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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議
第4回(H22.3.1) 資料3

虐待防止法に関する意見一覧

障害の定義

虐待行為者による類型

虐待の定義

早期発見義務

通報義務

救済機関

監視機関

相談支援機関

その他

虐待防止法

○障害の定義

1.被虐待者は手帳所持者には限られないのではないか

【大久保委員】
虐待は手帳所持者以外の障害者に対しても想定され、広く社会モデルの視点 に立った考え方をとる必要があると考える。
また、知的障害者にあっても、手帳を所持していない者が多数いることを踏 まえる必要があると考える。

【大谷委員】
被虐待者は手帳所持者に限るべきではない。
これまで「障がい」の定義は、医学的な見地に立って身体的又は機能的な欠 損や能力不全を基準として定められてきた。しかし、たとえ医学的な視点から は、能力不全が存在しなくても、社会生活において差別を受け、あるいは不利 益を受ける状態が存在することが意識されるようになってきた。
例えば、顔に大きな痣のある人など「ユニークフェイス」の人たち、高次脳 機能障がいや、多動性障がいの人たちは、手帳制度における障がいの定義に含 まれなかった。しかし、これらの状態にある人も虐待の対象となるのであって、 たとえ医学的モデルとしての障がいが存在しなくても、虐待防止の観点から、 そうした状態も「障がい」の定義に含める必要がある。
また、過去に身体的又は精神的障がいを有したことにより、あるいはハンセ ン氏病のように、たとえ病気が治癒していても、過去の障がいや病気を理由に 虐待を受ける事象が見受けられる。また、HIV 感染者のように、身体的又は知的 には何らの能力不全が存在しなくても、虐待の対象となることも多い。そうし た過去における状態や将来発生するであろう状態を理由に、虐待を受けること を防止する見地から、本法ではそうした人たちをも「障がい」のある人と同視 することが必要である。
そこで、「障がい」とは、心身の状態が、疾病、変調、傷害その他の事情に伴 い、その時々の社会環境において求められる能力又は機能に達しないことによ り、個人が日常生活又は社会生活において制限を受ける状態をいうとすべきで ある。
また、過去にかかる状態にあったこと、及び将来かかる状態になる蓋然性が あることも「障がい」に含めるものとする必要がある。

【大濱委員】
■被虐待者の範囲は、広範な定義が必要である。身体障害者、知的障害者、精 神障害者のほか、難病患者、高次脳機能障害者、発達障害者に加えて、「過去に 障害のあった者」や「障害があるものと看做されている者」やユニークフェイ スの人なども念頭に置いて議論すべき。
■ただし、後段の通報義務などとの兼ね合いから、何らかの定義を要するので はないかと考える。

【尾上委員】
限られないのは当然であり、限るべきではない。
知的障害や精神障害をもつ者全てが手帳を所持しているわけでもなく、その 他、難病や高次脳機能障害や発達障害をもつ者も同様である。これらの人たち を虐待防止法の適用から外すべきではない。
また、過去の障害の経歴や障害があると看做されて虐待行為が行われた場合 も法の適用範囲に含めるべきである。

【勝又委員】
すでに成立している虐待防止法(児童・高齢者・女性)との関係の整理が必 要であり、障がい者の虐待防止法はそれらとの関係で障がい者がカバーされな い部分をおぎなうべき。

【門川委員】
被虐待者が手帳所持者に限られないのは当然である。そもそも「障害」や「虐 待」を厳密に定義することはできない。
また、虐待は、いわゆる手帳所持者のように、(現行)制度において明確に障 害者として位置付けられているかどうかよりも、具体的な人と人との関係にお ける「力関係」によって生じるものであり、その意味で極めて「プライベート」 な問題であって、虐待を全て未然に防ぐ、ということは原理的に不可能である ということをまず前提とする必要があると考える。
もし仮に虐待を全て未然に防ぐなら、常に誰かが監視しなければならなくな る。日常生活がそのような状況におかれることが極めて不合理であることは明 白であり、そのような論理ではない別の論理で、虐待を防止することを考えな ければならない。
すなわち、「虐待されている側」に障害者がいた場合、「虐待が生じている」 とは、虐待される側が障害者であるかどうかではなく、虐待する側による虐待 される側に対する不適切な何らかの力の行使が生じていることを指すのであっ て、そのように「不適切に何らかの力を行使する」可能性が大きい者を特定し、 そうした者の行動を律する規定こそが、虐待防止につながるという論理でなけ ればならない。
その意味で、差別禁止法と同様、虐待防止法についても、そもそも障害者に 限定することは、障害者が障害者であるがゆえに、虐待されうるものである、 という認識を前提としてしまうことから、望ましいとは言えない。
障害者が虐待される側になりやすいということに着目するとしても、虐待を 防止するためには、虐待をする側(しうる側)に着目して、法制度を設計しな ければ、虐待を防止するための措置がかえって虐待を助長しかねないことに留 意すべきである。
したがって、「障害」や「虐待」については厳密に定義せず、虐待を行う可能 性がある者全てを包括的に規定した上で、そうした者によるあらゆる虐待行為 を禁止するという構成とすべきである。

【川﨑委員】
手帳所持者に限られない。推進会議で検討されている新しい基本法の障害の 定義を考慮されるべきと考える。

【佐藤委員】
その通りと思います。

【新谷委員】
障害者福祉サービスを受ける要件としての手帳制度とは異なり、虐待から障 害者を保護するための要件なので、「虐待行為の態様」を幅広く定義し、「何人 も障害を理由とする虐待行為から保護される」といった規定が必要で、手帳保 持者に限定する意味はないと考えます。また、虐待からの保護を目的とするこ とから「障害」も、幅広い定義(障害者基本法に明記?)が必要と考えます。

【関口委員】
手帳に限定すべきではない。
補足意見:大阪精神障害者連絡会 塚本正治
この国には、世界の流れに反して約34 万床もの精神科病床が存在する。それは精神障害 者への隔離・収容政策の結果である。そのうち公立病院は1 割で9 割が民間病院に頼って いるのも世界に類を見ない。
精神障害者は精神病棟において、職員からの暴行(死亡ケースもある)、不当な隔離室へ の拘禁、違法な身体拘束、違法な面会妨害、無視、放置、プライバシーの無さなど虐待を 受け、病を癒す場で人生や地域生活への自信を喪失させられてきた。
その結果、5 年以上の入院が入院者の半数を占め、10 年・15 年・20 年・25 年・30 年・ 35 年・40 年という入院者もめずらしくなく存在する。
自身の判断による入院であっても、閉鎖病棟に処遇されているケースが多く、 深く人生が傷つく。
いわば精神病院は、虐待の温床といっても過言ではなく「虐待防止法」の対象から除外 されていることが、異常な状況である。「虐待防止法」の対象に「病院」を加えることを強 く願う。

【竹下委員】
虐待防止法の制定は急務である。しかも、対象となる障害のある人の範囲は、 谷間のないものとしなければならない。障害を有し、そのために社会生活及び 日常生活の分野ごとに虐待が発生する危険性がある限り、防止法の対象とすべ きである。

【土本委員】
手帳をもっていなくても、虐待や人権侵害の事件がわかってから、支援をう けて手帳をうける仲間もいると思います。

【堂本委員】
支援が必要な者を対象とすべきであり、障害者の定義に当たっては、手帳所 持者に限定しないことが適当である。

【中西委員】
被虐待者は手帳所持者には限られない。
すでに何回か論じられてきたことであるが、手帳そのものが医療モデルに基 づく制度であるため、一部の障害者は制度の谷間に置かれている。既存のサー ビスに守られていない障害者こそ、社会的に最も脆弱な存在であり、それだけ 虐待を受ける可能性が高いと言えるからである。

【長瀬委員】
障害者虐待防止法の対象となる障害者は、障害差別禁止法の対象となるべき 障害者と同様、手帳の有無にかかわらず、広範に取るべきである。

【久松委員】
判断能力にハンディがあり自ら危険信号(SOS)を発信できない幅広い人 が対象であってほしい。

【松井委員】
障害者権利条約では、「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚 的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他のものとの平等を基 礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げうるものを有する者を含 む。」(第1 条)ときわめて幅広く定義されている。わが国における障害者手帳 所持者は、現在のところ身体障害者、知的障害者および精神障害者に限られる。 しかもこれらの3 障害のなかでも精神障害者については、手帳所持者は全体の2 割以下にすぎないということからも、被虐待者は現在の障害者手帳所持者に限 るべきではない。

【森委員】
被虐待者は、手帳所持者に限られるものでもなく、また、障害者を「障害者 基本法」第2 条に限定すべきものでもない。ICF で定義している継続的に日常生 活または社会生活において相当な制限を受けるものすべてを対象にすべきと考 える。

○虐待行為者による類型

1.どの範囲までカバーすべきか
(例 介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者)

【大久保委員】
家族・親類は「介護者」と分けて明示する必要があると考える。また、学校 関係者、医療従事者を加えることが望ましいと考える。
この場合、児童虐待防止法と高齢者虐待防止法に含まれていない学校関係者、 医療従事者を対象とするため、それぞれ虐待の対象を18 歳未満の障害児並びに 65 歳以上の高齢者に拡大する必要があると考える。

【大谷委員】
少なくとも、家庭内、施設内、学校内、企業内、医療機関内のそれぞれの場 面に分けて、そこにおける虐待の実態、虐待が生じる構造、既存法による対策 の限界、新たな立法の必要性、虐待防止策として盛り込むべき内容などを検討 すべきである。また、刑務所等拘禁施設内についても現実に虐待行為が行われ ている現状を踏まえ、適用範囲に含めるべきか検討がなされるべきである。 虐待は、虐待が行われる場面によって被虐待者と虐待者との関係、虐待が生 じる構造などについてその様相を異にし、防止及び救済に向けた手段も異なる 側面を有するからである。

【大濱委員】
■昨年の通常国会に提出された法案における「養護者/介護者による障害者虐 待」「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」「使用者による障害者虐待」 に加えて、「労働者による障害者虐待」「教職員による障害者虐待」「医療従事者 による障害者虐待」「刑務所における障害者虐待」も含めるべきだと考える。 ■上記のほか、広く障害者虐待を対象とするために「常時、定期的、(不定期で も)一定時間の接触がある者による障害者虐待」も含めるべきではないか。

【尾上委員】
家族、介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者は虐待防止法 上の虐待行為者に含まれるべきである。

【勝又委員】
虐待行為者の範囲を決めなければならないのか?虐待という人権侵害をして いる行為者をすべてカバーすることができるものにすべき。

【門川委員】
例示されている者に限らず、障害者を個別的に支援する立場にあるあらゆる 者を包括的にカバーすべきである。
すなわち、具体的な人と人との関係において生じる「虐待」的行為のうち、 本来は「支援」する立場にある者による行為を虐待とし、虐待を禁止した上で、 虐待行為が認定された場合に対する罰則(資格はく奪等)を設けることにより、 虐待防止を図るべきである。

【川﨑委員】
福祉事務所や役所の窓口で暴言や、過度に軽視する態度をとられたために、 重く心理的に傷つく障害者の例が後を絶たない。行政職員も入れるべきではな いか。

【佐藤委員】
例示はあった方がよいが、範囲を限るべきではない。介護していない家族も 虐待する可能性はある。だいぶ前だが、島根県の車いす利用者から、JR駅で 電車の扉が閉まる直前に、電車内のその障害者に聞こえるように「ごくつぶし」 といって降りた人がいたという話を聞いた。

【新谷委員】
限定列挙では、それに含まれないもの(例えば上記の例では刑務所・拘置所 職員など)が虐待行為者から外れてしまう可能性があります。また一時的な虐 待であれば、警察官や行政担当者、場合によっては一般市民も虐待行為者にな りえますので、補充規定が必要と考えます。また、例示として個別の虐待行為 者を上げる場合は、行為者類型ごとの義務範囲や監視機関の介入可能範囲など との関連を検討すべきと考えます。

【関口委員】
介護者、福祉従事者、行政(福祉関係者さらに警察・検察刑事施設ほか拘禁施 設職員および管理者)関係者、使用者、同じ施設もしくは事業所にいる者、学 校関係者、医療従事者、その他当該障害者と関わる者。

【竹下委員】
虐待は類型化して発見、救済、防止(予防)などを規定することが必要不可 欠である。その理由は以下のとおりである。
(1)虐待の主体ごとに類型化が必要である。家族による虐待、地域における 虐待、職場における虐待、学校における虐待、施設における虐待、医療機関に おける虐待などは、その本質や背景や動機に大きな相違があり、虐待の内容も 異なることが多いので、救済方法も異なる場合が多いからである。
(2)類型化することによって関連する機関(職員など)の認識を改めさせる ことができる。
(3)虐待の認定や公権力の行使(救済)のあり方を検討する場合、類型ごと でなければ合理的な救済手続が実効性を持って制度化することができない。

【土本委員】
介護者は、家族(きょうだい)・親族を含むべき。
例には「司法関係者」「警察・刑務所関係者」「公共交通機関関係者」などが ない。
範囲を限定せず、「すべての関係者」とするべきです。
みじかで接する人が、いちばん人権を侵害をおかすおそれがある。

【堂本委員】
虐待は、障害者と日常的に接する場面において起こりうることから、介護者、 福祉従事者、使用者に限ることなく、学校関係者、医療従事者、保育所関係者、 矯正施設等従事者などについても対象とすべきである。

【中西委員】
範囲を限定すべきではない。
例示された障害に関係する職業に従事する人々以外にも、家族や行政職員な どによる虐待の例も思い浮かぶ。行為者を限定することにより、虐待を防げる ことができない可能性も生じる。

【長瀬委員】
家族を含む介護者、施設職員を含む福祉従事者、企業などの使用者に加えて、 学校、保育所、精神病院を含む医療機関、矯正施設それぞれの関係者、従事者 も対象とすべきである。

【久松委員】
範囲を広げる必要がある。保護者、相談及び法律に従事する者、保育従事者 を追加する。介護者を介助者に修正する。

【松井委員】
虐待行為者を一定の支配・被支配の関係が存在する機関、団体および施設な どの関係者ということで類型化すると、例示された者以外に、職業訓練施設や 刑務所の関係者などもその範囲に含めるのが適当と思われる。

【森委員】
介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者、警察・刑務所を含め た司法機関従事者等に類型化し、より具体的に明記してより効果的なシステム にするとともに、基本的には「何人も障害者を虐待してはならない」ことにつ いて実効性が行きとどくようにすべきである。また、触法障害者を取り巻く問 題の大きさを考えると、警察や刑務所を含めた矯正施設の従事者等に関しても 類型化することも重要である。

○虐待の定義

1.虐待行為類型ごとに5類型に区分するか

【大久保委員】
「いじめ」を入れるべきと考える。(韓国の差別禁止法でも含まれている。) いじめを「身体的虐待」と捉えられるかは、一般に議論が分かれるが、知的 障害者の場合、同僚等であっても支配-被支配の関係が発生しやすいなど、障 害特性による特別な環境があるため、「いじめ」の類型を設け、その点も明記す ることが必要と考える。それにより、救済が可能となると考える。
なお、知的障害児の成長段階において、「いじめ」を受けることによって、そ の後の成長の遅れや心的傷害など二次的障害につながる人も少なくないことに ついて特記すべきではないかと考える。その際の行為者は、学校の同級生等に 及ぶものと考えるが、この点は今後の検討課題として留意する必要があると考 える。

【大谷委員】
より細やかな保護を可能とするためには、当事者類型毎の区分をすることも 検討されるべきであると考える。例えば、心理的虐待や性的虐待の定義は各虐 待行為者類型に共通するかもしれないが、経済的搾取の態様は、施設と企業で は異なり、場面に応じた定義をすることが有用であると思われる。また身体的 虐待のうち、医療関係者による身体的拘束については別途の規定が必要になる だろう。但し、細かな定義とすることでかえって虐待の定義を狭めることにな ってはならないことに留意すべきである。
また、特定の行為者に関し、虐待として保護の必要はあるが5類型に含まれ ないものが想定される場合、特別にこれを列挙するなどして法律上に明記する ことも考えられる。

【大濱委員】
■通報義務を課すうえで、何らかの類型化を行った方が明瞭ではないか。

【尾上委員】
救済の適用範囲を広げ、効果的な救済を行うためにも5類型に区分をし、定 義づけすることが望ましい。

【勝又委員】
どのような行為が虐待にあたるかを例示するためには必要だが、定義する必 要はない。定義することによって、その定義に当てはまらないまたは複数の類 型にまたがる虐待行為の扱いについて問題が起こることはないのか。

【門川委員】
現行の5類型((1)身体的虐待、(2)養護を怠るなどの放置、(3)心理的 虐待、(4)性的虐待、(5)経済的虐待)については、それ自体に特に大きな 問題があるとは言えないが、いずれの行為も本来的には刑法上の犯罪として対 応すべきものであるし、あえて虐待行為類型を設けることは、法の抜け穴を設 けることになりかねないことに留意すべきと考える。

【川﨑委員】
妥当と考える。

【新谷委員】
5 類型に区分する意味があるとしたら、1)それぞれの類型ごとに虐待の発 見・救済などの発動の仕組みが明確・容易になり虐待防止の効果が高まる、 2) 漠然とした虐待行為を具体化し、虐待行為者・非虐待者、また社会一般に虐待 行為に関する意識を向上させる点にあるのではと思います。
「5 類型に当てはまらない場合は、虐待ではない」といった使われ方をされるの では、分類する意味がないと思います。

【関口委員】
(1)身体的虐待(2)性的虐待(3)心理的虐待(4)ネグレクト(5)経 済的虐待の5類型に区分する。

【竹下委員】
従来分析されてきた虐待の5類型は、総論において定義として整理して規定 することが必要である。分野ごとまたは行為の類型ごとに各論を設けることが 特に必要となる場合には、各論において追加的に規定する方法が虐待の明確化 には必要となるのではないか。

【土本委員】
5類型-身体的・性的、心理的、放置、経済的搾取
地域で生きるうえで、必要とする適切なサービスをうけさせないことも「虐 待」です。
「サービスの利用を制限すること」は、国、行政による「虐待」です。 「てちょうやしょうがいきそ年金がうけられない」ことは、けいざいてきな 「虐待」です。
また、いまの年金だけでは地域でくらせません。
年金を増やしてください。
親や家族が仲間たちの年金を勝手に使うのも「虐待」です。

【堂本委員】
児童虐待防止法においては、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐 待の4類型に区分されている。一方、高齢者虐待防止法においては、これらに 加えて経済的虐待の5類型とされている。
障害者虐待防止法においても、これらを踏襲し、身体的虐待、性的虐待、ネ グレクト、心理的虐待、経済的虐待の5類型を規定することを基本としつつ、 セルフネグレクトの視点についても検討する必要がある。

【中西委員】
虐待を行為類型にそって定義している例は、通常他の分野でもみられる。し かしながら、実際の虐待のケースを詳細に検討していくとそれらが単独で行わ れることは少なく、いくつかの行為が重複している場合が数多くある。 その ため、できるだけ大雑把な分類にとどめておくべきである。

【長瀬委員】
身体的虐待、放置(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5 類 型とすべきである。

【久松委員】
(参考)5類型とは、「身体的虐待」、「性的虐待」、「心理的虐待」、「放置」、「経 済的搾取」とのこと。
上記の5類型で良いと考える。但し、「経済的搾取」を「経済的虐待」に修正 する。

【松井委員】
虐待行為者類型によって対応する窓口が異なりうることから、行為者類型ご とに5 類型に区分するのが、適当と思われる。

【森委員】
①身体的虐待、②介護を著しく怠る等の放置(ネグレクト)、③心理的虐待、 ④性的虐待、⑤経済的虐待等について例示、類型化することは、市民、関係者 に啓発し、より具体的に虐待を防止するために効果的なことと考える。加えて、 障害者に対する人権侵害にあたる行為は全てが虐待に含まれることを明確に、 かつ効果的に示す必要がある。
2.5類型の内容をどう考えるか

【大久保委員】
旧与野党法案にある「著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」など、「著しい」 という規定は入れるべきではないと考える。知的障害の場合、「著しい」の判断 が第三者に委ねられる場合が多く、必ずしも被害の程度や緊急性に沿わない恐 れがあると考える。

【大谷委員】
① 身体的虐待
障がいのある人に対して有形力を行使すること、または傷害を生じさせもしく は身体を拘束すること
障がいのある人への身体的暴行は人権侵害として最も顕著な類型である。支援 する側の感情的な発露であったり、施設や職場、隔離病院に於ける管理支配の 手段であったり、指導名目であったりする場合が多い。傷害に至らない単なる 暴行に関して、指導の名の下でなされる体罰が社会的に許される土壌もあって か、身体的虐待を身体に損傷を与える場合に限定する見解も多い。しかし、仮 に家庭であっても、懲戒としての暴行が許されるべきではなく、それ以外の分 野においては、なおさらのこと、体罰が許容される余地はない。
また、このような暴行といった直接的な有形力の行使のほか、薬物の過剰投与 によって精神的・肉体的傷害を与えたり、直接的な暴行とは言い難い身体拘束 という形で行われる場合も存する。かような場合、薬の過剰投与などは、有形 力の行使に当たらないものの、身体の正常な機能を害する傷害行為であるから これも含める必要があり、さらには、監禁状態におくなどして有形力の行使を 伴わない拘束も、身体に向けられたものであるから、身体的虐待に含めるべき である。

② 性的虐待
障がいのある人にわいせつな行為をすること又は障がいのある人をしてわいせ つな行為をさせること
障がいのある人に対する性的虐待は、被害者の人格の根幹を蹂躙し、被害者に強 い無力感や罪悪感を受け付けるものであり、人権侵害事例での中でも最も悪質 で悲惨なものといえる。それは女性が被害者となる場合が多いが、男性が被害 者となる場合も存在する。
行為態様としては、暴行、脅迫を伴なう場合はもちろん、伴わない場合でも、 障がいのある人に対する優越的地位を利用して性的満足を得ようとする場合も 多い。
また、性的虐待の定義には含まれないとしても、例えば、入浴、排泄、生理等 に関して異性介助が行われる場合、その介助の方法自体に不適切な面がないと しても、それが異性によって行われることによって、精神的苦痛を与える場合 があり、異性介助が性的虐待につながる可能性もあることから、同性介助が徹 底されなければならない。

③ 心理的虐待
障がいのある人に対する暴言又は拒絶的な対応その他の障がいのある人に心理 的外傷を与えるおそれのある言動を行うこと
心理的虐待の概念は、障がい故にからかわれたり、侮辱されることの被害の深 刻さや、依存関係の中での威圧的言動に対して抵抗できないことを奇貨として、 それらの言動が管理の道具としても機能していることに鑑みると、からかいや 侮辱的言動、威圧的言動を含むものでなければならない。また、障がいのある 人が性的言動によって侮辱されやすく、傷つきやすいことに鑑みると性的言動 による嫌がらせ、も含めなければならない。

④ 放置(ネグレクト)
障がいのある人を衰弱させるような減食、長時間の放置、又は必要な医療を十 分に受けさせないことその他の障がいのある人を養護すべき義務を怠ること 介護・支援を提供すべき事業体において、施設管理や利潤追求または職員の劣悪 な労働条件により、本来提供されるべきサービスが提供されないことがあり、 また、家庭内においても、監護義務がある親権者等がその義務を怠る場合も存 在する。障がいのある人にとって、そもそも介護・支援は生きていく上で、必要 不可欠なものであることに鑑みると、その履行義務を怠った場合には放置に当 たると考えるべきである。また、障がいのある人は医療的ケアを特に必要とし ている場合も多い反面、施設管理や利潤追求、職員の劣悪な労働条件により、 一般の医療を受ける機会を提供されない場合や、医療機関でありながら適切な 医療サービスを自ら提供しない場合も存在する。医療は生命に直結する問題で あることに鑑みると、このような場合も放置の一つとして考えるべきである。

⑤ 経済的搾取
障がいのある人の財産を不当に処分することその他当該障がいのある人から不 当に財産上の利益を得ること
成人の障がいのある人は、賃金、作業工賃、障害基礎年金、損害賠償金など、 何らかの財産を有している場合がある。ところが、これらの管理に関して身内 や他人が不正に利得を得る場合がある。
また、労働の実態を有しているにもかかわらず、まったく賃金を支払わないあ るいは適正な額を著しく下回る賃金しか支払わない場合も存在する。
こうした場合は、経済的搾取として虐待に該当すると考えるべきである。

【大濱委員】
■身体的虐待
▼身体拘束も含めて定義するべきだと考える。あるいは独立した類型として身 体拘束を挙げるべきだと考える。
■心理的虐待
▼障害者に対する直接的な心理的虐待にとどまらず、プライバシーの侵害も含 めて定義するべきだと考える。
■経済的虐待
▼特に「使用者による障害者虐待」について、権利条約第16 条において暴力や 虐待と並んで搾取が挙げられていること、過去の事件の例などから、「支払うべ き賃金を支払わないこと」「労働条件と相違する労働を行わせること」なども含 めて定義するべきだと考える。

【尾上委員】
「身体的虐待」は、障害者への有形力を行使すること、または傷害を生じさ せもしくは身体を拘束すること。
「性的虐待」は、障害者にわいせつな行為をすること又は障害者にわいせつ な行為をさせること。
「心理的虐待」は、障害者に対する暴言又は拒絶的な対応、その他、障害者 に心理的外傷を与えるおそれのある言動を行うこと
「放置(ネグレクト)」は、障害者を衰弱させるような減食、長時間の放置、 又は必要な医療を十分に受けさせないことその他の障害者を養護すべき義務を 怠ること
「経済的搾取」は、障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者か ら不当に財産上の利益を得ること

【勝又委員】
以下、日弁連の類型でよいと思うが、虐待に対応してきた専門家の意見もき きたい。
「身体的虐待」―障がいのある人に対して有形力を行使すること、または傷害 を生じさせもしくは身体を拘束すること
「性的虐待」 ―障がいのある人にわいせつな行為をすること又は障がいのある 人をしてわいせつな行為をさせること
「心理的虐待」―障がいのある人に対する暴言又は拒絶的な対応その他の障が いのある人に心理的外傷を与えるおそれのある言
動を行うこと
「放置(ネグレクト)」―障がいのある人を衰弱させるような減食、長時間の放 置、又は必要な医療を十分に受けさせないことその他の障がいのある人を養護 すべき義務を怠ること
「経済的搾取」―障がいのある人の財産を不当に処分することその他当該障が いのある人から不当に財産上の利益を得ること

【門川委員】
5類型の内容を法令上盛り込むとしても、それは例示にとどめるべきであっ て、虐待行為そのものは包括的に禁止すべきであると考える。

【川﨑委員】
身体的:精神科病院における過度の拘束をどう判断するか。拘束療法と呼ば れて長期に拘束されている現実がある。拘束をなくすことが必要。 ネグレクト:精神科病院における保護室への隔離と拘束時の放置をどう判断 するか。
心理的:医療関係者、施設関係者、行政職員からの暴言、著しく傷つける言 葉に状態が悪化したり、必要な手続きがとれなかったりする障害者がいる。こ れも心理的な虐待ではないか。心理的な打撃を受けやすい精神障がいという、 障がいへの配慮も必要。
性的:
経済的:精神障害があるからと、相続の対象から排除したり、障害年金のみ で生活しているあるいはそれ以下で生活している状況を、できているのだから いいのではないかと行政が生活保護にせず、放置する状況がみられる。憲法で 保障されている生活ができないで放置されることはなくすべきである。

【佐藤委員】
精神病院における社会的入院についてどのように扱うか、この法律で防止す るのかどうか検討すべきである。
身体的虐待の定義に、「身体拘束」が含まれることを明記すること。
心理的虐待の定義に「差別的言動」が含まれることを明記すること。
経済的虐待の定義に「本人の意思に反しまたは正当な対価を払わずして労働に 従事させること」が含まれることを明記すること。

【新谷委員】
5類型に分類されたのは、その発見・救済・防止の仕方が異なるからなので しょうか?それとも、虐待防止法は事前予防や被虐待者の救済に重点を置き、 虐待行為者への処分は事後処理として刑事罰を科す、という考え方でしょう か?身体的虐待は暴行・傷害罪や監禁罪、性的虐待は強制わいせつ罪などの刑 事罰とリンクして考えられているのであれば、ポスターでよく見る「痴漢は犯 罪です」のように「虐待は犯罪です」とする周知効果は大きく、虐待行為者に 犯罪行為を自覚させる抑止効果もあると思います。

【関口委員】
心理的虐待の中身をどこまでというのはかなり困難ではないかと思うが、でき るだけ幅広く、日常的な嫌がらせ、差別的言辞まで入れるのが望ましい。

【土本委員】
「しょうがい」を理由にした差別的な「あらゆるかたち」のもの

【堂本委員】
虐待事例を収集、検討するなど、現場の状況を踏まえて適切に分類すべきで ある。

【中西委員】
虐待は、障害児・者への不適切な関わりから生じる。虐待をしている多くの 人は、虐待行為を本人の自立のため、本人の社会参加のためであるなど意味づ けをしようしているが、一方的な感情や思いこみでなされるそれらの行為を正 当化すべきでない。その行為が虐待か否かは障害者の立場に立って判断される べきものである。
つまり類型を問題とせず、障害児・者の尊厳をそこなうすべての行為が含ま れるべきである。異性介助、(排泄、飲食、行動などにおける)自由の制限、言 葉遣いや表現、説明責任放棄など、障害当事者が受けてきた虐待例は枚挙にい とまがない。それらは本人の受け止め方に基づく主観的なものであり、個別性 があるからである。

【長瀬委員】
放置(ネグレクト)に関しては、自己放任(セルフネグレクト)も含むこと を提案する。

【久松委員】
「言葉の暴力」「コミュニケーション疎外」「無視」「隔離」を検討する必要が ある。

【松井委員】
5 類型の内容は、あらゆる形態の虐待をカバーしえていると思われるので、こ の内容でよい。

【森委員】
身体的障害: 障害者の身体に外傷が生じたり、または生じるおそれのある 暴行を加えること。
ネグレクト: 障害者を衰弱させるような減食または長時間の放置、また介 護者以外の同居人による身体的、心理的、性的虐待行為と同様
の行為の放置等介護を著しく怠ること。
心理的虐待: 障害者への著しい暴言または著しい拒絶的な対応、その他の 障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
性的虐待 : 障害者にわいせつ的な行為をすること、または障害者をして わいせつな行為をさせること。
経済的虐待: 介護者または親族が障害者の財産を不当に処分すること、不 当に財産上の利益を得ること。

○早期発見義務

1.早期発見義務の程度と義務者の範囲についてどう考えるか

【大久保委員】
早期発見義務を法的に位置付けるのは難しいのではないかと考える。 「関係者」を「国民」や「住民」などに広げるかという議論はあろうが、よ り実効性を考慮した場合、「関係者」の方が妥当と思われる。

【大谷委員】
早期発見義務の程度としては、後記の義務者に、虐待の早期発見の努力を義 務付けるべきである。義務者の範囲は、全ての公務員、及び、虐待を防止する 立場にある仕事に就く者(医師、看護師、弁護士、司法書士、社会福祉士、民 生委員、児童委員、施設職員、教員、雇用主、障害者職業生活相談員、刑務職 員、その他障害のある人の福祉に職務上関係のある者)とするべきである。
すなわち、被害が顕在化しにくい障がいのある人に対する虐待事案において 虐待の早期発見は虐待防止法の極めて重要な要素であり、早期発見により虐待 を認知し、その悪化を防ぎ虐待からの保護や被害回復・治療につなげることが 肝要であること、および、障がいのある人に対する虐待が多分野に広く及ぶこ とから、義務者を広くとる必要がある。

【大濱委員】
■特に「障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚」してもらうために も、早期発見義務者の列挙は必要であると考える。
■昨年の通常国会に提出された法案における「障害者の福祉に職務上関係のあ る者」の例示として、(障害者虐待の部署に所属しない)市町村職員や都道府県 職員なども挙げるべきではないか。
■昨年の通常国会に提出された法案における「使用者」に加えて、当該事業所 の労働者も挙げるべきだと考える。

【尾上委員】
虐待は、多分野において発生しているため、虐待の早期発見のためには、全 ての公務員、及び虐待を防止する立場にある仕事に就く者(医師、看護師、弁 護士、司法書士、社会福祉士、民生委員、児童委員、施設職員、教員、雇用主、 障害者職業生活相談員、刑務職員、その他障害者福祉に職務上関係のある者) に対し、虐待の発見努力のための義務を課すべきである。

【勝又委員】
以下日弁連の意見(注)に賛同
「虐待の早期発見のためには、全ての公務員、及び虐待を防止する立場にある 仕事に就く者(医師、看護師、弁護士、司法書士、社会福祉士、民生委員、児 童委員、施設職員、教員、雇用主、障がい者職業生活相談員、刑務職員、その 他障がいのある人の福祉に職務上関係のある者)に対し、虐待の発見努力義務 を課すと共に、何人に対しても通報義務を課す必要がある。」
(注)日弁連の意見とは、2008年8月20日日本弁護士連合会「障がいの ある人に対する虐待防止立法に向けた意見書」

【門川委員】
早期発見義務は、障害者を支援する者の上司に相当する者による指揮監督権 と一体の義務としてとらえるべきであり、例えば家庭内において生じる虐待を 早期発見する義務を家庭外の何者かに担わせることは、家庭内への過度の権力 介入を招く恐れがあることから、慎重であるべきであり、家庭内において生じ る虐待については、何人にも早期発見義務を課すべきではないと考える。 むしろ、障害者を支援する者が何らかの機関に属する場合の、そうした機関 の責任を強化する方向で、早期発見義務の程度と義務者の範囲を規定する必要 がある。

【川﨑委員】
早期発見義務の程度 義務者の範囲:障害者福祉従事者、学校の教職員、医師、弁護士、公務員な ど、障害者虐待を発見しやすい立場にあるもの。

【新谷委員】
業務従事者(介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者など) には業務として早期発見を義務つけるべきと考えます。問題となるのは、家族 や隣人・友人などの扱いで、一般市民の範囲にまで義務者を拡大すると個人の 自由領域への介入になるので、慎重な議論が必要と思います。

【関口委員】
義務者は行為者で挙げた範囲と同じ、ただし他の市民も通報権を持ち、市民 による通報は、義務者の通報と同等に扱うべきである。

【竹下委員】
虐待の早期発見を実効性のあるものにするためには、以下の3点が検討され るべきである。
(1) 虐待防止オンブズマンの創設
(2)家庭をはじめとするオンブズマンによる巡回(巡視)が不適切と思われる 場面(類型)においては、福祉事務所またはそれに代わる公権力による巡回を行 う。
(3)虐待を知りまたは発見した者には、救済機関に通報するなどの適切な措 置を講ずる義務を規定する。

【土本委員】
仲間たちは、ひどいめにあっていても「助けてくれ」と自分でいえません。 範囲を限定せず、「すべての関係者」とするべきです。

【堂本委員】
虐待は、いかに早期に発見し、支援できるかが重要な鍵となることから、障 害者虐待を発見しうる立場の者をなるべく広く発見義務者と規定し、早期発見 に努めなければならない旨の努力義務を課すべきと考える。

【中西委員】
虐待の発生要因(例えば、権利侵害、不適切、手抜き介助)は、虐待の発生の 可能性を高めるリスク要因であるとして、これらが存在することを虐待と結び つけることが短絡的であるとする意見もある。しかし、障害児・者が居住する 施設や家庭は閉ざされた空間であるので、リスク要因の発見も早期発見の一部 となる場合がある。
虐待を受けている障害児・者に家族をかばう気持ちや世間に知られたくない という気持ちがあったり、本人自身が虐待を自覚していないケースもある。状 況の悪化を恐れて、第三者に助けを求めることができない場合もある。そのた め早期に虐待の危険サインに気付き、その状況が悪化しないように素早く対応 していけるように、日常の生活状況をよく知り、どこに変化が生じたのかを見 届けられる支援者、保護者、親族の存在は重要であり、義務者に加えるべきで ある。相談者も同様に範疇に含まれる。最終的判断にあたっては、当然のこと 本人の認識、意見陳述が重視される。
通報義務を負う発見者については、その範囲と責務を明記すべきである。

【長瀬委員】
2009 年7 月に民主党、社会民主党、国民新党によって国会に提出された「障 がい者虐待の防止、障がい者の介護者に対する支援等に関する法律案」(廃案) が第6 条で早期発見義務を課している「障がい者福祉施設、学校、医療機関、 保健所その他障がい者の福祉に業務上関係のある団体及び障がい者福祉施設従 事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保健師、弁護士その他障がい者の福 祉に職務上関係のある者」に加えて、弁護士以外の警察官と刑務官など司法関 係者を広範に加えることを提案する。

【久松委員】
誰でも虐待を発見した場合は、どんな些細なことでも通報の義務を負うべき である。また、通報者の保護の規定が必要である。

【松井委員】
日常的に被虐待児・者と接触しうる可能性がある、保育園・幼稚園、学校や 職場、サービス機関などの関係者は、非虐待児・者が虐待を受けている兆候が 認められるときは、それが長期化する前に、できるだけ早期に関係機関に通報 する必要がある。とくに分離・隔離された環境における虐待について外部から その発生を察知することは、きわめて困難であることから、一定の強制権限を 有する市町村などの行政機関が、それらの施設や精神病院などを定期的にモニ ターすることで、虐待の予防、発見および保護などを迅速かつタイムリーに行 う必要がある。

【森委員】
福祉施設(保育所などを含む福祉施設)、教育機関、医療機関、保健所その他 障害者の福祉に業務上関係のある団体及び福祉施設従事者、学校の教職員、医 師、歯科医師、保健師、看護師、弁護士など、虐待を発見しやすい立場にある ものは自覚し早期発見を努力義務とすることが望ましいと考える。

○通報義務

1.発見者の通報義務の対象範囲と程度についてどう考えるか

【大久保委員】
これまでの法案にある「生命又は身体に重大な危険が生じているおそれ」に ある「重大な」場合に限定せず、対象とすべきではないかと考える。
「虐待を受けたと思われる障がい者を発見した者は…通報しなければならな い」といった規定では発見者の主観的判断に左右されるため、「虐待と思わなか った」などと逆に通報しないことの正当化を助ける恐れがある。
従って、「外傷や本人の通常ではない様子」など、虐待の可能性があるものは 救済機関への通報義務の対象とする必要があり、本人からの訴えがある場合も 同様とする必要があると考える。

【大谷委員】
通報義務は何人に対しても課されるべきである。
対象となる虐待の程度としては、虐待のおそれまたは可能性のある事象を広 く含むものとすべきである。なぜなら、虐待と認められるか判然としない事例 について、通報者が主観的に判断することなく、もれなく通報がなされるよう にするためである。
なお、児童虐待防止法、DV防止法及び高齢者虐待防止法と同様、通報が守 秘義務違反にならないことを明記する必要がある。
また、虐待通報を受けた指導・監督機関(教育分野における教育委員会など) についても、虐待救済センターへの通報義務を課すべきである。
通報義務は、何人に対しても課される必要があるものであるが、虐待の発見・ 通報制度を実効あらしめるためには、施設、学校、企業、医療機関、刑務所等 拘禁施設において、その場面ごとに、当該場面の設置者が障がいのある人につ いて発生した事故の報告義務を負わなければならない。
さらに、事故報告書記載にあたっては、関与者、目撃者、被虐待者及びその 家族等、関係者の言い分が食い違う場合に、全ての言い分を併記しなければな らないものとすべきである。
事故報告については、既存立法に規定がある場合には当該監督機関に対し、 規定がない場合には虐待救済センターに対して行うべきであり、既存の監督機 関に対する報告がなされた場合には、同機関から虐待救済センターへの報告が なされるよう規定を置く必要がある。
また、施設、学校、企業、医療機関、刑務所などの機関は、いずれも虐待が 行われる場面が密室であり多くの場合目撃者が存在しないこと、内部の権力関 係から被虐待者が長期間被害を訴え出ないことが少なくないことから、後にな って被虐待者が被害を訴え出たとしても、その立証が困難な場合が多い。した がって、それぞれの場の設置者には、各場面に応じた記録保存義務を課す必要 がある。
そして、各設置者が上記報告義務や記録保存義務に違反した場合、訴え出た 虐待の事実の存在が推定されるための規定も必要である。

【大濱委員】
■通報義務の程度としては、「生命又は身体に重大な危険が生じている場合」以 外を努力義務とするのではなく、広く通報義務を課すべきだと考える。

【尾上委員】
何人に対しても通報義務を課す必要がある。また特に、施設、学校、企業、 医療機関、刑務所等拘禁施設において、その場面ごとに、当該場面の設置者が 障害者に関連して発生した事故の報告義務を課すべきである。
その点から、昨年、議員立法として議論され始めた障害者虐待防止法では施 設や職場に関しては通報義務を課している一方、精神科病床等をはじめとする 医療機関、学校に関しては課せられていないという問題があった。上記の範囲 まで拡大して、通報義務を課すべきである。

【勝又委員】
日弁連の意見(注)に賛同

【門川委員】
例えば入所施設や医療機関内における虐待などについては、当該施設や機関 等に業として関わる職員全てに通報義務を課すべきであり、同様に、家庭内に おいて生じる虐待について、家庭外の者が業として関わって知りえた場合には 通報義務を課すべきであると考える。
なお、家庭内において生じる虐待について、虐待行為者と被虐待者以外の者 については、通報義務ではなく、努力規定とすべきであると考える。

【川﨑委員】
障害者虐待のすべてを通報義務の対象とし、程度は虐待を受けたと思われる、 から生命または身体に重大な危機が生じているまでとする。
精神科病院や老人の病院などの場合、家族が気付いても、さらに虐待が強ま るなどの不安から言い出せないことが多い。またこうした実態は内部告発でし かなかなか表面化しないものである。内部告発した人や、家族が訴えた場合に、 告発者や当事者に不利益が生じないようにする制度が必要。

【佐藤委員】
虐待の通報に関する免責規定に関し、過失で通報を行った者を免責すること。

【新谷委員】
業務従事者(介護者、福祉従事者、使用者、学校関係者、医療従事者など) には業務として厳格な通報義務を課すべきと考えます。一般市民の範囲にまで 通報義務を拡大すると個人の自由領域への介入になるので、早期発見義務以上 に慎重な議論が必要と思います。

【関口委員】
明らかに虐待が疑われる、合理的根拠のあるもの全てについて。 発見のみならず防止の視点が必要
防止機関として拷問等禁止条約選択議定書の国内防止機関が参考となる 添付資料

【竹下委員】
発見者には原則として通報義務があるものとして規定し、通報することが期 待できない特別の利害関係がある場合を例外として規定する。

【土本委員】
※2009.4.14PFJ「障害者虐待防止法に対する意見」より
通報の義務
障害者が虐待されている事実を知った者、あるいは虐待を疑うような事実 を知った者は、救済機関に通報する義務を課すことが必要です。
とくに現状で問題なのは、市町村やハローワークなどの公的機関です。虐 待を疑うような情報を得たとしても、まったく動いていません。
「知りながら助けようとしなかった」ことは、公的機関の義務を果たしてい ないことです。これを明確にするためにも「通報の義務」を法に定める必要 があります。
通報や告発をした人に対する保護
被害当事者からの訴えは極めてまれであり、虐待の事実がわかるのは近隣 の住民からの通報や内部告発という形がほとんどであるといえます。どちら にしても事情によっては勇気のいる行為です。
告発者を周囲の圧力から保護することが、虐待などの当事者の人権を無視し た行為を防止することにつながります。

【堂本委員】
虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合には、生命又は身体に及ぶ危 険の程度にかかわらず、すべてを速やかに通報することを義務づけるべきと考 える。

【中西委員】
① 通報義務者の範囲の明文化
居宅で生活している場合には近隣住民、施設で生活している場合には親族等 の保護者・支援者と施設に出入りするすべての人は発見した場合に通報の義務 があると明記する。
② 通報義務違反の設定
通報義務の対象範囲に規定されたものは、その状況に講じた法的処分の対象 とする

【久松委員】
対象範囲と程度について条件をつけるべきではない。どんな些細なことでも 通報する必要がある。

【松井委員】
身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、放置および経済的搾取など、あらゆる 形態の虐待について、早期発見および早期対応(深刻化の予防)する意味で、 発見者はその兆候を把握した場合、「市町村障がい者虐待防止・介護者支援セン ター」などに通報すること。そして専門的知見を有する同センターなどが必要 な対応のあり方について関係機関と協議のうえ、その善後策を講じるのが適当 と思われる。

【森委員】
発見者の通報義務の対象範囲と程度については、以下の通り、整理するべき と考える。その上で、発見者からの通報に基づいて実効性のある救済を図るた めには、救済機関につなぐための方策を明確にしておく必要がある。

範囲 程度 発見者 手段方法 生命または身体に 重大な危険が生じ るような場合 介護者(家庭) 一般市民 通報義務 虐待を受けている と思われる場合 一般市民 努力義務 生命または身体に 重大な危険が生じ るような場合 施設関係者、一般 国民 通報義務 虐待を受けている と思われる場合 施設関係者 努力義務 施設・学校・刑務 所等 従事者による虐待 があると思われる 場合 施設従事者 通報義務 生命または身体に 重大な危険が生じ るような場合 使用者、一般国民通報義務 虐待を受けている と思われる場合 一般市民 努力義務 使用者(雇用) 使用者による虐待 があると思われる 場合 使用者 通報義務

○救済機関

1.救済機関の権能についてどう考えるか
(例 事実確認、立ち入り検査、一時保護、回復支援、その他)

【大久保委員】
救済機関が、保護命令などの権力行使を行えるような規定を置くかは、議論 が分かれると思われる。直接的な権限なくても、救済機関に本人や家族に代わ って、保護の実施を裁判所に申し立てる機能を付与すれば、保護措置は可能と なる。より実効性の高いほうを選択する必要があると考える。
市町村申し立てに代わり、救済機関が成年後見制度の申し立てができるよう にする権限を付与すべきであると考える。その場合、民法改正(市町村申し立 て部分)の改正が必要となる。
また、回復支援の機能を救済機関に直接付与するのではなく、むしろ、救済 を果たした後に、福祉との連携によって生活を安定させる役割(福祉への橋渡 し)を明確する必要がある。
一方、裁判による解決ではなく、その前段階として調停のあっせんなどを行 い、解決を図る機能も考えられる。その場合、虐待の発生した環境に戻すこと を前提とするのではなく「引き離すこと」も視野に、本人の利益を最優先とす る調停を旨とする必要がある。

【大谷委員】
救済機関には次の権能を与えるべきである。
① 事実確認
② 立入調査
③ 出頭要求及び臨検・捜索等
④ 一時保護
⑤ 後見申立援助
⑥ 保護命令の申立て
⑦ 回復支援(心理的回復、医療的回復、認知的回復及びリハビリテーショ ン)
⑧ 社会復帰支援(社会的再統合) 救済の前提として、事実確認及び立入調査の権限が与えられるべきことは当 然であり、既存の虐待防止関連法と同様である。
出頭要求及び臨検・捜索等の手続について、児童虐待防止法は、虐待を行っ ていると思われる保護者が再出頭要求に応じない場合において、児童虐待が行 われている疑いがあるときは、都道府県知事が裁判所の許可状により福祉従事 者を児童の住所等に臨検させ、又は当該児童を捜索させることができると規定 しているところ(同法9条の2乃至9条の9)、上記虐待防止法の救済機関に も同様の権限を与えるべきである。
一時保護に関しては、短期入所等の障がい福祉サービスの提供、そのための 居室の確保、後見開始の市町村申立ての他、虐待者からの分離・保護を十分に 図るため、アメリカの各州で実施されている保護命令制度を我が国でも導入す ることが必要である。
当該保護命令制度は、被虐待者本人の意思を確認しながら、裁判所の命令に より、①被虐待者を保護し、安全な場所に避難させること、②医療サービスの 提供命令、③警察や公的機関を動員した安全確保措置が受けられることなどを 内容とする。裁判所の命令を通じて、法的根拠を明確化すること及び命令違反 の際の罰則を設けることで権限を強化することに重要な意義がある。当該保護 命令の申立権者は、本人、親族、市区町村長、検察官に加えて、救済機関が申 立てを行うことができるよう規定されなければならない(日本弁護士連合会 「障がいのある人に対する虐待防止立法に向けた意見書」参照)。
回復支援及び社会復帰支援に関しては、権利条約16条4項において、「身 体的、認知的及び心理的な回復、リハビリテーション並びに社会復帰〔社会的 再統合〕を促進するためのすべての適切な措置(保護サービスの提供によるも のも含む。)をとる。」とされていることから、これら全てを対象とする回復支 援及び社会復帰支援が行われなければならない。また、回復及び復帰の過程に おいては、条約が規定するように、自尊心、尊厳及び自律を尊重し、二次被害 を生まないように配慮すべきことを規定すべきである。なお、回復支援及び社 会復帰支援に関しては、その内容が抽象的である場合実効性を欠くおそれがあ るため、条項化するにあたっては具体的な内容を盛り込むべきである。

【大濱委員】
■昨年の通常国会に提出された法案では、「養護者/介護者による障害者虐待」 についてのみ、「生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めら れるとき」の措置として一時保護を規定していた。これに対して、「障害者福祉 施設従事者等による障害者虐待」「使用者による障害者虐待」(さらには「労働 者による障害者虐待」「教職員による障害者虐待」「医療従事者による障害者虐 待」)についての一時保護も必要ではないか。
■一時保護の入所先として、閉鎖的で、虐待が起こりやすい入所施設は適切で ないと考える。
▼なお、昨年の通常国会に提出された法案では、一時保護の入所先として「当 該市町村の設置する障害者支援施設その他の施設(以下「障害者支援施設等」 という。)」「国、都道府県若しくは他の市町村若しくは社会福祉法人の設置する 障害者支援施設等、のぞみの園又は独立行政法人国立病院機構若しくは国立高 度専門医療研究センターの設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定する もの(以下「指定医療機関」という。)」などが挙げられていた。

【尾上委員】
障害者虐待に関して独立した救済機関を設けるとともに、常任のスタッフを 置き調査権限をもったものとすべきである。また、名称は、今後制定が求めら れる障害者差別禁止法における救済機関(例えば、障害者権利擁護センター) との混同を避けるために、虐待防止の救済機関は別の名称(例えば、障害者虐 待防止センター)とすることがのぞましい。
また、虐待防止は予防から早期発見、そして現実に起きている虐待への介入 が求められるため、事実確認、立ち入り検査、一時保護、回復支援は全て権能 として確保されるべきである。

【勝又委員】
相談、あっせん、調停、仲裁、勧告、などを救済手段として加えるべき。

【門川委員】
救済機関の権能については、例示されている全ての機能を有することが適切 であるが、施設的・人的な制約上、適切な連携を前提として、一か所の機関で 全ての機能を有しなくてもよいものとすべきであると考える。
また、救済過程及び救済機関内における処遇において差別や虐待が生じない ように十分留意するべきである。
なお、救済機関は警察的な権能を有すると解すべきではなく、立ち入り検査 等を行う場合には、強制力を伴わないものに限定し、強制力を伴う必要がある 場合については、速やかに必要な司法的手続きをとるものとすべきであると考 える。

【川﨑委員】
立ち入り検査、一時保護の権限を有する機関とすべき。再発防止等の指導を 行う権限も持つ機関であって、必要であれ施設の変更などの支援も必要となる。

【佐藤委員】
障害者虐待防止の中心機関の名称を「障害者虐待防止センター」とし、市町 村単位(政令指定都市は区単位)に設置すること。同センターは市町村の障害 福祉課等の一部局ではなく、高齢者の地域包括センターのような独立した機関 とすること。救済機関の権限について明確な位置づけを行うこと。
臨検、捜索に関する定めをおくこと(その際、児童虐待防止法を参考にする と共に、同法の同規定が必ずしも活用されていないことに鑑み、もっと使いや すい規定にするよう配慮すること)。
事業者に対する立入等調査に関しても、警察官の援助を要請できる旨の定めを おくこと。

【新谷委員】
通報があった場合には、救済機関に施設・病院・学校など拘束性のある閉鎖 的な領域への事実確認、立ち入り検査、一時保護、回復支援の権能を与えるべ きと考えます。また、拘束性のある閉鎖的な領域での虐待には、虐待の事前防 止・早期発見のために通報を必要としない定期的な立ち入り検査を認める必要 があると思います。
家庭など拘束性の緩やかな領域への救済機関の介入に当たっては、通報者の 資格を厳格にする必要があると考えます。

【関口委員】
救済監視機関は定期的もしくは抜き打ちで虐待の疑われる個所を調査できるこ ととする。
事実上拘禁されている障害者は、個別に救済監視機関におかれる権利擁護官を つけることができる。
ex. カリフォルニアの場合は、権利擁護機関に200名のスタッフ(内40名が弁護士)がお り、そこで全病院を対応しています。新規強制入院者には、担当の権利擁護官をつけてから入院 することとしています。担当権利擁護官は、突然に視察にきます。こういった、制度設計 であれば、非現実的ではないと思うのです。
事実上拘禁されている障害者は、権利擁護官に相談・通報することができ、通 報の直後に、一時保護施設等に住居を移せる。
医学モデルによる回復支援だけでは不十分であり、アドボケイト(支援者)の 存在が必要となる。さらに生還者・仲間による援助を必須とする必要がある。

【竹下委員】
(1)人権救済委員会(または人権擁護法に基づく委員会)を設置し、差別禁 止とあわせて所管させる。
(2)委員会は、事実認定権、立入調査権、仮の保護処分権などを行うことが できるものとする。

【土本委員】
入所施設にいれられていても、普通の会社で働いていても、いじめられひどい めにあっている人のおおくは知的しょうがいをもつ仲間です。
5年前の福岡県のカリタスの家事件、奈良県大橋製作所事件、札幌の三丁目食 堂事件、そして11年前の滋賀県のサン・グループ事件、すべて被害者は知的 しょうをもつ仲間がほとんでです。
ひどいめにあっている仲間たちが助けをもとめる声をだせなくても、救済する 側が「虐待」(いじめること)と判断し、力ずくで助け出すしくみがなければ 救うことができません。
※2009.4.14PFJ「障害者虐待防止法に対する意見」より
独立した救済機関を常設する
札幌の三丁目食堂事件、奈良の大橋製作所事件でも、被害を受けている当 事者みずからが「助けて欲しい」と訴えることはできませんでした。「何か おかしい」という「虫の知らせ」を虐待と見抜き、現状をしっかりと調査し て救援に動かなければ虐待は放置されます。
虐待を発見し、被害当事者を救済する為には、これまでのように各都道府 県・市町村任せにするのではなく、一般市民や公的機関からの通報を受け救 済活動を行う<独立した常設の救済機関>が必要不可欠です。
救済機関は強制的な調査権を持つこと
この機関は法に定められた権限を持ち、問題が起こった時に迅速に動くこ とができる経験豊富なスタッフが配置される必要があります。
虐待事件は現場に介入してはじめて実態が明らかになります。当初はわず かの情報であっても、虐待が疑われる場合は救済機関が強制的に調査する権 限を持っていないと被害者を助けることはできません。

【中西委員】
立ち入り検査、一時保護、回復支援は必要であるが、事実確認は削除すべき である。救済のための対応は即応性を要するものであり、事実確認はそれを困 難にする。そのため、立ち入り検査に事実確認は含まれるものとする。即応性 の確保は重視すべきである。
家族や親族が帰省時などに虐待の疑いがあると認識しても、家庭での介護が 困難であるために施設に送り返してしまうケースがある。このような悪循環を 繰り返さないためには行政に相談すれば保護されるという安心感が必要である。 それゆえ、上記のような機能をもつ救済機関の役割は重要である。

【長瀬委員】
児童虐待防止法、配偶者暴力防止法、高齢者虐待防止法などの経験を基に、 検討すべきである。

【久松委員】
障害者虐待防止センターを設置し、事実確認、立ち入り調査、一時保護、回 復措置、後見人審判請求、福祉施設、職場、学校等への監視権限の機能強化を 有する必要がある。また、介助者への支援も考慮する。

【松井委員】
救済機関の機能には、例示されたものに加え、審判の請求、社会的再統合支 援、介護者支援などが含まれてよいと思われる。

【森委員】
実効性ある救済機関であるためには、事実確認、立ち入り検査、一時保護、 相談・回復支援などについて、強制力、強権力を持つ必要がある。また、事例 を積み重ねるととともに、障害当事者の視点をもとに、常に考究していく姿勢 を持ち続ける機関体制も必要と考える。
2.救済機関が対象とすべき範囲についてどう考えるか

【大谷委員】
救済の人的対象としては、被虐待者のみならず虐待を行った者も対象とすべ きである。救済の対象場面としては、家庭、施設、学校、企業、医療機関、刑 務所等拘禁施設が対象とされるべきである。また、施設については、障がいの ある人向けの全ての施設が対象とされなければならない。
救済の人的対象として、虐待を行った者もまた支援の対象とされなければな らない。特に家庭内の介護者ないし養護者に関しては、日頃の支援の中でスト レスや疲労を蓄積し、社会的支援のない中で孤立した環境におかれ、そのこと が原因となって虐待を生じさせていることが少なくない。虐待者を加害者と位 置づけることなく、環境調整を行い虐待の継続・深刻化を回避する制度作りが 必要である。
この点高齢者虐待防止法は、「市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及 び養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護のため、高齢者及び養護者に 対して、相談、指導及び助言を行うものとする。」(同法6条)と規定し、さら に「市町村は、第6条に規定するもののほか、養護者の負担の軽減のため、養 護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする。」(1 4条1項)、「市町村は、前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその 養護の負担の軽減を図るため緊急の必要があると認める場合に高齢者が短期 間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を講ずるものと する。」(同条2項)などの養護者支援のための規定を置いている。これらの規 定の他、国や地方自治体に対し、介護者ないし養護者の支援プログラムの策定 義務を明定すべきである(前記日弁連意見書参照)。
さらに、家庭内のみならず、施設や職場などにおいても、虐待の背景に、職 員に対する劣悪な就業環境や、心理的負担に対するケアの不足が存在すること が少なくない。したがって、これらの場面においても、施設及び職場内のみな らず、国及び地方自治体に対し、相談、指導及び助言その他必要な措置を講ず ることを義務づけるとともに、上記同様支援プログラムの策定義務を定める必 要がある。
救済の対象場面については、障がいのある人に対する虐待が生涯にわたり行 われること及び社会的背景及び歴史的背景に鑑み類型化されるべきであり、家 庭、施設、企業、医療機関、刑務所等拘禁施設の各分野ごとに虐待の防止・救 済等の内容が規定されなければならない。また、施設における虐待については、 権利条約19条3項が「障がいのある人向けのすべての施設〔機関・設備〕及 び計画」を対象としていることに鑑み、この内容に沿う規定を制定すべきであ る。

【大濱委員】
■あらゆる虐待者によるあらゆる類型の虐待を対象とするべきだと考える。

【尾上委員】
虐待防止に関する救済機関は、障害者に対するあらゆる場面における虐待の 通報を受け付ける。通報を受けた場合、あるいは職権で調査を開始し、必要があ れば、立入調査権限を行使する。そして調査の結果、虐待の事実が認められる場 合は、指導、公表、改善勧告、改善命令などの権限を行使する。調査及び審理の過 程においては、弁護士等専門的知識をもつ者の協力を得ながら調査等を行うこ と、及びこれらの者が委員として参加することが必要である。
また、虐待防止に関する救済機関について、裁判所に、保護・避難等を求めて 緊急保護命令を申し立てる権限を持たせるべきである。
さらに避難後の居住先の確保や、身体的・精神的な被害回復の支援を行い、被 害回復後の家庭や地域での生活のための支援を行う権限を持たせる必要がる。

【勝又委員】
個人を対象とすることには異論はないが、団体や集団を対象とすべきかどう か疑問。

【門川委員】
救済機関が対象とすべきなのは、被虐待者の保護と回復支援であって、虐待 行為者への罰則は含むべきではない。
虐待行為が疑われても、無罪推定の原則を曲げることは極めて危険であるこ とから、虐待行為者への対応については、通常の司法手続きにのっとった措置 を取るとともに、当該虐待行為者が業として障害者を支援する者である場合に ついて、業規制の範囲内で、資格はく奪等の規制を明確にするといった措置を 取ることが必要であると考える。

【関口委員】
原則、依頼人の依頼を範囲とすべきだが、刑法に触れる重大な事案については 全て対象とすべき。

【竹下委員】
全ての分野についての虐待防止ないし救済を統一して所管する委員会の設置 が望ましい。そのうえで、重畳的に分野ごとでの専門機関(労働委員会や各種 人権擁護機関など)による救済活動を認めることとする。

【土本委員】
範囲を限定しないほうがよい。
予想もできていない事件もあると思う。

【堂本委員】
(1及び2について)
千葉県の障害者もある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例にお いては、虐待についても禁止の対象としており、障害福祉サービス等の従業者 に対し通報の努力義務を課すとともに、県が通報を受けた場合の障害者自立支 援法に基づく措置に関する規定を設けている。また、相談があった場合には、 差別事案と同様に対応している。
しかし、条例では一般県民の通報義務や被虐待者の保護、介護者への支援措 置などの仕組みは定められておらず、また、事案解決の仕組みにおいても第三 者による話し合い解決を基本としているため、特に、緊急性の高い虐待事案に 対する救済措置を講じるには制度的な限界がある。
これは、市町村をはじめとする関係機関においても同様で、障害者に対する 虐待が疑われる事案の場合、関係機関が連携を図り、試行錯誤しながら対応し ているのが実情である。
通報に係る被虐待者に対する実効性のある救済措置を確立するためには、事 実確認、立入検査、一時保護、回復支援等の機能について法的な根拠を持つ救 済機関が必要である。
(参考)
障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例
(虐待の禁止)
第九条 何人も、障害のある人に対し、虐待をしてはならない。
(通報)
第十条 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第一項に規 定する障害福祉サービス又は同条第十七項に規定する相談支援(以下「障害 福祉サービス等」という。)に従事する者(以下「障害福祉サービス等従事 者」という。)は、障害福祉サービス等を利用する障害のある人について、 他の障害福祉サービス等従事者が障害のある人に対する虐待を行った事実が あると認めるときは、速やかに、これを関係行政機関に通報するよう努めな ければならない。
2 障害福祉サービス等従事者は、前項の規定による通報をしたことを理由と して、解雇その他不利益な取扱いを受けない。
(通報を受けた場合の措置)
第十一条 県が前条第一項の規定による通報を受けたときは、知事は、障害福 祉サービス等の事業の適正な運営を確保することにより、当該通報に係る障害 のある人に対する虐待の防止及び当該障害のある人の保護を図るため、障害者 自立支援法の規定による権限を適切に行使するものとする。

【中西委員】
強制調査や強制保護の実施、関係行政機関との調整及び調整会議の開催、行 政への勧告を加筆する。
悪意ではないにせよ障害者が明確に反対できないままに家族による年金や手 当て使用が発見されることがある。このような搾取のケースにおいて致し方な く生活費として使っているという背景がある場合、救済機関は家族に対して生 活保護の受給を促すなど、担当部局への引継ぎを確実に行う必要がある。関係 行政機関との調整及び調整会議の開催によってこの手続きが円滑に行われるこ とで、障害者は家族に対して年金や手当てを気兼ねなく使用することが可能と なる。障害者が正当な権利を行使しただけだという意識できる救済のプロセス を実施することも救済機関の仕事である。

【久松委員】
対象とする範囲を限定とするべきではない。

【松井委員】
障害者権利条約では、「家庭の内外におけるあらゆる形態の虐待の防止」が求 められていることから、救済機関はそれに対応できるようにすること。

【森委員】
既に、児童や高齢者を対象とした虐待防止法が存在していることから、通報 などに関しては地域包括支援センターなどと広く連携を深めるネットワークを 構築する必要があると考える。そして、その上で、障害領域における救済機関 を生活に密着した市町村と都道府県に設置すべきである。
また、障害者の虐待防止に関する救済機関は、障害者差別禁止法に関する救 済機関とは明確に区別したものとすべきである。その他、家庭の介護者の虐待 に関しては、過度の介護ストレスや知識・経験・技術の不足から生じることと 考えられるため、家族相談支援や研修についても十分な対応が求められる。

○監視機関

1.監督権限はあっても原則として監督義務はないとする現行法規の解釈のも とで、現行法の適切な運用のみで虐待防止の実効性を担保できるかどうか

【大久保委員】
監督義務を明記すべきと考える。
ただし、義務を遂行できる体制整備に配慮する必要があると考える。

【大谷委員】
現行法の運用を前提とした虐待防止法は実効性に欠けるものであり、虐待防 止法独自の監視機関、監督権限を規定するとともに、監督義務を明定すべきで ある。
先の国会で廃案となった与野党案において、施設及び職場における虐待行為 に関しては、既存の社会福祉法規及び労働法規の権限行使に委ねるものであり、 独自の監視機関や監督権限を規定していなかった。これらの既存の法規の下で 可能な対応としては、福祉施設等への措置、後見の市区町村申立て、労働環境 の安全面・衛生面に欠ける場合の指導等、賃金等に法令違反がある場合の指導 等であり、その他の虐待行為への対応は期待できない。また、それらの対応を すべきかという判断においても、監督権限がさだめられる現行法規の下では、 例えば国賠訴訟において、国又は地方自治体から、当該規定は行政に裁量権を 与えたものであり、義務はないという主張がなされ、裁判所の判断においても、 行政の広範な裁量権が許容され権限不行使は違法ではないという判断がなされ ている現状にある。
このように、監督権限を規定したのみでは、それが監督者側に裁量を与え責 任回避の手段として用いられるのが現状であり、適切な権限行使を担保するた めには、監督義務という形で規定することが必要である。

【大濱委員】
■現行の高齢者虐待防止法や児童虐待防止法のような、事前の監視が位置づけ られていない法制度では、実効性を担保できないと考える。

【尾上委員】
担保できないと考える。
これまでの多くの国賠訴訟の中で、国は法務大臣の名において、もしくは、 都道府県はその知事の名において、既存立法に基づく多くの権限は、裁量権に 基づいて行使されるものであって、個々の被害者の虐待を調査する義務は法で 定められておらず、行政責任はないと主張してきた経緯からも明らかである(滋 賀県サングループ事件など)。

【勝又委員】
「現行法の適切な運用」が行われているかどうかの点検は行われているのか?

【門川委員】
虐待防止の実効性を高めるためには、虐待を未然に防止する措置と虐待が深 刻化しないための措置を適切に組み合わせる必要がある。
虐待する可能性がある者について常時監督する義務を設けることが、障害者 を含む虐待される可能性がある者についての日常生活を、過度に行政的な監視 下に置くことにもつながりかねないことに留意した上で、特に業として障害者 を支援する者による虐待が生じないように、虐待を未然に防止するための措置 としての業規制(支援内容の質の向上及び違反した場合の罰則)の強化と、虐 待が深刻化しないための措置としての監督官庁による早期の監督権限の発動を 規定する必要があると考える。

【新谷委員】
被虐待者の救済を被虐待者の人権回復と位置付けると、監視機関は人権機関 に行きつくと考えます。そこでは、救済の申し出でのあった事例は、速やかに 保護措置を講じるのが義務であって、権限行使を留保する裁量はあり得ないと 思います。保護措置を講じたのち、事実関係についての審理を行い、関係者が 同意できる手続きをへて処分がなされるべきと考えます。

【関口委員】
担保できない。新たな法制度が必要

【竹下委員】
虐待防止や救済手続を所管する委員会が監視及び調査権限を兼ね備えること が必要である。また、そうした委員会に是正権限を与えることによって、監督 機能をも付与することが必要となる。

【土本委員】
「児童虐待防止法」には
1.子どもを救うためなら、かぎをこわしてでも家の中に立ち入り、調べなさ い。
2.親などがじゃまするなら、裁判所に命令書をだしてもらって強制的に救け 出しなさい。
3.じゃまするものは逮捕して、罰を与えなさい。
とあります。
以前出された各党の案も、「児童虐待防止法」のように強制的に調べて助け出 す権限がありません。これでは仲間たちは救えません。
※2009.10.26PFJ「厚生労働大臣」への質問書より(別紙を見てください) 大橋事件民事訴訟で、国(労働局)の代理人は、以下のように述べています。
①知的障害者だからといって特別の配慮を行う法的義務はない
『労働基準関係法規において、事業場への監督等について、知的障害者を特 別に取り扱う旨の規定はなく、原告らの主張に法的根拠がないことを付言する』
②人権侵害全般は労働基準監督署の義務ではない
『そもそも、労働基準監督署は、憲法27条に基づく労基法を施行する同法 97条に定める機関であり、同法99条の権限を行使するものであって、人権 侵害全般に対する是正等については、そもそもその権限を有するのもではない』 人権しんがいを見て見ぬふりをしています。
労働基準監督署がやらないのであれば、だれがやるのですか。
いまの法律では、だれも仲間たちを守ってくれません。
「しょうがい」のある仲間たちに対する「合理的配慮」が必要です。

【中西委員】
現実には訴えや事件が起こってからの対症療法的な措置しか行えず、実効性 は担保できない。
事実を知りつつ知らないふりをするのと、同様な事態が行政で起こっている ことになる。知らなかったと言い通せば責任はなかったことになる。

【長瀬委員】
例えば、労働関係法規に関して、労働基準監督機関は個々の被害者の虐待に 関する行政責任はないという立場を維持している。したがって、格段と積極的 な行政責任を課す立法が必要である。

【久松委員】
学校、保育所、医療機関、福祉施設等において、障害者虐待防止のための措 置を実施することをそれぞれの長、管理責任者に義務付け、定期的に状況を報 告することが必要である。

【松井委員】
既存の法律では十分対応できていないからこそ、障害者虐待防止法の制定が 長年求められてきたわけである。したがって、現行法の適切な運用のみでは、 虐待防止の実効性を担保できるとは思われない。

【森委員】
監督義務がなければ、権限者の自由裁量となり、虐待防止の実効性は担保で きないと考えられる。
2.家庭における虐待以外の場合の独自の独立した監視機関の設定の必要性に ついてどう考えるか

【大久保委員】
監視機関の役割・機能を含め、関連する法令等との整合性など十分な検討が 必要と考える。

【大谷委員】
独自の監視機関の設置が不可欠である。
児童や高齢者の家庭内の虐待の場合、これらの者は家庭外の社会資源とつな がる場面が少なくなく、そのような社会的接触を通じて虐待が発見され、通報 に繋がることが相当程度期待できる。
これに対し、障がいのある人が施設内において分離されている場合や、住み 込みの職場において社会生活から隔離されている場合、その他、精神病院や刑 務所等拘禁施設にいる場合において、社会生活は当該場面で自己完結している ため、社会生活を送る中で虐待の被害が発覚することは極めて困難である。
したがって、これらの場面における虐待を一般予防の見地から監視するとと もに、虐待の継続、深刻化を防ぐための監視機関が必要である。
この点権利条約16条3項は、「独立した当局により効果的に監視〔モニタリ ング〕されることを確保する。」と規定している。サービス提供者やサービス提 供者と許認可・補助金支給等を通じて関係のある行政の設置する監視機関では 実効性を欠くことは明らかであり、これらの関係者とは独立した、かつ過半を 障がいのある当事者で組織した独立の監視機関が必要である。

【大濱委員】
■権利条約第16 条第3 項の監視規定から、外部機関による事前の定期的な監視 は不可欠であると考える。
■たとえば障害者福祉施設は日常的に市町村や都道府県と密接な関係にあるこ とから、市町村(または都道府県)に対する監視機関の独立性を確保する必要 があると考える。
■障害福祉サービス事業等のなかでも訪問系サービスは虐待の現場が障害者の 個人宅になると考えられることから、これに対してどのような監視を行えば有 効なのか、議論が必要だと考える。

【尾上委員】
設置は必要であると考える。
既存の監督機関は、自治体等となるのであるが、障害者の就労や通学等にお いてその部門部門において、当該事業者と密接な関係が有る場合がある。

【勝又委員】
監視機関が複数設置された場合のメリットとデメリットの整理が必要。その 場合、虐待防止への効果、行財政的負担、を含めた検討が必要。

【門川委員】
独立した監視機関を設定することは、屋上屋を架することになる可能性をは らむとともに、監督権限のある監督官庁の責任を曖昧にする可能性があり、適 切ではないと考える。仮に監視機関を設定するとした場合にも、救済機関や相 談支援機関の機能の一部とすべきであると考える。

【川﨑委員】
虐待に関する、予防、監視、監督、回復など一貫した機能を持つ体制の監視 機関は必要である。

【佐藤委員】
事業者に対する立入は労基法上のものでは不十分であるので、施設や自宅等と 同じように、障害者虐待防止法上に定めをおくこと。

【新谷委員】
虐待に特化した監視機関が実効性をもつのか、他の人権侵害を処理する人権 機関に一体化するのが良いか議論が必要と考えます。

【関口委員】
必要。

【竹下委員】
監視機関は前述したとおり、救済機関と同一機関に所管させることが望まし い。そのうえで、分野別ごとの公益性のある機関による重畳的な救済活動を可 能にすることが必要である。

【土本委員】
必要です
福岡県「カリタスの家事件」のときに、福岡県庁の担当者は「はっきりした虐 待の定義がない」
「不適切な行為であった」といい、無責任なことばかりいっ ていました。 都道府県が「指導・監査」といって調べに行きますが、目のまえで「虐待」が おこなわれていても、それを「虐待だ」と自信をもっていえません。力ずくで 被害者をその場で救済することなど、100パーセントできません。

【堂本委員】
(1及び2について)
障害者自立支援法等に基づき、行政は制度を適切に運用する責務を負って おり(障害者自立支援法第2条等)、虐待の通報があった場合には、臨時の 立入検査を行うなど、被虐待者の安全確保を図るとともに、定期的な監査等 を実施し、適正な運営を確保することにより、虐待の防止に努めているとこ ろである。
これらと機能が重複する新たな機関を設置するならば、その必要性につい て十分検証する必要がある。
なお、千葉県の障害者もある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり 条例では、県が虐待に関する通報を受けた場合の障害者自立支援法に規定す る権限を適切に行使すること義務付けており、こうした規定を虐待防止法に 入念的に設けることも検討すべきではないか。

【中西委員】
虐待防止を実効性のあるものとするには、施設や病院に関する独立したオン ブズパーソンの仕組みを設ける。「オンブズパーソン」システムでは、患者や 入居者、およびその家族からの苦情を受けての調査を法的に義務づける。さら に、施設、病院は閉鎖された環境にあり、虐待が日常的に行われている状況も 想定できることから、事前調査なしでの調査の実施に関する権限の付与も必要 である。

【長瀬委員】
障害者の権利条約がその第16 条(搾取、暴力及び虐待からの自由)第3 項に おいて障害者向けの「すべての施設及び計画が、独立した当局により効果的に 監視されることを確保する」ことを求めていることに基づいて、「独立した」監 視機関が不可欠である。ここでの「独立」とは、公的サービスを提供している 機関からの独立を意味すると理解される。

【久松委員】
必要である。

【松井委員】
虐待の発生予防を目的とする監視権限をもつ機関の設立が必要と思われるが、 障害者だけを対象とした独自の独立の監視機関の設定は運営上の困難が予想さ れるため、高齢者、女性、こども、外国人などの社会的マイノリティなどと共 通の監視機関の設定が現実的であろう。

【森委員】
虐待の発生に関しては、表面化することが難しいことから深刻化したものと なることが多い。また、予想される分野は多岐にわたるので、監督義務を有し、 実効性を持つ独自の独立した監視機関が必要であり、その法定化についての検 討も必要と考える。

○相談支援機関

1.生活支援まで含めた相談支援のあり方についてどう考えるか

【大久保委員】
法に明文化して含めるべきであると考える。
知的障害の場合は、複合的かつ困難な問題(家族の状況や経済的状況など) も多く、そうした場合には、被害者の生活を根本から立て直す支援が不可欠と なる。現状の相談支援は十分にその機能を果たしておらず、同法および福祉サ ービスに関する法において、相談支援機関の業務として虐待被害者の生活支援 を明示すべきと考える。
従って、相談支援の機能の一つとして、権利擁護を位置付けるべきで、成年 後見制度への橋渡しなどが考えられる。

【大谷委員】
必要であると考える。
権利条約16条2項では、「締結国は、保護サービスが年齢、ジェンダー及び 障がいを考慮したものであることを確保する。」と規定されている。
そしてこの「保護サービス」とは、虐待の早期発見及び介入を前提として、 通報の受領、調査、緊急一時保護、関係者との関係調整、さらなる虐待防止に 向けた適切なサービスや社会資源への連絡調整などを含むものであると考える べきである。
虐待事例の中には、障がいのある子どもの監護・養育に疲れ、無理心中を図 る親、他の支援の協力が得られず孤立した養護者、障がい特性を理解できず誤 解の中でいらだちを覚える養護者、経済破綻の中で精神的余裕を失った養護者、 自身も障がいをもつ養護者など、虐待者側あるいは家族全体が抱える事情が虐 待という行為に結びついている事例も多い。
虐待被害の発生、継続及び拡大を回避するためには、これら生活支援を相談 支援体制に含めることは当然の要請である。また、生活支援を通じて関係者及 び関係機関のネットワークを構築することで、虐待の早期発見、通報に寄与す ることも期待できる。

【大濱委員】
■団体の長と意思決定機関の過半数を障害当事者が占める団体によって支援を 行うのが良いと考える。
■支援団体は、市町村ごとに設置、もしくは複数の市町村による共同設置とす るのが良いと考える。

【尾上委員】
障害者が自ら声を出せるようにするために、障害当事者によるサポート(ピ アカウンセリングやピアサポート)を虐待防止法制度の中で積極的に位置づけ るべきである。
また、今後、検討される障害者総合福祉法でも障害者のエンパワメントを中 心的に行う事業「障害者地域エンパワメント事業(仮称)」を創設し、その中で 病院や施設の入居者に対する相談支援を行い、地域自立生活移行支援とともに 虐待の防止・発見にもつなげていくべきである。

【勝又委員】
障がい者の相談支援に限定されず、行政サービスの改善の議論のなかで、ワ ンストップサービスなどの制度導入をすすめる。その場合障がい者が利用を視 野にいれたサービス体系をつくる。

【門川委員】
生活支援まで含めた相談支援は極めて重要であるが、一人ひとりの生き方を 尊重するという観点から、公的な権力による介入は最小限とすべきであり、相 談支援機関は障害者や障害者を支援する者の、虐待に関する相談に親身に応じ る必要はあるが、それは現行の生活保護におけるような、過度に一人ひとりの 生活に介入するものではなく、基本的には聞き役に徹することで、事態の発生 や悪化を防ぐことを主目的とすることが望ましい。
そうした意味で、具体的な相談支援の実施そのものは、生活支援とセットで ある必要はなく、例えば「いのちの電話」のような、「親身になって相談に応じ る」という機能を大事にするべきであると考える。

【川﨑委員】
虐待の防止、再発防止を考える際にも、家族などの環境すべてを視野に入れ た、継続的な相談支援を行うことが必要。

【佐藤委員】
養護者等の加害者への再発防止に向けた、支援を明確化し、その具体的支援 内容を明記すること。

【新谷委員】
虐待の防止、早期発見、救済は緊急性が非常に高いと考えます。保護措置を 講じた後の回復措置や生活復帰に必要な相談支援は、一般的な相談支援の枠組 みに特別なカウンセリングを加味する形の工夫が必要と考えます。

【関口委員】
権利擁護官とは別にアドボケイト(支援者)を位置づけてあくまでも本人の 利益に沿った相談にのる体制を作るべき。現行の障害者自立支援法下の相談支 援事業所内にアドボケイトを組み込むのが現実的と思われる。
アドボケイトは、事業所の中で独立して当事者の人権主張を支援するために 働き、必要に応じて調査を行う権限を持つ。
障害当事者団体がアドボケイトについての苦情を受け付けて所要の勧告を出 すことが出来る。

【竹下委員】
救済手続を担当する機関に障害者自身からの相談や障害のある人への支援が 可能となる権能を与え、さらには事業所や虐待の主体(加害者)となりうる立 場からの相談をも受け付けることが必要である。

【土本委員】
※2009.4.14PFJ「障害者虐待防止法に対する意見」より 虐待を受けた人の保護と安心できる地域生活への復帰 被害者の迅速な保護が必要です。しかしショートステイなどの一時避難が 地域の暮らしへの復帰につながらず、施設入所で終わるケースもあります。
避難場所の確保はもちろん、安心できる地域生活への復帰ができるまで救済 機関が責任を持って支援することを明記すべきです。

【堂本委員】
千葉県では、障害もある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例に 基づく相談事例を積み重ねていくうちに、差別や虐待の事案には、家庭や生活 環境を背景とすることも多く、単に事案の対象となる差別や虐待に対応するだ けでなく、生活全般に踏み込んだ支援が必要な場合が多いことが明らかになっ てきている。
このため、虐待の未然防止、事後救済及び再発防止の観点から、生活支援と 一体となった相談支援は極めて有効であり、その必要性も高いと考える。
相談支援機関のケアマネジメント機能を明確化するとともに関係機関の ネ ットワークを図り、実効性のある体制を構築すべきと考える。

【中西委員】
障害当事者によるサポート(ピアカウンセリングやピアサポート)を障害者 が自ら声を出せるようにするために重要な役割を担うものとして積極的に位置 づける。
相談支援機関が地域のサービス提供機関、事業所とのネットワークで生活支 援を行っていくことが必要である。特に当事者が運営する相談支援とサービス を提供しての生活支援の両方の機能を有する自立生活センターは重要であり、 それを中核としたネットワークは全国で構築されねばならない。

【久松委員】
障害種別に対応した総合的な体制、機関を検討する必要がある。

【松井委員】
非虐待障害者の支援にあたっては、虐待を受けている場から分離し、一時保 護、回復や社会的再統合の支援などを行うことが必要なケースが少なくないこ とから、生活支援が、相談支援の一部として組み込まれるべきである。
こうした生活支援までを含めた相談支援が必要なことは、こども、女性およ び高齢者などの場合も同様である。

【森委員】
家族などの介護者による虐待は、介護ストレスや知識技術が乏しいことによ って生ずることが想定される。そこで、被虐待者への相談、指導、助言その他 必要な援助を行うのみならず、家族介護者に対しても相談、指導、助言その他 の必要な援助を行う必要がある。また、他の関係機関につないで支援の充実を 図ることが重要であると同時に、虐待に対する防止、早期発見、調査、救済、 人権回復等の一連の行為の前提が、相談支援機関の的確・適正な対処によると ころが大きいことからも、その相談支援機関の充実を図ることは重要である。

○その他

【大久保委員】
今国会で提出されている虐待防止法案は、既述したような様々な課題が残さ れているが、一定の議論や調整を経て成案を得た経緯もあることを留意する必 要があると考える。
従って、同法案については、文言の修正に留め、今後、見直し規定による課 題解消を図る方向で、同法案の早期成立を望みたい。

【大谷委員】
1 虐待の予防(研修義務)
虐待の場面に応じ、設置者による指導・研修義務を規定すべきである。
虐待防止法においては、施設、雇用主、学校管理職・教職員、医療関係者、 刑務職員に対し、それぞれの場面において、虐待に対する意識改革や虐待防止 のための指導・研修を行い、虐待が発生した場合の対応について教育する制度 的枠組みが必要である。そのためには、国及び地方自治体が関係機関の職員研 修や広報その他の啓蒙活動を積極的に行うことを規定するとともに(例えば、 障がいのある人を雇用する企業に助成するときは虐待についての研修を義務 づけるなど)、各場面の設定者に対し指導・研修を義務づけなければならない (前記日弁連意見書参照)。これらの規定については権利条約16条1項、2 項からも要請されるところである。
また特に医療機関に関しては、虐待を発見するスキルを習得するための研修 が行われなければならない。

2 罰則について
虐待行為自体の処罰化はすべきでないと考えるが、高齢者虐待防止法のよう に調査妨害等の場合に罰則を設けるほか(同法29条、30条参照)、一般予 防及び特別予防の観点から、下記の処分規定及び公表・罰則規定を設けるべき である。
上記のとおり、虐待する側を支援することが必要である一方で、虐待者を雇 う施設、企業、学校、病院などの設置者ないし雇い主は、懲戒処分等により虐 待者を適正に処分すべきであり、そのための規定など必要な措置を講じなけれ ばならない。
また、国及び地方自治体は、各障害者福祉法、医療法、学校教育法、各種業 法等に定める監督権限を強化し、虐待の主体たる法人に対する許認可取消し、 公表等のペナルティを課すことが必要である。
さらに、虐待の主体の国家資格(教員免許、医師免許等)の停止や剥奪、事 業主に対する助成の打切り等のペナルティを課すことも検討する必要がある (前記日弁連意見書参照)。

【大濱委員】
■高齢者虐待防止法との兼ね合い
▼現行の高齢者虐待防止法の虐待の定義には身体拘束が盛り込まれていない。 このため、障害者虐待防止法において身体拘束を盛り込んだときに、高齢者に 対する身体拘束は虐待に該当しないと反対解釈されないような対策が必要では ないか。
▼既存の虐待防止法制のなかでも、高齢者虐待防止法については、施設従事者 等による虐待などで問題の構造が類似していることから、事前の監視などの障 害者虐待防止法の枠組みを高齢者虐待防止法にも採用するように、推進会議と して提起するべきだと考える。

■障害者虐待防止法の専門部会において、事前監視の試行事業として、障害者 支援施設の実態調査を実施するべきだと考える。

【尾上委員】
虐待防止の実効性を高めるためにも、施設や病院等に関するオンブズパーソ ンの仕組みを設けるべきである。
大阪府の「精神医療オンブズマン制度」が大きな効果を果たしてきた実例等 を参考にすべきである。(別紙資料参照)

【門川委員】
差別とは異なり、虐待は本来的には刑法上の犯罪であることから、司法手続 きとの兼ね合いを十分に考慮に入れ、個人や家庭のプライバシーがきちんと尊 重されるようなしくみとするよう留意する必要があると考える。

【佐藤委員】
「児童」、「高齢者」とある虐待防止法に加えて独立した「障害者虐待防止法」 が必要かどうか。総合した「虐待防止法」に統合し、DVなども含めたものに することも検討されてよいのではないか。
「差別禁止法」では、他の類型にない障害者独自の要素がたくさんあるので、 総合的な人権擁護法案に任せるのでなく「障害者差別禁止法」が必要とされる が、「虐待」は人間の身体、精神、財産などの侵害という共通面が多いので、障 害分野の独自性が弱いのではないか。児童相談所の関与など、救済手続き面で は一定の差異は必要だが。
障害者分野独自の虐待防止法を作るにしても、将来的な統合を模索するべき であろう。全体的に「人」で対象を分けるのではなく、「目的」(ニーズ)別の 分かりやすい制度を追求すべきであろう。

【関口委員】
虐待は侮辱罪を含む刑法に触れるものがほとんどだが、あえて障害者虐待防止 法を創る意味は、挙証責任の違いにあると考える。すなわち、刑法よりは挙証 責任を緩和して、合理的根拠をもって明らかに推認されるもの、を含むべきで あり、目的には、虐待の抑止効果がある、裁判規範性が含まれる。 ex.施設での性的虐待は、日時が特定できないために無罪となるケースがあり、 経済的虐待等も時効まで、気づかれないようにするケースがある。 もとより、障害者の虐待はその弱点につけ込むものであるから、虐待を行った 者は卑劣極まりないので刑事罰を遡及すべきところであるが、厳密な挙証責任 を求めないのであるから同等には扱えない。ただし、悪質なものについては公 的捜査機関が関与することを義務付け、疑う余地なく証明された場合にはこの 限りではない。

補足意見:障害者の経済生活は基本的に障害年金等で十全に行われるべきであって、 障害が現状の生活保護制度の受給用件になるという事が、 すなわち差別なのではないか、恒常的な先天的、後天的な心身の 状態を、ケースワーカーによって受給要件としてチェックされる、それは矛盾 でしょう。
そうした現状の生活保護制度の運用は僕には一つの虐待と捉えられます。

添付資料2

【竹下委員】
虐待防止法と差別禁止法は別の制度として特別法も分けて立法化すべきであ る。両者は共通する点もあるが、その背景や救済手続、あるいはサンクション (法律効果)にも本質的相違があるからである。

【中西委員】
虐待の事例の公表
個人のプライバシーに配慮し、具体的な虐待行為とそれへの対応を公表する。
それとともに、相談支援機関相互の情報交換の場を設定し、実務対応力の向上 に努める。

【久松委員】
全ての機関に手話コミュニケーション等に熟知した当事者職員の配置をする ことが必要である。

【森委員】
縦割りで窓口を増やすだけではなく、既存の窓口を活用し、児童・高齢者虐 待防止と一体的に、必要な専門機関などを加え、虐待防止を図ることが必要で ある。