(概要)
障害者総合福祉法の6つのポイント
- 障害のない市民との平等と公平
- 谷間や空白の解消
- 格差の是正
- 放置できない社会問題の解決
- 本人のニーズにあった支援サービス
- 安定した予算の確保
Ⅰ.障害者総合福祉法の骨格提言
1.法の理念・目的・範囲
- 障害の有無によって分け隔てられない共生社会を実現する。
- 保護の対象から権利の主体への転換と、医学モデルから社会モデルへの障害概念の転換。
- 地域で自立した生活を営む権利。
2.障害(者)の範囲
- 障害者総合福祉法が対象とする障害者(障害児を含む)は、障害者基本法に規定する障害者をいう。
- 心身の機能の障害には、慢性疾患に伴う機能障害を含む。
3.選択と決定(支給決定)
- 障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組み。
- サービス利用計画に基づく本人の意向等が尊重される。
- 協議調整により必要十分な支給量が保障される。
- 合議機関の設置と不服申立。
4.支援(サービス)体系
- 障害者権利条約を踏まえ、障害者本人が主体となって、地域生活が可能となる支援体系の構築。
- 「全国共通の仕組みで提供される支援」と「地域の実情に応じて提供される支援」で構成。
5.地域移行
- 国が社会的入院、入所を解消するために地域移行を促進することを法に明記する。
- 地域移行プログラムと地域定着支援を法定施策として策定、実施。
- ピアサポーターの活用。
6.地域生活の基盤整備
- 計画的な推進のため地域基盤整備10ヵ年戦略策定の法定化。
- 市町村と都道府県は障害福祉計画を、国はその基本方針と整備計画を示す。
- 地域生活支援協議会の設置。
7.利用者負担
- 食材費や光熱水費等は自己負担とする。
- 障害に伴う必要な支援は原則無償とするが、高額な収入のある者には応能負担を求める。
8.相談支援
- 対象は障害者と、支援の可能性のある者及びその家族。
- 障害者の抱える問題全体に対応する包括的支援を継続的にコーディネートする。
- 複合的な相談支援体制の整備。
9.権利擁護
- 権利擁護は支援を希望又は利用する障害者の申請から相談、利用、不服申立てのすべてに対応する。
- オンブズパーソン制度の創設。
- 虐待の防止と早期発見。
10.報酬と人材確保
- 利用者への支援に係る報酬は原則日払い、事業運営に係る報酬は原則月払い、在宅系支援に係る報酬は時間割とする。
- 福祉従事者が誇りと展望を持てるよう適切な賃金を支払える水準の報酬とする。
Ⅱ.障害者総合福祉法の制定と実施への道程
1.障害者自立支援法の事業体系への移行問題
- 自立支援法の事業移行期限終了後も一定の要件の下で移行支援策を継続する。
2.障害者総合福祉法の制定及び実施までに行うべき課題
- 総合福祉法の制定及び実施に当たり地方自治体の意見を踏まえる。
- 総合福祉法の策定及び実施のための実態調査や試行事業を行う。
3.障害者総合福祉法の円滑な実施
- 総合福祉法を補完する、あるいはこれへの移行を支援する基金事業を設けること。
4.財政のあり方
- 国は予算措置に必要な基礎データを把握する。
- 障害関連予算をOECD諸国の平均水準を目標漸進的に拡充する。
- 財政の地域間格差の是正を図る。
- 財政設計にあたり一般施策での予算化を追求。
- 障害者施策の推進は経済効果に波及する。
- 支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定は財政的にも実現可能である。
- 長時間介助等の地域生活支援のための財源措置を講じること。
Ⅲ.関連する他の法律や分野との関係
1.医療
- 医療は福祉サービス及び保健サービスとの有機的連携の下で提供される必要がある。
- 福祉、保健、医療にわたる総合的な相談支援が必要。
2.障害児
- 障害児を含むすべての子供の基本的権利を保障する仕組みの創設が必要。
- 障害を理由に一般児童施策の利用が制限されるべきではない。
3.労働と雇用
- 障害者雇用促進法を見直し、雇用の質の確保、必要な支援を認定する仕組みの創設、雇用率や納付金制度見直し等を行う。
- 労働と福祉の一体的展開。
支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の仕組み①
- 本人が作成する(セルフマネジメント)場合
- サービス利用計画
- 相談支援専門員等とともに作成する場合
- 本人中心支援計画
- サービス利用計画
本人
市町村
本人等
申請
障害の確認
支援ガイドラインに基づくアセスメント
サービス利用計画がガイドラインの水準に適合しない場合
本人等
市町村
協議・調整
協議が整わない場合
合議機関(希望に応じて本人の参画)
支給決定
支給決定に納得できない場合
都道府県
不服申立
サービス利用
*アセスメントまでにサービス利用計画を市町村に提出。
相談支援、権利擁護等による
障害者へのエンパワメント支援と意思決定支援
支給決定の仕組み②
支給決定の目的
○地域で暮らす他の者との平等を基礎として生活することを可能とする仕組。
○障害者本人(及び家族)の意向やその人が望む暮らし方を支援するための支給決定。
サービス利用計画(障害者へのエンパワメント支援と意思決定支援が重要)
○障害者がどのような支援をどの程度利用したいのか、サービス利用計画として作成し、市町村に提出。
○障害者自身又は、本人が家族や支援者の協力を得て作成するか、本人が希望する場合には相談支援機関を利用し、相談支援専門員と一緒に作成。
障害の確認
○障害者総合福祉法の対象者となるか否か、「心身の機能障害」の有無を確認。
○障害者手帳、医師等の診断書、意見書の利用。
支援ガイドラインによるニーズアセスメント
○支援ガイドラインは、障害の種類や程度に基づく障害程度区分ではなく、障害者本人が望む暮らし方を実現するために、必要な支援とその量を示すもの。
○国は、障害者等の参画の下に、支援ガイドラインをモデルとして策定し、市町村はそれを最低ラインとして、当事者等の参画により策定。
○市町村は支援ガイドラインに基づいて、サービス利用計画についてニーズアセスメントし、支給決定。
協議調整等
○市町村は、支援ガイドラインの水準やサービス内容に適合しない場合、障害者(及び支援者)と協議調整。
○協議調整が整わない場合に、合議機関(障害者の意見陳述あり)による判断を尊重し支給決定。
○障害者の出席、意見陳述、反論の機会が障害者等に与えられるように、不服申立の仕組みを整備。
試行事業の実施と自治体への周知
○国は、地方自治体の協力を得て、新たな支給決定の仕組みについて試行事業を行い、その結果を障害者及びその関係者、自治体等と検証。
○国は、自治体等への周知を図り、十分な準備を経て導入。
*支援に要する費用については、国庫負担基準を廃止し、市町村が実際に要した費用を国・都道府県・市町村が負担する負担事業とする。長時間介助サービスに関しては市町村の負担を軽減する仕組みを設ける。
*障害者総合福祉法を補完し、またこれへの移行を支援するため、必要な基金を創設し基金事業として実施する。
障害者自立支援法のサービス体系 | → | 障害者総合福祉法における支援体系 | ||
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全国共通の仕組みで提供される支援 | 地域の実情に応じて提供される支援 | |||
介護給付 |
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1、就労支援 (障害者就労センター等の創設、モデル事業の実施検証を経て見直し) 2、日中活動支援 (デイアクティビティセンターの創設、ショートステイ、日中一時支援等) 3、居住支援 (GH・CHの一本化と機能整理等) 4、施設入所支援 (セーフティネット機能等の明確化を行い、地域基盤整備10か年戦略終了時に検証) 5、個別生活支援 (パーソナルアシスタンスの創設、居宅介護【身体介護、家事援助】、移動介護【移動支援、行動援護、同行援護】) 6、コミュニケーション支援及び通訳・介護支援 7、補助具・日常生活用具 8、相談支援 9、権利擁護 |
市町村独自支援
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訓練等給付 |
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地域生活支援事業 |
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障害者就労支援の仕組みの推移等
試行事業(パイロットスタディ)→ | |||||
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→ |
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- 障害者就労センター
- ・労働法の全面適用または部分適用
- ・賃金補填等を含め最賃以上を目指す
- デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)
- ・労働法適用なし
- ・年金等との調整で所得保障
障害者総合福祉法における 就労支援・日中活動等支援などの関係 |
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↓ | ↓ | ||||
一般就労・自営 | ←→ |
障害者就労センター
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←→ | デイアクティビティセンター | |
作業活動支援部門 就労支援の一環として作業活動を中心とした社会参加活動等に取組む。 |
左記以外の部門 生活訓練、趣味・創作活動等を通じて社会参加活動に取組む。 |
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適切な仕事を安定的に確保する。 *官公需優先発注の制度化 *官公需における随意契約の促進 *雇用率制度とリンクした見なし雇用制度の導入 *民需の発注促進 など |
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労働法規適用(全面適用または部分適用、自営を除く) 賃金補填の制度化の検討 |
労働法規適用なし 年金等による所得保障 |
*労働法を適用することが適切ではない人が働く場を失わないよう、十分に配慮すること。