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障がい者制度改革推進会議 第35回(H23.9.26) 長瀬修委員提出資料

障害者の権利条約第4回締約国会議‐制度改革の取組みについて日本政府からのステートメント(発言)

2011年9月7日から9日までニューヨークの国連本部で障害者の権利条約第4回締約国会議が開催され、出席の機会を得た。簡単にその報告を行う。

締約国会議は、障害者の権利条約の第40条の「実施に関するいずれの事案をも審議する」という規定に基づいて同条約が発効した2008年から毎年、開催されている。2年に一度実施される、障害者の権利委員会専門家の選挙が今年はなく、落ち着いて条約の実施に向けた議論を行うことができた。

今回の締約国会議は「可能性を引き出す環境」が大きなテーマで、副題は「参加と雇用、国際協力を通じた障害者の権利条約の実現」だった。全部で500名を越す参加者があり、半数近くはNGO(非政府組織)の代表だった。政府そして障害者組織の締約国会議への関心の強さを実感したのは、35という異例に多数のサイドイベントが開催された点にある。従来は昼休みが主流だったが、正規の会議時間と競合したり、正規の会議終了後の夕方の時間に開催されるサイドイベントも多かった。

障害者の権利条約の締約数が100を越して、国際的に障害問題への関心が高まっていることを感じた。来年(2012年)、ブラジルで開催されるリオプラス20という地球環境、そして持続的発展に関する会議、また、2015年に区切りを迎えるミレニアム開発目標(MDGs)と言う世界の貧困や教育に関する取組みの次の目標など国際的な大きな課題との関連で、いかに障害の問題を位置づけるかが国際社会の課題となっていることが明らかにされた。

そうした意味で、来年秋の国連総会において、障害と開発に関するハイレベル会合が開催され、ポストMDGsの世界の開発目標と障害のリンクをどのように行うのか議論されるのをはじめ、開発全般と障害への関心がさらに高まる動きは心強い。

第1日の7日冒頭は、締約国がそれぞれ自国での条約実施の取組みについて発言を行った。署名国は時間が足りなくなり、8日の朝に発言を行った。昨年は日本政府の出席も発言もなかったため、今年、日本政府のステートメント(発言)が行われたのはうれしかった。その内容は、①障がい者制度改革推進本部及び推進会議の設置、②本年7月の改正障害者基本法の成立、③条約の32条に則った国際協力の実施というものであり、条約実施に向けての日本での積極的な努力を世界と共有する肯定的なものだった。ステートメントは添付資料を参照してほしい。日本のステートメントについて、国際障害同盟(IDA)のリーダーからは、締約国も日本のように努力してほしいという言葉を耳にした。

7日午後は、前述の障害と開発というテーマを意識して、「国際協力を通じた障害者の権利条約の実施」と言うラウンドテーブルが開かれた。ここで注目されたのは、障害者の人材開発に関する日本財団の石井靖乃国際協力グループ長の発言だった。

2日目の8日午前には、二つめのラウンドテーブルが「政治的及び公的活動への実効的で完全な参加の確保」というテーマで開かれた。ペルーのマリア・アレハンドラ・ヴィラヌーヴァ氏(ペル―ダウン症協会)が自らダウン症者として投票する権利を奪われ、裁判で選挙権を取り戻した経緯を述べ、「私はこうした事態を、自分と他の障害者のために変えるために闘います。他の人と同じように市民になりたいのです」と締めくくった。日本でも今年に入って、茨城県と埼玉県の方から、成年後見制度の利用者から選挙権を奪う公職選挙法への違憲訴訟が起こされているのを思い起こした。8日午後には、非公式セッションとして「労働及び雇用の権利の実現」が開催された。

最終日の9日には、国連機関の参加による「双方向の対話:条約の実施」が開催され、パネリストとして国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の秋山愛子氏が参加し、アジア太平洋障害者の10年等の取組みについて触れ、日本の制度改革についても域内での条約実施の努力の例として紹介された。ジュネーブで開催される障害者の権利委員会のロン・マッカラム委員長からの発言は、報告書の提出率の低さや審査の遅れに示される「条約体全体の危機」について触れると共に、締約国に報告書の提出を促し、対話と審査が遅れないように、障害者の権利委員会の現在の1週間の会期2回を倍増し、2週間の会期を年に2回とするように、障害者の権利委員会が国連総会の第3委員会に求めていることも明らかにした。

締約国会議の前日に、非公式のNGOとDPO(障害者組織)のディスカッションと市民社会フォーラムが開かれたほか、締約国会議が昼で終了した第3日(9日)午後と翌10日には機会均等基準の専門家パネル、翌々日の11日には国際障害同盟(IDA)の会合など、この締約国会議を軸として多くの動きがあった。このように締約国会議は障害者の権利条約の実施に関心のある多くの政府と障害者組織の代表が集い、さまざまなネットワーキングや情報交換を行う貴重な場となっている。

来年の締約国会議の日程は、後日、発表されることとなった。


障害者の権利条約第4回締約国会議
国際連合日本政府代表部木村徹也公使のステートメント

2011年9月7日(

議長、ご列席の皆様、

日本政府代表部は障害者の権利条約の第4回締約国会議に署名国として参加することを光栄に感じています。5年前に私たちは総会において、本条約をコンセンサスで採択いたしました。それ以来、障害者の人権と基本的自由の促進と保護に向けての努力を法的枠組みの中でしてまいりました。日本は条約交渉に積極的に参加し、2007年に署名を行いました。そして日本は今、締約に向けての準備を進めています。今日、この機会に、日本がこの数年において実施してきた積極的な施策について皆様と共有したいと存じます。

第1に、2009年12月に内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置いたしました。総理大臣が本部長を務め、全閣僚がメンバーです。この推進本部は、障害者の権利条約を締結し、実施するために必要な関連国内法整備をはじめとする、集中的な制度改革を行う目的で設置されました。条約交渉に政府のみならず、障害者が参加したことを認識するとともに、国内的な要求に応じるためにも、障害者の声が国内政策に反映される仕組みを確立することが重要であると感じました。そのために、過半数が障害者と家族が占める「障がい者制度改革推進会議」を推進本部の下に設置したのです。

第2に、改正障害者基本法が2011年7月29日に成立しました。同法は「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ことが目的です。この新法の二つの特徴は指摘するに価します。一つは、障害者のための現実の施策の実施とモニタリングを監督する障害者政策委員会の設置です。もう一つは、必要で適切な配慮の提供を確保できないことを障害に基づく差別として含んでいる点です。これは、「合理的配慮」という法的概念が日本の法体系に位置づけられた最初の例です。こうした規定は障害者の権利条約に則ったものです。

最後になりますが、条約の第32条が規定している国際協力に私どもは取り組んでまいりました。日本政府は政府開発援助(ODA)を通じて、この国際協力に貢献してきました。具体的には、バリアフリーな鉄道設備・大学キャンパスを推進すると共に、障害者のリハビリテーション・職業訓練機関を設置してきました。

議長、日本はこうした実績に加えて、障害者の権利の促進と保護に関する新たな法的施策の策定過程にあります。多くの課題はありますが、私どもは障害者の権利の保護と促進のために、障害者そして障害者を代表する組織と緊密に協力を進めます。

ご清聴、ありがとうございました。

(長瀬修仮訳)

*ここでの日付は9月7日と記されているが、実際にこのステートメントが行われたのは、9月8日である。