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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第5回(H22.3.19) 久松委員提出資料

第五回障がい者制度改革推進会議 意見提出
教育

障がい者制度改革推進会議構成員 久松 三二
(財団法人全日本ろうあ連盟 事務局長)

○障害者基本法 教育該当部分

1.障害者基本法の総則規定の中に、障害者の教育の権利及び求められる教育のあり方を、障害者の権利条約に即して追加して規定すべきか、否か。

教育を受ける権利は憲法で保障されたすべての国民固有の権利であり、総則規定に追加すべきである。

2.障害者基本法14条1項は、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。」と支援をその柱にすえるが、合理的配慮の規定は存在しない。そこで、普通学校、普通学級での合理的配慮、必要な支援についても規定するべきか、否か。

障害者基本法の第14条第1項について、障害をもつ子供が求める必要な支援と合理的配慮を行うことを規定すべきである。

なお、普通学校、普通学級という用語を使用することについて検討が必要である。

○教育基本法 差別禁止条項の不存在

教育基本法4条1項は、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」としつつも、この中に、「障害」という文言はない。「障害」という文言を挿入して、障害に基づく差別の禁止を明文化する必要性について、どう考えるか。

「障害」を入れることは必要である。

○学校基本法 異なる教育目的の設定

学校教育法72条は、特別支援学校(従来の盲、聾、養護学校)について、「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施す」ものと規定している。

1.この普通教育と異なる「準じる」教育という設置目的をどう考えるか。

学校教育法72条は、特別支援学校(従来の盲、聾、養護学校)について、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に「準ずる」教育を施すと記しているが、「準ずる」の使用は下位に位置する表現であり問題があると考える。「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校と同等にかつ個別の障害に応じた適切な教育を施す」と変更すべきである。

なお、特別支援教育制度の導入により学校教育法から「聾学校」の表記が削除されたが、百年以上の歴史をもつ聾教育の実情を無視した画一的な制度と言わざるを得ない。従来の聾学校、盲学校の名称を廃止し一律に特別支援学校にしたのは個別の障害に応じた適切な教育の場を整備し充実することの観点から問題がある。

2.この目的の設定は、障害者の権利条約の差別(第2条)に該当すると考えるか、否か。

「準じる」教育は差別に該当する。

障害者権利条約の第24条第3項(c)の記載「個人にとって最も適切な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。(川島・長瀬訳)」に沿って、個別の障害に応じた適切な教育の場を整備し充実することが重要である。

3.障害者の権利条約第24条1項が「この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現する(政府仮訳)」と規定している点に合致していると考えるか、否か。

「準じる」教育は合致しない。

障害者権利条約の第24条第3項(c)の記載「個人にとって最も適切な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。(川島・長瀬訳)」に沿って、個別の障害に応じた適切な教育の場を整備し充実することが重要である。

○特別支援学校の設置

学校教育法80条は、普通学校の場合と異なり、都道府県が「特別支援学校を設置しなければならない」と設置を義務づけており、さらに、同法78条は、特別支援学校には「寄宿舎を設けなければならない」と規定している。

1.これらの規定は、居住する市町村から離れて就学せざるえない事態を予定するものであるが、障害者の権利条約第24条第2項(b)「障害者が、他の者との平等として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること(政府仮訳)」という規定に違反すると考えるか、否か。

障害者権利条約では、地域の学校への就学を希望する障害者を排除できないという規定と解釈すべきである。

障害者権利条約の第24条第3項(c)の記載「個人にとって最も適切な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。(川島・長瀬訳)」に沿った個別の障害に応じた適切な教育を行うためには、例えば、聴覚機能に障害をもつ子供の場合において、同じ障害を持つ子どもたちの集団性が確保された教育を自己の居住する地域社会において受けることができるろう学校(分校含む)を設置する必要がある。

なお、ろう学校における「寄宿舎」は「通学保障機能」だけでなく、集団性が保障された生活の場としての「教育的機能」を有していることを理解する必要がある。

2.また、親からの分離を禁止する障害者の権利条約第23条4項「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」に違反すると考えるか、否か。

障害をもつ子供およびその父母の意思を尊重すべきであり、意思に反して分離されることがあってはならない。

○特別支援学級の設置

学校教育法81条は、普通学校の通常学級の他に、特別支援学級(従来の特殊学級)の規定を置いている。

この規定は、普通学級ではない学級での教育を前提にするものであるが、これは障害者の権利条約第24条第1項のinclusive education(インクルーシブ・エデュケーション)に合致するものと考えるか、否か。

障害者権利条約の第24条第2項(c)は、「個人にとって最も適切な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。」を述べている。障害をもつ子供の発達を保障し、それに見合った教員配置や環境が確保される必要がある。地域の学校で障害をもつ子供を支援する学級を設け、障害をもつ子供の教育権を保障することは必要である。

例えば、聴覚機能に障害をもつ子供の場合、音楽、英語、手話学習など音声、手話等を必要とする学科は難聴学級での教育が必要であるが、難聴学級を固定しない仕組みが必要である。

○就学先決定の仕組み

学校教育法第17条は、保護者にその子どもを小学校、中学校に就学させる義務とともに、特別支援学校に就学させる義務を別個に課している。そしてその親の義務の履行として、学校教育法施行令は、障害のない人(子どもを含む)については、学校教育法施行令5条により、市町村教育委員会が入学期日等の通知や学校の指定を行うのに対して、障害のある人については、学齢期を迎える前の子どもを対象とする就学時の健康診断によって、同施行令22条の3が規定する障害と障害の程度に該当する障害の存在が分かると、同施行令11条により、原則として(例外は認定就学者)、都道府県教育委員会が特別支援学校の入学期日等の通知や学校の指定を行うことになる。

1.障害のある人の就学先の決定を法律ではなく、施行令に委ねているが、立法府の関与を要しない政令に委ねてよいか、否か。

障害のある子供の就学先の決定を法律で明記すべきである。

一人ひとりの障害をもつ子供のニーズに応じた教育を障害をもつ本人やその保護者が選択することを保障した制度は法律で明記する必要がある。

選択が保障された法律が明記された場合は、その運用は「施行令」で柔軟に対応してよいと考える。

2.学校教育法施行令5条、11条ならびに22条の3項による「障害に基づく分離」制度の廃止についてどう考えるか。

聴覚機能に障害があることがわかった時点で、視覚による情報獲得やコミュニケーション獲得をさらに発達させる必要がある。共通の手話言語による学習と集団性の確保を保障しなければならない。従って聴覚機能に障害をもつ子供には固有の教育環境(例えば、ろう学校)が必要である。

3.障害のある人が生活する地域社会にある学校に学籍を一元化することについて、どう考えるか。

慎重な議論が必要である。

学籍の一元化は共生社会の一員として必要なことと考えるが、現行の特別支援学校(ろう学校)に学籍を置くことの妨げになってはいけない。

聴覚機能に障害をもつ子供が、ろう学校と学校教育法で定められた学校の両方で学びたいという要求もある。

4.障害のある人および保護者が、特別支援学校、特別支援学級を選択する選択権の保障についてどう考えるか。

障害をもつ子供及びその保護者による選択権を保障しなければならない。

○合理的配慮の具体化

1.合理的配慮の具体的内容について、障害のある人および保護者、学校、学校設置者の三者が合意形成をしながら策定するプロセスについて、どう考えるか。

障害をもつ当事者(当事者集団含む)を含めた教育関係者を含めた四者が合意形成をしながら策定するプロセスが必要である。

2.合理的配慮の内容について、障害のある人および保護者が、不服の場合の異議申立手続きについてどう考えるか。

過度の負担を課さない内容であれば、学校・学校設置者は速やかに配慮すべきである。配慮されない場合は異議申し立て手続きが必要である。

○聴覚、視覚に障害がある場合の教育

1.手話言語学習権の保障と教育のあり方についてどう考えるか。

聴覚機能に障害を持つ子どもたちが理解できる教育が保障されるべきである。そのために下記のことが必要である。

①聴覚機能に障害があることが分かった時点で、聴覚機能に障害をもつ子供がその保護者とともに手話を学ぶシステムを公的責任で整備する。

②学校教育施行令を改正し、手話を教科とし、ろう教育の教育課程において手話学習の必要性を明示し、手話を用いた教育方法をベースにした上で、聴覚機能に障害をもつ子供のニーズに応じた多様な教育方法が行われるようにする。

③ろう学校教員、及び学校教育法に定められた学校において、聴覚機能に障害をもつ子供に関わる教員が手話を習得する。

④聴覚障害をもつ教員を「聴覚障害者枠」で採用し、ろう学校にあるすべての学部(幼稚部、小学部、中学部、高等部、専攻科)で配置する。

⑤ろう学校、及び学校教育法で定められた学校に通学する聴覚障害児のニーズに応じて、手話通訳、要約筆記を保障する制度を導入する。

⑥ろう学校、及び学校教育法で定められた学校に通学する聴覚障害児に、成人の聴覚障害者及びその集団との交流も含めた集団的な学習の場を保障し、障害認識とアイデンティティを育むとともに、手話通訳・要約筆記制度等の社会資源を十分に活用できる教育を実践する。

⑦現行の特別支援学級(難聴学級の呼称が望ましい)では、手話学科を設置し手話言語を学ぶ環境を整備する必要がある。

2.手話又は点字についての適格性を有する教員の確保についてどう考えるか。

聴覚機能に障害をもつ子供を対象にしたろう学校教員、難聴学級教員、その子供が在籍する学級教員、大学等高等教育機関の教員(以下ろう学校教職員等)は、手話を習得することを義務づける必要がある。

①教員養成のカリキュラムに、公的機関が実施する試験、例えば、社会福祉法人全国手話研修センターの「全国手話検定試験」2級以上の合格を目標とした手話習得カリキュラムを導入すること。

②ろう学校教職員等採用資格に全国手話検定試験2級以上の合格を条件とすること。

③当面、ろう学校教職員等の教員は、都道府県・市町村が実施する地域の手話講座・講習会、手話通訳者養成講座に、または全国手話研修センターの主催する手話講座・講習会、手話通訳者養成講座、手話通訳者研修等への参加を義務づけること。

④ろう学校、難聴学級、その子供が在籍する学級、大学等の高等教育機関に従事する聴覚障害教員を「聴覚障害者枠」で採用し、全てに配置する。教員の配置数は、教員総数の過半数を超えることが必要である。

3.教育におけるあらゆる形態様式のコミュニケーション保障についてどう考えるか。

あらゆる形態様式のコミュニケーション保障は基本的に賛成。

しかし、ろう学校では、手話を否定するための口実に使われることがあるので、ろう学校でのコミュニケーション手段は手話を使用することを明記することが必要である。

○特別支援教育

特別支援教育の評価と今後のあり方についてどう考えるか。

現行の特別支援教育は問題が多く評価できないと考える。盲・ろう学校への財政支援が乏しく、その専門性を軽視する傾向が強い。

我が国のろう教育は100年以上の伝統と実績を有する専門的な分野であり、今後ともろう学校で教育を受けることは保障されなければならない。強権的にろう学校の名称を特別支援学校に変更することや、他の障害との併設や他の特別支援学校との統合はあってはならない。他の障害の子供と一緒に教育することができるとされているが、ろう教育においては、対象となるろう児は、視覚による情報保障と手話言語が必要であり、他の障害をもつ子供は聴覚機能が使えるので、言語のニーズが異なる子供が一緒に学ぶ環境では、教育効果が期待できない。