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大谷委員追加提出資料2

「障がいを理由とする差別を禁止する法律」
日弁連法案概要

2007年3月

日本弁護士連合会

目 次

前文

第1 総則

第2 教育

第3 労働

第4 建築物の利用

第5 交通機関の利用

第6 情報

第7 サービス

第8 医療

第9 不動産

第10 参政権

第11 司法

第12 実施機関

「障がいを理由とする差別を禁止する法律」
日弁連法案概要

前文

日本国憲法をはじめ、国際人権条約においても、個人の尊厳と法の下の平等は、最も基 本的な人権として、あらゆる人に保障されている。
ところが、現実には、障がいのある人は、様々な分野において、その障がいを理由とし て社会に参加する機会を奪われたり、他と異なる取扱いを受けたりするなど、差別的待遇 を強いられてきた。
これは、これまでの社会が、障がいのある人の生活を困難ならしめている原因をその個 人的属性に求め、障がいのある人を権利の主体というより保護の客体として扱ってきたか らに他ならず、その結果、障がいのある人は法的な救済も不十分なままに放置されてきた。
しかしながら、障がいのある人も、本来、平等な社会の一員として市民的諸権利を有す る人権の享有主体であること、そして、なによりも、その生活を困難ならしめているもの が、障がいのある人の完全参加と平等を拒む物理的環境、社会的制度及び障がいに対する 人々の意識並びに社会が障がいのある人のニーズに応じた合理的な配慮を行わないことに よって生じる障壁であることが、これまで十分には意識されてこなかった。
これらに鑑みると、今こそ、障がいのある人の完全参加と平等を拒む社会の障壁を取り 除くことが求められる。そのことは、障がいの有無にかかわらず一人ひとりが相互に人格 と個性を尊重される真に豊かな社会の実現にも寄与するものである。
ここに、障がいを理由とする区別、排除又は制限のみならず、障がいのある人に対して 合理的な配慮を行わないことが差別であることを確認するとともに、何人にも障がいを理 由とした差別を受けることのない権利を保障し、この権利が侵害された場合の実効的な救 済措置と相まって、障がいのある人の自立及び完全参加と平等並びに障がいのある人の権 利の確立を図るため、この法律を制定する。

第1 総則

1 目的
この法律は、障がいを理由とする差別の具体的内容を定めるとともに、国、地方公共 団体、個人及び事業者が障がいを理由とする差別を行うことを禁止し、差別を受けた者 が適正かつ迅速な救済を受けるための措置と相まって、政治的、経済的、社会的、文化 的、市民的その他のあらゆる分野における障がいのある人の自立、完全参加と平等、そ して権利の確立を図ることを目的とする。

2 障がいの定義
(1) 「障がい」とは、心身の状態が、疾病、変調、傷害その他の事情に伴い、その時々 の社会的環境において求められる能力又は機能に達しないことにより、個人が日常生 活又は社会生活において制限を受ける状態をいうものとする。
(2) 過去にかかる状態にあったこと、及び将来かかる状態になる蓋然性があることも、 (1)の障がいに含めるものとする。

3 差別の禁止
(1) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別もしてはならない。
(2) この法律においては、障がいに基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、障が いのある人の権利や利益を侵害する目的又は効果を有するものは、障がいを理由とす る不利益な取扱いとして、差別にあたるものと解釈されなければならない。
(3) この法律においては、障がいのある人が障がいのない人と実質的に同等の日常生活 又は社会生活を営むために必要かつ合理的な措置(以下「合理的配慮」という。)を怠 ることもまた、差別にあたるものと解釈されなければならない。

4 自立生活・自己決定についての権利
何人も、次の権利を有するものとする。
(1) 必要な支援を受けながら、地域において自立した生活を営む権利
(2) 自分の選択に従って自己の最善の利益を追求する権利
(3) 性を否定されることなく個人として尊重され、障がいを理由として、性、生殖、婚 姻及び子の養育並びにこれらに関する教育、情報提供、保健サービスに関して不利益 な取扱いを受けない権利
(4) (1)から(3)の権利行使に必要な説明及び教育並びに(1)から(3)の権利行使の前提と なる意思決定に対する十分な支援を受ける権利

5 言語の定義
言語には、音声言語、手話及び他の形態の非音声言語を含む。

6 情報伝達方法の保障
障がいのある人は、あらゆる生活の場において、手話若しくは点字、手話通訳者、要約 筆記、指文字、触手話、指点字、手書き文字その他の方法による通訳、拡大文字、音声 サービス、文字情報サービス、写真・図画、ひらがな及び平易な表現による表記その他 の自ら選択する適切な情報伝達方法(以下「適切な情報伝達方法」という。)を用いて 生活を営む権利を有するものとする。

7 政策等の立案及び決定への参画
障がいのある人の社会参加に関する国若しくは地方公共団体における政策又は民間の 団体における方針の立案及び決定においては、障がいのある人が、主要な構成員として、 これに参画する機会を確保されなければならない。

8 施策の策定、実施
(1) 国は、障がいのある人の自立及び完全参加と平等の実現並びに障がいのある人の権 利の確立を図るための施策を総合的に策定し、実施する責務を有する。
(2) 地方公共団体は、障がいのある人の自立及び完全参加と平等の実現並びに障がいの ある人の権利の確立に関し、国の施策に準じた施策及びその他の地方公共団体の区域 の特性に応じた施策を策定し、実施する責務を有する。

9 法制上の措置等
政府は、障がいのある人の自立及び完全参加と平等の実現並びに障がいのある人の権 利の確立を図るための施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置 を講じなければならない。

10 差別助長の禁止
何人も、障がいについて正しい知識を持ち、障がいに対する偏見や誤解を誘発したり 障がいのある人の人権が侵害されることのないようにしなければならない。

11 差別を受けた者の救済
第2から第11までに定める差別を受けた者は、別に法律で定める政府から独立した 人権救済機関に対し、救済の申立てをすることができるものとする。

第2 教育

1 教育を受ける権利
(1) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、教育を受ける権利 を有し、機会を保障されるものとする。
(2) 障がいのある人は、あらゆる段階において、共生教育を受ける権利を有するものと する。この法律において「共生教育」とは、自己の住む地域社会において他の者との 平等を基礎として、合理的配慮及び必要な支援を受けながら同一世代の者たちと共に 学ぶ教育をいうものとする。
(3) 障がいのある人は、障がいを理由に普通教育から排除されない権利を有するものと する。
(4) 聴覚に障がいのある人は、手話を習得し使用できるようになる教育を受ける権利及 び手話を用いた教育を受ける権利を有するものとする。

2 合理的配慮義務
国、地方公共団体及び学校法人その他の教育にかかわる団体及び個人(以下「教育機関」 という。)は、次の義務を負う。
(1) 適切な情報伝達方法を用いて教育をすること。
(2) 利用可能な物理的環境を提供すること。
(3) 必要な人員を配置すること。
(4) その他、障がいのある人が教育に完全に参加し、教育を受ける権利を実質的に保障 するために必要な合理的配慮を行うこと。

3 差別の定義
教育における差別とは、次の各号に掲げるものをいうものとする。

(1) 障がいを理由として、教育の機会を剥奪もしくは制限し、又は教育の機会について 不利益な取扱いを行うこと。
(2) 障がいを理由として、自己の住む地域社会の普通教育から排除すること。
(3) 2の合理的配慮義務に違反すること。

4 差別の推定
教育機関が、教育に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利益に取り扱っ たときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものとする。

5 普通教育を受ける権利
(1) 何人も、自己の住む地域社会の小学校及び中学校において普通教育を受ける権利を 有するものとする。
(2) 国、地方公共団体及び学校法人は、障がいのある子が小学校及び中学校の普通教育 に完全に参加するために、2に規定する合理的配慮に加え、通学手段の保障及び学級 人数の調整その他の合理的配慮をしなければならない。

6 必要な支援
(1) 教育機関は、障がいのある人に対して効果的な教育を保障するために、普通教育に おいて、必要な支援を提供しなければならず、その支援は、次の点に留意して行われ なければならない。

① 障がいのある人が同一世代の人たちと共に学ぶことを阻害せず、分離的な効果を 生まないこと。
② 障がいのない人が負う以上の負担を課さないこと。
(2)① 国及び地方公共団体は、未だ小学校及び中学校において(1)に規定する必要な支 援を十分に実現できないときは、障がいのある子の保護者の選択により、同一世代 の子どもたちと分離された場における効果的な支援を伴う教育(以下「特別支援教 育」という。)を提供することができるものとする。
② 特別支援教育は、次の条件を満たすものでなければならない。
イ 共生教育への移行という目標に合致したものであること。
ロ 学業面の発達を最大にする環境で、普通教育で提供される教育と同一の基準及 び趣旨が維持されていること。
ハ 社会性の発達を最大にする環境が保障されていること。
③ 国、地方公共団体及び学校法人は、②の条件に合致させる範囲で、特別支援教育 を目的とする特別支援学校を設置し、又は小学校及び中学校に特別支援教室を設置 できるものとする。
④ 6の規定によっても、国及び地方公共団体は合理的配慮及び必要な支援を小学校 及び中学校において充足させる義務を免れるものではない。

7 教育選択権
(1) 障がいのある子の保護者は、小学校及び中学校での支援が未だ不十分であると判断 したときは、特別支援教育を選択することができるものとする。
(2) 国、地方公共団体及び学校法人は、障がいのある子の保護者に対し、(1)の選択を 行うために必要な情報を提供しなければならない。
(3) 障がいのある子の保護者はいつでも(1)の選択を変更することができるものとする。
(4) 障がいのある子は、その保護者が(1)の選択又は(3)の変更を行うに際し、自己の意 見を表明する権利を有するものとする。この場合において、障がいのある子の意見は、 その年齢及び成熟度に従って相応に考慮されなければならない。
(5) (1)の選択又は(3)の変更に関し、障がいのある子とその保護者との間で意見を異に するときは、障がいのある子又はその保護者は12に規定する共生教育推進委員会に 意見の調整を求めることができるものとする。

8 高等教育等を受ける権利
(1) 障がいのある人は、高等学校、大学、高等専門学校及び専修学校その他の教育機関 において、教育を受ける権利を有するものとする。
(2) (1)の教育機関は、入学選抜試験の実施にあたり、その本質に反しない限り、適切な 情報伝達方法、試験時間の延長、介助又は物理的環境の整備などの合理的な配慮をし なければならない。
(3) (1)の教育機関は、障がいのある人が同項の教育に完全に参加するために、2に規 定する合理的配慮をしなければならない。
(4) (1)の教育機関は、学生の定員、応募者の状況、教育機関及び教育課程の性格等を 総合考慮し、あらゆる障がいのある人が同項における教育を受ける権利を享受するた め入学の機会を増大させるための特別な措置を講じるよう努めるものとする。この場 合の特別措置は差別と解してはならない。
(5) 6及び7の規定は、その性質に反しない限り、(1)の教育機関にこれを準用するも のとする。

9 教員養成等の義務
国及び地方公共団体は、共生教育を実現するために、次の義務を負う。
(1) 適切な情報伝達方法についての適格性を有する教員(障がいのある教員を含む。) を雇用するための適当な措置をとること。
(2) 教育のすべての段階において、教育に従事する教員、介助員その他の職員に対する 研修及び訓練を行うために適当な措置をとること。この場合の研修及び訓練は、障が いに対する理解、障がいのある人との情報伝達方法の習得並びに障がいのある人を支 援するための教育技法及び教材の使用を組み入れたものでなければならないものとす る。

10 早期の支援及び技能習得
(1) 障がいのある人は、地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを 容易にするために、できるだけ早期の段階から必要な支援を受け、生活技能及び社会 性の発達技能を習得する権利を有するものとする。

(2) (1)の権利を実現するために、国及び地方公共団体は、次に掲げる措置をとらなけ ればならない。
① 手話の習得及びろう社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。
② 点字その他の情報伝達方法の習得を容易にすること。
③ 歩行技能の習得を容易にすること。
④ その他、障がいのある人が必要とする支援を提供すること。

11 生涯教育等
(1) 障がいのある人は、就学前教育・保育、放課後の学童保育、地域社会における社会 教育、就学後の職業教育及び手話若しくは点字その他の情報伝達方法の学習その他の 生涯教育を受ける権利を有するものとする。
(2) 国及び地方公共団体は、(1)の生涯教育の重要性に鑑み、これらの条件整備を積極 的に行わなければならない。

12 共生教育推進委員会
(1) 都道府県は、障がいのある人に対し、障がいを理由として、いかなる差別を受ける ことなく、共生教育を受ける権利を保障するために、共生教育推進委員会を設置しな ければならない。
(2) 共生教育推進委員会は、障がいのある人及び共生教育に理解のある者によって構成 されなければならない。
(3) 共生教育推進委員会は、共生教育への移行及び推進について、各地域の特性に応じ た計画を策定しなければならない。
(4) 地方公共団体は、(3)の計画を効果的に推進しなければならない。
(5) 共生教育推進委員会は、共生教育が円滑に実施されるよう、障がいのある人及び障 がいのある子の保護者並びに教育機関に対して、情報の提供、相談、関係機関との連 絡調整及び当事者間の意見の調整その他の援助を行うものとする。

第3 労働

1 労働する権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、労働する権利を有し、 機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 事業主は、次の義務を負う。
① 労働契約を締結し又は変更するにあたり、障がいのある人が労働契約の内容を 理解することを容易にするため、適切な情報伝達方法により説明すること。
② 労働条件又は就業環境が障がいのある人に対して相当の不利益を及ぼしている 場合において、その不利益を除去するために対策を講じること。
③ 職場において障がいに対する偏見又は障がいのある人に対するいじめが存在す る場合において、これを除去するための対策を講じること。
④ その他、障がいのある人の労働する権利を実質的に保障するために必要な合理 的配慮を行うこと。

(2) (1)で事業主が講じるべき対策の具体的内容は、次に掲げるものの他、障がいのある 人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。
① 施設の改造
② 障がいのある人が担当する任務の一部の他者への割当て
③ 現存する欠員を補充するための異動
④ 勤務時間の変更
⑤ 他の作業場への変更
⑥ リハビリテーション又は医療的手当のため勤務時間内に離脱すること
⑦ 職能技術を習得する機会の提供又はこれについての配慮
⑧ 備品・設備の取得又は改造
⑨ 指導マニュアル又は参考資料の変更
⑩ 試験又は評価過程の改善
⑪ 朗読者、手話・要約筆記・指文字その他の方法による通訳者等の援助者の配置
⑫ ジョブコーチ等の援助者の配置
⑬ 指導・監督の充実

3 差別の定義
労働における差別とは、次に掲げるものをいうものとする。

(1) 事業主が、次に掲げる行為を行うこと。
① 障がいを理由として、労働者の募集又は採用について不利益な取扱いを行うこと。
② 労働者に対し、障がいを理由として、労働契約の締結を拒否すること。
③ 労働者に対し、障がいを理由として、次に掲げる事項について不利益な取扱い又 は不利益な変更を行うこと。
イ 賃金
ロ 労働時間
ハ 休憩
ニ 休日及び年次有給休暇
ホ 昇進
ヘ 異動、配置転換及び復職
ト 訓練
チ 研修
リ 福利厚生
ヌ その他の労働条件
④ 障がいを理由として、労働者を解雇すること。
(2) 2の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 2は、事業主において著しい困難又は出費がある場合は、適用しない。
(2) 3(1)②及び④は、次の場合、適用しない。
イ 事業主が2の対策を講じても、当該障がいのある人がその職務の本質的部分を遂 行することができない場合
ロ 事業主が2の対策を講じることに著しい困難又は出費があり、かつ、これを講じ なければその職務の本質的部分を遂行することができない場合
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (1)及び(2)ロの「著しい困難又は出費」の有無は、具体的な根拠及び資料に基づき、 事業主の財務状況、被用者の人数、負担すべき費用、被る不利益の内容及び程度その 他事業主側の事情、並びに障がいのある人の被る不利益の内容及び程度を総合的に考 慮して判断されなければならない。

5 差別の推定
事業主が、労働に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利益に扱ったと きは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものとする。

6 広告による差別の推定
事業主が障がいのある人の採用を拒否した場合において、求人広告が障がいのある人 を募集対象から除外するものと判断されるときは、当該行為は障がいを理由として行わ れたものと推定するものとする。

7 不利益合意の無効と報復の禁止
(1) この法律に反する労働契約で障がいのある人に不利なものは、その部分について無 効とするものとする。
(2) 事業主は、障がいのある人が裁判上又は裁判外の救済手続を申し立てたことを理由 として、当該障がいのある人及びその救済手続に協力した者に対して解雇その他の不 利益な取扱いをしてはならない。

8 職種団体による差別
労働に関する規定は、その性質に反しない限り、職種団体(労働者の団体、雇用主の団 体又は特定の専門職若しくは職種に従事する者により構成される団体をいう。)による 差別に準用する。

9 準用
労働に関する規定は、その性質に反しない限り、次の各号に掲げる関係に、これを準用 するものとする。

(1) 障がいのある人が労働者派遣契約に基づき派遣されて就労する場合における派遣 先事業者と当該障がいのある人との関係
(2) 障がいのある人が下請契約に基づき元請業者の事業所等において就労する場合に おける元請業者と当該障がいのある人との関係
(3) 事業主の従業員に対して福利厚生又は教育訓練を提供している機関又は団体と障 がいのある人との関係
(4) 事業主と、障がいのある人の親族、通訳者及びジョブコーチその他の援助者との関 係(当該障がいのある人の障がいを理由として行われる不利的取扱いに限る。)

10 合理的配慮義務と他の権利者との調整
(1) 事業主又は9(3)の機関若しくは団体(以下この条において「事業主等」という。) が、賃貸借契約に基づき第三者から事業の継続に必要な不動産若しくは設備等(以下 この条において「不動産等」という。)を賃借し、又はリース契約に基づき引渡しを 受けて不動産等を占有している場合において、事業主等が2の対策を講じるために必 要があるときは、事業主等は、当該第三者(当該第三者が当該不動産等の所有者でな いときは、当該第三者及び当該不動産等の所有者)に対し、当該不動産等の改造を行 うことの承諾を請求することができるものとする。
(2) (1)の請求を受けた当該第三者及び当該不動産等の所有者は、正当な理由がない限 り、これを承諾しなければならない。
(3) 障がいのある人が事業主等との賃貸借契約に基づき社宅等の不動産(以下この条に おいて「社宅等」という。)に居住する場合において、事業主等が4(1)の理由により 2の対策を講じることができないときは、障がいのある人は、事業主等(事業主等が 当該社宅等の所有者でないときは、事業主等及び当該社宅等の所有者)に対し、国若 しくは地方公共団体から補助金の支給を受け又は自ら費用を負担して当該社宅等の改 造を行うことの承諾を請求することができるものとする。
(4) (3)の場合に、(2)を準用するものとする。

11 医学的検査の禁止
(1) 事業主は、労働契約締結前に健康診断や障がいの有無等に関する調査を行ってはな らない。但し、職務の本質的部分を遂行する能力の有無を判断するために必要なとき は、その目的に必要な範囲内で、応募者に対して障がいの有無、種類及び程度につい て質問することができる。
(2) 事業主は、労働契約締結の意思を表明した後、労働契約締結前に、全労働者に課せ られる場合でかつ機密性が保たれる場合に限り、健康診断を義務付けることができる ものとする。
(3) 事業主は、4(2)の場合を除き、(2)の健康診断の結果に基づいて採用内定を取り消 してはならない。

12 職業リハビリテーション
(1) 障がいのある人は、職業リハビリテーション(障がいのある人に対して職業指導、 職業訓練及び職業紹介その他の職業に就くことを可能にする支援を行い、その職業生 活における自立を図ることをいう。以下この条において同じ。)を選択し、これを受 ける権利を有するものとする。
(2) 職業リハビリテーションは、障がいのある人の希望、適性及び職業経験等の条件に 応じ、総合的かつ効果的に実施されなければならない。
(3) 何人も、職業リハビリテーションは、障がいのある人の改善、訓練ではなく、事業 主側における労働条件及び就業環境の改善を図ることに主眼があることに留意しなけ ればならない。
(4) 障がいのある人及び障がいのある人の団体は、職業リハビリテーションについて、 実施主体者として参画し、又はこれに意見を述べることができる。後者の場合におい て、職業リハビリテーションの実施主体者は、この意見を尊重しなければならない。
(5) 国及び地方公共団体は、授産施設、小規模作業所その他の福祉的就労に従事する障 がいのある人に対し、その特性に配慮した職業リハビリテーションを実施するなど必 要な支援を行い、障がいのある人が労働基準法上の権利の保障された雇用の場で働く ことができるように努めなければならない。
(6) 事業主は、障がいのある人が職業リハビリテーションを受けることを申し出たとき は、これを拒絶してはならない。

13 国及び地方公共団体の障壁除去等の責務
国及び地方公共団体は、障がいのある人が差別を受けることなく労働できるようにする ため、物理的障壁等の除去、援助器具の開発、通訳者及びジョブコーチ等の育成、拡充 及び派遣制度の確立、情報提供のための施設設置・制度拡充等の責務を有する。

第4 建築物の利用

1 建築物を円滑に利用する権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、不特定多数の者の利用 に供されている建築物(これに附属する出入口、廊下、階段、昇降機、便所及び敷地内 の通路その他の施設を含む。以下「建築物」という。)を円滑に利用する権利を有し、 機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 建築物の設置者及び管理者は、当該建築物が障がいのある人の円滑な利用を促進す るために必要な建築物の構造及び設備に関する最低整備基準(以下「最低整備基準」と いう。)に適合しない場合、これを是正する措置を講じる義務を負う。
(2) 最低整備基準は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定める。
(3) 建築物の建築主、設計者、施工者、設置者及び管理者は、その他、障がいのある人 の建築物を円滑に利用する権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行う義 務を負う。
(4) 建築物が最低整備基準に適合していることは、(3)の義務を免除するものと解釈して はならない。

3 差別の定義
建築物の利用における差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) 建築主、設計者又は施工者が、最低整備基準に適合しない建築物を新たに建築、設 計又は施工すること。
(2) 設置者又は管理者が、障がいを理由として、当該建築物の利用を拒否若しくは制限 し、又は当該建築物の利用について不利益な取扱いを行うこと。
(3) (1)(2)の者が、2(1)(3)の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3は、人の生命、身体又は財産の保護のためやむを得ない必要がある場合は、適用 しない。
(2) 3(3)は、3(1)(2)の者において著しい困難又は出費がある場合は適用しない。 (3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (2)の「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
建築主、設計者、施工者、設置者又は管理者が、建築物の利用に関し、障がいのある人 をそうでない人と比較して不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として 行われたものと推定するものとする。

第5 交通機関の利用

1 公共交通機関を利用して移動する権利
(1) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、公共交通機関を利 用して円滑に移動する権利を有し、機会を保障されるものとするものとする。
(2) 障がいのある人は、国、地方公共団体及び公共交通事業者(以下「公共交通事業者 等」という。)に対して、公共交通機関を利用した円滑な移動を確保するために必要 な補助を求める権利を有するものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 公共交通事業者等は、旅客施設及び車両等(以下「旅客施設等」という。)が障が いのある人の公共交通機関を利用した円滑な移動を確保するために必要な旅客施設等 の構造及び設備に関する整備計画(以下「整備計画」という。)に適合しない場合、 これを是正するために必要な措置を講じる義務を負う。
(2) 旅客施設等は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。
(3) 整備計画は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。
(4) 公共交通事業者等は、(1)に定める他、障がいのある人の公共交通機関を利用して 円滑に移動する権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行う義務を負う。
(5) 旅客施設等が整備計画に適合していることは、(4)の義務を免除するものと解釈し てはならない。

3 差別の定義
交通機関の利用に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) 公共交通事業者等が、次の行為を行うこと。
① 整備計画に適合しない旅客施設等を新たに建設し、又は新たに事業の用に供す ること。
② 障がいを理由として、その設置又は管理する旅客施設等の利用を拒否若しくは制 限し、又は旅客施設等の利用について不利益な取扱いを行うこと。
(2) 公共交通事業者等が、2(1)(4)の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3は、人の生命、身体、財産の保護のためやむを得ない必要がある場合は、適用し ない。
(2) 3(2)は、公共交通事業者等において、著しい困難又は出費がある場合は、適用し ない。
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (2)の「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
公共交通事業者等が、公共交通機関の利用に関し、障がいのある人をそうでない人と比 較して不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定 するものとする。

6 国及び地方公共団体の移動補助者養成義務
国及び地方公共団体は、障がいのある人の公共交通機関を利用した円滑な移動を確保す るため、その移動を補助する移動補助者を養成し、障がいのある人の要請に応じて移動 補助者を無償で派遣する体制を整えなければならない。

7 公共交通事業者等の職員研修義務
公共交通事業者等は、障がいのある人が円滑に旅客施設等を利用できるようにするた め、職員に対して必要な研修を実施し、研修を受けた職員を相当数配置しなければなら ない。

第6 情報

1 情報を受領し、利用する権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、自らが選択する情報 伝達方法により、あらゆる種類の情報の提供を受け、これを利用する権利を有し、その 機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 国及び地方公共団体は、次の義務を負う。
① 適切な情報伝達方法を使用して、公共的サービスを広報し、社会保障制度等を 周知すること。
② 適切な情報伝達方法を使用して、自然災害に関する情報を周知すること。
③ 障がいのある人の情報の利用を確保するために必要な情報処理機器、電気通信 設備及び情報サービスに関する基準(以下「情報円滑化基準」という。)に適合 する措置を講じること。
④ その他、障がいのある人の情報を受領し、利用する権利を実質的に保障するた めに必要な合理的配慮を行うこと。
(2)① テレビジョン放送事業者は、放送番組に、字幕放送、手話放送、文字放送、音声 解説放送その他の情報伝達方法による放送を付する義務を負う。
② ①に関する基準は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。
(3) 電気通信事業者及び特定電気通信役務提供者は、高度情報ネットワークを利用して 情報及びサービスを提供するにあたり、情報円滑化基準に従う義務を負う。
(4) テレビジョン放送受信装置の製造業者は、その製造する製品に、(2)の各放送の受信 が可能な装置を内蔵させる義務を負う。
(5) 情報処理機器・電気通信設備の製造業者は、製品の製造にあたり、情報円滑化基準 に従う義務を負う。
(6) 情報円滑化基準は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。

3 差別の定義
情報に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) 事業として不特定又は多数の者に対して情報の提供又は発信を行う者が、障がいを 理由として、情報の提供又は発信について不利益な取扱いを行うこと。
(2) 2(1)から(5)の者が前条記載の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3は、①技術的に著しい困難がある場合、②テレビジョン放送事業者において著作 権者の許諾を得ることに著しい困難がある場合は、適用しない。
(2) 3(2)は、各々の者において、著しい困難又は出費がある場合は、適用しない。
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) 「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
事業として不特定又は多数の者に対して情報の提供又は発信を行う者が、情報の提供 又は発信に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利益に取り扱ったときは、 当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものとする。

6 国及び地方公共団体の責務
国及び地方公共団体は、適切な情報伝達方法の無償利用制度を整備し、2(2)ないし(5) の者が合理的配慮義務を履行することができるように必要な施策を講じ、また、障がい のある人の情報処理機器及び電気通信設備の利用を支援するための必要な施策を講じる ものとする。

第7 サービス

1 サービスの提供を受ける権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、次の各号に掲げる者(法 人その他の団体を含む。以下「サービス提供者」という。)から、商品、施設、便益そ の他のサービス(以下「サービス」という。)の提供を受ける権利を有し、その機会を 保障されるものとする。
(1) ホテル、旅館その他の宿泊施設を設置して旅館業を営む者
(2) 銀行、保険会社その他の金融業を営む者
(3) 娯楽又はレクリエーションのための施設を設置して営業を営む者
(4) 食堂、レストラン、喫茶店その他の飲食施設を設置して飲食業を営む者
(5) 公共職業安定所その他の職業安定機関又は職業紹介事業を営む者
(6) 保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者
(7) 前各号に掲げるものの他、不特定かつ多数の者が利用する施設を設置して営業を営 む者
(8) 前各号に掲げるもののほか、公共的又は商業的なサービスを提供する国、地方公共 団体、個人又は事業者

2 合理的配慮義務
サービス提供者は、次に掲げる行為を行う義務を負う。

(1) サービスを提供するにあたり、障がいのある人がサービスを利用することを容易に するため、適切な情報伝達方法を使用すること。
(2) 障がいのある人がサービスの内容を理解するために必要とする補助者の付添いを 承諾すること。
(3) サービスを提供するにあたり、障がいのある人がサービスを利用することを容易に するための補助機器及び人的援助を提供すること。
(4) サービスの提供に関する運用、方針又は手続が障がいのある人に対して相当の不利 益を及ぼしている場合において、その不利益を除去するための施策を講じること。
(5) その他、障がいのある人のサービスを受ける権利を実質的に保障するために必要な 合理的配慮を行うこと。

3 差別の定義
サービスに関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) サービス提供者が、障がいを理由として、サービスの提供を拒否若しくは制限し、 又はサービスの提供について不利益な取扱いを行うこと。
(2) サービス提供者が、2の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3は、次の各号のいずれかに該当する場合は、適用しない。
① 人の生命、身体、財産の保護のためやむを得ない必要がある場合
② 他の方法ではサービスを提供できない場合
③ サービスの基本的性質を著しく損なうこととなる場合
(2) 3(2)は、サービス提供者において、著しい困難又は出費がある場合は、適用しな い。
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (2)の「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
サービス提供者が、サービスの提供に関し、障がいのある人をそうでない人と比較し て不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定する ものとする。

第8 医療

1 医療の提供を受ける権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、医師、歯科医師、薬 剤師、看護師その他の医療の担い手(以下「医師等」という。)及び病院、診療所、介 護老人保健施設その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)(以下こ れらを総称して「医療提供施設等」という。)から、良質かつ適切な医療の提供を受け る権利を有し、機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
医療提供施設等は、次に掲げる行為を行う義務を負う。
(1) 医療を提供するにあたり、障がいのある人が医療の内容を理解し、その提供を受け ることを容易にするため、適切な情報伝達方法を使用すること。
(2) 障がいのある人が医療の内容を理解するために必要とする補助者の付添いを承諾 すること。
(3) 医療を提供するにあたり、障がいのある人が医療を受けるために必要な補助機器及 び人的援助を提供すること。
(4) 医療の提供に関する運用、方針又は手続が障がいのある人に対して相当の不利益を 及ぼしている場合において、その不利益を除去するための施策を講じること。
(5) その他、障がいのある人の医療の提供を受ける権利を実質的に保障するために必要 な合理的配慮を行うこと。

3 差別の定義
医療に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。

(1) 医療提供施設等が、次の行為を行うこと。
① 障がいを理由として、医療の提供を拒否若しくは制限し、又は医療の提供につ いて不利益な取扱いを行うこと。
② 障がいを理由として、障がいのある人の自発的意思に基づかない医療行為、矯 正治療その他の医療に関連した行為を強制すること(他の法律に別段の定めがあ る場合を除く。)。
(2) 医療提供施設等が、2の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3(1)①と(2)は、人の生命、身体、財産の保護のためやむを得ないと認められる場 合は、適用しない。
(2) 3(2)は、医療提供施設等において、著しい困難又は出費がある場合は、適用しない。 (3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (2)の「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
医療提供施設等が、医療の提供に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して不利 益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するものと する。

6 医療提供施設の医師等研修義務
医療提供施設は、障がいのある人が良質かつ適切な医療の提供を受けることができるよ うにするために、医師等に対し、障がいに関する理解を深めるために必要な研修を行わ なければならない。

第9 不動産

1 不動産を取得し、居住し、利用する権利
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、不動産を取得し、居 住し、利用する権利を有し、その機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 不動産の売買、交換又は貸借(以下「不動産の売買等」という。)を行う権限を有 する者(不動産の売買等の許可又は同意を与える権限を有する者を含む。)及びその 代理又は媒介等を行う者は、不動産の売買等に関する契約を締結するにあたり、障が いのある人が契約内容を理解することを容易にするため、適切な情報伝達方法を使用 する義務を負う。
(2) 不動産を管理する者(その者が当該不動産の所有者でないときは、その者及び当該 不動産の所有者)は、当該不動産の構造又は設備が障がいのある人に対して相当の不 利益を及ぼしている場合において、その不利益を除去するために必要な限度で、当該 不動産の改造を行うことを承諾する義務を負う。
(3) 不動産の売買等を行う権限を有する者、その代理又は媒介等を行う者及び不動産を 管理する者は、(1)(2)の他、障がいのある人の不動産を取得及び利用する権利を実質 的に保障するために必要な合理的配慮を行う義務を負う。

3 差別の定義
不動産の取得、居住、利用における差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) 2(1)の者が、障がいを理由として、不動産の売買等につき、契約締結を拒否若し くは制限し、又は契約締結について不利益な取扱いを行うこと。
(2) 2(2)の者が、障がいを理由として、不動産の居住、利用又はこれらに付随するサ ービスについて不利益な取扱いを行うこと。
(3) 2の合理的配慮義務に違反すること。

4 適用除外
(1) 3は、次の各号のいずれかに該当する場合は適用しない。
① 当該不動産が小規模居住用建物である場合
② 人の生命、身体、財産の保護のためやむを得ない必要がある場合
(2) 3(3)は、次の各号のいずれかに該当する場合は、適用しないものとする。
① 2(2)の改造が当該不動産の構造上の安全性に影響を及ぼす場合
② 2の者において著しい困難又は出費がある場合
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則で 定めるものとする。
(4) (2)②の「著しい困難又は出費」の有無は、第3、4(4)と同じものとする。

5 差別の推定
不動産の売買等を行う権限を有する者、その代理又は媒介等を行う者及び不動産を管 理する者が、不動産の取得又は居住、利用に関し、障がいのある人をそうでない人と比 較して不利益に扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定する ものとする。

6 準用
第9の規定(但し、合理的配慮義務の規定は除く)は、その性質に反しない限り、不 動産の売買等を行う権限を有する者、その者から不動産の売買等の代理若しくは媒介を 依頼された者又は不動産を管理する者と、障がいのある人の親族、同居人、支援団体そ の他の当該障がいのある人と密接な関係を有する者との関係に準用するものとする。

第10 参政権

1 参政権
何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、次に掲げる行為を行 う権利を有し、その機会を保障されるものとする。
(1) 衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長(以下「公職」と いう。)の選挙において投票し、選挙されること。
(2) 最高裁判所裁判官の任命に関する国民の審査において投票すること。
(3) 一の地方公共団体のみに適用される特別法に関する当該地方公共団体の住民投票 において投票すること。
(4) 日本国憲法の改正に関する国民投票において投票すること。
(5) 地方自治法(昭和22年法律第67号)第2編第5章に規定する直接請求を行うこ と。
(6) 損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事 項に関し、請願すること。
(7) 前各号に掲げる行為を秘密に、かつ自由な意思に基づいて行うこと。
(8) 自らが選択する情報伝達方法により、(1)から(6)までに掲げる事項に関する情報の 提供を要求し、情報を受領及び利用し、並びに自ら情報を発信すること。
(9) 国及び地方公共団体の公務に携わること。

2 合理的配慮義務
(1) 国及び地方公共団体は、次に掲げる行為を行う義務を負う。
① 障がいのある人に対して、投票所への移動の保障その他投票の機会を現実に保 障する措置を講じること。
② 選挙に関する事務を行う際、障がいのある人が1の権利を行使することを容易 にするため、適切な情報伝達方法を使用すること。
(2) 選挙管理委員会は、次に掲げる行為を行う義務を負う。
① 投票所における段差の解消、車いす利用者のための投票台の設置、視覚に障が いのある人のための点字板又は照明具の設置その他投票所における障がいのある 人の負担を軽減するために利用可能な物理的環境を提供すること。
② 選挙公報等において障がいのある人が1の権利を行使することを容易にするた め、適切な情報伝達方法を使用すること。
(3) 選挙運動を行う者は、障がいのある人が1(8)に規定する各行為を行うことを容易 にするため、適切な情報伝達方法を使用する義務を負う。
(4) 政見放送及び経歴放送を行う者は、障がいのある人が1の権利を行使することを容 易にするため、適切な情報伝達方法を使用する義務を負う。
(5) (1)から(4)の者は、その他、障がいのある人の参政権を実質的に保障するために必 要な合理的配慮を行う義務を負う。

3 差別の定義
参政権に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。
(1) 障がいを理由として、1の権利を剥奪若しくは制限し、又はこれについて不利益な 取扱いを行うこと。
(2) 2(1)から(4)の者が、各々の合理的配慮義務に違反すること。

4 差別の推定
2(1)から(4)の者が、参政権の行使に関し、障がいのある人をそうでない人と比較して 不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由として行われたものと推定するも のとする。

5 選挙管理委員会の職員研修義務
選挙管理委員会は、職員研修を実施し、研修を経た職員を相当数配置するものとする。

第11 司法

1 裁判を受ける権利等
(1) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、裁判所において裁 判を受け、裁判外紛争解決手続(訴訟手続きによらずに民事上の紛争の解決をしよう とする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続を言う。 以下同じ。)を利用し、又はこれらを含む司法関係手続に参加する権利を有し、その 機会を保障されるものとする。
(2) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、適正な刑事手続を 受ける権利を有するものとする。
(3) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、刑事施設、少年院 又は少年鑑別所において適正な処遇を受ける権利を有するものとする。
(4) 何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、弁護士その他適切 な補助者を選任する権利を有し、その機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務
(1) 裁判所、検察庁、警察署並びに裁判官、裁判所書記官、裁判所調査官、裁判所事務 官その他の裁判所職員(以下「裁判官等」という)、検察官、検察事務官その他の検 察庁職員(以下「検察官等」という)、及び警察官その他の警察職員(以下「警察官 等」という)は、次に掲げる行為を行う義務を負う。
① 障がいのある人が裁判の内容を理解することを容易にするため、適切な情報伝達 方法を使用して、裁判の言渡し、裁判に関する事務、公判手続、令状の呈示、黙秘権 の告知、取調べ、勾留質問その他の手続を行うこと。
② 適切な情報伝達方法を使用しても障がいのある人が当該裁判手続の意味又は内容 を十分に理解することができない場合において、当該障がいのある人に対して弁護 人その他適切な補助者を付すること。
③ 裁判の運用、方針又は手続が障がいのある人に対して相当の不利益を及ぼしてい る場合において、その不利益を除去するための施策を講じること。
④ その他、障がいのある人の司法関係手続に参加する権利を実質的に保障するため に必要な合理的配慮を行うこと。
(2) 刑事施設、少年院又は少年鑑別所及び法務事務官その他の刑事施設等の職員(以下 「法務事務官等」という)は、次に掲げる行為を行う義務を負う。
① 障がいのある人が抑留又は拘禁の意味及び内容を理解することを容易にするため、 適切な情報伝達方法を使用すること。
② 障がいのある人に対して、その障がいの種類・程度に応じた処遇を行うこと。
③ 抑留又は拘禁に関する運用、方針、又は手続における不利益を除去するための施 策を講じること。
④ その他、障がいのある人の適正な刑事手続及び処遇を受ける権利を実質的に保障 するために必要な合理的配慮を行うこと。

3 差別の定義
司法における差別とは、次に掲げるものをいうものとする。

(1) 裁判所、検察庁、刑事施設等、弁護士会若しくは司法書士会(以下「司法機関」と いう。)又は裁判官官等、検察官等、警察官等、法務事務官等、弁護士、弁護士会の 職員(以下「弁護士等」という。)若しくは司法書士、司法書士会の職員(以下「司 法書士等」という。)が、障がいを理由として、1の権利を剥奪若しくは制限し、又 はこれについて不利益な取扱いを行うこと。
(2) 2の者が、各々の合理的配慮義務に違反すること。

4 差別の推定
司法機関又は裁判官等、検察官等、警察官等、法務事務官等、弁護士等若しくは司法 書士等が、司法関係手続、刑事手続及び刑事施設等における処遇に関し、障がいのある 人をそうでない人と比較して不利益に取り扱ったときは、当該行為は障がいを理由とし て行われたものと推定するものとする。

5 裁判の傍聴
(1) 裁判所は、障がいを理由として、裁判の傍聴を拒否してはならないものとする。
(2) 裁判所及び裁判官等は、障がいのある人が裁判を傍聴し、その内容を理解すること を容易にするための、補助犬使用や適切な情報伝達方法の使用を妨げてはならない。

6 裁判所等の人的設備充実義務
(1) 裁判所は、障がいのある人が司法関係手続を利用することを容易にするために、障 がいに関する専門的な知識及び技術を有する専門職員を養成し、職務に従事させなけ ればならない。
(2) 裁判所、検察庁、警察署、刑事施設等、弁護士会及び司法書士会は、裁判官等、検 察官等、警察官等、法務事務官等、弁護士等及び司法書士等に対し、障がいに関する 理解を深めるために必要な研修を行わなければならない。

7 準用
2ないし6は、裁判外紛争解決機関、検察審査会、保護観察所の行う保護観察に、そ の性質に反しない限り準用するものとする。

第12 実施機関

1 障がいのある人の権利委員会の設置及び所轄事務
(1) 内閣府に、この法律の適正な実施を任務とする障がいのある人の権利委員会(以下 「本委員会」という。)を設置するものとする。
(2) 本委員会は、次に掲げる事務を行うものとする。
① 規則の制定
② 解釈指針及び実務指針の策定
③ 立法及び行政に関する提言
④ 実施状況の調査
⑤ 国民に対する広報及び啓発
⑥ 公務に携わる者に対する教育及び指導
⑦ 相談
⑧ 差別を受けたものが行う裁判手続又は救済機関での手続に必要とされる弁護士 その他の適切な補助者の斡旋、その他の援助
⑨ その他この法律を実施するために必要な事務

2 委員会の構成
(1) 本委員会は、委員15人で組織するものとする。
(2) 本委員会の委員は、障がいのある人の権利に関して高い識見を有する者であって、 学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するものとす る。但し、委員のうち8名は、障がいのある人を任命するものとする。

3 事務局の設置
本委員会には事務局を置き、その地方機関として、都道府県に地方事務所を置くものと する。