尾上委員追加提出資料1
障害者差別禁止と欠格条項 -制度改革推進会議への提案として
欠格条項は法制度の障壁除去の課題として、「物理、法制度、文化・情報、意識」という四つの障壁 の除去を新長期計画(1993)で掲げて以来、政府としても取り組まれてきたことです。
1.法律に障害者欠格条項が現在も残されており差別禁止に抵触します。これらを撤廃する 差別禁止法が求められています。→表1
2.法律の欠格条項はなくとも、「自力で通勤し単独で職務遂行できる」「活字印刷文に対応 できる」といった受験資格による門前払いや、手話通訳者をつけるなどの配慮を行わない試 験が横行しています。そのような試験における差別をなくす必要があります。→表2,資料
3、法律の欠格条項も、受験資格も、入口に設けられたバリアであり、入口のバリアをなく さなければ入ることもできませんが、入ってからのことも重要です。学校や職場や生活上の 介助や情報アクセスを保障する通訳など、個人をトータルにサポートできる制度が必要です。 4、上の3点は、いずれも、欠格条項の撤廃にむけて取り組む過程で出てきたことであり、 多くの人の経験や声が寄せられている課題です。障害者制度改革推進会議の論点・検討作業 の中に位置づけることを提案します。
表1 今もこれだけある障害者欠格条項
見直し対象63制度に限っても、次の53制度が相対的欠格として残されています。相対的欠格とは、「免 許を与えないことがある」等として、行為や仕事ができるかを障害との関係で審査するものです。
あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師,医師,医薬品等の一般販売業等,医薬品等の 製造業等,一般労働者の就業,衛生管理者・作業主任者・クレーン等の運転,家畜人工授精師, 火薬類取扱い,改良住宅への単身入居,海技試験(自衛艦),海技従事者国家試験(一般船), 外国人の上陸制限,義肢装具士,救急救命士,警備員の制限,警備員指導教育責任者・機械警 備業務管理者,警備員等,警備業,けしの栽培,建設機械施工,言語聴覚士,公営住宅への単身 入居,航空機乗り組,国家公務員の就業,指定射撃場の設置者及び管理者,視能訓練士,歯科医 師,歯科衛生士,歯科技工士,自動車等の運転,狩猟,柔道整復師,獣医師,診療放射線技師,水先 人,船舶乗務のための身体検査基準,通訳案内業,鉄砲又は刀剣類所持,動力車操縦者運転,特 定毒物研究者,毒物劇物取扱責任者,美容師,保健師、助産師、看護師又は准看護師,放射性 同位元素等の使用、販売等,放射性同位元素又はこれに汚染された物の取扱い並びに放射 線発生装置の使用,麻薬の輸入等,無線従事者,薬局開設許可,薬剤師,理学療法士・作業療法 士,理容師,臨床検査技師・衛生検査技師,臨床工学技士 |
政府見直し対象63 制度の変化(共に、視覚・聴言・心身・精神障害者の欠格条項のみを集計)
見直し以前 2000 年
絶対的 13(21%)
相対的 29(46%)
絶対的・相対的が混合 21(33%)
見直し以後 2009 年
全廃 10(16%)
相対的 53(84%)
表2 障害者むけ試験でも横行する門前払い
この表は、都道府県の身体障害者を対象にした職員採用試験の、主に一般事務職についてです。障 害者対象の試験にもかかわらず、通勤や勤務にサポートがいらないことを受験資格にしており、点字で 受験できると明記しているのは20 都道府県、手話通訳の必要を受験申込書で聞いているのは22 都道 府県だけです。
記号の黒丸●は「あり」,白丸○は「なし」で、1番目の北海道は、自力で通勤できる・介助者なしで職務 遂行できる・口頭の試験(面接試験)に対応できる・活字印刷文に対応できる・という受験資格はいずれ も「ない」。そして、点字試験、手話通訳をつけた試験が「ある」です。北海道のようなところは表のとおり わずかです。「活字印刷文に対応できる」という受験資格は、点字試験を行わないことを意味し、点字ユ ーザーを門前払いしています。また、「口頭の試験に対応できる」受験資格はないところでも、手話通訳 や文字通訳をつけない実態が少なからずみられます。
2009 年8-12 月 障害者欠格条項をなくす会調べ
自治体名 | 受験資格の記述 | 試験において | |||||
自力通勤 | 介助なし勤務 | 口頭面接 | 活字印刷文 | 点字試験 | 手話通訳 | ||
1 | 北海道 | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● |
2 | 青森県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | |
3 | 岩手県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
4 | 宮城県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
5 | 秋田県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
6 | 山形県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | |
7 | 福島県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
8 | 茨城県 | ● | ● | ○ | ● | ||
9 | 栃木県 | ● | ● | ○ | ● | ● | |
10 | 群馬県 | ||||||
11 | 埼玉県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | |
12 | 千葉県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
13 | 東京都 | ● | ● | ○ | ● | ||
14 | 神奈川県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
15 | 新潟県 | ● | ● | ○ | ● | ||
16 | 富山県 | ||||||
17 | 石川県 | ● | ● | ○ | ● | ||
18 | 福井県 | ● | ● | ○ | ● | ||
19 | 山梨県 | ● | ● | ○ | ● | ||
20 | 長野県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
21 | 岐阜県 | ● | ● | ○ | ● | ||
22 | 静岡県 | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ |
23 | 愛知県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
24 | 三重県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
25 | 滋賀県 | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● |
26 | 京都府 | ● | ● | ○ | ○ | ● | |
27 | 大阪府 | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● |
28 | 兵庫県 | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● |
29 | 奈良県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
30 | 和歌山県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
31 | 鳥取県 | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ○ |
32 | 島根県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
33 | 岡山県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | |
34 | 広島県 | ● | ● | ○ | ● | ||
35 | 山口県 | ● | ● | ○ | ● | ||
36 | 徳島県 | ● | ● | ● | ● | ○ | ○ |
37 | 香川県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ○ |
38 | 愛媛県 | ● | ● | ● | ● | ○ | ○ |
39 | 高知県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ○ |
40 | 福岡県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
41 | 佐賀県 | ○ | ● | ○ | ● | ||
42 | 長崎県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
43 | 熊本県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
44 | 大分県 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● |
45 | 宮崎県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
46 | 鹿児島県 | ● | ● | ○ | ○ | ● | |
47 | 沖縄県 | ● | ● | ○ | ○ | ● |
資料 新聞報道から
2009 年12 月21 日 毎日新聞