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場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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第37回障がい者制度改革推進会議 (H24.1.23) 久松三二委員 提出資料1

東日本大震災での聴覚障害者救援についての全日本ろうあ連盟としての活動

財団法人全日本ろうあ連盟 久松三二

Ⅰ 全国規模の救援活動

1.「東日本大震災聴覚障害者救援中央本部」の設置

【組織】 【構成団体】

全日本ろうあ連盟・全国手話通訳問題研究会・日本手話通訳士協会・協力団体として全国規模の聴覚障害関係団体のほぼ全団体を網羅

【協力団体】

特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会・特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構・全国聴覚障害教職員協議会・日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会・社会福祉法人全国手話研修センター・社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会・全国ろうあヘルパー連絡協絡協議会・聴覚障害者の医療に関心をもつ医療関係者のネットワーク・日本財団・社会福祉法人全国盲ろう者協会・全国ろう重複障害者施設連絡協議会・全国高齢聴覚障害者福祉施設協議会・全国盲ろう難聴児施設協議会・全国ろう学校長会・特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会

【オブザーバー】

内閣府、厚生労働省、文部科学省

【活動方針】

(1) 支援対象は、東日本大震災により被害を受けた聴覚障害児・者、手話通訳・手話関係者・要約筆記者等とし、広く義援金を募る。

(2) 当面の支援対象地域は、岩手県、宮城県、福島県とする。茨城県等については、関東ろう連盟で支援する。

(3) 現地に行って調査を行い、具体的な支援方法を決める。

(4) 現地の被災聴覚障害者に必要な情報を収集し、財団全日本ろうあ連盟のホームページに掲載する。

(5) 避難所にCS障害者放送統一機構の受信機を設置し、手話、字幕付き放送「目で聴くテレビ」を避難所にいる聴覚障害者が視聴できるようにすることを行政等に要望する。

(6) 被災者及び支援者のメンタルケアのために、聴覚障害者のメンタルケアの専門家を派遣する。

【活動内容】

● 3月11日午後、東北地方太平洋沖で地震が発生。全国の加盟団体に連絡し被害状況の情報収集。

● 3月12日

  • 岩手・宮城・福島・茨城の加盟団体と連絡が取れる。
  • 財団法人全日本ろうあ連盟は一般社団法人全国手話通訳問題研究会、一般社団法人日本手話通訳士協会と協議し3団体で構成する「東日本大震災聴覚障害者救援中央本部(以下、救援中央本部)」を立ち上げ。
  • 救援中央本部としてホームページを開設。
  • NHKへ地震報道について聴覚障害者への情報保障について緊急要望。
  • 東京電力の記者会見への手話通訳の配置を要望。
  • 経済産業省、気象庁の発表に手話通訳・字幕付与を要望。
  • 「東日本大震災義援金規程」を定め、義援金募金を全国に呼び掛け。

● 3月14日、厚生労働省に被災地への全国の手話通訳者・要約筆記者・ろうあ者相談員の公的派遣を要請

● 3月16日、内閣府広報室と首相官邸での記者会見への手話通訳配置の協議。

● 3月18日「東日本大震災聴覚障害者救援中央本部」第1回会議を開催。出席者は構成員、協力団体、オブザーバー(内閣府・文部科学省・厚生労働省)の計38人。

● 3月22日~28日、中央本部として岩手・宮城・福島の被災地救援本部を訪問し被災状況と救援要望の把握をするとともに青森・秋田・山形各県ろう協会も回り支援の方針を検討。

● 3月26日以降、3現地救援本部の要請を受け、物資を搬送。

● 4月9日から宮城救援本部と連携し、ろう者支援・医療メンタル班(ろうあ者相談員・ろうあヘルパー・精神保健福祉士等)を派遣し宮城県内の被災者のメンタル支援を実施。

● 5月11日、日本民間放送連盟会長と会談。テレビのニュースへの手話・字幕の付与及び官邸記者会見の際の手話通訳の立ち位置を発言者に近づけることを要望。

● 5月12日、3現地救援本部との意見交換会を開催。

● 5月12日、第2回救援中央本部会議開催。

● 中央本部構成団体の全国の傘下団体に「地域救援本部」の設置を指示。義援金募金や救援の全国的な協力体制を構築。

● 6月7日、救援中央本部事務局会議開催。中期的な支援について協議

● 6月10日~12日、第59回全国ろうあ者大会(佐賀)で被災県の報告、東北ブロック会議(東北救援本部設置についての協議)、義援金コーナーでのイベント等、震災関係各種会議やイベントを実施。

● 7月~現在、日本財団助成による日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会実施「聴覚障害サポートなかま」事業立上げへの協力

● 7月1日~5日、中央本部として岩手・宮城救援本部を訪問し、今後の救援活動について協議。宮城県庁にも宮城県救援本部に同行し、被災聴覚障害者の救援について要請。

● 7月22日、全日本ろうあ連盟として震災時の字幕付与(25 時間連続)に貢献した日本テレビ放送網に感謝状を贈呈。

● 7月26~27日、福島救援本部と今後の支援について協議するとともに福島県庁にも福島救援本部に同行し被災聴覚障害者の救援について要請。また日本障害フォーラム福島本部を訪問し、被災障害者の支援について協議。

● 7月31日、岩手県被災聴覚障害者の実態調査実施について、岩手県・岩手救援本部・中央本部・調査協力団体の全国聴覚障害者情報提供施設協議会の4者で盛岡市で協議。

● 8月3日、医療・メンタル担当が4月~6月に宮城救援本部の依頼を受けて実施した被災者メンタル調査の報告をまとめて発表。

● 8月7日、盛岡市で東北救援本部と中央本部合同会議を開催。

● 同日午前中に盛岡市で開催の日本障害フォーラム岩手会議に中央本部と岩手救援本部が出席。

● 8月31日、宮城救援本部と宮城県の被災聴覚障害者の実態調査と今後の支援について協議。翌9月1日宮城県庁を宮城県救援本部に同行し訪問、宮城県被災聴覚障害者の実態調査実施について要請。

● 9月1日、岩手県と中央本部協同での実態調査実施について、岩手県、岩手救援本部、全国聴覚障害者情報提供施設協議会と盛岡市で協議。

● 9月6日、宮城県仙台市で「手話ホッと祭り」を開催。

● 9月11日、福島救援本部と福島県の被災聴覚障害者の実態調査と今後の支援について協議。翌9月12 日福島県庁を福島県救援本部に同行し訪問、福島県被災聴覚障害者の実態調査実施について要請。

● 9月12日、仙台市へ仙台市被災聴覚障害者の実態調査実施について要請。

● 10月3日、福島県庁を福島県救援本部に同行し訪問、福島県被災聴覚障害者の実態調査実施について要請。

● 10月4日、岩手県、岩手救援本部、全国聴覚障害者情報提供施設協議会と盛岡市で実態調査について協議。

● 11月6日、岩手県大船渡市で「手話ホッと祭り」を開催。

● 11月7日、岩手県実態調査要員説明会開催

● 12月20日、福島県救援本部と中央本部協同での実態調査実施について、福島県、福島救援本部、全国聴覚障害者情報提供施設協議会と福島市で協議。

2.政府、政党などへの要望

● 民主党・自民党・公明党等の震災関係障害者団体ヒアリング会議に要望書を提出。

1)避難所に聴覚障害者がいる場合は、避難所所在地自治体のコミュニケーション支援事業及び相談支援事業の対象者とすること。

2)避難所に聴覚障害者がいる場合は、該当者に他の避難者と同等の情報を提供すよう諸配慮を行うこと。

  • 避難所に聴覚に障害のある人がいるかどうかは、本人からの申し出を待つのではなく、避難者受付のときに聴覚に障害があるかどうか確認することが必要である。
  • 聴覚障害者の存在を確認したときは、避難所所在都道府県の聴覚障害者団体、聴覚障害者情報提供施設に連絡をすること。
  • 居住市町村とは違う地域(市町村外、または都道府県外)の避難所にいる場合は、その避難所がある地域のコミュニケーション支援事業の対象者とすること。また相談支援事業の対象者とすること。
  • 避難所にて音声により周知することがある場合は、必ず、文字情報にて掲示、伝達すること。
  • 情報と連絡だけでなく、避難所にいる人たちとの会話ができないため,心理的に孤立しストレスが大きい。手話の出来る人や筆談で会話できる人を派遣したり、配置したりするなどの心のケア対策についても十分に配慮すること。

3)避難所に聴覚障害者がおり、テレビ視聴が可能な場合は、テレビ及び聴覚障害者用情報受信装置を設置し、CS障害者放送統一機構の聴覚障害者向け放送が視聴出来るようにすること。

  • 避難所にテレビ視聴が可能な場合は、地上デジタル放送受像テレビ及び聴覚障害者用情報受信装置(アイ・ドラゴン3)を設置し、CS障害者放送統一機構の聴覚障害者向け放送「目で聴くテレビ」が視聴できるようにすること
  • 避難所には高齢者も多く、高齢者の中には、身体障害者手帳を持っていなくても、中度・軽度の聴覚障害を持ち、テレビの音声が聞き取れない人がいると思われる。身体障害者手帳を持つ聴覚障害者にこだわらず、高齢者が多く避難所にいることから、手話と字幕が必ず付く「目で聴くテレビ」が受信できるようにする。

4)首相官邸での記者発表に手話通訳が配置され、インターネット配信では手話通訳をとおして情報を得られるが、テレビニュースになった場合は手話通訳が画面からカットされてしまうためせっかく手話通訳がついても意味がない。ニュース放映時も通訳を画面に出すように働きかけること。

● 厚生労働省へ全国自治体の手話通訳等の被災地への公的派遣を要請

厚生労働省は、避難所等における聴覚障害者への情報・コミュニケーション保障への取り組みとして、3月30日付で各都道府県・指定都市・中核都市の障害保健福祉部あてに、手話通訳者・要約筆記者・ろうあ者相談員の派遣を要請する文書「視聴覚障害者等への避難所等における情報・コミュニケーション支援に関する手話通訳者等の派遣について」を通知。

救援中央本部が手話通訳等派遣者のコーディネートを担当。

<都道府県別手話通訳者等派遣登録者数>(29県178名)

北海道15名、青森県3名、秋田県7名、山形県3名、栃木県2名、群馬県7名、埼玉県9名、千葉県2名、東京都6名、神奈川県16名、新潟県5名、長野県8名、富山県8名、岐阜県4名、愛知県4名、三重県5名、滋賀県5名、京都府14名、大阪府5名、兵庫県15名、奈良県1名、和歌山県5名、岡山県1名、広島県11名、山口県5名、徳島県2名、香川県6名、福岡県4名、宮崎県1名

● 内閣府広報室発行「生活再建ハンドブック」へのファックス番号の掲載を要望

3.マスコミへの対応

NHK、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、朝日新聞、地方紙などの問い合わせに対応。

4.情報発信

  • 連盟のホームページに被災地の情報を掲載するとともに、聴覚障害者への支援に必要な情報を掲載。
  • ホームページに国際サイトを立上げ、世界に向けて聴覚障害者の被災状況についての情報を発信
  • 「救援ニュース」発行(2012年1月6日現在第10号発行)

5.義援金

(1)募金活動

  • 中央本部設立当初から義援金募金開始(2012年1月6日現在 1098件 57,275,722 円)
  • 3月13日「義援金の呼びかけ」をHP上で開始
  • 「義援金ニュース」の発行(12月22日現在第11号発行)
  • 全国規模の集会での義援金コーナー及び募金箱の設置
    • ① 6月12~13日全国ろうあ者大会(於:佐賀)
    • ② 8月20日高校生による手話スピーチコンテスト(於:東京)
    • ③ 8月26~28日全国手話通訳問題研究集会(於:大分)
  • 全国の地域救援本部に各種集会での義援金コーナー及び募金箱の設置を呼び掛ける。
    (震災の特設コーナーを設置。現地の状況、データ、パンフ等の展示)

(2)義援金の配分 【義援金配分委員会設置】

  • 委員には構成団体のほかに厚生労働省、弁護士を選任


【義援金の配分内容】 ◎支給対象者

【聴覚障害者】

聴覚障害者=身体障害者手帳取得者とする


【健聴者】

  • 全国手話通訳問題研究会または日本手話通訳士協会会員
  • 該当県ろうあ協会の推薦する手話講習会受講者、手話サークル会員、要約筆記者、PC要約筆記者

◎支給基準と金額について

【支給基準について】

  • 基準①:罹災証明を交付されている者(自主避難者も含める)
  • 基準②:建物全壊(行政による強制避難も含める)
  • 基準③:本人死亡
  • 基準④:家族(配偶者・子、同居の親・兄弟姉妹)死亡

【支給額(予定)】

  • 基準①:10,000円を支給する
  • 基準②:建物全壊(強制避難)につき50,000円を支給する
  • 基準③:本人死亡につき50,000円を支給する
  • 基準④:家族死亡1人につき50,000円を支給する

Ⅱ 被災地(岩手・宮城・福島)での救援活動

1.岩手県

(1)安否確認(5/7現在)

聴覚障害者 ろうあ協会員
 総数195名、無事192名、死亡3名

健聴者 ろうあ協会賛助会員
 総数62名、無事61名、死亡1名

健聴者認定手話通訳者
 総数29名、無事29名、死亡0名

合計 総数286名、無事282名、死亡4名

(2)岩手救援本部の取り組み

① 岩手本部の設置

  • 被災直後から岩手県ろうあ協会として協会会員を中心に聴覚障害者・手話通訳者等関係者の安否を確認。
  • 4月3日に「東日本大震災聴覚障がい者支援岩手本部」を岩手県立視聴覚障害者情報センター内に設置。

〈構成団体〉

社団法人岩手県ろうあ協会、NPO法人岩手県中途失聴・難聴者協会、岩手盲ろう者友の会

〈協力団体〉

岩手手話通訳問題研究会、岩手県手話サークル連絡協議会、要約筆記通訳「いわて」連絡協議会、パソコン要約筆記サークルあいたっち

② 被災者への物資支援、訪問活動等県内の被災聴覚障害者、手話関係者の救援活動。

③ 被災者への癒しの催しの開催

④ 救援ニュースの発行

(3)岩手県内被災聴覚障害者の実態調査

  • 実施者-岩手救援本部・岩手県・中央本部・全国情報提供施設協議会
  • 一次調査(9月初旬)-沿岸部在住約1000人に手紙でアンケート調査
  • 二次調査(11月7日から下旬)-アンケート返信者のうち訪問相談依頼者125人の自宅訪問を手話通訳者。ろうあ協会役員等で10チーム編成で実施
  • 二次調査結果での要相談案件の解決に向けて取り組み中

2.宮城県

(1)安否確認(5/7現在)

聴覚障害者 ろう協会員(ろう協会員は2008年度~2010年度会員)
 総数363名、無事358名、死亡5名

聴覚障害者 ろう協会員外(ろう協会会員や通訳者、手話サークル等関係者からの情報により安否確認)
 総数387名、無事378名、死亡9名

健聴者 ろう協賛助会員
総数65名、無事65名、死亡0名

健聴者 宮城県手話通訳研究会会員
総数154名、無事154名、死亡0名

健聴者 登録手話通訳者
総数10名、無事10名、死亡0名

合計 総数979名、無事965名、死亡14名

(2)避難所への避難

最大時 45か所(70人) ⇒ 5/7現在 14か所(17人)
(気仙沼市1(1)、石巻市5(6)、女川町1(1)、東松島市3(3)、塩釜市1(1)、多賀城市1(2)、岩沼市2(3))

(3)宮城救援本部の取り組み

① 宮城本部の設置

  • 3月12日に宮城県ろうあ協会事務所内に[東日本大震災聴覚障害者救援宮城本部」を設置(構成団体)
    宮城県ろうあ協会、宮城県中失・難聴者協会、宮城手話通訳問題研究会→後に中失・難聴者協会は別に独立。

② 安否確認と実態把握

  • 安否確認(携帯メール→電気復旧に伴いFAX→訪問)
  • 避難所にいる聴覚障害者調査と配慮のお願い(各避難所訪問・ラジオによる呼び掛け)
  • 被災状況確認のため訪問
  • 身体障害者団体との連携

③ 被災地への通訳配置

  • 石巻市・東松島市・多賀城市・名取市・亘理町・宮城本部に県外から通訳者派遣
  • 行政窓口における通訳、庁舎外における通訳、安否・現状確認。

④ 被災者の相談支援

  • 中央本部・医療メンタル班の協力を得て、一斉アセスメント。
  • ろうあ者相談員の派遣

⑤ 支援活動

  • 救援物資の収集と提供(全国・中央本部からの提供。各団体・企業からの提供。宮城本部で調達)
  • ボランティア班の組織化(和室・運搬・お話・そうじ)

⑥ 活動資金の調達

  • 助成金の申請(日本財団、共同募金)
  • 販売部(復興Tシャツ販売による支援金→支援物資を購入)

⑦被災者の癒しの催しの開催

⑧救援ニュースの発行

(4)長期的な救援組織の新たな立ち上げ

名称:みやぎ被災聴覚障害者情報支援センター

実施者:宮城県

運営団体:東日本大震災聴覚障害者救援宮城本部

〈構成団体〉

社団法人宮城県ろうあ協会、仙台市聴覚障害者協会、特定非営利活動法人みやぎ・せんだい中途失聴難聴協会、宮城県手話通訳問題研究会、特定非営利活動法人パソコン要約筆記文字の都仙台

開設日:2012年1月

事業内容:聴覚障害被災者の生活再建に向けた相談事業、情報発信(宮城県受託事業)

3.福島県

(1)安否確認(5/7現在)

聴覚障害者 会員・非会員合計(非会員については会員や手話通訳者、手話サークル等関係者からの情報により安否確認を行った。)

 総数 726名、無事 726名、死亡 0名

(2)福島救援本部の取り組み

① 福島本部の設置

  • 3月11日地震発生直後から3団体(福島県聴覚障害者協会・福島県手話サークル連絡協議会、福島県手話通訳問題研究会)で安否確認活動。
  • 3月14日に福島県聴覚障害者協会事務所内に[東日本大震災聴覚障害者救援福島県本部」を設置。

〈構成団体〉

社団法人福島県聴覚障害者協会、福島県中失・難聴者協会、福島県盲ろう者友の会、全国手話通訳問題研究会福島支部、福島県手話サークル連絡協議会

② 安否確認と実態把握

(ア)安否確認

  • 通信手段(FAX・メール等通じず、ガソリン不足など)が困難な状況の中で各避難所を回り、また会員同士で非会員を訪問して確認。
  • 1週間の間でほぼ安否確認終わる。
  • 3月30日安否確認結果、県内聴覚障害者3団体会員・非会員合わせて726人の無事を確認。
    • 県内避難所(12ヶ所)に16人
    • 県外避難所(3ヶ所)に5人
    • 県外の親戚等宅に避難(12都道府県)24人
      ※5月9日現在 県内避難所5人(非会員)、県外避難所2人 県外避難4人
  • (イ)実態把握

    現地に出向いて状況確認

    • いわき地区……津波被害
    • 南相馬地区………津波被害・原発事故
    • 県外避難所(新潟)……津波被害・原発事故

    ③ 学習会の実施

    • 原発事故・放射能問題についての学習会の開催。

    ④ 被災者の生活支援

    • り災害証明書や義援金の申し込みなど、今後、生活支援及び手話通訳者の手配。
    • 津波、原発事故で会社の廃業、休業による解雇者、待機者等の雇用問題について関係機関に働きかける。

    ⑤ 県外からの手話通訳者の県内市町村への派遣の調整

    ⑥ 被災者への癒し催しの開催

    ⑦ 救援ニュースの発行

    (3)福島県内被災聴覚障害者の実態調査を実施
    • 実施者-福島救援本部・福島県・中央本部・全国情報提供施設協議会
    • 一次調査(11月~12月)-被災地13市町村1,649人に手紙でアンケート調査
    • 二次調査(1月23日~)-アンケート返信者のうち訪問相談依頼者人の自宅訪問を手話通訳者。ろうあ協会役員等でチームを編成し実施する予定。

    Ⅲ 上記3地域以外での救援活動

    1. 青森・茨城・栃木・千葉等、岩手・宮城・福島以外の地域で震災による被害が出た地域では全日本ろうあ連盟加盟団体が中心となって救援活動を行っている。
    2. 側面支援として全国44都道府県(岩手・宮城・福島除く)に「地域救援本部」を設置。義援金の募金、物資支援、その他被災地への支援及び被災地からの避難者への支援を行っている。

    Ⅳ 課題と対応

    NHK「福祉ネットワーク」取材班が独自調査により、「東日本大震災における障害者の死亡率」は「東日本大震災被災総人口に対する死亡率」の2倍にのぼるという結果を発表しています。悲しいことながらこの結果を障害当事者団体は想定できていたといっても過言ではありません。今後同様の震災が起きることを想定したくはないが、現状では同規模の震災がいつどこで起きても不思議ではないのがわが国の現状です。悲しい事態を繰り返すことのないよう、今回の震災での障害者の実態を徹底的に検証し対策を講じることが、残された私達の使命であると考えます。聴覚障害者の当事者団体として、今回の震災での課題とその対応策を下記に提起します。

    1.災害発生時における安否確認に際しての障害者名簿の開示

    (1)災害時行政等公的機関だけで被災障害者を支援することは不可能であったことが今回の震災でも立証されている。個人情報保護法を改正し支援団体特に障害当事者が構成主体になっている支援団体への障害者名簿の開示を法制化すること

    (2)現在の「災害時要援護者制度」の活用には限界があります。地域社協や民生委員だけでは障害者支援に対応できません。名簿開示団体に障害当事者団体を加えるよう国として自治体に働きかけること。関連で、今回の震災時に現状の制度が機能したかどうか有効性を検証し対策を見直し周知徹底を図ること

    2.災害時の情報保障

    (1)災害発生時の緊急情報発信

    ① 消防庁が全国的に推進している[全国瞬時警報システム(J-アラート)]では字幕を付与することができないため、聴覚障害者は利用することができない。老齢化が進んでいるわが国の現状を踏まえて、字幕が出る新たなシステムを構築する必要がある。

    ② 防災無線は聞こえる人でも聞きづらいとの声は多く、希望者に個別機器を貸し出している自治体が増えている。その中でも防災無線の音声を字幕化する機器を聴覚障害者用に貸し出している自治体がある。それを全国に広げるよう国として措置を講じていただきたい。

    (2)災害発生後の情報保障

    ① テレビへの字幕・手話通訳の挿入をより一層推進すること

    ② 官邸記者会見のインターネット配信では手話通訳者が配置されているが、テレビニュースでは話し手のみの映像が流され、手話通訳者の映像がない。理由は手通訳者が話し手とは別のカメラで収録され別画面にして挿入しているからである。手話通訳者を話し手の横に立たせ一つのカメラで収録することで同一画面に映るようにする必要がある

    ③ CS障害者放送統一機構は1998年から視聴覚障害者のための放送を民間団体として独自で放映を続けている。今回の震災でもいち早く現地に入り震災の状況を手話・字幕付きで放映している。NHKが対応が難しい時には画像を無償でCS障害者放送統一機構に提出することができれば、CS障害者放送統一機構が手話・字幕を付けて放映できる。非常時の特別措置及び放映費用の助成を講じる必要がある

    3.災害対策は平常時の取り組みが大切です。手話通訳者、要約筆記者、盲ろう通訳介助者、聴覚障害者相談員の設置・派遣を充実させる必要があるが、復興に予算が多く回され、障害者関係予算の確保が困難である。国の復興予算の割り振りにおいて障害者対策と特定し充当するように措置する必要がある。

    4.被災障害者の生活を支える相談支援を充実するための予算を確保すること。聴覚障害者には手話で相談できる相談員の配置が必要である。

    5.被災地での障害者の就労促進について具体的な対策を講じる必要がある。

    6.住民の安全は自治体が責任を負うべきであるが、対応できない場合も多く、今回も障害当事者団体等が支援に当たっている。それら民間団体は資金面で余裕がなく救援活動に支障をきたしているので、支援団体への活動助成が受けられる制度を作る必要がある。

    7.国、都道府県、市町村で復興計画を策定する際には障害当事者団体を必ず参加させる必要がある。

    8.東日本大震災での障害者の被災実態を調査し、障害者に関する防災マニュアル・ガイドラインを全自治体で作成するように全国の自治体に指導すること。又作成に当たっては障害当事者を必ず参加させること。

    9.当連盟は従来から官公庁の問い合わせ先に電話番号だけでなく、FAX番号の併記の義務付けを要望し続けているが、未だに実現していない。平常時の施策が災害時でも踏襲されるので、政府のすべての連絡先公表に際してのFAX番号の併記を義務付けてることが必要である。