第4回障がい者制度改革推進会議 議事要録
(2010年3月1日)
議事 雇用について
1 一般就労(雇用促進法)
(適用範囲(手帳制度の問題点)についてどう考えるか…主な書面意見)
○雇用促進法の対象者を手帳交付者に限定すべきではなく、職業生活上の困難度に注目し、社会モデルで見直すことが必要。現在、外れている難病、発達障害、高次脳機能障害なども幅広く対象にするべき(17名、ほぼ全員が同趣旨)。
(障害種別による制度的格差についてどう考えるか…主な書面意見)
○身体障害者と知的障害者とでは、大きな賃金格差がある。手帳を有する精神障害者は、雇用率算定には入るが、雇用義務から外れている。手帳を有しない難病、発達障害、高次脳機能障害の者は、雇用率算定、雇用義務の両方から外れている。視覚障害者は、他の身体障害に比べ雇用促進の取組みが遅れている。聴覚障害者は、手話通訳者等の不足で就労支援が不十分(15名)。
(現行法定雇用率制度の問題点についてどう考えるか)
(問題点 雇用率…主な書面意見)
○ドイツ、フランスに比べ、法定雇用率の設定が低く、問題。公的セクター、国や自治体での雇用率を率先してあげていくべき(18名)。公務員の募集で、事実上、知的障害者が外れており、障害種別ごとに雇用率を設定すべきとの意見もあった。
(問題点 ダブルカウント…主な書面意見)
○ダブルカウントは、障害者を二分するもので不適切であり低い雇用率を更に低くするもの。重度障害者の雇用促進が図られるという効果には疑問があり、合理的配慮で対応すれば、不要ではないか。短時間労働の障害者を0.5とカウントすべきではない。他方、ダブルカウント、0.5カウントは雇用促進に役立っているという意見もあり。
(問題点 特例子会社…主な書面意見)
○雇用促進の効果がある反面、人事、賃金体系などの面で差別的待遇があり、是正が求められる。
特に、精神障害者の雇用が少ないという問題がある。
(問題点 雇用納付金制度…主な書面意見)
○例えば、常時雇用する労働者の範囲について、行政解釈が拡大され、雇用納付金が本来は相応しくない形で免除される結果になっていないか。雇用納付金の額を引き上げ、納付義務の対象企業を拡大するべきでないか。雇用率未達成企業の存在を前提とした助成制度は、目的とは矛盾する。雇用率達成を前提とした財源確保の手段を検討するべき。
(職場における合理的配慮の実現プロセスと異議申立についてどう考えるか…主な書面意見)
○合理的配慮は、本来個人の状況と置かれた環境によって個別に決まるため、すべて法律に書き込むには限界があり、具体的な場面でどのような形で合理的配慮の内容を決定していくかというプロセスが大切。事業者、個別機関において協議や調整の仕組みを設けるべきであり、障害当事者を支援する相談体制の確保が重要。事業者の認識を高める教育、研修体制も必要。行政機関が具体的なガイドライン作成すること。実態調査に基づく事例研究と、合理的配慮のための財政支援、助成金制度、技術援助の仕組みなどの検討が必要(19名、ほぼ全員同趣旨)。
○(発言)ILO159号条約との関連で、日本の障害者雇用の現状は、国際基準から見ても問題があるという主旨の指摘あり。政府からILOの条約勧告適用専門家委員会に提出する文書は、障害当事者団体も含めて討議するなど、事前に協議を行うべき。また、合理的配慮に関しては、「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」の「中間整理」が出され、これを踏まえて労働政策審議会障害者雇用分科会で審議が行われている。各省におけるこうした研究会、審議会とのすりあわせが非常に大事。
○(発言)障害者の雇用は、労働者と使用者が十分な連携を図る必要があるので、障害者も加わって労使が十分に参画できる厚労省の審議会議論を最大限尊重していただきたい。
○(発言)ILO条約の障害者の定義と権利条約の定義が異なるので、どう考えるべきかという基本的問題がある。また、労働法を適用するべきか、否か。精神障害者に、6時間の労働に耐えられるようにするという訓練目標を設けること自体適切か。就職してつぶれてしまう人も多い。労基法を厳密に適応するのではなく、フレキシブルにし、合理的配慮で時間の調整をして欲しい。
○(発言)法定雇用率は、精神障害を入れて5%くらいにするべき。ダブルカウントは、1999年から2007年までの厚生労働省のデータで、重度以外は16.5%、重度は21.6%上がっていることなどから、ある程度、積極的な差別是正措置とも言える。重度障害者が一般就労しやすいよう、障害の範囲、程度や手帳のあり方も再検討する必要がある。
○(発言)「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」の「中間整理」に、聴覚障害者が入っていない。アメリカの雇用機会均等委員会は、職場における聴覚障害者の合理的配慮について28のガイドラインの事例をまとめて出している。こうしたことが日本でも行われるべきではないか。
○(発言)一般就労について、精神障害者は就労したいができないのが現状。精神障害者への合理的配慮について、実効性のあるものにして欲しい。
2 福祉的就労(自立支援法)
(労働者性と労働法規の適用についてどう考えるか…主な書面意見)
○働く障害者への労働法規の適用について、慎重意見もあるが、多くは、障害者権利条約、ILO勧告からも、福祉的就労に一般労働法規を適用すべきとの意見。賃金補填制度の創設も検討すべき。福祉法と雇用法の連結によって、労働者の権利と所得を保障するべき(16名)。
(最低賃金と賃金補填についてどう考えるか…主な書面意見)
○多数は、賃金補填が必要であり、最低賃金の減額特例制度を見直すべきとの意見。最低賃金そのものは、障害者にも適用すべき。賃金補填を前提に、年金などとの相互調整が必要。その際、賃金補填が雇用機会の圧縮にならないように調整が必要。他方、重度障害者の一般雇用の維持のためには、最低賃金の除外制度、現在の減額制度を維持すべきとの意見もあり(全体として17名)。
(就労支援事業のあるべき姿についてどう考えるか…主な書面意見)
○就労支援と生活支援を切り離すべきではない。在宅での就労や、自営の仕事も支援の対象に含めるべき。精神障害者は、一般就労後に継続して働くための支援と帰宅後の生活支援が特に重要。就労に向けた訓練などの支援は無償で提供するべき。ジョブコーチ、相談支援、権利擁護者の存在も必要。就労後に合理的配慮が講じられるための環境整備、障害者雇用に関する協議会の設置についても検討すべき。自立支援法と雇用促進法の両方に分かれている就労支援事業は統合するべき(13名)。
(一般就労における就労支援(通勤支援、身体介助、ジョブコーチ)についてどう考えるか…主な書面意見)
○通勤支援、身体介助、ジョブコーチを福祉サービスでどのように位置づけるか。海外では、合 理的配慮として行うところもある。どのような根拠で、どのような制度を提供するのかは、まだ 委員間に共通の理解が形成されていない。ジョブコーチは、合理的配慮として提供されるべきか、 総合福祉法でパーソナルアシスタントとして提供するか等、多様な意見がある。議論を煮詰める 必要がある(全体として17名)。
3 シームレスな支援
(一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービスの断絶の問題についてどう考えるか[これま での論点で示された自立支援法における就労支援の問題点を踏まえて、総括的にどのように考 えればよいか]…主な書面意見)
○さまざまな意見があるが、制度間格差を解消する方向で一致している。「社会的活動、いわゆ る社会的就労、一般就労」のどの場面でも、本人の選択を基本に、切れ目のない支援を提供する べき。福祉的就労を一般雇用の枠外で扱っている現状を改めるべき。複数の就労形態を自由に選 択でき、体調や希望で容易に移動できることが重要。制度間格差をなくし、サービスを一元化す るべき(全体として14名)。
4 雇用の創出
(社会的事業所の法制度化についてどう考えるか…主な書面意見)
○社会的雇用ないし、社会事業所の意義から、法制化に向けた検討が必要であるとする意見が多 数。効果と費用の検討の必要性の指摘、一般雇用が開かれたものになることが先決であるとの意 見もあり(全体として 10名)。
(いわゆるハート購入法についてどう考えるか…主な書面意見)
○障害者の就労支援施設への優先的な仕事の発注を促進するための法案が提案されてきたが成 立していない。多くの意見は、法制度化を望むという点で一致している。買い上げ価格に問題が あるとの意見や、努力義務にとどまっていることは問題との指摘もあり(10名)。
○(発言)福祉的就労にも、その意義や機能がある。しかし、一般就労と継続就労支援AやBは、 賃金格差が非常に大きい。就労継続Aは、労働者性と利用者という2面性があり、賃金を得なが ら利用料を払う妙な形。社会的事業所は、この差を埋める可能性がある。そうなると、就労継続 Aの位置づけが課題になる。知的障害者には、就労継続Aのハードルが高い。
○(発言)日本では、一般雇用と福祉的就労の間に壁があり、この二元論をどのように克服する かが重要。社会的事業所、賃金補填も含め、障害者が権利性をもちながら働くための支援が必要。 シームレスな支援という観点からは、障害者自立支援法では通勤支援は使えず、問題。支援がい らなくなったら働く(一般就労)のではなく、支援を受けながら働くという視点が必要。
○(発言)保護雇用や社会的雇用について、労働行政では扱ってこなかった経過がある。理論的 にも整理しながら進めて欲しい。雇用率の制度によって雇用される人は、比較的労働能力が高い。 補助金を受けて賃金補填を講じるような形での雇用が実施されないと、福祉的就労のカテゴリー が大量に残ることになる。
○(発言)福祉的就労で何であれ、最低賃金を下回っているのならば、所得保障の大きな枠組み の中で論じるべきであり、賃金補填という話だけで終わってはいけない。
○(発言)福祉的就労の中で、大きな差別が起こっている。例えば、労働災害について、頚肩腕 症候群、腰痛症については、授産所の障害者が被災状態となっても、現在は保護されない。また、 就労支援と言いながら被用者に限定されていることは問題。視覚障害者は、鍼灸マッサージ業等、 自営業を開業している。しかし、こうした対象へは支援がなく、問題である。
○(発言)知事時代は、職員の業務を一旦分解し、コピー取りなど知的障害の方にできる仕事を 1人分、2人分と作り出した。トライアル就労から、一昨年、6人の雇用を生み出すことができ た。これで、職場に多様性が生まれた。
○(発言)知的障害者が数年仕事をすると、障害基礎年金が減額されたり、停止になる事例が報 じられている。就労がうまくいかなくなったとき、年金受給権が戻るかどうか保障がなく、就労 支援とは逆の効果をもたらすおそれがある。
○(発言)厚生労働省の資料からも、利用料と工賃を比べると、利用料の方が高い。ILOの委員 会は、利用料の支払い義務の導入に関して、繰り返し懸念を表明している。私たちが調査した諸 外国でも、利用料を払っている国は皆無であり、再考すべき。報道によると、EUが2020年までの 新成長戦略として、20歳から64歳の労働年齢の雇用率を69%から75%に引き上げると報じている。 そのためには、人口の10%を超える障害のある人の就業を増やすことが不可欠。日本も、数値目 標を設定して取り組むべき。
○(発言)労使関係と罰則の関係について、アメリカ、ヨーロッパは、規則をまもらなかった場 合の罰金が高い。日本は、罰則をきらう企業体質がある。日本は、これら海外と比べ、障害者雇 用の面で企業が取り組まなくてはならない「ハードル」が低い。アメリカは、リハビリテーショ ン法、あるいはテレビに字幕をつける法律が30年前にできた。日本企業は、この法律を満たすた めに果敢に挑戦しながら、アメリカに製品を売り込んできた。日本では、技術面では問題ないが 法律の後押しがないため字幕をつけることもなかなか実現しない。障害者雇用促進法、労働基準 法における罰則についても、もっと議論が必要。
議事 差別禁止法について
1 法制度創設の必要性
(あらゆる分野を包括する差別禁止法の必要性についてどう考えるか…主な書面意見)
○法的に差別を禁止すべきことに異論はなく、差別禁止に特化した独立の法律による規定を求め る(18名、ほぼ全員が同趣旨)。
2 差別の定義
(総則的定義をどのようにするか…主な書面意見)
○差別に「直接差別」「間接差別」「合理的配慮を提供しないこと」の3つの類型が含まれるべき との点で意見は一致。この3類型を総則的な規定に含めるべきとの意見もあり(14名)。少数意 見として、間接差別と合理的配慮が提供されない場合の区別が困難、もしくは、独自の定義を述 べる意見もあり(全体として 19名)。
○差別禁止における障害の定義について、過去や将来の機能障害、みなされた障害なども含める べき。社会モデルの考え方に準拠すべき(いずれも意見は一致し、異論なし)。
(個別分野別定義をどのようにするか…主な書面意見)
○裁判規範性を保つため、個別分野別の定義を設けるべきという意見が多数(15名)。少数意見 としては、現状では困難ではないか、個別化することで抜け穴を生じないか等。しかし、これら は、反対意見ではなく、なんらかの手当てがあれば個別分野ごとに定義できるとの趣旨と考えら れる(全体として18名)。
(抽象的な例外規定をどう明確化・限定化するか…主な書面意見)
○障害者の権利条約では、差別の例外として、積極的是正措置や合理的配慮が「不釣り合いな又 は加重な負担」を伴う場合と規定。一般的には、正当な理由がある場合、生命身体に危険が生じ る場合等が想定できるが、抽象的であるため、拡大解釈によって例外が多くなるおそれもあり、 工夫が必要(東…解説的コメント)。委員の意見としては、例外を設けるべきではないという意 見もあるが、多くは例外を規定することを前提にしている。積極的差別是正措置だけを論じる見 解、例外についての挙証責任に触れる見解、「不釣り合いな又は加重な負担」という抗弁が適用 されない公的分野が存在するとの見解もあり。抽象的な例外規定を明確化するためには、条文自 体を具体的な文言で書くとともに、ガイドラインや規則などで明確化することが重要であるとの 指摘もあり。この点については、議論が十分に整理されておらず、さらに議論が必要(東〔計15 名の書面意見を踏まえた総括〕)。
3 個別分野
(生活分野として、いかなる分野を規定するべきか…主な書面意見)
○あらかじめ例示した、地域生活、自己決定と法的能力、移動、建物、利用、情報保障とコミュ ニケーション、教育、就労、医療およびリハビリテーション、性、政治参加、司法手続の他に、 社会参加、行政サービスと行政手続き、経済・文化サービス、不動産取引、契約、福祉サービス、 商品及びサービスの提供、出生・婚姻・出産、資格取得、文化生活・レクレーション、スポーツ への参加、観光を分野として指摘する意見。法の抜け穴や、漏れが生じないような工夫を求める 意見。虐待を規定するべきとの意見など(全体として 18名)。
4 関係個別立法との関係
(差別禁止に抵触する立法の改廃についてどう考えるか…主な書面意見)
○差別禁止に抵触する法律を改廃することについては、異論はなし。問題は、差別禁止法の制定 と同時に改廃するか、制定後、改廃のための手段を考えるべきか。その準備として、差別禁止に 反する欠格条項をはじめとする法律の洗い出しが必要になる。差別禁止法において、同法が他法 に優先するとの規定や、差別禁止に抵触する他法の規定の効力を停止させるという条項を規定す べきとの意見もあり(全体として19名)。
(合理的配慮の具体化に向けた改正についてどう考えるか…主な書面意見)
○既存の個別の法律と差別禁止法との関係については、2つの側面が問題となる。一つは、(前 述の)差別に該当する規定をいかに改廃させていくかという問題。もう一つは、既存の法律(こ れらには合理的配慮の規定が原則として書かれていない)に合理的配慮の規定をどのように書き、 差別禁止法との関係をどう整理するかという問題(東…解説的コメント)。委員からの意見には、 個別法にも必要であれば盛り込むという意見と、可能な限り差別禁止法本体に書き込むという意 見の両方がある(全体として 19名)。
(行政救済機関の設置についてどう考えるか…主な書面意見)
○独立性を持ち、かつ、個別救済のために、一定の権限をもつ行政救済機関の設置が必要(18 名、ほぼ全員が同趣旨)。[当該救済機関の独立性の意味、必要な権限の内容、相談に始まり、 調整、助言、斡旋、調停、審判などの救済の在り方、単独の機関を創設するのか、既存の類似機 関があればそれを活用するのか、国レベルや県レベルのみならず市町村レベルまでこうした機関 を設置すべきか、等々、さらに議論を詰める必要がある(東…総括的コメント)]。
(人権侵害救済法案との関係についてどう考えるか…主な書面意見)
○新たな人権侵害救済法案(人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案要綱、2005 年に民主党が提出)の必要性には異存はないが、意見は2通り。最も多いのは、障害に基づく差 別の固有性のため、一般的な救済制度ではなく、差別禁止法制の中で救済機関を考えるべきとい う意見。次に、パリ原則に則った新たな人権擁護(救済)機関が速やかにできるのであれば、窓 口を一般化すべきという意見。後者の場合、障害に固有の問題をどう反映できるかが課題となる (全体として17名)。
5 相談支援機関
(相談者の立場に立った支援のあり方と支援機関についてどう考えるか…主な書面意見)
○支援機関の組織は、行政救済機関の一部として設置するのか、障害当事者団体やNPOが独自 に、もしくは、自治体と共同して設置する形にするのか、あるいは既存の社会資源による地域ネ ットワークを構築すべきなのか、という論点。就労に関しては、職場の内と外の両方に支援機関 が必要なのではないか。人的な面では、専門的知識を有する専門家の配置だけでなく、ピアカウ ンセリングやエンパワーメントの手法を取り入れることができる当事者や家族の参画が極めて 重要であるとの指摘もある。整備・配置は、国レベル、都道府県レベル、広域的な(生活圏)レ ベル、市町村レベルといった段階が想定されるが、基本は、身近な場所での相談と支援の仕組み を構築すること。また、地域間格差をなくすための最低限度の基準を提示する必要があるとの意 見など(全体として 19名)。
○(発言)雇用の問題も含めて、実効性をどのようなプロセスでどのように担保するのか。差別 禁止法を個別に立法した場合、既存の法体系との関係を整理する必要性が生じてくる。例えば、 雇用の分野一つをとっても、多面的な検討が必要。法としての実効性、性格づけ、既存の法体系 との関係性をどうやってクリアーしていくかが重要。
○(発言)障害者差別禁止法が何故必要なのか。第一に、裁判でつかえる裁判規範性を持つべき との意見が多く、私も賛成。第二に、裁判所で差別が認定されるとことによる社会教育的視点。 第三に、人権侵害に関わる救済機関ができたときの行動のガイドラインとなるという点。なお、 用語としては、(これまでの経緯を想起させる)「人権擁護法案」という用語ではなく、「人権 侵害救済法」、または単に「人権救済法」という用語を使うべきではないか。
○(発言)裁判規範性のある差別禁止法とした時、最後に問題になるのが刑罰を科すかどうかと いう点。女性差別撤廃条約に関係して、男女雇用機会均等法における罰則規定が議論された際、 経済団体の強い抵抗があり、努力義務になった。2回の勧告の後、1997年に禁止規定になったが、 今でも罰則はない。法律ができても実効性において十分ではない。差別禁止法では、罰則を設け るか真剣に考えて頂きたい。また、女性への複合的差別について、規定を設けて欲しい。重要性 に鑑み、障害者基本法と差別禁止法の両方に重層的に規定してもいいのではないか。
○(発言)罰則規定は必要。特定の生活様式を強制されないことは、基本的権利。
○(発言)2002年の障害者基本法改正では、差別禁止条項が入ったが、議論になった。差別禁止 法では、刑事罰、刑事法との関係は、特に慎重な検討が必要。差別禁止法に実効性を持たせるた めの知恵を出すことが必要。合理的配慮について、特に議論が必要。法令に加え、ガイドライン を作成し、同時に、権利擁護委員会のようなものを設置するべき。救済機関については、司法と の関係、権利擁護機関との関係を整理するべき。
○(発言)すべての差別を禁止するための公民権法が将来的には必要だが、まずは障害者差別禁 止法が必要。カナダの人権委員会、アメリカの雇用機会均等委員会の状況を見ると、障害者問題 の案件が多い(カナダは3~4割、アメリカは、2割)。障害者の生活の各領域における差別問 題に対応するには、高い専門性が求められる。合理的配慮や過剰な負担についての考え方を具体 的に運用するための政策指針の形成と、それを使いこなせる担当者の養成には、かなりの費用と 時間がかかる。このため、早く障害者差別禁止法をつくって、運用のための環境整備に力を注い でいく必要がある。
○(発言)制度を作ったときに、実効性を担保することは重要。刑事罰以外に、行政機関からの 助言、指導、勧告、企業名公表制度、または、いわゆる行政罰として過料なども含め、どのよう な選択肢があるのか、議論を深めていく必要がある。
○(発言)市役所は、身体障害の人は募集しているが、知的障害、精神障害は募集しない。理由 は、「どういうことをしてしまうかわからない」と言うが、差別ではないか。学校の問題もある。 自分は、特殊学級(当時)に行けと言われ、小学校3年生から説明なく行かされた。
○(発言)条約6条は、障害のある女子の複合的差別について規定している。日本は1994年のカ イロ国際開発人口会議を経て、96年に母体保護法に改正されるまで優生保護法があり、障害者へ の人口妊娠中絶を強制する条項が存在していた。性行為、妊娠、出産を禁止や制限、強制されな いこと、リプロダクティブ・ヘルスの権利を障害があってもなくとも、一人の女性として自己決 定できるようにするべき。
議事 虐待防止法について
1 障害の定義
(被虐待者は手帳所持者には限られないのではないか…主な書面意見)
○手帳所持者に限る必要はなく、虐待の防止と救済の必要性がある限り、障害を広くとらえるべ き(18名、全員が同趣旨)。
2 虐待行為者による類型
(どの範囲までカバーすべきか…主な書面意見)
○介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者に加え、親、兄弟、親族、刑務所等の 職員、行政職員、警察官、一般市民、施設や事業所にいるもの、司法関係者、公共交通関係者、 保育所関係者を加えるべき。また、相談、法律に従事するもの、職業訓練施設の関係者も挙げら れていた。これに対し、範囲を限定せず、すべての関係者とすべきという意見もある。他方、類 型ごとに虐待の本質、背景、動機などに大きな相違があり、虐待の内容が異なるだけでなく、救 済の方法も異なるので、類型化して、発見、救済、防止などを規定することが必要とする意見も ある。虐待の本質や発見、救済、防止手段の違いなどを踏まえて議論を詰めていくべき(東…計 18名の意見を踏まえた総括的コメント)。
3 虐待の定義
(虐待行為類型ごとに5類型に区分するか…主な書面意見)
○5類型(身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、放置、経済的搾取)で基本的には足りるとする 見解とともに、特に必要な場合には、追加すべきであるとの見解もあり、いじめ、医療関係者に よる身体拘束、地域で生きる上で必要となる適切なサービスを受けさせないこと、セルフネグレ クト、などが具体例として挙げられている。すべての人権侵害に当たる行為が虐待に含まれると する見解や、そもそも定義を置く必要はないとする見解もあるが、実効性をあげるために、類型 をどのように設定するかは、引き続き議論が必要(東…計 17 名の意見を踏まえた総括的コメン ト)。
(5類型の内容をどう考えるか…主な書面意見)
○日弁連の意見書に示された定義をベースに議論していけばよいと考えるが、差別言動やいじめ、 プライバシー侵害を心理的虐待に含めるべきとの意見、セルフネグレクトも放置に入れるべきと の意見、「言葉の暴力」「コミュニケーションの疎外」「無視」「隔離」「社会的入院」「保護室への 隔離と拘束時の放置」などの検討が必要であるとの意見、5類型を設定したとしても包括的な虐 待の定義が必要であるとの意見、(旧与野党の議員提案による法案に見られる)「著しく」(侵害 を受けた場合)という言葉を入れるべきではないという意見など。今後、さらに詰めた議論が必 要(東…計 17名の意見を踏まえた総括的コメント)。
4 早期発見義務
(早期発見義務の程度と義務者の範囲についてどう考えるか…主な書面意見)
○早期発見義務の問題は、虐待があるとは判明していない段階で、それを発見するという問題。 通報は、発見した後の問題。日弁連の意見書と同様に、すべての公務員や虐待を防止する立場に ある仕事に就くものに対して早期発見の努力義務を課すべきとの意見、すべての関係者まで広げ るべきとの意見、発見し得るものに広く努力義務を課すべきとの意見、状況変化を見届けられる 支援者、保護者、親族まで広げるべきとの意見など。他方、法的に発見義務を課すのは困難との 意見、家庭内の虐待では発見義務を課すべきではないとの意見、一般市民まで課すべきではない との意見などがある。さらに議論を重ねれば一定の範囲で落ち着くのではないか(東…計 17 名 の意見を踏まえた総括的コメント)。
5 通報義務
(発見者の通報義務の対象範囲と程度についてどう考えるか…主な書面意見)
○多数は、程度や認識に関わらず通報義務を課すべきとの意見。さらに、虐待の報告を受けた上 司や施設長等、機関を含め、発見したすべての人に通報義務を課すべきとの意見。通報者に対し、 過失があるかないかを問わない保護規定が必要との意見など。少数意見として、一般市民までは 厳格な義務を課すべきではないとの意見、虐待の程度と認識の程度に応じて、義務、努力義務を 整理すべきとの意見などがある(東…計 17名の意見を踏まえた総括的コメント)
6 救済機関
(救済機関の権能についてどう考えるか…主な書面意見)
○救済機関の権能として、事実確認、立入検査、一時保護、回復支援といった強制力を伴う権限 を例示したところ、若干の異論はあるが、多くは、こうした権限を持つべきであるということを 前提とした意見であった(東…計17名の意見を踏まえた総括的コメント)。
(救済機関が対象とすべき範囲についてどう考えるか…主な書面意見)
○旧与野党の法案は、救済機関が対象とすべき範囲を限定する形で構成されているが、委員の意 見としては、介護者、福祉従事者、使用者、医療従事者、使用関係者による類型それぞれについ て救済機関は対象とするべきとの意見が多かった。他方、特定の分野に限定する必要があるのか、 すべての分野を対象にすべきだという意見もあった(東…総括的コメント)。
7 監視機関
(監督権限はあっても原則として監督義務はないとする現行法規の解釈のもとで、現行法の適 切な運用のみで虐待防止の実効性を担保できるかどうか…主な書面意見)
○多くは、現行法の適切な運用のみでは虐待防止の実効性を発揮することはできない、監督義務 が必要であるという意見(東…総括的コメント)。
(家庭における虐待以外の場合の独自の独立した監視機関の設定の必要性についてどう考える か…主な書面意見)
○多くは、監視機関を設けるべきであるという意見(東…計18名の意見を踏まえた総括的コメン ト)。
8 相談支援機関
(生活支援まで含めた相談支援のあり方についてどう考えるか…主な書面意見)
○論点は二つ。家族による虐待があるという背景を考えると、虐待を取り締るだけで、解消でき るか。家族も含めた支援が必要ではないかという論点。2点目は、施設や職場で働いている知的 障害者は、その場に生活のすべてを依存しているため、相談を受けるだけでは効果的な虐待防止 はできず、極論すれば生活を丸ごと支援する機関がなければ対応できないのではないかという論 点。多くの意見は、相談支援体制一般が非常に重要との認識であるが、生活支援の必要性につい ての認識がやや薄いのではないかという印象も受けた(東…計17名の意見を踏まえた総括的コメ ント)。
○(発言)通報義務の範囲や早期発見の範囲について、与野党の議員立法は、医療機関や学校に ついて、防止義務はあったが、通報義務まではなかった。大阪では大和川病院事件があったが、 病院は入所施設と同じ。医療機関や学校についても、通報義務を課すべき。さらに、早期発見ま たは予防という観点から、障害者の虐待が発生する場面は、密室が多いため、大阪府の精神医療 オンブズマン制度のような第三者機関が重要。
○(発言)精神科病院における虐待は、表に出てこない。家族が気づいても、言い出せない。精 神病院の保護室のネグレクトや拘束医療は、なかなか外部に明らかにならないので、監視機関が 入り改善されることを望む
○(発言)生活全般を丸ごと支援するという話に関連して、難病、ALSの方が地域生活しようと するときに、医者から「そんなにしてまで出たいのか」といった虐待的表現がなされる例がある と聴くが、医者を替えたくても、難しい。こうした現状も踏まえた討議が必要。
○(発言)医療現場では、ALSのような重度の障害のある者に対し、特に進行性の障害者が人工 呼吸器をつける際の医者の告知は、残酷なものもあると聴く。医療について議論を深めたい。
○(発言)虐待の定義に関連して、拘禁、拘束と過剰投薬の問題も採り上げて欲しい。この他、 ネグレクトに、支援の必要な自己管理に対し自己管理が困難な場合の支援拒否も含めていただき たい。
○(発言)近年、病院には、行動制限最小化委員会がある。2004年に身体拘束をされていた人は、1日1万2千人。2006年は1万4千5百人に増えている。WHOの精神保健10原則は4時間までの身体拘束を限度にしている。また、隔離室を段階的に減らすこと、新規設置を禁止している。日本は1週間単位で身体拘束が行われている。新規入院で任意入院が増えているが、半分以上が閉鎖病棟に入っている。治療法という名の下に、許されている。
○(発言)児童、女性、高齢者の順に法律ができ、障害者が遅れてしまった。虐待について、バラバラに支援センターがあることは、問題。広く全体を扱い、個別化することを含めて検討すべき。虐待の発見については、心理的虐待、ネグレクト、経済的搾取は、課題がある。特に、虐待される側が虐待と自覚できず、マインドコントロールされている場合、解放までに時間がかかる。 虐待の予防に関し、虐待について周知徹底する教育を仕掛けないといけない。罰則については、虐待の多くは刑事類型にあたるが、虐待をした人に対する懲罰が非常に甘い。類型化し、刑罰でなくとも懲罰を科すことを含め、設けていくべきだと思う。
○(発言)DVの被害者では、女性で知的障害が多いと聞いている。複合的であり重要な問題。
○(発言)虐待防止法案を議員提案する動きもあると聞いている。推進会議における検討との調整があっても良いと思う。
○(発言)虐待行為について、研究助成事業により、発生の場ごとの数値が集計されつつあるが、学校における教員による虐待が多いようだ。学校を対象に加えていくべき。また、職場の同僚からのいじめも多いようだ。学校、病院あるいは職場の同僚、同級生を含めて考えるべき。
○(発言)私の聾学校の同期生は、コミュニケーションが通じないため、精神病院に入院させられた。精神病院でも、障害者施設でも、コミュニケーションが図れない状況で、隔離され放置されたと思う。支援が一本化されても、バラバラでも、コミュニケーションに問題がある児童や成人障害者にはどこでサポートするのかという問題がある。
○(発言)コミュニケーションができない障害者、高次脳機能障害、発達障害、自閉症の方の支援は、一人ひとり個別なので、どのように対応するのか。支援の受け止め方も、個人個人で差がある。センター化については、女性は大変難しい。所在を絶対に明らかにできない場合があり、気をつけて議論をしたい。
○(発言)刑事訴訟では推定無罪が原則であるが、例えば、障害者に性的虐待があっても、日時が特定できず、刑事罰を逃れられてしまうという問題がある。構成要件をある程度緩めることは、必要なのでないか。公平性を担保できるのであれば、罰則や懲罰は必要だろう。
○(発言)発達障害といわれる人もだけど、今まで泣き寝入りしてきたのを、嫌だとちゃんと伝えなければならない。どんな困難を抱えていても、適切な支援が必要だと思う。
(以上)