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大谷委員追加提出資料1

「障がいを理由とする差別を禁止する法律」
日弁連法案概要の提案

2007年3月

日本弁護士連合会

「障がいを理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要の提案

第1 提案の趣旨

 第61回国連総会において「障がいのある人の権利条約」が採択された。日本政府 にはこの条約を早期に批准すること、と、批准に必要な国内法整備の一貫として「障が いを理由とする差別を禁止する法律」を制定することが求められている。日本弁護士連 合会は、あるべき法案の内容として、別紙の『「障がいを理由とする差別を禁止する法 律」日弁連法案概要』を提案する。

第2 提案の理由

 1 はじめに
 日本弁護士連合会(以下、「当連合会」という)は、2006年10月、「障がいを理 由とする差別を禁止する法律」要綱(日弁連試案)(以下、「日弁連要綱試案」という)を提案した。
日弁連要綱試案に対しては、障がいのある人や障がいのある人の団体、研究者等から 多数の有益な意見を頂いた。
 また、日弁連試案発表直後の2006年12月13日、第61回国連総会において、 障がいのある人の権利条約(以下、「権利条約」という)が採択され、日本においても、 権利条約を早期に批准することと、権利条約を批准するにあたって、障がいを理由とす る差別を禁止する法律(以下、「差別禁止法」という)の制定を含む国内法の整備を行 うことが課題となるに至った。
 当連合会は、差別禁止法制定の必要性が高まった情勢を踏まえ、差別禁止法制定のた め、別紙のとおり『「障がいを理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要』(以下、 「本法案」という)を発表し、より具体的な法案の内容を提案することとした。
 本法案策定にあたっては、採択された権利条約の内容との整合性を図り、さらに、日 弁連要綱試案に対する上記各界の意見を参考とした。

 2 日本における障がいのある人の置かれた状況
 日本において、障がいのある人は、様々な生活の場面において、深刻な差別などの人 権侵害を受けており、社会の一員として等しく扱われ、生活を営むことが困難な状況に あること、このために、差別禁止法制定の必要性が高いことは、既に日弁連要綱試案に おいて述べたとおりである。

 3 権利条約の採択
 世界においても、障がいのある人の権利の保障のための立法的な措置の必要性は広く 認識されるに至り、2006年12月13日、第61回国連総会において、権利条約が 採択されるに至った。
 日本政府は、権利条約の起草について、「障害者権利条約作成交渉については、国連 総会アドホック委員会に参加し、本条約が望ましい形で早期に国際社会の幅広い合意が 得られるよう努力している。このような多国間の枠組みにおける人権分野の議論へ我が 国が積極的に参画することは、国際社会において人権の保護・促進の推進に資すること であり、国際的なルール作りの促進にも寄与するものである」(2006年5月外務省 政策評価書「国際社会における人権の保護・促進のための国際協力の推進」)として、 積極的に取り組んできたところである。
 権利条約は、「障がいのあるすべての人によるすべての人権及び基本的自由の完全か つ平等な共有を促進し、保護し及び確保すること並びに障がいのある人の固有の尊厳の 尊重を促進すること」(1条)を目的とするものであり、障がいのある人の人権保障を 実現するという条約の目的からしても、権利条約の批准が早期になされるべきである。

 4 権利条約批准に向けての差別禁止法制定の必要性
 権利条約は、締約国に対して、この条約において認められる権利を実施するためにす べての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとることを求めている(4条1項a)。
 また、差別の禁止との関係では、締約国に対して、あらゆる人、機関又は民間企業に よる障がいに基づく差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとることを求め(同項 e)、具体的な差別の撤廃のため、障がいに基づくあらゆる差別を禁止し、また、障がい のある人に対していかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を保障す るべきこと(5条2項)、さらに、平等を促進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮 が提供されることを確保するためのすべての適当な行動をとること(同条3項)をも求 めている。
 このように、権利条約は、締約国に対して、合理的配慮義務を課することを含めた差 別の禁止の実現と、そのために必要な立法上の措置をとることを求めている。  これは、当連合会も制定を求めてきた差別禁止法と同様の立法措置を締約国に求める ものにほかならない。
 なお、これらの立法措置を行うにあたっては、以下の理由により、現存する個別の法 律の改正だけではなく、包括的な差別禁止法の立法が行われるべきである。
 差別の内容、特に、合理的配慮義務の内容に関する規定については、社会生活におけ る様々な場面に応じて、個別、具体的にその内容が異なるものであり、社会生活の個々 具体的な場面ごとに、網羅的にその内容が規定される必要がある。また、合理的配慮義 務を課される者についても、国や地方公共団体だけではなく、民間の事業者などもこれ に含まれることとなる。これらを、現存する個々の法律の改正を通じて実現することは、 立法技術的に極めて困難である。また、これまでの障がいのある人に関する法律は、国 や地方公共団体のなすべき施策を定めるものの、障がいのある人の差別を受けない具体 的権利を規定して、障がいのある人自らが差別の是正を実現することを保障するもので はなかった。このような現行法の法体系からみても、端的に、障がいのある人の具体的 権利を定める、包括的立法としての差別禁止法を制定することが必要である。このこと はアメリカ合衆国イギリスオーストラリア、、、、ドイツなどで、既に、包括的な差別 禁止法としての障害のある人に対する差別を禁止する法律が制定されていることが参考 になる。
 この包括的立法としての差別禁止法を制定したうえで、差別禁止法とも整合性を持つ ように現存の各法律も必要な改正等がなされることが望まれる。

第3 提案の内容の概説

 1 「障がい」の定義
 権利条約1条(目的)は、「障がいのある人には、種々の障壁と相互に作用すること により他の者との平等を基礎とした社会への完全かつ効果的な参加を妨げることがあ る」と規定しているが、これは、「障がい」が、疾病、変調、傷害その他の事情による 機能障害などと、社会における障壁の相互作用から生じるものであり、社会的な要因を 重視するべきであるとする考え方(いわゆる「医療モデル」に対置される「社会モデ ル」と呼ばれる考え方)を規定したものである。
 この権利条約の趣旨及び障害のある人の各団体の意見も踏まえ、本法案では「障が い」の定義を「心身の状態が、疾病、変調、傷害その他の事情に伴い、その時々の社会 的環境において求められる能力又は機能に達しないことにより、個人が日常生活又は社 会生活において制限を受ける状態をいう。」とした。

 2 合理的配慮義務違反を含む差別の禁止規定
 権利条約2条は、「障がいに基づく差別」を、「障がいに基づくあらゆる区別、排除又 は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野にお いても、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又 は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障がいに基づ く差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」としている。  権利条約は、この差別の定義を通じて、あらゆる分野における、基本的な人権にかか わる差別の禁止を締約国に求めている。
 本法案は、これを受けて、個別具体的な生活の場面において、個人の有する権利の内 容を明示したうえで、その権利にかかわる差別をより具体的に規定した。この差別か否 かの判断にあたっては、権利条約が差別の定義を「享有し又は行使することを害し又は 無効にする目的又は効果を有するもの」としていることも踏まえ、障がいの有無とかか わらない基準や要件を適用している場合などであっても、その結果、障がいのある人々 について差別的な効果を生じる場合もまた差別と解するべきものであるとした。
 また、権利条約は、合理的配慮を行わないこともまた差別に含まれることを明確に定 めている。合理的配慮とは、例えば、店舗の入口にスロープ設置することや点字板を設 置することなど、障がいのある人が、障がいのない人と実質的に同等の日常生活若しく は社会生活を営むために必要かつ合理的な措置を行うことを指すものであり、アメリカ 合衆国やイギリスなどの差別禁止法でも規定されている。
 本法案はこれを受、け、合理的配慮義務を履行しないことを、差別の一類型として規 定した。
 なお、教育については、権利条約24条は、「インクルーシブな教育」(本法案では 「共生教育」という言葉を用いる)が保障されなければならないとして、これを実現す るために、詳細かつ具体的な規定を設けた。
 そこで、本法案においても、共生教育の実現のための具体的な内容を定めることとし た。

 3 自立生活・自己決定についての権利
 権利条約19条は、「障害のあるすべての人が他の者と平等な選択を有して地域社会 で生活する権利」、「特定の生活様式で生活することを義務づけられないこと」を認め、 締約国に対して、「地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために必要 な」「地域社会支援サービス」の確保を求めている。このことは、施設などでの社会か ら隔離された生活から地域での自立した生活への転換が図られるべきことを意味する。
 このことを受け、本法案は、総則において、必要な支援を受けながら、地域において 自立した生活を営む権利、平等な選択の過程を保障されながら自立して生活する権利を 規定することとした。

 4 情報伝達方法の保障
 権利条約21条は、手話のみならず文字表記、点字、拡大文字等も情報伝達方法とし て規定していることから、本法案も、権利条約にあわせて、総則において、あらゆる情 報伝達方法が権利として保障されるべきであるとした。

 5 言語の定義
 権利条約2条は、「『言語』には、音声言語、手話及び他の形態の非音声言語を含む」 と規定し、手話を初めとして障がいのある人が使用する非音声言語をも言語として規定 した。
 日弁連要綱試案においては、手話のみを言語としていたが、本法案は、権利条約を踏 まえて、言語を音声言語のみならず手話及び他の形態の非音声言語をも含むものとして 定義づけた。

第4 差別禁止法制定に向けた当連合会の取組

 今後、当連合会は、本法案に基づき、障がいのある人の意見を踏まえ、関係機関等と 意見交換を重ねるなどして、差別禁止法の制定と権利条約批准の早期実現に全力で取り 組む所存である。
 また、本法案をもとに、差別禁止法の制定と権利条約批准に向けた議論が、障がいの ある人やその団体をはじめ日本社会全体で活発になされることを期待するものである。

以上