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第5回障がい者制度改革推進会議(2010年3月19日)議事要録

議事 教育


1.障害者基本法 教育該当分

(障害者基本法の総則規定の中に、障害者の教育の権利及び求められる教育のあり方を、障害者の権利条約に即して追加して規定すべきか、否か…主な書面意見)

  • 多数は、総則に規定すべきとの意見。その他の意見として、各論で規定すべき、障害者基本法の総則にどのような権利を規定するかをまずは整理検討すべき、障害者の教育の特殊性が強調されるような書きぶりは避けるべき、との意見。

(障害者基本法14条1項は、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。」と支援をその柱にすえるが、合理的配慮の規定は存在しない。そこで、普通学校、普通学級での合理的配慮、必要な支援についても規定するべきか、否か…主な書面意見)

  • 多数は、規定すべきとの意見。合理的配慮は、過度な負担がある場合に免責されるため、より強力な表現で書くべきとの意見もあり(2名)。その他の意見として、多様な配慮を効果的に規定すべき、との意見。

教育基本法 差別禁止条項の不存在

(教育基本法4条1項は、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」としつつも、この中に、「障害」という文言はない。「障害」という文言を挿入して、障害に基づく差別の禁止を明文化する必要性について、どう考えるか…主な書面意見)

  • 主な意見は、教育基本法には、憲法上に明文のない経済的地位に基づく差別の禁止があるため、障害に基づく差別の禁止も加えるべきという内容(ほぼ全員が同趣旨)。

学校教育法 異なる教育目的の設定

(学校教育法72条は、特別支援学校(従来の盲、聾、養護学校)について、「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施す」ものと規定している。
1.この普通教育と異なる「準じる」教育という設置目的をどう考えるか…主な書面意見)

  • 主な意見として、「準じる」は、一段低い、異なる教育を意味する。障害児を普通教育から排除する結果や、分離の根拠になる。障害者の権利条約の教育条項に違反する、差別に当たる可能性がある。削除するか抜本的に改正すべき。同等もしくは同格の教育という表現に変えるべき。普通教育に密接にリンクした教育を施すことが設置目的として掲げられるべき、などの意見。その他の意見として、「準じる」を同一または同等と解釈するか、より手厚い保護を意味すると解釈すれば問題ないとする意見もあり。

(2、この目的の設定は、障害者の権利条約の差別(第2条)に該当すると考えるか、否か…主な書面意見)
(全体として18名)。

  • 主な意見は、差別に該当する(13名)、その恐れがある(1名)。その他の意見として、「準じる」を同等と解釈、または、普通教育と密接にリンクした教育であれば差別に該当しないという意見や、「準じる」は、個々の障害に応じ弾力的な教育課程を提供することになるため、必ずしも差別には該当しないという意見もあり。

(3、障害者の権利条約第24条1項が「この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現する(政府仮訳)」と規定している点に合致していると考えるか、否か…主な書面意見)

  • 主な意見は、権利条約に合致していない、合致しているとまでは言い切れないという内容。その他の意見として、障害に合わせた必要な教育というものであれば合致する、普通教育と密接にリンクした教育であれば必ずしも矛盾しない、大きく乖離しているとは言えない、という意見もあり。
  • (発言)教育についての権利を障害者基本法だけでなく、教育基本法と学校教育法でも位置づけるべき。幼い時から統合した環境が必要だ。
  • (発言)障害者基本法の総則に、教育の権利だけを入れるとすればおかしな話だが、労働、移動、住宅、地域で暮らす権利等、様々な権利が規定されるなら、教育も入れるべき。
  • (発言)憲法26条1項の義務教育は普通教育と解するのが自然だから、特別支援学校の教育が普通教育の内容を含むのでなければ差別にあたる。
  • (発言)善意で「準ずる」を理解すると、障害に合わせた教育になるが、これは、大きな落とし穴。重度障害も、普通教育が保障されなければならないが、学校教育法72条が排除しているとすれば、重大な差別になる。普通教育を保障した上で、特別ニーズとしての配慮が必要で、「準ずる」は、そういう意味で誤解を招く。

特別支援学校の設置

(学校教育法80条は、普通学校の場合と異なり、都道府県が「特別支援学校を設置しなければならない」と設置を義務づけており、さらに、同法78条は、特別支援学校には「寄宿舎を設けなければならない」と規定している。
1、これらの規定は、居住する市町村から離れて就学せざるえない事態を予定するものであるが、障害者の権利条約第24条第2項(b)「障害者が、他の者との平等を基礎として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること(政府仮訳)」という規定に違反すると考えるか、否か
…主な書面意見)

  • 主な意見は、障害者の意に反する場合、障害者の権利条約に違反するとの内容。その他の意見として、障害者本人が望む場合は、寄宿舎の設備は就学の機会を保障するという評価になる。意に反するか否か、区分けした議論が必要、という意見もあり。

(2、また、親からの分離を禁止する障害者の権利条約第23条4項「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」に違反すると考えるか、否か…主な書面意見)(全体として18名)。

  • 多数は、父母の意思に反する場合は条約違反、または、その可能性があるという意見。その他の意見として、就学について権利条約のこの規定を適用するのは当たらないのではないかとの意見もあり。

特別支援学級の設置

(学校教育法81条は、普通学校の通常学級の他に、特別支援学級(従来の特殊学級)の規定を置いている。この規定は、普通学級ではない学級での教育を前提にするものであるが、これは障害者の権利条約第24条第1項のinclusive education(インクルーシブ・エデュケーション)に合致するものと考えるか、否か…主な書面意見)(全体として18名)。

  • 意見が分かれた。条約に合致しないとする意見(7名)。合致する、または乖離するものではないとする意見(6名)。本人と保護者が選択できるようにするべきとする意見(5名)。

就学先決定の仕組み

(学校教育法第17条は、保護者にその子どもを小学校、中学校に就学させる義務とともに、特別支援学校に就学させる義務を別個に課している。そしてその親の義務の履行として、学校教育法施行令は、障害のない人(子どもを含む)については、学校教育法施行令5条により、市町村教育委員会が入学期日等の通知や学校の指定を行うのに対して、障害のある人については、学齢期を迎える前の子どもを対象とする就学時の健康診断によって、同施行令22条の3が規定する障害と障害の程度に該当する障害の存在が分かると、同施行令11条により、原則として(例外は認定就学者)、都道府県教育委員会が特別支援学校の入学期日等の通知や学校の指定を行うことになる
1、障害のある人の就学先の決定を法律ではなく、施行令に委ねているが、立法府の関与を要しない政令に委ねてよいか、否か
…主な書面意見)(全体として16名)。

  • 多数は、事柄の重要性に鑑みて法律で決めるべき、または法律で規定することを検討すべきという意見。

(2、学校教育法施行令5条、11条ならびに22条の3項による「障害に基づく分離」制度の廃止についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 廃止すべき(8名)、段階的に廃止すべき(1名)、廃止・改正の検討や見直し・改善が必要である(2名)と、多数の意見は現状の問題点を指摘。その他の意見として、特別支援学校の選択肢まで否定されるべきではなく単に廃止することは望ましくない、普通学級に学籍を持ちつつ必要と希望に応じてその他の教育の場も活用するといった全体像を描くことが必要、普通学校や普通学級ではできない配慮や支援もあるのではないか、などがあり。

(3、障害のある人が生活する地域社会にある学校に学籍を一元化することについて、どう考えるか…主な書面意見)

  • 障害者の学籍を地域の学校に一元化すべき(10名)、一元化が望ましい(2名)一元化を検討する必要がある(2名)と、多数の意見は一元化の必要性を指摘。一方で、書類上の一元化では意味がない、一元化のメリットとデメリットを整理する必要がある、学籍が何のためにあるのか検討するべき、ろう学校に学籍を置くことの妨げになってはならない、などの意見もあり。

(4、障害のある人および保護者が、特別支援学校、特別支援学級を選択する選択権の保障についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 多数は、障害者および保護者が特別支援学校や特別支援学級を選択できるよう選択権を保障すべき、希望する場合には当面は特別支援学校や特別支援学級を1つのリソースとして利用できるようにするべきという意見。その他の意見として、選択権の行使にあたりすべての決定を保護者に委ねて良いのかという問題点を指摘する意見や、教育委員会や学校側との合意形成の重要性や、意見が異なる際の決定プロセスに言及する意見などがあった。
  • (発言)自分の所属する市では、特別支援教育推進計画を平成19年6月に定め、取り組んできた。インクルーシブ教育と特別支援教育に対し、二分法的な議論になることを恐れている。急激な改正や変化で、子ども達に負荷がかかってはいけない。当事者の声も聞いていくプロセスを経ていくことが求められている。またきめの細かい児童本位の教育がなされるために、障害児教育の専門家や文科省、私立学校の設置者など多様なご意見も伺いたい。
  • (発言)自分は普通学校で勉強したが、教室の移動、トイレなど、介助者を用意しなければならなかった。良かったことは、友だちが遊びにくる、外出する中で、社会的価値が身に付いたといったこと。子どもの権利条約にもあるように、障害児自身の希望も、どこで学ぶかを選択する際に反映されるべき。
  • (発言)(現在の特別支援教育の下では)「きめ細やかな教育」によって、(障害のある子どもと他の子どもたちとの)分離が強制されてしまっている事実もあり、これは差別である。この事態を解消するために学籍を地域の学校に統合する必要がある。学籍は教育行政の根幹であり、その地域の子どもであるという帰属意識の根幹でもある。
  • (発言)2009年4月に奈良県で、地域の小学校で学んだ脳性麻痺の子どもが中学校への入学を拒否された。裁判の結果、3ヵ月後にようやく登校できるようになったが、21世紀の日本でも障害のある子どもは差別をされ、地域の学校に入りにくい。東大阪市では障害のある子もない子も、まずは就学通知を地域の学校に送り、その上で本人や保護者が希望すれば特別支援学校も選択可能にするという形にしたが、これは画期的なことだと思う。
  • (発言)特別支援教育は大切だということを強調したい。視覚障害や聴覚障害のある子が障害のない子どもたちと一緒に、同じペースで教育を受けるのは、非常に困難だ。(インクルーシブ教育か特別支援教育かなど)どの教育を受けるのかを、保護者と本人が自由に選べるようにするのが大切だ。

合理的配慮の具体化

(1、合理的配慮の具体的内容について、障害のある人および保護者、学校、学校設置者の三者が合意形成をしながら策定するプロセスについて、どう考えるか…主な書面意見)

  • 多数は、個別的な合理的配慮の内容を決める過程において、三者の協議を経て、個別支援計画等に結びつけていくことが重要という意見。追加的な意見として、本人と保護者は弱い立場にあるので支援策として第三者を関与させることが必要、最終的な決定権は本人または保護者に留保するべき、不服申し立ての機会を設ける必要がある、などの意見。

(2、合理的配慮の内容について、障害のある人および保護者が、不服の場合の異議申立手続きについてどう考えるか…主な書面意見)

  • ほぼ全員が、異議申立ての手続は必要であるとの意見。追加的な意見として、異議申立ての本人、保護者を支援する体制が必要で、また速やかに決定される必要があるとの意見や。異議申し立て機関については、障害者の参画が必要であり、組織形態や権限、設置主体などについてさらに議論が必要との意見。

聴覚、視覚に障害がある場合の教育

(1、手話言語学習権の保障と教育のあり方についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 手話言語学習権を保障すべきであることについて、異論なし。手話による教育の重要性を認めつつ、普通学校での教育の選択肢も保障すべきだという意見もあり。

(2、手話又は点字についての適格性を有する教員の確保についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 教員の確保の必要性について、異論なし。

(3、教育におけるあらゆる形態様式のコミュニケーション保障についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 多数は、教育におけるあらゆる形態、様式のコミュニケーションの保障が重要であるという意見。追加的な意見として、点字の教科書を提供すべきという意見や、中軽度の難聴の子どもたちへの対応の問題点を指摘する意見、知的障害や発達障害のある子どもたちにも多様なコミュニケーション方法による教育が効果的であるとする意見あり。

特別支援教育

(特別支援教育の評価と今後のあり方についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 以下のような様々な意見が示された。特別支援教育が一人ひとりのニーズに応じた教育かどうか不安、特別支援教育は分離別学を増幅しているので抜本的な見直しが必要、特別支援教育は原則廃止すべきだがそのメリットは維持すべき、特別支援教育が普通教育に適合しない児童を排除するための受皿となっているという否定的な側面も認識すべき、障害児に接したことのない児童が思いやりのない配慮に乏しい大人に成長していると感じる、特別支援教育とインクルーシブ教育は相反するものではない、特別支援教育は肯定的側面もあるが能力主義的な管理や統制と格差の拡大につながるおそれも感じられる、特別支援教育の評価については時間をかけるべきで評価の仕組みを開かれたものにすべき、条約批准という観点から当事者や親の意見を適切に反映して障害児教育見直しを正面から議論すべき、普通学級における特別支援教育を実施することで普通学級のあり方を変革すべき、盲ろう学校への財政支援が乏しくその専門性を軽視する傾向が強いことは問題である、等。
  • (発言)教育で最も大事なのは理念だからこれを明確にし、可及的速やかに実現することが大事。教育委員会で障害者の教育委員が入っているのは例外的だという状況で障害者の意見が反映されるだろうか。盲学校に点字を知らない先生が半分以上いるという現実をそのままにできない。個々の子どもに必要な合理的配慮をどう定型化し、時にはどう個別化していくかを制度的に確立するべき。
  • (発言)幼いときから障害のある人が身の回りにいるという環境は、障害のない子どもたちにとって大切だ。合理的配慮は障害児と保護者の意向で提供されるべきで、(学校側などとの)合意は必要ない。そもそも教育は個別のものであり、個々の子どもに対応できる体制をつくるべきだ。
  • (発言)小学4年ぐらいまでの聞こえない子どもにはコミュニケーション支援ではなく、(手話)言語についての専門的な教育こそが必要だが、多くの難聴児が聞こえないまま普通学校で学んでいるという大きな問題がある。文部科学省に特別支援教育の推進に関する調査研究会があるが、推進会議での議論とどう調整が図られるのか。
  • (発言)自分は、小学校3年まで普通学級、小学校4年から特殊学級に行かされた。分け隔てられてしまった。その学校にいても、また違う場所に行けと言われて、二重三重にも分け隔てられてきた。小学校4年から、中学校でも、十分学習できなかった。体力づくりとか、作業をやった。寄宿舎になると、入所施設と変わらなくなるのではないか。困難はあっても、合理的配慮が必要だと思う。
  • (発言)学校教育法施行令第5条は廃止し、居住地域の学校の就学通知をすべての子どもが受け取る仕組みに変えていただきたい。学籍はその学校に置くべき。都道府県立の特別支援学校小中学部は段階的に解消し、市町村立の小学校、中学校に特別支援教室として移行していくことが将来の方向性と考える。ただし、視覚障害教育、聴覚障害教育、虚弱教育については、現行の機能を維持する必要がある。
  • (発言)障害児も地元の普通学校に学籍を持つということを前提とし、本人、保護者の希望によっては、ほかの教育の形態も選択できる仕組みにすることが、推進会議の中で大体の合意になっていると考える。特別支援教育を否定するわけではなく、これまでの特別支援教育の成果を踏まえて地元でほかの子どもたちと一緒に学べるように、普通学校の中で相当な資源を投入しないといけない。
  • (発言)日本の障害児教育と教育全般を明確に方向転換し、教育の選択権を実現しなければならない。障害者の機会均等化に関する基準規則の策定時、日本政府は分離教育の立場を強硬に主張し、機会均等基準に反映させた。今回の障害者の権利条約の交渉過程では、条約交渉の終盤まで、インクルーシブ教育には反対という立場で動いていたと理解している。しかし、インクルーシブ教育を実現することは、世界的にも、日本においても大切なことだと考える。
  • (発言)ヨーロッパ、アメリカの教育の専門家には、障害のある当事者が多いが、日本は少なく、この点は反省しなければならない。私がろう学校にいたときに地域の学校を「普通の学校」と言っていたが、これではろう学校の子どもは「特別な人」になるため、言葉の使い方について議論するべき。今、特別支援教育制度で「ろう学校」の名前が消えてしまっている。ろうであるという誇り、アイデンティティーを持ちにくい状況がつくられている。
  • (発言)普通学級で学籍を一元化した上で、特別な支援が必要な障害のある子どもたちに対してどのような支援が必要かを考えるべき。特殊学級に行くように言われた人に同伴して教育委員会に行き、普通学級に行くことを認めてもらったが、通学は教育委員会では面倒を見られないと言われ、親に負担がかかっている。こうした現状をスピード感をもって改革して欲しい。
  • (発言)アメリカの分離教育は黒人への差別が原点だが、これに関して1954年のブラウン判決で、強制された分離教育は、分離された人たちの劣等性を意味し、子どもの学ぶ意欲に影響を与えるとされたことに留意すべきである。
  • (発言)分離教育制度そのものを根本的に見直した方がよい。東京都は昭和49年に、国は昭和54年に、障害児の全員就学を行った。この時、私は「今はいい。ただし、いつか将来、地域の学校にみんなが入れるようなシステムにすべきだ、少なくとも選択権は与えるべきだ」と思った。尊厳をまもるためのカギは、選択権だと思う。

議事 障害の表記


1「障害」の表記の在り方

(法令等における「障害」の表記の在り方については、「害」の字がマイナスイメージを与えることから、「障害」の表記を見直すべきとの意見があるが、これについてどう考えるか。…主な書面意見)

  • 表記の見直しについて消極的又は慎重に行うべきとする意見(10名)。見直すことに積極的な意見(6名)。当事者が判断すべきことであるとする意見(2名)。

(「障害」という表記を見直す場合、以下のような可能性を提案する意見もあるが、どう考えるか。<1>「障がい」<2>「障碍」それ以外の提案はあるか。…主な書面意見)

  • どちらも適切ではない(11名)。「がい」がよい(2名)。「碍」がよい(2名)。

(現在、文化審議会において改訂が検討されている常用漢字表に「碍」を入れて「障碍」とも表記できるよう選択肢を広げるべきとの意見もあるが、これについてどう考えるか。…主な書面意見)

  • 直ちには賛成できない(11名)。賛成する(3名)。

(「障害」の表記をめぐる上記1.~3.の論点に加え(権利条約の英文テキストでは"persons with disabilities"と表記されることを踏まえ)、障害者を表す際に、現在の「障害者」という言い方を「障害のある人」と変更すべきとの意見や、「チャレンジド」と言い換える提案があるが、これらについてどう考えるか。…主な書面意見)

  • 「障害のある人」との言い方についてよしとする意見(相当数)。「チャレンジド」をよしとする意見(少数)。どちらへの言い換えも不要とする意見も多かった。平仮名で「しょうがいしゃ」とすべき(1名)。
  • (発言(資料の補足説明))現在、文化審議会国語分科会漢字小委員会で、常用漢字表の見直し作業中。約30年ぶりの改定。分科会で答申案の決定を経て、本年5~6月ごろ分科審議会から答申、秋以降に改定常用漢字表が内閣告示の見込み。国語分科会試案の追加実施候補に「碍」は含まれていない。障がい者制度改革推進会議としての考え方を発信するかどうか、議論が必要。法令上の表記を改める場合には、改正する範囲の考え方、例えば「障害物」や「電波障害」など、同じ「障害」という文言を使用している別の分野の用語の扱いについてどう考えるかなどを整理した上で、それに基づき、すべての使用箇所を精査して法案に落とし込むなど、膨大な作業が必要となる。(事務局)
  • (発言)表記の問題は、障害者への理解や本人の自覚などにも影響する問題で、教育・差別・権利・制度などの根本に関わってくる。また表記を変えることで、国民の意識や制度などを変えることを目指すのだから、先を見越した議論が必要だ。 (発言)1年2年くらいかけ、みんなで議論し、特に障害当事者がどういう言葉がいいかを明らかにするプロセスが大事。障害当事者からアンケートを取る、マスコミ等での議論を呼びかける、障害者団体等で提案する、地方の障害者施策推進協議会で意見を挙げてもらう等。この推進会議で、障害のある委員の皆さんが、「碍」への変更にエネルギーをかけるよりもやるべきことがあると考えて乗り気でないのだとしたら、変えなくてもよい。
  • (発言)どのようにしたら障害者に対する差別をなくせるか、表記の問題も含めて検討するという意味で、委員の目的意識は一致している。「害」は変えた方が差別はなくなるという意見と、表記だけの問題にされたくないので「害」として残すべきという意見があり、この2つは平行線。
  • (発言)「害」が特別難しい漢字とは思わない。マイナスイメージなら「障」も同じ。「聾唖者」の「聾」は難しいので平仮名にするのはわかるが、障害者関係のボキャブラリーはどれもマイナスイメージ。「障害者」に対する社会の見方がプラスに変われば、漢字の表記は今のままでもいいということに落ち着くのではないか。
  • (発言)障害を健常ではない、普通ではないとする考え方が問題で、障害を普通の対極に置くという意識を変えることが必要だ。普通や健常という言い方を変えれば、今の表記のままで問題ない。社会を変えていくことにより、問題ない存在としたい。 (発言)市長になって障害者の「害」を平仮名とすることを提案し、関係条例など500数十か所を「障がい」の平仮名に変えることを市議会において全会一致で決めた。表記の議論は、差別をなくし基本的人権を限りなく尊重する制度をつくることの現われとして意義がある。
  • (発言)漢字で「聾」と書ける方が少ないので、ろうあ連盟は「ろうあ」を使っている。常用漢字表に入れていただければありがたい。わたしたちの中で、障害の手話表現を変えるかと提案したが議論にならず、日本語の表記が変わったとしても手話は変わらない。また私どもは、障害者と呼ばれる立場を自覚し、今の社会で障害者への差別偏見をなくすことを大切にしたいので、無理に表記は変える必要はない。
  • (発言)まるっきり単語を変えるのであれば少しは意味があるが、漢字を変えればいいのか。障害を被っているという意味で「被障害者」を提案したい。そうでなければ、「しょうがい」という単語、発音が変わる何かを生み出す必要がある。
  • (発言(議論の整理))一般社会の障害者に対する呼び方と、障害当事者が自分のことをどう表現し社会に向けて発信するかは、若干異なる問題。社会へ発信するときの選択幅として、「碍」が常用漢字にないと、使いたい人にとっては差し障りがある。国語審議会へ、「碍」を使えるようにすべきという意味で、推進会議の意見を送るかどうかが求められている。推進会議の意見取りまとめの際に法律の表記としてどうするか整理しなければならない。事務局としては、一般国民を含め、もう少し意見をいただき、再度、皆さんに諮りたい(東室長)。

議事 政治参加について


1 選挙に関する情報の保障

(選挙公報などの行政の提供する情報についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 「さまざまな種類の障害に相応した利用可能な様式及び技術によって、適時に、かつ追加の費用を伴わず、一般公衆向けの情報を提供する」とした権利条約21条の趣旨を踏まえて、視覚障害や盲ろう者、ろう者または知的障害者に対する情報保障の重要性が指摘されている。(ほとんどの委員が同趣旨の意見)
  • 点字広報が自治体の裁量に任されており地域間格差がある、公職選挙法の規定によって点字化が妨げられている、施設や精神科病院などで偏った情報が提供されるケースがある、点字や音声による情報の内容が一般の情報に比べて薄い、選挙に関するテレビに字幕がない、点訳とか音訳に時間がかかり過ぎて間に合わないことがある、公職選挙法の規定により平易な言葉に置き換えることができないなどの問題点が指摘され、情報提供についての法的な義務づけが必要と強調する意見も出された。
  • (発言)選挙に関する情報は最大限の保障をすべき。例えば拘置所にいて起訴前、つまり推定無罪の段階で選挙に行けないのは人権の問題としておかしい。またたとえば住民票が東京23区内にあって、郊外の精神科病院に入院している場合、区議会議員選挙のはがきは来ない。こうした点をどう解決するのかという問題がある。

(政見放送などの選挙に関する情報についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 全部の選挙の政見放送に必ずしも手話・字幕が付くわけではない、選挙活動において電話による勧誘は認められているがFAXは禁止されている、政見放送に字幕を付与するには公職選挙法等の改正が必要でハードルが高い、ろう者が立候補した場合に政見放送で読み取り通訳をつけられないなどの問題点を指摘する意見が出された。これを踏まえ、複数の委員より、適切な情報伝達方法を確保するための法的基盤が必要との意見。
  • (発言)政見放送も推進会議のように手話、字幕つきで行うのがスタンダードだというぐらいまで踏み込むべき。党派を超えて、この推進会議で示された合理的配慮を社会に広げる第一歩として、7月の参議院選挙から実施するべき。
  • (発言)国会中継と記者会見の字幕について、NHKから「本件に関するNHKの聴覚障害者団体への回答では、内容の正確さに万全を図る必要があることは他の番組と同様ですが、政治的議論は、声の大小、高低、間など、微妙なニュアンスも含めて伝えないと公平さが図られないという側面があります。これらを生字幕で表現することは、不可能に近いといえます。」との回答を受けたが、つまりこれからもずっと生字幕はつけられませんということだ。他の多くの番組には生字幕がついているのに、なぜ政治的発言は生字幕ができないのか。生字幕なしで1時間、2時間の国会中継をずっと見ろというのは差別を通り越して虐待ではないか。改善が必要だ。米国の大統領選挙の際、オバマ候補は100%字幕を付け、対立候補は100%字幕をやらなかった。また、TVコマーシャルに今まで字幕がついていなかったが、某社は日本で初めて字幕をつけた。私たちの団体としてはこの会社は私たちに優しい会社だということをPRしたい。

(国会での議論に関する情報についてどう考えるか…主な書面意見)

  • 多くの意見は、国会における議論が障害者に伝わっていないという問題点を指摘。特に国会中継や記者会見では手話や字幕などを義務づけるべきとの意見。

2 選挙の仕組み

(選挙権、被選挙権に関する欠格条項(成年被後見人であること)をどう考えるか…主な書面意見)

  • 成年被後見人である場合には、選挙権も被選挙権も剥奪されるという欠格条項は改めるべき。(ほぼ全員が同趣旨の意見)
  • (発言)成年後見によって選挙権が奪われるという欠格条項は不当。7月の参議院選挙から撤廃できないか。未だに地方公務員法で成年被後見人または被保佐人は公務員になれないため受験すらできない。知的障害者の公務員採用が徐々に広がりつつあるにもかかわらず、財産管理を後見人に手伝ってほしい場合は公務員試験すら受けられないという不合理が存在している。選挙権、被選挙権における制限は見直すべき。
  • (発言)自分は、障害のあるわが子の後見人になったが、そうしたら選挙の時に初めて子どもが投票できないことがわかり驚いた。早急に改善してもらわないと、自分の子どもに対しても申し訳ないという思いだ。
  • (発言)後見人をつけることで、基本的な国民の権利である選挙権と被選挙権が剥奪されるという現状を見直す必要がある。
  • (発言)成年後見人の問題は欠格条項の問題ではなく、成年後見制度に内在している法的能力の不平等の問題だと考える。

(投票所への移動支援をどう考えるか…主な書面意見)

  • 投票所への移動支援は必要。(ほぼ全員が同趣旨の意見)
  • (発言(議論の整理))投票所への移動支援を提供する根拠を日常生活支援として位置づけるべきだという意見や、それとは別枠で公的な支援として位置づけるべきだという意見などがあり、議論が必要である。(東室長)

(投票所の物理的バリアーをどう考えるか…主な書面意見)

  • 複数の委員より、多くの場所で今でもバリアがあるという現状認識が示された。
  • 物理的バリアは除去するべきである。(ほぼ全員が同趣旨の意見)
  • (発言)2007年の某紙地方版によると某市で車いすの女性が投票を断念したとある。投票所が2階でエレベーターがないので男性職員が4人で背負うと申し出たが、本人がこれを断ったためだが、こういうことがあってはならない。なお、同市ではエレベーターがない2階に投票所が設置されたところが2か所あったという記事も一緒に載っていた。

(投票所内での障害に応じた必要な配慮をどう考えるか…主な書面意見)

  • 多くの委員が、知的障害のある人や文字を書くのが困難な人への人的支援、他の容易な投票のやり方への変更、代理・代筆の許容、筆談や手話通訳による支援等の配慮が必要であるとの意見。
  • (発言(議論の整理))そうした支援をいかなる根拠に基づいて提供していくのか、更なる議論が必要。(東室長)
  • (発言)知的障害者への合理的配慮として記号投票を衆・参の選挙でも導入していただきたい。また漢字が読めない人は、投票所で候補者とその名前とを必ずしも一致させて認識することができないため、中にも写真を掲示する必要がある。

(投票所内で投票できない場合の現行の代替措置(郵便投票など)をどう考えるか…主な書面意見)

  • 現行の郵便投票制度について、これまでその範囲を拡大してきたことを評価しつつも、なお問題を解消できていないことを指摘する意見。
  • 施設や病院における不在者投票制度において不正問題が指摘されているという意見。
  • (発言(議論の整理))こうした問題を踏まえ、小手先の改善というよりも包括的な法的手立てを議論する必要がある。(東室長)

(点字投票の場合における投票の秘密をどう考えるか…主な書面意見)

  • 点字投票に関しては守秘義務がある者が開票すれば問題はないとする考え方もあるが、点字投票者の数が絶対的に少ないため特定されがちであるという問題に鑑み、投票時から開票時まで秘密が損なわれないような手段や工夫が必要であるとする意見。

3 政治活動

(障害者が候補者としての選挙活動や政党の活動等に参加する際に必要な支援をどう考えるか…主な書面意見)

  • (書面意見)3つのレベルで考えるべきである。第1に、選挙活動の一般的な制限をそのまま障害者に適用することによって、実質的には障害者の選挙活動が大きく損なわれるという問題、すなわち間接差別的な状況が生じている問題をめぐる論点。第2に、選挙活動についてどのような支援がなされれば、実質的に障害のない人の選挙活動や政治活動と同等なものができるのかという論点。 第3に、政党や団体の一員として活動する場合、政党や団体自身が障害のある構成員に対してどういう配慮をすべきかという論点。
  • (発言(議論の整理))第1の、制限の問題は、選挙活動の自由、表現の自由にかかわる問題であって、差別の問題として考えるべきである。第2について、多くの委員は支援が必要だと考えているが、合理的配慮なのか公的介助サービスの一環なのか、それとも別枠での公的支援として位置づけるのかは意見が分かれる。第3については、政党や所属団体が成すべき合理的配慮の問題であるとする意見もあったが、第2の点と同様の整理が必要。(東室長)
  • (発言)今の公職選挙法は手話通訳者を運動員としているので、手話通訳3人を運動員として採用すると選挙活動に必要な運動員がほかに置けなくなる。また、聴覚障害者は電話で呼びかけができないのに、FAXやインターネットで投票を呼びかけることは認められていないため実質的に選挙活動ができないという状況になっている。韓国では最近テレビの字幕や手話通訳が増えてきたが、日本でも字幕や手話通訳をつけることが普遍化されるべき。
  • (発言)候補者になった障害者が自らの移動への支援を自らの費用で賄うのは合理的配慮の面から問題がある。また、各政党は障害者を始めマイノリティーを一定の割合で候補者とするべきであり、その際の供託金等は国が保障すべきである。

4 公的活動

(障害者が福祉や教育、人権等の公的活動を行う障害者の組織を結成し、参加する際に必要な支援をどう考えるか…主な書面意見)

  • (発言(議論の整理))大きな社会的意義がある障害者団体の活動を支援していこうとする世界的潮流があることを認識すべきとの意見が多数出されている。他方、個人のレベルでの支援と団体への支援とは分けて考えるべき。個人のレベルでは合理的配慮という位置づけが可能だが、団体への合理的配慮という理屈づけは難しいのではないか。(東室長)

5 その他

  • (発言)選挙時に各党からマニフェストが出るが振り仮名が振られておらず内容もわかりにくいことがある、選挙はがきが来ても振り仮名がないなどわかりにくいため、投票所がどこかもわからないことがある、入所施設での投票については誘導されて選挙に行かされるような事件も発生しているなど、現実に問題が生じている。。

[以上]