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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

Enjoy Daisy 読めるって楽しい!

公益財団法人日本リハビリテーション協会は国際シンボルマークの取扱いを行なっています。

障害者福祉の総合月刊情報誌『ノーマライゼーション』発売中

マルチメディアDAISYのCD-ROM付き絵本『赤いハイヒール』発売中

障がい者制度改革推進会議
第6回(H22.3.30) 資料2

障害児支援に関する意見一覧

基本的な考え方

出生直後から乳幼児期の相談支援のあり方

就学前の支援策のあり方

市町村を基本とした相談支援体制について

その他

第六回障がい者制度改革推進会議 意見提出フォーマット
障害児支援

基本的な考え方

1.障害者の権利条約(第7条)では、締約国は、障害のある児童とない児童が平等であり、障害のある児童の人権を確保するためのすべての必要な措置をとることが明記されている。

一人ひとりの子どもの有り様を「障害」という概念で括る前に、個性・個人差として捉え、児童福祉法における子ども施策の中で、基本的には障害児の支援を位置づけるべきということについてどう考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

障害児支援は、児童福祉法での対応を基本とする必要があると考える。

まず、障害児であるまえに「子ども」であるということを考えることが大切だと思われる。

障害児支援を考える場合、まず、障害の有無に拘わらず、全ての児童は健全な環境で育ちが保障されなければならないと考える。とりわけ障害児については、早期発見・早期対応の視点に立って、健全に成長できるような環境を整えるための支援が鍵であり、母子保健・子育て支援・家族支援が重要と考える。

乳幼児期から学齢期までの発達支援は、「親の支援を通して子の支援を行う」ことにより、特に、知的障害・発達障害においては、一次障害を軽減し、二次障害の発生を予防することにもつながると考える。このように、障害児支援の充実・強化は、障害の有無に拘らず、健全育成の視点を中心とする必要があると考える。

一方、知的障害・発達障害においては、幼児期に障害を特定できないことやそれに伴う支援ニーズも明らかでない状況もある。そのため、未就学時点では明確に「障害」ということを意識しない親も少なくない。さらに、障害児支援の根拠法令を総合福祉法(仮称)とし、発達支援に係るサービスを切り分けた場合、親の心理的抵抗感をもたらす可能性もある。

したがって、障害児支援は児童福祉法での対応が基本と考える。

なお、「児童の権利に関する条約」において、第18条で、父母等に「児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。」とし、この責任を遂行するに当たり、締結国は「適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。」としている。

さらに、第23条で、締結国は、「障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、」とあり、父母等に「事情に適した援助」を「与えることを奨励し、確保する。」としている。この「援助」は、「障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。」としている。

このような「児童の権利に関する条約」との関係も考慮し、今後、障害児支援の議論を進める必要があると考える。

【大谷委員】

基本的な位置づけに賛成である。

障害のあるなしを超えて一人ひとりの子どもを個性、個人差をもつ存在として理解する視点は、教育、福祉、医療を通して必要であり、個人差や疾病・障害の有無によって、資質が「優れている」あるいは「劣っている」といった価値判断を犯す誤りを克服する第一歩となると思う。

ただ、その基本的な視点を踏まえつつ、障害・疾病の理解と社会保障、個別的ケアをめぐる各論へどうつなげるかについては、充分な検討を要すると思われる。

【大濱委員】

新たな枠組みとして、障害児についても権利条約の規定の「他の者との平等を基礎として」や「社会とのインクルージョン」に則り障害者基本法や総合福祉法制で具体的な支援のあり方等を、法制化し明記すべき。

権利条約では統合教育を認めることが明記されているが、現在の日本の施策は「障害程度に応じた個別教育の推進」「差別せず平等に教育を受ける権利」を保障とうたうことで、障害種別に応じた教育と称して、結果的に障害児を健常児から分ける結果になっている。

健常児と分けることは基本的に禁止すべき。

●児童福祉法における子ども施策の中で、基本的には障害児の支援を位置づけるべきである。ただし、人工呼吸器をつけるなど医療的ケアを必要な子どもの場合、児童福祉法に定める「児童居宅支援」の利用を断られたり、利用できても医療的ケア部分の支援が得られず、家族介護だけでぎりぎりの綱渡り状態となったりの実態がある。医療的ケアの扱いを抜本的に見直し、医療的ケアが必要であっても、1人の子どもとして、きちんと支援が受けられるようにしなければならない。

また、乳幼児の場合、親が世話をするのが当然という理由で利用が認めらないケースが多く、年齢にかかわらず必要な支援が受けられるように保障する必要がある。

●「欧米の権利条約では、意思表示が困難な難病や重度の脳障害、遷延性意識障害の人(大人も子どもも)は、障害者として想定されていない。わが国でも、制度の狭間に押しやられてきた。特に、子どもの場合、親が見るのが当然として、必要なサービスも受けられず、さらなる狭間に追い込まれている。
誰の支援を受けることもできず、綱渡り状態の介護で、子どもの命が危ぶまれている事例さえある。また、それらの事例では、当事者の子ども本人だけでなく、家族も健康で文化的な最低限度の生活を送る権利を奪われ、家庭生活が破たんしかねない厳しいケースも少なくない。これらの厳しい状況を理由に、障害のある子どもの命が親によって絶たれたり、医療現場においても、子どもの治療差し控えや延命中止が検討されることもあることは、子ども自身の人権から考えれば決して看過できない。
障がい者制度改革にあたっては、意思表示が困難な難病や重度の脳障害、遷延性意識障害の人たちもきちんと念頭において、当たり前に社会で暮らしていけるような方向性を示してほしい。さまざまな福祉制度の整備だけではなく、重度障害や難病に対する差別意識や偏見から、必要な医療が受けられなくなったり、自己決定と称して、死に誘導されることになったりしないような方向性もきちんと示してほしい。(意思表示困難な人やちいさな子どもは、医者や親・家族の判断で命の長さを決められかねない現実にしっかり目をむけてほしい。)」

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 障がい児と位置づけて手当を貰っている人(収入によって)など、手厚い待遇を受けている人もいると思うと仕方がないと思う。
  • 障がい児でもその子どもによっては、莫大な医療費がかかったり、ひとり親の方もいたり、障がい児を産みたくて産んだ訳ではなく、仕方のない現実だったので、その現実を受け止め、将来を見据え、耳を傾け、最大限の支援は必要ではないのかと思います。
  • 障がいのある児童、障がいのない児童が平等であるのは大前提であり、その中に特別な配慮の必要な児童として、障がいのある児童を位置づけてはどうでしょうか?
  • 障がいは個性ではあるが、支援においては、こと細かに明記する必要はあると思います。詳しくはわかりませんが、きちんと人権が確保された内容であれば問題ないと思います。
  • 個性・個人差として捉える事も、差別をなくす為には必要なことですが、出来るけど、個性などでしないのと、出来ないのとは違うと言う事を、健常者に理解してもらう事は難しいと思っています。

【尾上委員】

児童福祉法においても、障害児の支援を明確に位置づけるべきである。

障害児は、心身の状況に関係なく、何よりも一人の人間としての権利を有する存在であり、障害者の権利条約の規定は、その前提で障害児の権利を確保するためにすべての必要な措置を講じることを求めている。子どもに関する国としての施策を定める児童福祉法はその上で大きな位置を占めており、「すべて児童はひとしく、その生活を保障され」(同法第1条)とされているのであるから、障害児に関する必要な支援を盛り込み、子どもに関する施策の枠組みの中に明確に位置づけるべきと考える。

ただ、1994年の子どもの権利条約の批准にあたって、日本における子どもの施策は、その主旨を十分に踏まえたものとはならなかった経緯がある。近い将来において、子どもの権利を保障するための法制度の整備が求められており、権利主体としての子どもという位置づけと、その中での障害児の権利保障も、その整備の重要な課題となることを附言しておきたい。

【勝又委員】

児童福祉法における施策においても障害児の支援を位置付けるべきだとおもうが、その一方、専門的な支援については別途位置付ける必要はないのか。このような主張をされている方の意見を知りたい。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害者の権利条約第7条において、障害のある児童とない児童とが平等であり、障害のある児童の人権を確保するためのすべての措置をとることが明記されていることの第一義的な意味は、障害のある児童が往々にして不平等な取り扱いをされがちであることを踏まえ、障害のある児童についても障害のない児童と同様に、十分な教育を保障し社会参加に向けた機会を確保するよう、締約国に求めていることにあるといえる。

すなわち、障害のある児童について特段の配慮をして踏み込んだ対応をとらなければ、障害のある児童は、その障害ゆえに、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを確保できないということをも含意していると考える。

一方、一人ひとりの子どものあり様を「障害」という概念でくくる前に、個性・個人差として捉える、というアプローチは、障害のある児童とない児童とを分離しない、インクルージョンの考え方とも調和的である。それは、子ども施策を、「すべての子ども」に十分な教育を保障し社会参加に向けた機会を確保するためのより柔軟で質の高いものとするために、一定程度有効であると考えることができる。そしてそうしたアプローチの実現方法として、日本の法体系においては児童福祉法において障害児の支援を位置づけるべきと考えることも、一つの方法として十分検討に値するものであると考える。

しかし、障害のある児童のための施策は、そうしたアプローチだけでは十分ではないことを強調する必要がある。それは、障害学における社会モデルの考え方を踏まえれば、障害のある児童が、自らの機能障害(インペアメント)に直面し、機能障害のある自分を肯定し、機能障害と「付き合いながら」生きていく術を学ぶという過程において、障害のある児童をどう社会が扱うかが決定的な意味を持つということ、すなわち、社会が障害のある児童をどのような形で「障害のある児童」として扱うかが、障害のある児童の生き方を決定づけてしまうということに、十分な配慮を払うべきであるということでもある。

一人ひとりの子どものあり様を、いくら個性・個人差として捉えようとしても、児童は機能障害を有することによって、実際上の生活の場面において、障害のない児童であるならば「必要としない」「特別なニーズ」を必要とすることになるのであって、そうした事実を抜きにして障害児への支援は考えることはできない。より具体的には、ろう児や盲児、盲ろう児に対するコミュニケーションや情報保障等における特別な配慮、内部障害児に対する医療的ケアにおける特別な配慮、肢体不自由児に対する補装具などの配慮、といったようなものは、個性・個人差という捉え方からのみ導き出すことにはやはり無理があり、障害のある児童に特有なニーズをきちんと満たすべきという原則を打ち立てることで初めて実施に移されるものであると考える。

そのため、仮に児童福祉法において障害児の支援を位置づけるにしても、障害児に特有なニーズをきちんと満たすための法整備を児童福祉法の内部または別法によって行う必要があり、そうした特有のニーズが満たされるという前提条件があって初めて、「一人ひとりの子どものあり様を、個性・個人差として捉える」というアプローチが有意義なものになるのではないかと考える。

【川﨑委員】

●障害児の支援を位置づけることには賛成だが、現行の児童福祉法は対象児童を18歳未満の知的、身体に限っているが、若年の精神障害者や発達障害者も含むとする。

【北野委員】

A.基本的には、障害児の支援は、児童福祉法に位置づけられるべきである。

R.インクルーシブ教育やインクルーシブ社会を基本とする障害者権利条約の理念に基づけば、障害児と非障害児を別建てにすることなく、同じ児童福祉法の対象とすることに異論はない。ただし、そのことは、例えば、保育所の入所要件である保育に欠けるという幼児の範囲を、障害児を含むすべての幼児として捉えたり、統合保育、統合教育等をを当然のものとしてみなすことが、前提として存在しなければならない。

【清原委員】

⇒ 児童福祉法の「障害」概念については、見直しが必要と考えます。

また、障がい児の支援の位置づけに関しては、障がいのあるなしに関係なく全ての子どもに児童福祉法に基づいた権利や支援を保障するという視点で、あえて特化する必要はないと考えます。

【佐藤委員】

基本的には障害児支援は児童福祉法に位置づけるべきである。それは、「障害は個性・個人差」ととらえる特殊的な障害観を理由にするものではない。まず、障害があるという事実を客観的に認識しつつも、子どもは子どもであり、「法の下の平等」として、普遍的な子どもの権利を行使する権利主体である。その普遍的な権利が承認されることによって、その権利の行使のために「特別のケアの権利」という特殊的権利の重要性が認識されることになる。例示すれば、障害のある子どもも子どもとして保育所に通う権利を有する。しかし、その権利の行使のためには、障害や発達に応じた保育条件が必要になるし、障害の様態によっては通園施設や児童デイサービスへの通園が適切なこともあろう。そこには、障害があっても子どもは毎日通園することができるという普遍的な子どもの権利と、そのためにこそ求められる特別のケアの権利の統合がある。

この点は2008年7月22日の「障害児支援の見直しに関する検討会 報告書」でも11回に及ぶ討議の結論として示されており、ノーマライゼイションの視点からできるだけ一般施策の中で行うということである。障害者自立支援法によって児童福祉法から切り離そうとしたが、結局はうまくゆかず上記報告書となったものである。

障害を個性・個人差とみる見方には、これをいたずらに特別視・深刻視せず、職場・地域・学校で受け入れるようにとの積極面もあるが、この見方を制度の基本に据えると支援ニーズを無視する「放置」につながる。

【新谷委員】

人権保障が、一般市民→女性→子ども→障害者と進んできた経緯がありますので、先ずは障害のある子どもも障害のない子どもも、子どもとしての人権保障・福祉が図られるべきで、児童福祉法の中に包括的な規定を置くべきと考えます。しかし、障害固有の問題については、個性・個人差に解消できない面があり、固有の支援・サービスも必要となりますので、障害者差別禁止法・障害者総合福祉法などで規定した方が施策を進める上で容易で、利用者にも分かりやすいのではないかと思います。

【堂本委員】

(結論)児童福祉法、さらに総合的な「子ども基本法」に位置付けるべき。

(意見)障がい児である前に「子ども」であるという考え方を明確にするべきだと考えるので、児童福祉法に位置づけることが望ましい。

さらに、児童福祉法を総合的な視点を盛り込んだ例えば「子ども基本法」に発展的に改編することが必要であると考える。

【中西委員】

児童福祉法における子ども施策の中で、基本的には障害児の支援を位置づけることに賛成である。現在の障害者自立支援法の児童という視点が弱いので、成人に対するサービスの形態に、児童を当てはめる不備を補う意味でも必要である。

児童相談所では担当者によって、障害への理解、対応、配慮に格差がある。症例も複雑で、個人差もある発達障害などの例もあるので、既存のシステムをもっと充実させていくべきである。提案のとおり、たとえ障害を有していてもその前に地域の子どもであることを優先するということは、ごく自然な考え方であると。障害への理解をもって児童福祉法の中でも対応していくべきである。

【長瀬委員】

児童福祉法の中で基本的に障害児支援を位置づけることに賛成する。ただし、障害者の権利条約第7条に規定されている障害児の意見表明権を児童福祉法に盛り込む方向での検討が必要である。

【久松委員】

現行の児童福祉法の枠組みの中で、障害をもつ子ども一人ひとりに対応したきめ細かい支援を位置づける必要がある。児童福祉法の見直しの検討が必要と考える。

障害を持つ子どもの個々の発達状況や家庭環境などその子どもの置かれている状況をきちんと把握したうえでその子の可能性を伸ばす支援が大切である。

【松井委員】

現在のところ、障害児の居宅生活支援は、原則として障害者自立支援法、施設支援は、児童福祉法に分かれて実施されているが、居宅生活支援も含め、児童福祉法で対応するとなると、障害者支援との一貫性から、実施機関も市町村に一元化することが求められよう。そのした体制が整備されるということであれば、障害児支援も児童福祉法における子ども施策のなかで、位置づけられてしかるべきであろう。

2.条約7条には、「障害のある児童が、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。」と障害のある児童の意見表明権とその権利を行使するための支援の必要性について規定している。

この意見表明権等を障害者基本法で明文化することについてどう考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

明文化する必要があると考える。

【大谷委員】

賛成である。

乳幼児や重度障害、意識障害など、意思表示の困難な子どもの場合、親が「子どもの最善の利益」を考慮して代諾するとされているが、親の意見は、必ずしも、本人の意見と同じではない。これまで、重い障害を理由に施設入所を余議なくされたり、教育も本人の希望通りに受けられないなど、障害のある子どもが障害のある子どもはこうあるべきだというパターナリズムによって、子ども自身の命も人生も、外側から勝手に決められた枠の中に押し込められてきたことをわたしたちは忘れてはならない。

子ども自身の権利擁護の視点での支援が必要と考える。

とくに医療を必要としている子どもの場合、親の代諾によって、治療の差し控えや延命中止など、命の長ささえ決められてしまう場合もある。障害を告知されたとき、情報収集の余裕もない中で、いろいろな決定を代諾しなければならない。医療者から提供される情報がすべてで、もし、障害や難病などに対する予断や偏見や差別意識の含まれた情報が提供されれば、親は、簡単に誘導されてしまう。また、福祉制度や医療制度をきちんと整備していかなければ、介護の大変さを「かわいそう」という理由にすりかえられ、治療の差し控えや中止をされてしまうことも実際起こっている。

乳幼児期については情報がニュートラルに提供される環境整備が必要である。「人工内耳」手術の年齢はすでに2才前後となっている。この場合、自己表明は困難と考えられる。現在ある様々な情報を、思い入れなく家族に提示出来るシステムが必要と思われる。

【大濱委員】

権利条約の前文には「(r)障害のある児童が、他の児童と平等にすべての人権及び基本的自由を完全に享有すべきであることを認め、また、このため、児童の権利に関する条約の締約国が負う義務を想起し、」とある。

障害者基本法を改正し、障害児に関する条約前文の「障害のある児童が、他の児童と平等にすべての人権及び基本的自由を完全に享有すべきであること」の部分と、条約7条の「障害のある児童が、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。」の規定を法制化し明記すべき。

●乳幼児や重度障害、意識障害など、意思表示の困難な子どもの場合、親が「子どもの最善の利益」を考慮して代諾するとされているが、親の意見は、必ずしも、本人の意見と同じではない。これまで、重い障害を理由に施設入所を余議なくされたり、教育も本人の希望通りに受けられないなど、障害のある子どもが障害のある子どもはこうあるべきだというパターナリズムによって、子ども自身の命も人生も、外側から勝手に決められた枠の中に押し込められてきたことをわたしたちは忘れてはならない。子ども自身の権利擁護の視点での支援が必要と考える。

とくに医療を必要としている子どもの場合、親の代諾によって、治療の差し控えや延命中止など、命の長ささえ決められてしまう場合もある。障害を告知されたとき、親はパニックになっており、情報収集の余裕もない中で、いろいろな決定を代諾しなければならない。医療者から提供される情報がすべてで、もし、障害や難病などに対する予断や偏見や差別意識の含まれた情報が提供されれば、親は、簡単に誘導されてしまう。また、福祉制度や医療制度をきちんと整備していかなければ、介護の大変さを「かわいそう」という理由にすりかえられ、治療の差し控えや中止をされてしまうことも実際起こっていることを胆に銘じておいてほしい。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

わかりやすく、障がいをもつ親が納得できるようにして欲しい。

自傷もパニックも「特有の自己表現である」と理解されていれば明文化も受け入れる。

実際に、自傷やパニック障害の障害児たちが施設から出て地域(市街地)で少人数の仲間暮らしだすことで、自傷やパニックが自然に穏やかとなり治っていく事例も聞いている。自己表現や意見表明が上手にできない障害児(者)は、閉鎖的な施設で、ストレスを負わされることで自傷、パニックもさらに強度となる。地域で介護していていても、新規の介護者に代わったとき明らかな変化がもたらされるとの報告もある。

また、意思が表現できない意識障害等の意思表示の困難な障害の場合、「必要な医療すら打ち切られる」という問題があるが、意見表明できない障害であるために、必要な医療がなされないことのないようにすべき。また、医療的ケアの必要な人も必要な支援があるべきで明らかな人権侵害、差別事象である。

【尾上委員】

障害児の意見表明権、そのために支援を提供される権利等については、障害者基本法において明文化されるべきである。

本来ならば、子ども総体に対して権利保障を強化した法制定・改正があって然るべきであり、障害者基本法と相互補完的に必要な権利規定がなされるべきと考えるが、現状において障害者の権利規定がなされる障害者基本法においては、障害児の権利として、国連の子どもの権利条約にも規定された意見表明権等を明文化しておく必要があると考える。

【門川委員・福島オブザーバー】

児童が成人に比べて本来的に弱い立場にある存在であるだけでなく、障害のある児童は、その障害を理由として(より多くの介護・介助が必要であったりするなどにより)弱い立場に置かれる可能性が高いことを勘案すれば、障害のある児童が家族や関係者の利害に左右されることなく、自らの意見を表明することが保障されることは、非常に重要なことであると考える。また、そのような権利は当然に成人の障害者にもあるが、障害のある児童は「障害」と「児童」という二重の「弱さ」を抱えていることから、障害のある児童の意見表明権等については、障害者基本法の中で明文化し、その権利を行使するための支援が十分に提供されるための根拠とするべきであると考える。

【川﨑委員】

●意見表明権は権利として規定されるべきで、障害者基本法で明文化されるのがよい。

【北野委員】

A.支援付き意見表明権は、障害者基本法に明文化されるべきである。

R.意見表明権は自己決定権とは異なる。児童はその親権者等によって社会的にその成長・成熟を支援される存在ではある。しかし、そのことは、親権者等が、本人の意思や希望を無視してよいということでは決してない。その意思・感情・意見を表明する権利は乳幼児であろうとも、それを侵してはならない。

それが、実現するか否かにかかわらず、その意見が必要な支援を伴ないながらしっかりと聞き届けられ、それに対して、慎重かつ十分な理解と配慮と支援がなされることで、障害児を含むすべての児童がエンパワーメントされる。自己表明権を蹂躙された子供たちは、その障害の有無にかかわらず、「他者と共に生きる力を高めること(=エンパワーメント)」ができずに、他者や社会に仕切られ、自分自身をコントロールされてしまっているという反エンパワーメント状態に陥る。

【清原委員】

⇒ 意見表明権等は尊重されるべきことですので、明文化する方向で検討されることが望ましいと考えます。

【佐藤委員】

障害者基本法の改正では、障害児支援についての条項を独立して設け、そこに意見表明権と支援を受ける権利を明記すべきである。

【新谷委員】

一般的に子どもの意見表明権を認めることは、障害の有無にかかわらず必要と思います。児童福祉法を子どもの権利条約を受けた基本法と位置付けるならば、そこに子どもの意見表明権を規定すべきと思います。また、具体的にどのような年齢の子どもにどのような意見表明権を認めるのか、またその時の両親などの意見をどのように斟酌するのかを詰めて考えないと、抽象論に終始すると考えます。

障害を持った子どもへの支援については、障害者基本法、障害者総合福祉法などでの規定が有効と考えます。

【関口委員】

障害児の意見表明に関わっては、大きく親の判断に左右されやすく、児童個人の自己表明となりにくい点がある。支援に関わる者は親の判断に著しく偏らないことが望ましい。

それらを踏まえた上で自己の表明と権利行使は障害者基本法に明文化すべきである。

【堂本委員】

(意見)障害者基本法ではすべての障がいがある人の意見表明権を規定すべきであり、あわせて前項で述べた「子ども基本法」でも障がいがある子どもの意見表明権を位置づけることが望ましい。

【中西委員】

保護者の考え方、社会の対応次第で、障害児の生活環境が大きく損なわれる危険性がある。それを避けるためにも、この部分の法制度上の明文化は、必要である。

【長瀬委員】

障害児の意見表明権を障害者基本法で明文化することに賛成である。成長につれて、医療や教育をはじめ子ども自身の意見が重要になるためである。

【久松委員】

障害者基本法で「意見表明権」を明記することは必要と考える。障害をもつ子どもの自己決定、自己選択ができるようその支援が保障されなければならない。

【松井委員】

障害のある子どもの意見表明権などを理念のレベルでなく、実効性のあるものにするには、障害者基本法だけでなく、児童福祉法でも明文化されてよい。

3.条約26条1項は、「(a)可能な限り初期の段階において開始し、並びに個人のニーズ及び長所に関する学際的な評価を基礎とするものであること。」と早期からのハビリテーション及びリハビリテーションを規定している。障害のある子どものハビリテーション及びリハビリテーションは、児童福祉法、障害者自立支援法、発達障害者支援法等、複数の法律で規定されているが、障害のある子どもの生活構造に沿った再編成とシンプル化についてどう考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

児童福祉法を中心として、幼児期から青年期いたるライフステージに応じた一貫した支援に関する制度を規定することが望ましいと考える。ただし、ショートステイ、ホームヘルプ、ガイドヘルプ、相談支援等の成人期の福祉サービスと重なる制度については、今後の総合福祉法(仮称)で規定することが考えられる。

【大谷委員】

ハビリテーション、リハビリテーションは、基本的に生活の場からかけ離れた訓練所へ隔離しない理念と方法を追求すべきであり、また、当事者のニーズを基本とすべきである。

具体的に、たとえば保育園・幼稚園の幼児、学校の児童に対しては、極力、それらの生活の場でスタッフが対応するよう、各分野の協力システムが保障されるよう、法的整備をする必要がある。

また乳幼児期の支援の必要な子どもたちへの支援は、「障がい」認定から支援というシステムからの脱却を図ってもらいたい。そのためには、子どもという観点からの制度が必要と思われる。現在の「児童福祉法」へという観点はこの点からの方向性であるが、「児童福祉法」自体、様々な「障がい」が取り上げられているが、「発達障がい」などが包摂されていないために、「発達障害者支援法」が出来たと考えられる。これもまた、「障がい」認定から支援という従来の支援制度から脱却していないためと思われる。乳幼児期にはこれらを包摂したシンプルな支援の制度が求められていると思う。

【大濱委員】

条約に沿って法改正し、再構成すべきである。

早期発見は早期保障のためであるべき。保障とは(費用、教育、親への援助、親子への人的支援等)

【尾上委員】

障害児が人間としての権利が保障される主体として位置づけられたうえで、そのために必要な支援の(あくまで)一構成部分として、ハビリテーション及びリハビリテーションを位置づけるのならば、障害児の生活構造に沿った再編制とシンプル化は必要であると考える。

ただ、ハビリテーション及びリハビリテーションが障害児の生活の中心に据えられたり、それを受けることが地域からの隔絶や隔離につながるようなことがあれば、それは障害者の権利条約においてなされてはならないとされる「特定の生活様式の強制」であり、障害児の人権を確保することにはなり得ない。障害者の権利条約の内容に即したものとするならば、そういう視点に立った法的な再編制とシンプル化を行うべきである。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害者のハビリテーション及びリハビリテーションについては、成人においても児童においても、可能な限り早期に行うことが効果的であり、とりわけ、障害のある児童については、年齢及び障害に応じた、きめ細かい支援を行う必要性が高い。そうしたきめ細かい支援を行うために、法制度が複雑になることは、仕方がない側面もあると言える。

しかし、法制度が複雑になり、関係者が分断されることで、障害のある児童の生活構造に沿った支援が行われなくなるのでは、本末転倒である。

重要なことは、どのように、地域の実情に合った障害児のハビリテーション及びリハビリテーションの体制を整え、障害のある児童の生活構造に沿った支援をどのように行うべきか、ということを十分に検討することであり、そのうえで、具体的にどのような制度設計を行うことが望ましいのかを明らかにすることである。

例えば、障害児のハビリテーション及びリハビリテーションに関する制度としては、法律としては、保健関係(母子保健法、学校保健安全法、地域保健法、予防接種法)、福祉関係(社会福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、障害者自立支援法、発達障害者支援法)、といったものがあるほか、予算事業として様々な施策がばらばらに行われている。こうした一連の法律や事業の中から、障害児のハビリテーション及びリハビリテーションに関する制度だけを単に抜き出して別の法律としても、今度は元の法律との整合性をとることが難しくなるという状況になりかねない。

したがって、障害児の生活構造に沿った形での支援を実施するために、法制度の再編成とシンプル化を推進することそのものについて、特段否定する理由はないものの、制度を実施する現場において、障害児の生活構造に沿った長期的な観点に立った支援を行うために、どのような制度運用を行うか(支援の実施主体間の調整を含めて)ということについても十分に検討する必要があると考える。

【北野委員】

A.まず、それぞれの定義と内容を明確化すべきである。

R.そもそも障害者権利条約の政府公定訳の26条につけられたハビリテーションの説明(適応のための技能の習得)がよくない。リハビリテーションが、失われた能力・参加の開発であるのに対して、ハビリテーションは新しい能力・参加の開発を意味するだけであって、適応のための技能の習得に限定されたものではない。

その意味で、児童の場合、多くはハビリテーションだと言えるが、わざわざそれをハビリテーションなどと呼ぶ必要があるのか。基本的には、新しい能力や活動・参加の獲得・形成は教育(的支援)で十分ではないのか?

【清原委員】

⇒ 早期発見・早期療育を行うことが、より具体的な子どもと保護者の支援に繋がるようにすることが望ましいのであり、現行関連法では分散的な表記になっているので、ある程度の体系化・シンプル化が必要だと考えられます。

【佐藤委員】

複数の法律と書かれているが、児童福祉法と障害者自立支援法は福祉サービスを具体的に規定したものであり、発達障害者支援法はそうではない。

もともとは、児童福祉法に医療や療育が規定されており、ひとつの法律の中で実行されていた。自立支援法ができ混乱を招いた。したがって、児童福祉法に一本化することが望ましい。

児童の補装具と育成医療を児童福祉法に再規定することを検討すべきである。

【新谷委員】

1項での回答と同じですが、子どもとしてとらえる面と障害児としてとらえる面がありますので、いくつかの法律で対応することはやむを得ないのでは、と考えます。

【関口委員】

シンプル化すべきである。

【堂本委員】

(結論)複数の法律で規定するより「子ども基本法」に一元化することが必要である。

(意見)障がいのある子どもは、発達過程において、「療育」「教育」「福祉」の合わさった支援が継続的に必要である。子どもの発達は、時間経過が早く、変化も大きいので養育者、教育者、支援者の整備体制が追い付かない場合も多々ある。その上、法の縦割りや狭間が生まれやすく、結果的に家庭(両親等)に大きな負担を生じさせている。子どもの成長過程に沿って、支援体制が整備されることが望ましい。

子どもの生活環境は「子どものみ」の場合は非常に少なく、家族(家庭)の様々な課題も同時に抱えた一家を支援する場合の方が多い。そのため、直接的には関わらない施策(高齢や就労、経済等)も現場では絡み合ってくる。そのような全体の施策の中に児童福祉もあり、協働、協力体制は必要であると考える。現生活構造に合ったものとするべき。連携・協働を整理しわかりやすい規定となることが必要である。

【中西委員】

「可能な限り初期の段階からの開始」という考え方から見ても、児童福祉法の枠の中で規定していくことが、保護者の心理的側面から考えても望ましいと思われる。

自立支援法は、医療と分けた福祉分野の制度改革であった。訪問看護など介護保険にあるものは含まれなかったため、育成医療の負担金が増加し家計に大きな影響を与えている。都内においてすら医療ケアの必要な子どもが入院を要するときに、専門医療機関の在宅管理を受けていても、かなり待たなければ入院ができない状況である。その子どもが居住する市の小児病院にある呼吸器は3台で、1台は長期入院者要、残りの2台を順番で使用している状況であるため、具合が悪くても、対応してもらえないという事態も生じている。

成功した事例としては、6年間入院生活を送った男子児童が、メールを介して医者とコミュニケーションをとっていて、母親は不安を感じたら、メールで医師から指示を受けられるようになっていて、かつ2~3週間に一度彼が点滴をする際には、1泊の入院をさせてもらい、母親が休養をとれている。つまり、彼のように普段の生活での支援がなければ、地域で生活することは困難である。

【久松委員】

障害のある子どものハビリテーション及びリハビリテーションは、現行の児童福祉法、障害者自立支援法、発達障害者支援法等の障害を持つ子どもに関する規定を整理し、児童福祉法の枠組みの中で対応すべきと考える。

早期発見・早期支援では、病院から療育・教育へのルートを簡潔にする必要があるが、障害をもつ子どもがそのルートから漏れることのないようしっかりした支援体制を構築する必要がある。

ただし、聴覚障害をもつ子どもの場合において留意しなければならないのは、その子どもや保護者に対して「聴こえること」が絶対的価値観であることを押し付けないことである。リハビリテーションの現場は、少しでも聞こえるように努力することと、手話より口話(口の形を読み取り発話の内容を知る方法)に偏りがちであり、聴こえるようにならない、口話がうまくならないことによってその子どものアイデンテイテイの喪失やその子どもの保護者の罪悪感が生み出されやすいことに留意する必要がある。

【松井委員】

障害者自立支援法に代わるものとして法制化が考えられている障害者総合福祉法の内容が明らかではないが、あらゆる障害のある子どもから障害者に対して一貫したサービスを提供するには、現在のように、居宅生活支援は市町村、施設支援は都道府県に分かれて実施されているサービスを、市町村に一元的に提供できるよう、再編整備することが求められる。それは、サービスを利用者本位で利用しやすいものにするためにも、必要なことである。

出生直後から乳幼児期の相談支援のあり方

1.障害児と保護者へのケア・関わりは、出生直後に障害が判明した場合には、その時から適切な関わり方でなされる必要がある。

従来の「早期発見・早期療育」という方針は、医療・療育に偏向しており、障害のない子どもと分離し選別することにつながるという問題が指摘されているが、この点についてどのように考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

先ず、「早期発見・早期療育」というより、現在、「早期発見・早期対応」という文言が多く使われていると考えるが。

「早期発見・早期療育」という場合であっても、「医療・療育に偏向しており、障害のない子どもと分離し選別することにつながる」との指摘は理解できない。本来、早期発見・早期療育は、ひとり一人の子どもの障害に伴うニーズを明らかにし、適切な発達支援を行うものであり、それは同時に家族支援・子育て支援でもあることは言うまでもない。これらの支援をできる限り早期に行うことが、障害児並びにその家族にとって重要とする考え方は一般的であると考える。

【大谷委員】

その通りである。

障害のある子と保護者へのケア・関わりは、出生直後に障害が判明された場合には、その時から適切な関わり方でなされるべきである。ただし、従来の「早期発見・早期療育」という方針は、医療・療育に偏向している。

医療・療育に偏向した考え方を植え付けられ、その結果、通常の保育集団を避け、療育・通所施設に通うケースがほとんどである。療育を受けることと、通常の保育集団(幼稚園、保育園)を別立てにする必要はない。必要なら、保育集団の中で療育訓練もあり得る。そのようなシステムを法的に設置し、工夫することである。望まれる療育とは、生活場面に密着した、そして、当事者の心やニーズを尊重するものであるべきである。

出生直後は、医療者との関わりが強く、障害が判明したときの保護者の精神面のケアは、医療者の対応にかかっているといっても過言ではない。障害があっても、ひとりの人間、ひとりの子どもとして保護者が受け入れ、家族の一員としてともに生きていけるように支援すべきである。また、保育園・幼稚園等で同年代の子どもとともに生活する中で、社会性を育てていくべきである。(これによって、子どもだけでなく、保護者の地域からの孤立も防ぐことになる。)

また、早期に発見された場合、家族への寄り添いは必須であり、家族に寄り添う支援のあり方が求められている。それとともに、子どもの状態に合わせた適切な対応(専門性)もまた求められている。ただ、子どもの生活から離れた専門性が一人歩きし、分離・選別に手を貸したりしている場合がある。これもまた、学校制度が原則分離となっていることに大きく規制されていることによると思われる。

【大濱委員】

障害のない子どもと分離し選別することを禁止し、サービスを充実し、障害のない子供と障害のある子どもが完全に統合されるしくみが担保された上で、出生直後から乳幼児期の相談支援を充実すべきである。

そのさい、相談支援の方針は、従来の「早期発見・早期療育」という方針から根本的に転換し、新たに、障害児の親に対して、子供(障害児)が将来、(公的サービスを使いながら)自立した生活を送ることを前提とした子育てをできるように研修等を行い、さまざまな支援を行うべきである。

早期に支援が必要で早期に保障(費用、教育、親への援助、親子への人的支援等)されるべき。

●出生直後は、医療者との関わりが強く、障害が判明したときの保護者の精神面のケアは、医療者の対応にかかっているといっても過言ではない。障害があっても、ひとりの人間、ひとりの子どもとして保護者が受け入れ、家族の一員としてともに生きていけるように支援すべきである。また、保育園・幼稚園等で同年代の子どもとともに生活する中で、社会性を育てていくべきである。(これによって、子どもだけでなく、保護者の地域からの孤立も防ぐことになる。)

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 障がいのタイプにもよると思います。障がいのない子とのコミュニケーションによって、成長するタイプと戸惑いを招じるタイプがあると思うので、ケースバイケースを考えて頂きたい。
  • 実際に障がい児が産まれてしまったら、どんな人でもその保護者への心のケアは難しいと思います。綺麗事しか言いませんので適切な関わりは無理だと思いますが、その中でも後にあの時にあんなことを言われたなと思えるケアがベストだと思います。でも現実問題、障がい児を持った親にしかわからないことだらけだと思います。早期発見でも、早期療育でもどうしようもない場合もあり、また、どうしても障がい児と健常児の溝はある訳で、その溝は成長して行く過程で埋まることはありませんので、障がい児自体をもう少し理解して頂きたい。
  • 早期発見・早期療育は医療、療育に偏向しているかもしれないが、障がい児にとっては早期発見・早期療育が大事なことなので、そこを問題視するよりも健常者とどのように関わっていくか?そのような場所や機会を作る工夫が必要だと思います。
  • 早期療育が必要である以上、障がいのない子どもとは早いうちから接する必要がある。その為には受け入れるキャパシティーを広げて欲しいし、子どもだけではなく、障がいのない子どもたちの親たちとも早期に接することは大切であると思う。
  • 障がいのある、なしに関わらず、子どもはこどもを見て育っていくことがその子どもの能力を引き出す大きな役割を果たしているので、障がいの有無で分離することは、マイナスにしかならないと思います。

(親からの意見は以上)

インクルージョン教育を前提としつつも、きめ細やかな個別対応や特別な対応をする必要がある。

【尾上委員】

これまで「早期発見・早期療育(or早期治療)」は、障害児を地域社会の枠組みから遠ざけ、人生初期の重要な時期を地域との関わり、とりわけ、同年齢の子どもたちとともに学び育つ環境から隔離する状況をもたらしてきた。結果、障害児は地域社会と本来交わるべき人間関係の中で培われるはずだった生活者としての様々な力が奪われることにもなった。そして、その後の入所施設での生活等、生涯を通じての「特定の生活様式」の入り口にもなった。

また、障害児本人や保護者に、そういう人間の生活の側面よりも「早期発見・早期療育」が何よりも必要なのだと認識させる価値観を大きくさせる社会の状況や、必要な支援が保護者に適切に提供されない施策や社会資源の開発がなされてこなかったことも確かである。

少なくとも必要とされているのは、障害児や保護者が、地域で当たり前に暮らしていくための「早期支援」であり、「早期発見・早期療育」として医療や療育の対象に障害児や保護者を追いやることではない。

いつでも、どの地域でも、一人の地域社会の一員として障害児が育っていける支援と、将来における地域での自立をめざして障害児を育てていくために保護者が安心できる支援が得られる体制こそが構築されなければならない。

【門川委員・福島オブザーバー】

本来、「早期発見・早期療育」という考え方は、障害のある児童が家庭内に「閉じ込められ」てしまうことが多いという問題意識から、地域社会や地域の医療保健福祉が積極的に子どものいる家庭に働きかけようとするものであったはずである。ところが、ある程度制度化が進み、専門家主導の「早期発見・早期療育」が「機械的」に行われることによって、障害のある子どもの将来にわたる「生活」全体をみずに、子どもの「障害」だけをみるような事態が発生しているのではないかと考える。

そのため、障害者の権利条約でも明記されている通り、障害のある児童が適切な医療を受ける権利を守り、可能な限り早期からハビリテーション・リハビリテーションを行うためには、「早期発見・早期療育」というアプローチに一定程度の有効性があることを前提としたうえで、医療・療育の分野にとどまらず、子育てを世帯の生活面での支援も含めた包括的な支援を行うことの重要性を強調するべきであると考える。

なお、「早期発見・早期療育」により仮に「選別」されたとしても、本来なら、選別後の個別支援を前提として再び「包摂」されるのが筋であり、「選別」がそのまま「分離」につながることのないよう、十分に配慮すべきであると考える。

【北野委員】

A.現状の早期発見・早期療育の医療モデル的偏向を改革すべし。

R.一般的に先天的な身体的障害や知的障害 そして後天的な病気・事故が引き起こす機能障害等は、その家族・親族か医療機関のどちらか、あるいは乳幼児発達健診の担当者が発見する確立が高い。それが病気に伴って生じるものであれば、まずは、医療的支援が必要である。この急性期医療(Acute Care)並びにそれと並行して行われる医療リハビリテーションは、質の高いインテンシブな対応が求められる。

ところが、この急性期医療と、それから一生涯続くであろう長期ケア(Long Term Care)の違いが、わが国では、不明確にすぎる。

長期ケアとは、まさに本人の地域自立生活支援であり、そこでは、本人とその家族が、さまざまな支援を活かして、同じ性別・年齢の他の児童と同様の選択肢の中で、それぞれの固有の人生を、そのドラマの主人公として生きてゆくことになる。

この両者の区分が不明確で、だらだらとした医療といつまでも続く病児・病人扱いは、本人のみならず支援する側のエンパワーメントをも阻害する。そのためにも、障害児とその家族のエンパワーメントを支援する家族会ピアサポーターや当事者会ピアサポーターといったSHG(支え合う当事者の会)が、各種専門職に伍して、障害児の支援に参加・参画してゆく体制が望まれる。本人とその家族の思いを真摯に受けとめる支援システムこそが、福祉・教育・医療・SHG等の支援者間の対等で効果的な支援を担保できよう。

さらに、各種専門職による誘導は、本人とその家族を混乱させ、障害にのみ焦点を当てた各種療法は、結局保護者と本人と他の家族構成員を疲弊させ、本人の患者やクライエントとしての役割ばかりが肥大して、子どもとしての役割や兄弟としての役割、さらに児童としての役割や友達としての役割や近所の子供としての役割等を奪ってしまう。そのことが、障害のない子供との分離につながっていることは言うまでもない。

【清原委員】

⇒ 三鷹市の取り組みでは「障がいを発見する」という視点で早期発見を捉えてはおらず、専門療法士や医師によるアセスメントを実施することにより、その子の特性を理解することができ、適切な療育や関わり方に繋がる子どもの発達支援に目標を定めています。きめ細やかな発達支援を提供することは保護者の子育て支援の一環でもあります。

障がいのあるなしには関係なく、保育園や幼稚園、母子保健を担当する総合保健センターなどの関係機関と連携しながら地域全体での子育て支援を推進しており、子どもの特性を理解することが、障がいのない子どもとの分離や選別につながることが無いよう取り組んでいるところです。

【佐藤委員】

障害の早期発見を担うべき制度は、乳幼児健康診査である。その目的は、母子保健法「乳児及び幼児は、心身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されなければならない。」によるものであるべきである。その目的による乳幼児健診は、子どもの心身の健康の保持のために、今日的には虐待の兆候の把握も含めて重要かつ多様な課題を内包している。その課題の一つに障害の早期発見から対応への相談支援、療育、医療リハビリテーションを系統的に保障するシステムの構築がある。

「医療、療育に偏重」しているのではなく、1歳6ヵ月児健診、3歳児健診の一般財源化などを原因とする市町村の実施体制の弱体化などを問題とすべきである。言うまでもなく、このような乳幼児健診では、前述の目的のための広範な内容(たとえば子どもを取り巻く環境の評価と改善の取り組みなども)が遺漏なく充実していかなければならない。

早期療育の充実は保護者の強い要望であり、障害が指摘されたあと適切なリハビリテーションや療育へとつながらず、その機会を逸してしまうことが問題であり、保護者の育児不安を増幅させる原因となっていることに注意を向けるべきである。

障害者権利条約第7条では、障害および年齢に適した支援を強調し、第25条では、早期発見および早期治療が強調され、第26条では、可能な限り早期のハビリテーションおよびリハビリテーションが強調されている。2008年の「障害児支援の見直しに関する検討会 報告書」でも「『気になる』という段階からの支援」という項目が設けられ、敷居の低い相談の場や専門的支援の場をどう整備してゆくかが課題とされている。

したがって「早期発見・早期療育」の充実が求められているのであり、その「やりすぎ」が問題なのでは全くない。

【新谷委員】

何を指して「障害」と判定するのか、また「障害」と判定したらどのような取り扱いを受け、どのような仕組みに載るのか、あまり議論がされていないような気がします。

聴覚障害の場合でも、新生児スクリーニングで聞こえに問題があると指摘されても、その程度はさまざまで、聞こえの程度が固定的なのか将来変動する可能性があるのか、医学的にも簡単には判定できていないようです。人工内耳の早期装着などの問題について、親が判断しなければならない場合は、様々なメリット・デメリットを医療機関等が提示する必要があり、医療機関等が1つの方法を押し付けることで早期発見をすすめるのであれば、子ども・親の選択権を奪うという意味で問題となると思います。

また、医療・療育に偏向しては問題ですが、治療の可能性があれば、関係者の治療努力は必要で、そのことと「障害のある子ども、ない子どもの分離・選別」は別問題と考えます。

【堂本委員】

(意見)障がいのある子どもと障がいのない子どもが分離し選別することにつながることがあってはならない。ただし、障がいの特性によっては独自の教育の場が必要な場合がある。

出生直後に障がいが判明した場合には、その出生後から医療、療育だけでなく、子ども支援、子育て支援、教育等の総合的な支援を受ける必要がある。

【中西委員】

障害の受容がすすまない場合は、従来の「早期発見・早期療育」では順調なケアや関わりが困難になる可能性が高い。「早期発見・早期療育」というよりも、子育て支援の枠の中で、専門家の助言を受けながら個々の子どもに対する関わりをケアしていくという考え方が、緩やかな障害受容という観念から考えても、望ましいと思われる。

【長瀬委員】

医療が早期発見・早期療育という名のもとで、過剰にその範囲を拡大し、障害児を単なる治療の対象として扱ってしまうことによる弊害は非常に大きい。新生児聴覚スクリーニングもその一例である。

【久松委員】

現行の「早期発見・早期療育」は医療・療育の考えに偏向しているので、聴覚障害をもつ子どもの場合は、特に問題があると考える。

聴覚機能に障害を持つ子どもの親(保護者)自身が、自らの子の障害をそのまま受け入れることができないことから、人工内耳で聴こえるようになる、または口話が上手になる等、聴こえる子どもに近づいていく努力をすることになる。その結果、保護者が聴こえる子どもと同じように育てたいと考えるようになり、ろう学校ではなく地域の小学校や中学校を選択する例が多くなってくる。医療現場は医療的措置(聴覚機能の回復)に重点を置くので、子どもやその保護者の心のケアにまで支援する体制が構築できないのが現状である。地域の小学校や中学校での集団生活に参加できなくなりお客様扱いされる状況である。そういう状況は一時も早く改善される必要がある。新生児スクリーニングにて手話によるコミュニケーションが保障された環境にて新生児の言語発達を支援できる体制が好ましいと考える。

なお、教育の論点でも述べているが、地域の小学校や中学校のことを「普通学校」「一般学校」と呼ぶことは、障害のある子どもやその保護者に劣等感、罪悪感を醸し出しやすいので直ちに止めるべきである。

【松井委員】

重症心身障害児など、生命維持に手厚い医療的ケアが必要な場合などを除き、障害特有のニーズに即した適切な支援は受けながらも、基本的には近隣の障害のない子どもと共通の社会資源―たとえば、保育所や幼稚園など―が利用できるようにすることが必要である。

2.従来の「早期発見・早期療育」という方針のもとでは、障害を少しでも軽くする努力をしていくことが保護者の責任とされている現況において、保護者の罪悪感を強め、責任感をあおる結果につながる懸念があるとの指摘もなされているが、こうした指摘も念頭に置きつつ障害の「早期発見・早期支援」のあり方について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

既述したような本来求められる「早期発見・早期療育」のあり方とかい離した現状として、「障害を少しでも軽くする努力をしていくことが保護者の責任とされている現況」や「保護者の罪悪感を強め、責任感をあおる結果につながる」ことついては理解できるし、存在していると考える。

例えば、保育所等で保育士の加配は診断書があれば付くが、親がその診断書は取りにいき、加配を申請しなければならないという実状がある。心理的等様々な困難を抱えている親へさらなる負担や責任を課しているといえる。対応している機関が障害を発見したら、まず親に対する心理的な面を含めたサポート体制をつくることが大切であり、親の負担軽減のために、加配等に係る手続きや仕組みの見直しも必要である。

また、子どもの障害を早期に発見し、医者の診断書を取ったにもかかわらず、家族支援や子育て支援がないなかで、親が関係機関にその子どもの対応を依頼しなかった場合、将来困難が生じても、親が早期に対応しなかったことを責められ、「保護者の罪悪感を強め、責任感をあおる結果になる」というように、親に責任を押し付けている実態もある。

したがって、本来あるべき「早期発見・早期対応」の意義を踏まえ、特に、知的障害・発達障害においては、親にとって、わが子の障害の認知や受容が遅れれば遅れるほど、家庭の機能不全や崩壊を招くとともに、その子どもの発達を阻害するだけでなく、二次障害につながる恐れがあることも確かである。そこで、まず、親の心理的サポートを含めた家族支援・子育て支援が「早期発見・早期対応」であり、それを行うことにより、早期療育にもつながっていくと考える。

【大谷委員】

罪悪感は、保護者を含めた社会、親族や家族の「障がい」への差別感という環境によって規定されている。「早期発見・早期療育」が「適切」に行われることは、子ども・家族にとって大きな支えとなる。特に「相談支援」の場が重要である。

必要なことは、先ず生涯にわたって障害とつき合って生きる基本的な人生観、人間についての価値観を、保護者を含む家族に伝えることである、そのようなサポートは、出生直後に障害が判明した時から適切な形で配慮された対応の仕方で進められていかなければならない。つまり、「早期発見・早期サポート」である。

ある病院では、このような視点を持つ医師が、すでに自信を持って生活をしている障害のある子の保護者を先輩として紹介し、自信を持って生きる生き方、人生観、価値観、障害観を、生活実践に根ざした証言として伝えるという実践を行っている。そして、自信を持って生きる、基本的な生きる姿勢の話し合いのあとに、具体的な生活の一部として医療・療育について、社会保障制度の現状とあるべき姿などと共に、具体的なノウハウとして伝えることが肝心である。

逆に医療関係者による親に対する告知や説明の際、重度障害者(児)に対する差別や偏見によって、治療の打ち切りや差し控えをする方向に誘導されることがある。早期療育の前に生存権の保障として、医療関係者による障害や病気に関する情報提供や告知における「差別」「偏見」発言を取り締まるための対策が必要である。

障害のある子と共に生きる人生のサポートをするチーム作りが必要である。障害のある子と共に生きている家族が、そして障害者自身が証言者として自主的に登録されておくこと。そして信頼のおける専門家(保育士、教師、心理相談員、ソーシャルワーカー、医師など)も登録される。このような人材の全国的なネットワークを形成することが必要である。

【大濱委員】

従来の「早期発見・早期療育」という方針は根本的に転換し、新たに、障害児の親に対して、子供(障害児)が将来、(公的サービスを使いながら)自立した生活を送ることを前提とした子育てをできるように研修等を行うべきである。

また、「早期発見・早期支援」の「支援」とはあくまでも保障(費用、教育、親への援助、親子への人的支援等)であるべき。

なお、胎児診断については、社会で受け入れる体制づくりのためとか、早期に支援のシステム作りのためなら、容認できます。が、現状は、遺伝子解明の医療モデルや、実際に生まない選択に利用されているので反対です。

●障害を個人の責任とする従来のとらえ方では、保護者は自分の責任と思わされてしまう。社会とのかかわりで、障害をとらえていくという考え方を医療者や保健師、福祉関係者など相談支援する担当者がまず持たなければならない。早期支援は、障害を改善していくための支援ではなく、障害があっても、家族とともに、また、社会全体で子育てをしていくという視点にたった制度を考えていくべきである。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 早期には拘らないが、療育を受けていない子は、学童期になり、差が出るような気がします。
  • 小学校に入学するまでにある程度の療育を受けてきた子は、小学校に入ってから、同じ障がいの子に比べると落ち着いていたり、良くできているように思います。ただ、保護者の方が、自分の子と別の子の障がいを比べて対抗意識を燃やしたり、険悪になったりするのもあるので、メンタル面のケアも必要かなと思います。
  • 障がい児の長い人生を考えると、早期発見・早期療育が大切なので、通園施設等で親のための相談窓口やサポートセンターを作って、親のサポートもしながら個々に合わせた確実な支援、療育が受けられるようになると良いと思います。
  • 障がいのある子どもたちを社会全体で受け入れる体勢を望む。
  • 知的障がいや自閉症のような障がいは、少しでも大きくならないとわからないので親だけでなく、そういう専門の方の意見を身近で聞ける場所は必要です。親だけでは判断が難しく発見が遅くなることが今も起こっていると思います。

【尾上委員】

「早期発見・早期支援」のあり方として求められるのは、障害児本人や保護者を地域から孤立させたり、地域社会から隔絶させたりしないことであり、そのなかでこそ、障害の軽減やそれに対する保護者の意識は変わっていけると考える。

保護者が「障害」や「子ども」を受容していくためにも、成長していく子ども・地域で暮らしていく子どもをイメージできるサポートが有効であることから、ピア・サポーター(ピア・カウンセラー)による相談支援やセルフ・ヘルプ・グループとしての機能を活かした支援が必要である。そのため、相談支援のできる障害児の保護者のピア・サポーター(ピア・カウンセラー)の養成と、ピア・サポーター(ピア・カウンセラー)を交えたセルフ・ヘルプ・グループの活動に対する施策が必要となる。

その際、ピア・サポーターの養成においては、「早期発見・早期療育」に偏りがちな医療関係者や療育関係者が中心となって指導するのではなく、地域で自立生活をしながら相談活動に従事している障害者や、障害者の地域での自立生活を積極的に応援してきた保護者、地域の学校で障害のある子どもと障害のない子どもとをともに学び育つ保育や教育を積極的に担っている保育士や教員等が養成の中心を担っていくものとすべきである。

こうした地域を基本にした支援体制は、条約第19条「自立した生活と地域社会へのインクルージョン」を実現していく上でも、きわめて重要である。

【門川委員・福島オブザーバー】

これまで、「早期発見・早期療育」を推進する過程において、「すべて早期発見できる」、「早期に療育すれば改善する」ということをあまりにも強く前提として強調しすぎたため、実際には早期発見・早期療育が必ずしも機能障害の改善には有効に働かない場合であっても、保護者は「もっと早く診せてあげれば良かった」という罪悪感をもつことになり、「もっと改善させないと」という責任感をもあおる結果につながってきたことは否定できない。

したがって、本来「早期発見・早期療育」が含意していた、保護者と支援者との間の人間的なつながりを重視し、「早期発見・早期療育」の目指すべき目標を「機能障害の改善」とするのではなく、「保護者や児童(特に障害のある児童)を社会の中で孤立させないこと」を第一義的な目標とすることを明確化すべきである。そのうえで、適切な医療的な介入が本人にとっても家族にとってもメリットになる場合に限って、「機能障害の改善」を目指す、という方向性を明確にする必要があると考える。

なお、そうした観点から、「早期発見・早期療育」の主たる担い手である保健師等の専門家が、児童の機能障害の改善にのみ着目し社会的環境を考慮しないことのないよう、十分な研修体制も同時に確立する必要があると考える。

【北野委員】

A.障害の「早期発見・早期支援」を、福祉・教育・医療・SHG等の支援者間の対等で効果的な支援の元で。

R.急性期医療と、それから一生涯続くであろう長期ケア(Long Term Care)の違いが、わが国では、不明確にすぎる。

長期ケアとは、まさに本人の地域自立生活支援であり、そこでは、本人とその家族が、さまざまな支援を活かして、同じ性別・年齢の他の児童と同様の選択肢の中で、それぞれの固有の人生を、そのドラマの主人公として生きてゆくことになる。

この両者の区分が不明確で、だらだらとした医療といつまでも続く病児・病人扱いは、本人のみならず支援する側のエンパワーメントをも阻害する。そのためにも、障害児とその家族のエンパワーメントを支援する家族会ピアサポーターや当事者会ピアサポーターといったSHG(支え合う当事者の会)が、各種専門職に伍して、障害児の支援に参加・参画してゆく体制が望まれる。本人とその家族の思いを真摯に受けとめる支援システムこそが、福祉・教育・医療・SHG等の支援者間の対等で効果的な支援を担保できよう。

それは、専門家支配モデルから、地域自立生活モデルへの転換を意味するが、そのことは、家族・保護者の障害受容を仲間の支援の下で容易にするのみならず、最悪感や無用な責任感をコントロールしやすくしてくれよう。

【清原委員】

⇒ 三鷹市では、子どもと保護者を中心に専門療育機関や地域の関係機関で連携し、子どもの視点・保護者の視点で支援に取り組み、保護者の思いを受け止めながら支援を進めているところです。

あくまで「早期発見・早期支援」は、その子の特性を理解し、適切な療育支援や関わり方に繋げるためのものであり、保護者の責任に結び付けるものではありません。保護者が罪悪感や責任感を持つことのないよう配慮し、孤立を避け、ゆっくりではあっても子どもの成長が確認でき、子育ての喜びが感じられるように、療育機関や関係機関が連携し支援していくことが重要と考えます。

【佐藤委員】

障害の発見が単なるレッテル貼りに終わってはならない。子育て不安や負担のない育児をするためにも、障害の疑いを含めその発見後、すみやかに早期療育が始められることが必要である。そのためには通いやすい場所で同じ悩みを持つ親同士の交流や子育てのアドバイスがあることが罪悪感や責任感の軽減につながる。

また障害が残っても絶望ではなく、充実した人生を送っている障害者がたくさんいることを知らせることも重要である。

【新谷委員】

聴覚障害においては、早期発見・早期支援は非常に大切です。問題は、聞こえない子どものみならず、心理的に動揺している保護者も含めた治療・支援プログラムの整備です。子どもの聞こえの状態の流動性を踏まえた多様な治療・支援情報に接するなかで、保護者へのカウンセリングも含めた関係者の冷静な対応をする可能にするプログラムを整備すべきです。

【関口委員】

保護者等は、医療機関から早期に告知され、罪悪感を強めることが多く、医療機関等が障害児の将来をマイナスに考えさせない配慮が必要である。

【堂本委員】

(意見)従来の早期発見・早期療育が医療・療育に偏向していたので、前項で述べた総合的な支援のあり方に集中していくことが必要である。早期発見し早期療育は出生後の子どもの成長に有効なことであり、その専門的な支援内容が求められる。乳幼児期に障がいの特性に合わせた専門的な治療、療育、訓練、教育はその児童の最善の利益として保障することを基本として、地域の同年齢の子どもとの一般的な活動への参加を確保するが必要がある。

【中西委員】

本来、「早期発見・早期支援」が必要とされる一番の目的は、幼少期から本人の成長にとって一番望ましい環境を整えていくことである。そして、心理的ストレスや能力を超えた課題等による二次障害を防ぎ、持てる力の中での最大限の成長を促していくことであり、決して障害の医療的側面のみに目を向けた障害そのものの軽減いうことではないはずである。この意味からも、前項で答えたと同様に「子育て支援の枠の中で、専門家の助言を受けながら個々の子どもに対する関わりをケアしていく」という基本的考え方が最も望ましい形である。

【長瀬委員】

現在の早期発見・早期支援は、「非障害」であることに至上の価値を置きがちで、親の持つ愛情を治療のみに向けてしまっている面がある。特に医療関係者から伝えられる情報は、障害について否定的な面を過剰に強調する傾向がある。障害者として生きている成人やロールモデルに関する知識を親に伝えるためには、そうした知識を医療、療育関係者自身が持つ必要がある。

【久松委員】

障害の軽減に努力することが保護者の役割であり責任とする考えに問題があると考える。障害が早期発見されたら直ちに保護者に対する手厚い支援を行うべきである。

特に聴覚障害をもつ子どもの場合は、言語発達や心理発達の観点から「早期発見・早期支援」が必要であり、ろう学校、聴覚障害者情報提供施設等の専門機関が連携して、かつろうあ者相談員(現在は公的資格ではないが、全国で約200人いる。今後、聴覚障害福祉士の公的資格制度を構築する必要がある。)、スクールソーシャルワーカー、教員等各種専門家が協働する仕組みが必要である。

【松井委員】

障害特有のニーズに即した適切な支援を障害児だけでなく、保護者にも早期に提供したり、ピアサポート・ネットワークなど、地域の社会資源に結びつけることで、保護者に孤立無援状況ではないことを自覚させるとともに、罪障感や不安を取り除くことができるというメリットもあると思われる。

3.確定診断前の子どもや気になり始めた段階での子どもの支援について、申請主義的な手続きを必要とする制度のためにタイムリーな支援が困難となり、保護者による支援の辞退が懸念されることが少なくないが、こうした現状に対してどう考えるかご意見を賜りたい。

【大久保委員】

「気になる」段階からの親子のサポートは重要であり、そのための仕組みを設ける必要があると考える。

例えば、保健センター、保育所や幼稚園、子育て支援センターなどでの「気付き」に対して、障害児支援専門機関から出向き、親や保育士等への相談支援を行い、必要に応じて徐々に専門機関につなげていくことや、身近に親と接している保健師、保育士等が専門機関と連携し、早期の支援へつなげていくことなどが大切であると考える。つまり、医療、母子保健、福祉の関係者が連携し、親の気持ちに寄り添った支援(敷居の低いところから段階的に専門機関につなげていくなど)を行える仕組みが必要と考える。

【大谷委員】

申請主義的な手続きを必要とする制度には、社会福祉学等で設定されている「アウト・リーチ」という視点が欠落している。つまり、援助を必要としている当事者は、往々にして自ら行動すること、自己決定することといった基本的なパワーに欠けているという現実を踏まえ、援助する側から適切な時期に、適切な方法でアプローチするシステムが求められる。

【大濱委員】

申請主義は再検討すべき。

申請を原則としつつも、申請がなくても情報がない人にサービスが行き届くように行政が周知して相談や制度を適用する方式のほうがよい。

また、現状は、障害手帳に疾患名がない限り制度が利用できず保障がされない。当事者からは「障害手帳のために病名を付けている」とも言われている。(障がい児(者)と認定するには、症状が出始めて、その状況が固定される期間が一年は必要で、その後、障がい者手帳が発行される。しかし、実際には症状が出始めた時点で、福祉や医療の支援が必要。現状では、疾患や障がいが認定されてから1年たって障害手帳が発行されて、初めて福祉の支援が始まるが、遅すぎである。現場では、臨床経験から症状や障がいが改善できそうにないことはよく分かっている。症状が続くかどうかを1年待つ必要はない)。障害手帳がなければ個別に応じた保障ができないことが問題である。そうではなく現実に困っている現場を把握して保障していくべき。

24時間人工呼吸器利用の障害児の親の意見を紹介する。

「小児障害児においては症状が分かり始めてすぐに当事者、親や家族に充分なインフォームドができるシステムもなく、社会全体には、障がいには負のイメージがすりこまれています。私も、親になって共に成長する中で培った様々な社会感を子育ての中で経験しました。子育てをするという事は、誰にとっても初めての事で、経験はあっても、「この子は育てた事があります」という人はいないので、誰しも未知の体験の連続なので、子育てに障がい児と健常児となんら変わりはないと思います。ただ、障がい児の子育てには、母親のサポートも含め、より多くの支援が必要だと思います。また、社会がどういう状況の子どもが生まれても、受け入れる体制や、社会保障が整っていないことが多くの問題のもとになっていると思います。」

●障害のあるなしにかかわらず、社会全体で子育てをしていくという視点で、身近な地域保健師や保育園や幼稚園で総合的な相談や支援ができるようなしくみが望まれる。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 行政の保健婦などの知識不足を感じます。専門的な人が必要なのでは?と自分の経験で思います。
  • 自閉症などはすぐにはわからず、今とても自閉症児が増えているので、そういった方に詳しい方、または経験豊富な方の対応をお願いしたいです。
  • 少しでも早い時期に支援することが大切なので、その点はスムーズに行えるようにしてほしい。
  • 親は受け入れるのにどうしても時間がかかります。本当は子どもの為には早期療育が必要ですが親へのケアも大事だと思います。

⇒関連条項

第十条 生命に対する権利

・・・・・・・障害者が他の者と平等にその権利を効果的に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。

第二十三条 家庭及び家族の尊重

3 締約国は、障害のある児童が家庭生活について平等の権利を有することを確保する。締約国は、この権利を実現し、並びに障害のある児童の隠匿、遺棄、放置及び隔離を防止するため、障害のある児童及びその家族に対し、包括的な情報、サービス及び支援を早期に提供することを約束する。

【尾上委員】

次の4.とも重なることであるが、保護者は多かれ少なかれ、子どもを育てることに不安を抱くものである。現状の社会では、わが子が心身に障害をもつのかどうかという状況は、さらなる不安をもたらす。その中でまず必要なことは、障害の有無に関わらず、子どもが周囲の同年齢の子どもたちの中で育っている姿と、それを一緒に受けとめて子どもの育ちを支えてくれる家族以外の人たちの存在である。

保護者をはじめとする家族で子どもを抱え込むのではなく、地域社会で子育てができる環境をつくることがまずは求められている。

特に、子育てに困難さを抱える家庭や、家庭環境・障害などにより保育や教育が必要と考えられる子どもに対して、積極的に地域の保育所への入所・地域の学校への入学をすすめることが必要である。

そのともに育つ場において、保護者や家族と共に子どもの育ちを受けとめながら、保育士や教育関係者、同じような立場の保護者等が一緒に、その子に何が必要かを考え、必要な制度や地域における社会資源が使っていけるような環境を整備し、タイムリーな支援を提供できる体制をつくっていくべきである。

【勝又委員】

保護者の意向は尊重されるべきだが、保護者に適切な情報を与えて、適切な判断に導くような努力は必要だとおもう。児童が虐待されているような状況でないかぎり、強制的に支援することは難しいのではないか。

【門川委員・福島オブザーバー】

「子どものため」を思えば、より速やかに、より強制的に、障害のある(障害のある可能性のある)児童や保護者への支援・介入を行うべきである、というのは一つの考え方である。しかし、そのように速やかにかつ強制的に支援・介入を実施したとして、それが、かえって児童や保護者からの不信感を招くような結果となってしまえば本末転倒である。行政が健診や支援等の周知徹底を十分に図る努力をしたうえで、保護者が自らの判断によりそうした支援等を利用しないというのであれば、特段の理由(虐待の疑いがある等)がなければ、申請なくして支援・介入なしという原則を守るべきではないかと考える。ただし大事なことは、一度辞退されたからといってそれでアプローチを打ち切るのではなく、継続的に個別的なアプローチをし、「いつでも相談に乗る・支援をする」という姿勢を常に示すことである。行政や専門家と保護者や児童がそうした姿勢を通じてお互いに信頼関係を結ぶことが、適切な支援の第一歩であるということを明記すべきであると考える。

【北野委員】

A.大切なことは確定的・固定的な診断名ではない。

R.そもそもタイムリーな支援とは何ぞや?

それが、保護者・家族が納得して受け入れることができないようなものなら、たとえそれが一定正しくとも、(緊急手術を要するようなものでなければ、)保護者・家族の受容なくしては、その支援は効果を生まないし、そのような性急さは、親子関係や家族ー支援者関係にとってマイナスでしかない。

これは、子供の成長・自立において一般的に言えるが、説明つき同意や準備性を欠いた治療・訓練は、本人と家族に焦りや失敗体験を引き起こし、かえってその成長・発達を阻害しやすい。

大切なことは、家族・保護者の立場に立って、その不安・恐れ・不満を受けとめ、なぜそのような思いを抱かざるを得ないかを理解し、その不安等を解きほぐす相談支援がなければならない。子供の成長・自立のために、保護者に何もかもを要求するのではなく、保護者の家族的・経済的・心理的状況を考慮にいれて、子供の成長・自立と保護者の理解・自立とがパラレルに展開できるようにそれぞれへの支援(本人支援と家族支援)がなされなければならない。

そのためには、家族に対するカウンセリング、兄弟姉妹に対する時間の確保、保護者の参加・参画の確保と職場等への社会的認知(早退等の保障)、双方の急速と自立のためのレスパイトプログラム、さらには、同じ障害児を持つ保護者どうしの家族会ピアサポートによる当事者相談や情報交換が大きな支えになろう。

【清原委員】

⇒ 三鷹市では子どもの発育発達相談は三鷹市障がい者福祉センターが担っていると市民や関係機関に周知されていますので、市民が市内のどの機関(保育園、幼稚園、医療機関、総合保健センター、子育てひろばなど)に相談しても、タイムリーに障がい者福祉センターに繋がるシステムを形成しています。

子どもにとっては、適切な療育支援を適切な時期に適切な場所で提供されることが望ましいため、確定診断がされているかということより、しっかりとしたアセスメントがされているかが重要であると考えています。また保護者が子どもの特性を理解できるように丁寧に関わっていくことにより、職員との信頼関係も深まり、長期の療育を受けていく保護者のモチベーションを支えるなど心理的サポートにも繋がっています。

専門療育機関(障がい者福祉センター等)を中心に据えつつも、、地域のネットワークの中で各機関が役割を明確化し、子どもや保護者の具体的支援に結び付くような取り組みが有効であると考えます。

【佐藤委員】

保護者による支援の辞退などは避けなければいけない。保護者まかせの利用契約制度のもとでは子どもの最前の利益が保証されない場合もあることを理解しなければならない。育てにくさをもつ子どもへの支援を含めて、子育て支援策の一環として広く国および自治体の施策として取り組まれることが必要。とりわけ母子保健施策の充実が必要。

【新谷委員】

早期発見によるメリット・デメリットをアナウンスすることが重要と考えます。申請主義であっても、有効性をきちんと説明し、その後のケアについて複数の選択があれば支援の辞退は減少すると考えます。具体的には、6~7か月児健診・9~10か月児健診、3歳児健康診査などの仕組みを利用して、専門医・言語聴覚士などとの個別相談の場を工夫すべきと思います。

【関口委員】

申請主義に偏らない工夫が必要である。

【堂本委員】

(意見)申請主義によらず、相談支援者等が寄り添いながら、必要な支援をタイムリーに提供できるような支援の充実が必要である。産後うつ病等が増加していることから妊娠から出産に向けた支援、出産後の子育て支援が重要である。子どもに障がいがあることでの母親の精神負担、家族の無理解、結果としての離婚を招いている事例がある。母親のカウンセリング・育児のノウハウ支援きょうだい等家族に対する支援と発達の気になる事への支援が両立する必要がある。障がい受容に向けた弾力的・ゆるやかな支援は、子どもに対する専門的な療育の場を確保しながら行なう事が望ましい。療育施設に療育支援コーディネーター等相談専門員を配置してサービス調整等のネットワーキングの核とする。

【中西委員】

子育て支援の枠の中で、専門家の助言を受けながら個々の子どもに対する関わりをケアしていくべきと考える。親による子どもの障害の受容がすすまない場合は、順調なケア・関わりが困難になる可能性が高い。そのなかで障害児の親の自助団体(家族会)の結成、ピア・カウンセリングなどを通して、障害児の親が自分だけでなく他の人も同様な境遇にいることを認識できる環境を設定していくことは必要である。

【久松委員】

聴覚障害をもつ子どもの場合は、ろう学校や聴覚障害者情報提供施設に乳幼児相談機能をもった部門を設け、保護者が相談できる体制を構築する必要がある。また、障害をもつ子どもに接する機会が多い「保健師」との連携を図るために、「保健師」に対する研修を実施する必要がある。

【松井委員】

むしろ必要な支援が、身近な地域で受けられないで困っている保護者のほうが多いのではないか。そうした必要な支援が、地域で受けられるような仕組みが、市町村障害者計画や市町村障害福祉計画などに基づき、計画的に整備されることが求められる。

4.保護者の漠然とした育ち不安や育て不安を、障害種別ごとに切り分けた支援サービスの仕組みにはめ込むことは、保護者の心理面からも無理があるという指摘があるが、こうした指摘も念頭に置きつつ相談支援の対応のあり方についてご意見を賜りたい。

【大久保委員】

論点がよく理解できない。「障害種別ごとに切り分けた支援サービスの仕組みにはめ込むことは、保護者の心理面からも無理がある」という意味がよく理解できない。

現在、都道府県の児童相談所や発達障害者支援センターや障害児通園施設、児童デイサービス、相談支援事業者などで、親子の相談支援は行われていると思われるが、必ずしも重層的かつ連携した仕組みとはなっていないと考えられる。また、身近な相談支援体制やその専門性についても不十分と思われる。また、子どもの成長に応じた切れ目ない一貫した親子の支援をしていくうえで、ケアマネジメントの観点から、当事者と関係者により個別の支援計画をつくる必要があると考える。

よって、身近な相談支援体制の整備とその質の確保と、重層的かつ関係機関との連携を強化する仕組みが必要と考える。

【大谷委員】

障害のある乳幼児の保護者に対する相談には、当該幼児の障害種類に関する知識とアドヴァイスだけでは、妥当な、力強い相談は不可能と言える。やはり一人の幼児として、障害のない幼児の相談とも同質の面があり、子育ての相談なのである。従ってそうした相談員の資質が同時に求められる。

子どもの問題の多くは、運動と、言葉に象徴される。保護者の心配や不安は、「障がい」種別に左右されない。こうした心配に総合的に対応出来る機能(職種など)を配置する事が大切と思われる。ここでも従来の「障がい」認定から支援という制度からの脱却が求められる。現在の支援は、種別だけではなく複雑な申請用紙や「障がい」認定、受給者証等あまりにハードルが多すぎる。支援への道が簡明化されれば、この問題点の多くが解決する。

【大濱委員】

切り分けないほうがよい。ヘルパーなどのサービスを使い地域の健常児と同じ保育園や学校に行く前提の相談支援を行うべき。

●障害のあるなしにかかわらず、社会全体で子育てをしていくという視点で、身近な地域保健師や保育園や幼稚園で総合的な相談や支援ができるようなしくみが望まれる。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 行政の療育施設では、保護者への教育が不足している。私立の施設では、保護者にも教育と指導がちゃんとされています。区でもやれると思います。やっていないだけです。
  • 相談支援の対応をして頂くにあたり、経験豊富な方を望む。
  • 受け入れる側が柔軟な対応をして欲しい。障がいは大きくわけることはできるが、それぞれの障がいに共通な障がいもある。
  • 程度がそれぞれなので種別を言っても大きな枠での対応が必要だと思う。

【尾上委員】

上記3.と同じ

(再掲)

上記3.とも重なることであるが、保護者は多かれ少なかれ、子どもを育てることに不安を抱くものである。現状の社会では、わが子が心身に障害をもつのかどうかという状況は、さらなる不安をもたらす。その中でまず必要なことは、障害の有無に関わらず、子どもが周囲の同年齢の子どもたちの中で育っている姿と、それを一緒に受けとめて子どもの育ちを支えてくれる家族以外の人たちの存在である。

保護者をはじめとする家族で子どもを抱え込むのではなく、地域社会で子育てができる環境をつくることがまずは求められている。

特に、子育てに困難さを抱える家庭や、家庭環境・障害などにより保育や教育が必要と考えられる子どもに対して、積極的に地域の保育所への入所・地域の学校への入学をすすめることが必要である。

そのともに育つ場において、保護者や家族と共に子どもの育ちを受けとめながら、保育士や教育関係者、同じような立場の保護者等が一緒に、その子に何が必要かを考え、必要な制度や地域における社会資源が使っていけるような環境を整備し、タイムリーな支援を提供できる体制をつくっていくべきである。

【門川委員・福島オブザーバー】

保護者の漠然とした育ち不安や育て不安を解消することができるのは、家庭内外の、「伴走者のように寄り添う人の存在」のみである。なぜなら、障害についての情報が様々にあふれている現代社会において、眼前の「子」にとって適切な情報を取捨選択し日々の生活に役立てることは全く簡単なことではなく、また、障害種別に応じた専門的な知識や情報も重要ではあるが、子どもを育てる、子どもが育つ、ということについての不確定性に起因する不安は、知識や情報だけでは解消されえないからである。障害種別の専門家が伴走者のように保護者や児童に寄り添うことができればそれが望ましいが、まずは保護者や障害のある児童を「孤立させない」ということを念頭に置いた相談支援体制を構築するべきであると考える。

【北野委員】

A.家族・保護者の不安等を真摯に受けとめ、解きほぐす相談支援が必要。

R.子供の成長・自立において一般的に言えるが、説明つき同意や準備性を欠いた治療・訓練は、本人と家族に焦りや失敗体験を引き起こし、かえってその成長・発達を阻害しやすい。障害種別ごとに各種療法が乱立する現状では、障害種別ごとの専門家集団が対応すれば、それで家族・保護者が安心・納得するといったものではない。

大切なことは、家族・保護者の立場に立って、その不安・恐れ・不満を受けとめ、なぜそのような思いを抱かざるを得ないかを理解し、その不安等を解きほぐす相談支援がなければならない。子供の成長・自立のために、保護者に何もかもを要求するのではなく、保護者の家族的・経済的・心理的状況を考慮にいれて、子供の成長・自立と保護者の理解・自立とがパラレルに展開できるようにそれぞれへの支援(本人支援と家族支援)がなされなければならない。

そのためには、家族に対するカウンセリング、兄弟姉妹に対する時間の確保、保護者の参加・参画の確保と職場等への社会的認知(早退等の保障)、双方の休息と自立のためのレスパイトプログラム、さらには、同じ障害児を持つ保護者どうしの家族会ピアサポートによる当事者相談や情報交換が大きな支えになろう。

【清原委員】

⇒ 三鷹市では障がい種別ごとに切り分けた支援サービスにはめ込むという療育支援の提供は行っていません。保護者が子どもの発育発達に関して不安や疑問を持った時点から、障がい種別等に関係なく全てをまずは受け止めて、保護者と一緒に方向性を考えていく相談の進め方を行っています。特に専門性の担保がされている療育機関では、相談員ばかりではなく専門療法士や医師が膝を交えた相談を行っています。あくまで主役は子どもであり保護者です。療育の専門性を活かして個々の保護者に応じたわかりやすい対応をしていくことが重要ですし、相談を進めていく中で常に保護者の心理的支援を念頭に置くことは基本であると考えます。

【佐藤委員】

現状でも、乳幼児健診後の親子教室(健診後、育ちに「気になる」ことがある子どもと親が気軽に通って、遊びながら支援を受ける)や児童デイサービスでの取り組みによって、障害種別ごとに切り分けた支援ではなく、障害受容期にふさわしい相談支援の取り組みが自治体の努力によってなされている。そういった自治体ごとの意欲的な相談支援を、十分な財政保障のもと、制度として充実させていく必要がある。

【新谷委員】

障害を克服するような支援ではなく、障害をもったままでも、人として生活できるような支援体制が望まれます。現在の相談支援は障害を克服しようとする考えが中心のようです。

就学前であれば、3項の定期検診の制度にのせて、就学後であれば年次の定期健康診断結果を踏まえた教師・保健担当者との個別相談の仕組みを活用すべきと考えます。論点にあげられていますように、相談支援は全人的な対応が基本で、障害種別の問題はその一部と考えます。

【関口委員】

細分化にわたる個別支援は、分離・選別につながりやすく、障害種別ごとに支援サービスを組み込むことはすべきではない。

保護者からの相談があったとき、障害がある前に人間として将来を考えるよう、相談にのるべきである。

【堂本委員】

(意見)障がい種別ごとに切り分けた支援サービスではなく、分野横断的な、個別的、総合的な支援サービスにするべきである。障がい児の相談支援は、子どもの育ちに対する不安、子育ての不安に対する発達相談、悩み相談等幅が広く一般的な子育て相談から確定診断後の対応に切れ目なく相談体制が維持する必要がある。そのために医師、看護師、保健師、療育相談員、関係機関等の調整役(コーデイネーター)等のチームで対応する仕組みが考えられる。

【中西委員】

乳幼児の相談支援を受ける際に、障害種別ごとの切り分けとも思える障害判定の固執することは、保護者にとって心理的ストレスを増長するだけで、良い方向に向かうことはあまり望めない。相談支援に関しても、子育て支援の考え方を基本に展開していくことが得策である。また同じ保護者の立場からのアドバイスは、障害受容の視点から見ても、有効なものとなる。

【長瀬委員】

総合的な支援サービスが必要であり、そこには障害者である専門家の関与が必要である。

【久松委員】

聴覚障害を持つ子どもの場合は、先述したとおりその特性に対応した相談支援体制が必要である。

【松井委員】

相談支援機関は、基本的にはあらゆる障害に対応することが期待されるが、実際にはあらゆる障害に対応できるような専門スタッフを配置できるような体制になっていない。したがって、今後法制化される障害者総合福祉法では、あらゆる種類の障害者の相談支援に対応できるような、総合的な相談支援の窓口を少なくとも市単位で整備することが求められる。

5.地域での子育てに関する相談はいろいろな関係機関での実施が望ましく、またそれらの情報が一元化されて関係者や関係機関が一緒に検討できる場が必要であると言われているが、このことについて留意点などを含めご意見を賜りたい。

【大久保委員】

特に、障害児の育ちにとって、保健、医療、福祉、教育などの関係機関の連携は重要であり、そのひとり一人の子どもの発達支援について、関係者がその情報を共有し、支援のあり方について検討する場は必要である。しかし、個人情報ということで、関係者が個々に親と対面し情報を得なければならないという現状もある。

また、発達期の子どもの支援ニーズは変化していくものであり、それらの情報は、絶えず支援に携わる関係者にとって必須となる。よって、「守秘義務」は当然であるが、ライフステージに応じた一貫した親子支援を進める上でも、今後の「個人情報」の取り扱いのあり方について検討する必要があると考える。

【大谷委員】

相談の主体はあくまでも、相談を必要とする親子にある。利用者中心のシステムであることが必要である。

相談機関の動向や情報の一元化をする場合は、相談の利用者の意思に沿うものであることが大前提であり、意志に反して当事者親子を行政の管理の対象にして行われてはならない。万事につけインフォームド・コンセントが保障されるべきであり、求められれば、全ての情報の公開をすべきである。

一元化による懸念としては、当事者保護者が望まない情報の漏洩・共有化が挙げられる。相談の主体はあくまでも当事者保護者であるので、どのような情報を共有するか当事者保護者の意思が尊重されるべきである。

【大濱委員】

障害児の親と子供などの当事者同士が子育て支援の仕組み・機関を作り、その機関を行政が支援するほうがよい。

⇒ 支援の仕組みと、当事者である障害児の親(必要に応じ子も)を主体し医療、教育等の学識経験者で第三者機関を設置し医療的な支援、教育の支援(学校との連携含む)、保障等(費用、教育、親への援助、親子への人的支援等)の支援内容を検討し、行政に支援要請をする枠組みが必要。

●関係者、関係機関の連携にあたっては、障害を改善していくための支援ではなく、障害があっても、家族とともに、また、社会全体で子育てをしていくという視点にたった検討がなされるべきである。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 施設や学年が変わることでまた1からになるというのはとても無駄なことだと思います。横の繋がりがしっかりすることで子どもも親も安心して療育していけると思います。
  • 親子とも、もっと色々な場、場面での情報提供が欲しいという意見がある。

【尾上委員】

医療や療育機関等の専門機関中心の障害児支援ではなく、地域に密着した家族支援としての相談機関の一元化が必要と考える。

相談に対する支援のあり方としては、医療や療育の専門職だけによる検討ではなく、障害当事者や障害児の保護者などのピア・サポーター(ピア・カウンセラー)、地域の社会資源とつなげる役割のソーシャルワーカー、保育士なども加えた検討を行い、福祉サービスの利用や地域住民によるインフォーマルな支援などを組み合わせて支援していけるようにすべきである。

特に、乳幼児期は、保護者の精神的不安が大きく、子育てを担う役割が大きいにもかかわらず、福祉サービスが希薄なことから支援が充分に行えていないのが現状である。初期相談を受けた後、地域でのサービスが垣根を越えて利用できるようにする、利用できる社会資源を増やしていく、それとともにサービスや社会資源の利用に終わらせない、その後の子育てに対する継続的な支援を充実させていくことが必要である。

【門川委員・福島オブザーバー】

地域での子育てに関する相談は様々なところで受けつけることができるのが望ましい、という点に異論はない。また、それらの情報について関係者や関係機関が一緒に検討できる場が必要だということもまたその通りであるように考えられる。ただし、関係者や関係機関が一緒に検討するといった場合には、あらかじめ、相談内容について関係者や関係機関が一緒に検討する旨をきちんと保護者に伝えておくべきであり、伝えることができないのであれば、情報を一元化するべきではないと考える。相談内容が秘密にされることで初めて相談をすることが可能になるケースも多々あり、それが特に障害のようなセンシティブな事項についてのものであれば、とりわけ初期段階の相談については、情報を一元化するとしても氏名等の個人情報を省いた形にするなど、丁寧な対応が必要になると考える。

【北野委員】

A.本人のためにも、保護者のためにも、一元化されたシステムが望ましい。

R.保護者は、障害児に関する情報のみならず、地域の子ども会や子育てサークルや勉強会等に参加することによって、わが子と地域との関係を徐々に形成してゆく。その際、共生・共育に理解のある関係者の情報や、地域とのトラブルをサポートしてくれる支援者が不可欠である。

さらに、各種の支援を活用するにあたって、いちいちわが子の生い立ち等を説明する必要がないように、本人のライフサイクルを一貫して相談支援してくれる仕組みが求められる。

その意味でも、今後私たちが一定の地域エリアに構築すべき「総合相談支援センター」の主要な業務は以下のように考えられる。

①必要なサービスと結びついていない事例の発見
②ライフサイクルを一貫してサポートできる体制
③各種相談支援体制(保育、教育、就労、住宅を含めて)
④本人中心の地域自立生活支援計画(サービス機関ごとの個別サービス計画ではなく、本人の生活希望にもとずく総合支援計画)作りのサポート
⑤そのための本人と家族・支援関係者会議の開催
⑥地域全体で支援するに当たって支援の困難な事例の検討と展開
⑦精神病院と入所施設からの地域移行・地域定着支援
⑧必要な社会資源の発見と創造とそのための権限
⑨本人の利用するサービス事業所へのスーパーヴィジョンやモニタリング、さらに一定の苦情解決や権利擁護センターと連携した虐待ケースへの相談支援
⑩それらを可能とするための、障害当事者(団体)と障害児・者に関係する行政と支援の関係者、そして地元産業や地域住民が参加・参画する「地域自立支援協議会」の運営と活用

このような「総合相談支援センター」が切に求められる。

【清原委員】

⇒ 三鷹市では子ども家庭支援ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)が設置されており、福祉、教育、保健、医療などの各機関が連携し、それぞれの役割を明確にし、障がい児支援とその保護者支援についても、機能を最大限活かせるような支援をめざしています。

相談者がいろいろな機関を探すのではなく、相談者を中心として支援側が寄り添い、相談者の了承のもと、関係機関で情報を共有し支援に取り組む方向を目指しています。

特に子どもの発育発達に関する保護者の不安や悩みは大きく、相談内容は多様化しており、家庭全体に及ぶこともあります。また、子ども虐待の大きな要因の一つとも言われていますので、療育に特化せず子ども家庭支援の視点を持ち、関係機関が連携して対応することが何より大切と考えます。

【佐藤委員】

乳幼児健診からはじまる、系統的な子育て支援が望まれるのであり、母子保健関係の部署が中心になって関係機関の連携や情報の把握、および問題に対する機敏な対応が必要。

【新谷委員】

関係者が複数いる場合は情報の共有化が問題となり、総合的に判断できるコーディネーター設置が必要と考えます。そうしないと、それぞれの関係機関が互いに責任等を押し付けてしまう可能性が出てきます。

【関口委員】

適切な相談支援機関が関与しての関係者のカンファレンスの場が必要である。

【堂本委員】

(意見)地域の資源がネットワークされ、一体的な支援を行うことが必要である。その場合、地域でコーディネーターをする機関が必要である。千葉県における中核生活支援センター、障がい児等療育支援事業の配置状況や実績は全国に誇れる仕組みである。

【中西委員】

現在、教育委員会、こども家庭部、障害福祉課など部署を超えたプロジェクトチームが発足した市もある。このような障害児支援を連携しあいながら進めていくことで、質の高いケアを提供することが可能となると同時に、親の要望がより反映されやすい環境がつくられる。

【久松委員】

関係機関との連携と情報共有、情報の共通理解が必要と考える。

但し、保護者が多くの関係機関、専門家と関係をもつことは、手続きが煩雑なうえ対応を困難にする恐れがあるので、できるだけ保護者が利用しやすい環境を整える必要がある。

【松井委員】

情報の一元化などの必要性が認識されながらも、その一元化に関連してプライバシー保護の問題や、関係機関が一緒に検討する場合、どの機関がイニシアティブをとったり、調整の役割を果たすかが決められず、なかなか実現できないのが、実情と思われる。それをすすめるには、自立支援協議会などでの個別支援計画づくりをとおして実績をつくっていく必要があろう。

就学前の支援策のあり方

1.現在、保育所での障害児の受け入れが年々増加している状況において、障害児の通園施設は、障害児の専門機関としての機能の拡充が求められているとともに、地域の実情に応じて、保育所等への巡回など外に出て行って障害児や保護者、保育士等を支援しコーディネートを行う機能を果たしていくことも求められている。こうした障害児通園施設と児童デイサービスの機能を充実させるためには、その役割を担う人材や財源を確保することが必要であり、このためには個別給付の検討が必要であるという考え方があるが、こうした考え方について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

障害児支援の専門機関が、保育所、幼稚園等へ巡回し、障害児や親、保育士等を支援する機能を強化する必要があると考える。そのため、新たな個別給付等の財政措置が必要と考える。

【大谷委員】

個別給付の検討は必要である。支援を要する子どもへの個別給付という考え方は、「障害者自立支援法」の根幹をなしてきたものであるが、「障害者自立支援法」における個別給付は人材確保の財源としては、全く不安定である。子どもへの直接処遇しか給付の対象とせず、通園の利用率が施設運営に直接結びつく給付方式は、「障害者自立支援法」の理念にも反している。デリバリー、コーディネート機能、家族支援、地域支援などが捨象されてしまい、子どもの見方が、数の論理のような構造的な歪みがもたらされる可能性がある。

尚、「現在、保育所での障害児の受け入れが年々増加している」との指摘について、仮に人数は若干増えているかも知れないが、障害の程度は、ほとんどの自治体では軽度に限られている。中度・重度の障害幼児は、ほぼ全員が障害児専用の通所施設に集められている。さらに、軽度の子も特別支援教育の設置と共に、ほぼ全員がこの通所施設に通い始めている。

このように、幼児期から障害児専用施設に通うことで、就学期を迎えた段階で、ほとんどの子はそのまま特別支援学校へ、あるいは軽度のみ特別支援学級に分離されている。インクルーシブ教育を実現するためには、この就学前からの分離システムを廃止しなくてはならない。特別支援教育は、この就学前からの分離システムを前提にしたことで、今、特別支援学校が超満員になっている。

反対に、東松山市では、インクルーシブ教育・保育を目指すために、この通所施設を廃止した。

障害のある幼児の療育、リハビリテーションは、極力通常の保育・教育(幼稚園)の生活の場で行われるべきである。

現在、通所施設に集められているという現実は、基本的には、良い療育・リハビリテーションを提供する必要性からではなく、各保育・教育集団に出かけていくだけの人員、設備が準備できないという、財政面の事情が主な理由となっている。

【大濱委員】

→「社会とのインクルージョン」との規定からして障害児通園施設と児童デイサービスの機能を充実することは必要ない。実際に、人工呼吸器利用の児童が地域の保育園に通う場合に、医療的ケアのできるヘルパー等を利用することで通園が可能。

障害児通園施設と児童デイサービスの機能を充実させるのは反対。

通園施設へ障害のある子を動かすのではなく、基本は地域から子供を動かさない、専門家が地域へ出かけていき、分けないことが重要。

たとえば、人工呼吸器利用の児童が地域の保育園に通う場合に、医療的ケアのできるヘルパー等を利用できるようにこういった児童へのヘルパー制度を充実すべきである。

●抜本改正までの経過期間に、もし、障害児の通園施設が、障害児の専門機関として、保育所等への巡回助言をするのであれば、障害を個人の責任とする従来のとらえ方でなく、社会とのかかわりで、障害をとらえ、障害があっても、ひとりの人間、ひとりの子どもとして同世代の子どもたちともに生きていけるようにとの視点にたった助言・支援をするべきである。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 障がい児が大人になった時、ひとりでも生きていけるようにしてほしい。

【尾上委員】

保育所などにおいて、専門職(作業療法士・理学療法士・言語療法士、臨床心理士・医師・看護師・ソーシャルワーカーなど)が巡回を行い、地域における障害児の育つ場において、ともに育つ立場から保育を行うための支援を行うことは認められるべきである。その点から、人材・財源の確保が必要であると考える。

ただし、人材・財源確保の方法は多様にあり、実際に地域の保育所等への」出前型」の支援を行うのに適切な方法が取られるべきであり、いわゆる「個別給付」という形が適切かどうかの検討が必要であると考える。

本来、ともにいるべき地域の保育所などから隔絶されたところでの支援や専門相談は、障害者の自立にとって阻害の要因になるばかりではなく、障害児や保護者の意識も障害者の権利を確保することへとつながってはいかない。

地域の保育所などで、どのようにすれば、ともに育つ保育ができるのかを考える場の設定、保育士やまわりの子どもたちの関わり方、保育生活での必要な用具や機器の利用など、人や環境をコーディネートする役割を担っていくのが専門職に課せられた機能であろう。

また、障害児の児童デイサービスは、「自立支援法」の施行によって痛みが激しかった分野の一つであり、当面の緊急措置は必要である。ただ、今後、原則インクルーシブ支援という観点、並びに「すべて児童は…」とある児童福祉法の理念からすれば、一般の放課後児童対策などとも一体化して実施することが検討される必要がある。

付言しておけば、前回の教育の項目で大枠の見直し方向が確認されたが、現在の学校教育法施行令第5条等の障害のある子どもへの異別取り扱いの仕組みを廃止し、障害のある子も、ない子も、まずは住んでいる地域の小中学校への就学通知を受ける仕組みにすることを前提にすれば、就学前の地域での支援体制はより一層重要である。

【勝又委員】

障害児にパーソナルアシスタントをつけ、保育所に同行できるようなサービスがあればよいと思う。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害児通園施設が、その職員やノウハウを生かして地域の保育所等の機能を強化する役割を果たすことは、非常に望ましいことである。ただし、保育所等への巡回やコーディネートを行う機能を果たすために必要な財源を、個別給付(利用人数に応じた給付)に求めることが本当に望ましいのかについては、検討材料に乏しく明確な見解を申し述べることはできない。とりわけ、コーディネート機能については、個別給付の考え方を適用することが難しい機能であると考えられる。地域におけるその役割の重要性に鑑みれば、人材や財源の確保は行政の責任で十分に行われるべきであって、「利用人数を稼ぐことが人材や財源の確保につながる」という方式で、そのような役割を果たすことが本当に適切なのか、より具体的な検討を行う必要があると考える。

【川﨑委員】

●適切な人材確保には財源が必要で、これは個別給付にすべきと考える。

【北野委員】

A.個別給付方式と事業費(人件費)補助方式の併用がベスト。

R.このことは、とりわけ前述の「総合相談支援センター」で言えるが、相談支援事業や、巡回相談事業等は、不特定多数の被相談者に対する相談支援や特定少数にたいする極めてインテンシブな相談支援等を抱えており、そのためにその役割をこなせるレベルの高いベテランの職員の常駐化が求められる。

本人総合支援計画の策定と、その定期的モニタリングが比較的スムーズに可能な場合は、個別給付になじむ。一方、本人総合支援計画にはゆき着かない相談や、定期的モニタリングをはるかに超えた相談や、本人総合支援計画を立てるまでに多大な支援(選択肢を広げるための体験学習や自己決定に至るまでのサポート等)を必要とする相談の場合は、個別給付よりは事業費(人件費)補助方式になじむ。

ある程度の実績を上げてもらい、かつきめ細やかな支援を求めようとすれば、この両方式を、その役割やケース内容の違いに基づいて組み合わせる他ないと思われる。

【清原委員】

⇒ 三鷹市では「巡回発達相談」を行っています。これは三鷹市障がい者福祉センター職員と専門療法士が市内の幼稚園や保育園に出向き、心身に障がいや課題をもつ子どもの保育等についての相談や助言を行うものです。また、通常相談業務の中でも関係機関の相談に対応しています。

それとともに、保育関係者への障がい児の理解や対応技術を深めるために専門研修を提供し、地域全体で子どもや保護者に関われるように専門機関として支援しています。こうした取り組みは専門療育機関が担うべきものであり大変意義深い事業のひとつであると思います。

しかし、こうした取り組みは法定化・義務化されているわけではありませんので、人財や財源の確保について、制度的保障の検討を望みます。

【佐藤委員】

障害児通園施設の専門機関としての役割は、障害の軽いとはいえない子どもたちに対して、毎日通い、生活リズムをつくり、健康増進し、その環境の中で発達を保障していくという役割がある。まずは、そのための障害児の通園施設での療育条件の充実が望まれる。けっして、地域支援やコーディネート機能に矮小化されてはならない。

もちろん地域での保育所等への障害児の受け入れが増加している状況において、通園施設が巡回などを通じて保育所を支援しコーディネートする役割は重要である。しかし、そのための人材や財源の確保において個別給付は不適切である。個別給付は、自立支援法で明らかなように、保護者による利用契約を前提とした現金給付のシステムであり、子どもの生活を総合的に保障する保育の場に、個別の支援に対する現金給付を持ち込むこと自体、保育に費用対効果の考え方を導入することにつながりかねない。

保育所等に通う障害のある子どもの場合、保育所生活を送る中で障害が明らかになるケースも多く、保護者による申請・契約はなじまない。すでに自治体ごとに実施されている巡回指導をみても、1ヵ所の園に複数の障害のある子どもがいる場合もあり、個別給付の契約の有無を支援の前提とすることはそうした実態にたいして適切ではない、なども、個別給付に異議を唱える理由である。

【新谷委員】

必要な人材や財源の確保は当然ですが、「個別給付の検討」と云う意味がわかりません。障害児通園施設と児童デイサービスの機能を地域におけるハード・ソフトのインフラと考えても支障はないと思います。

【関口委員】

給付のあり方に関わらず、そうした機能を担保する予算措置は必要と考える。

【堂本委員】

(意見)幼稚園・保育所への支援は、発達支援に係る専門職種(言語聴覚士・作業療法士・臨床発達心理士等)を配置し、保育士、教育相談員等がチームを組んで支援することが有効である。その人材育成は、相談支援機関や療育機関(通園施設・児童デイサービス)に職種・人員配置の措置が必要で個別給付では対応が困難である。システムとしての体制確立が望まれる。

障がいのある・なしによる分けることの問題があるとしたら乳幼児の活動の場である幼稚園・保育園において学校と同様特別なニーズを抱えた子どものクラスを併設し交流・共同の場を設けることも考えられる。

【中西委員】

個別給付の検討に賛成である。

財源確保のないままに、通園施設の担うべき機能を拡充していくことは、今後の就学前の支援策が良い方向に展開していかないばかりでなく、通園施設のサービス内容そのものの質の低下に拍車をかけるだけである。

幼稚園や保育園には必要な財源を欠くため、適切な支援や段階的アプローチをすることで、その子の生きる力や自立の可能性があるのに、結局その理解にまで至らず、十分にはその子の力を発揮させられないケースが見られる。障害児が幼稚園や保育園に入ったとしても「障害児だからかわいそう」「障害児だからがんばらなくてもよい」という考え方をされてしまい、隔離されてしまう事例もある。幼稚園や保育園は障害のない子どもの安全を確保するだけでも大変であるので、役所を通して要望しても現場に生かされるには道のりが遠く、その間に子どもに二次障害が出てしまうこともある。

また人材確保のためには、ある程度のゆとりのある中での職員の療育体験が絶対に必要である。このような視点から見ても、個別給付の検討は早急に進めるべき事案であると思われる。

【久松委員】

障害児通園施設と児童デイサービスの機能の充実のために、その役割を担う人材や財源を確保することが必要であり、このためには個別給付の検討が必要であるという考え方に賛成する。

但し、人材育成には当事者団体及び当事者の参画が必要である。

【松井委員】

保育所を利用している障害児、保護者および保育士などを支援するため、障害児通園施設や児童デイサービスの機能を充実させることは、保育所への障害児の受入れを促進する上で、きわめて重要である。そのためには、障害児通園施設などで、関連の人材を配置したり、保育士などが必要とする研修などが行えるような機能を付加すること。また、それに必要な財源を何らかの形で確保することが求められる。

2.障害児の通園施設について、障害の重複化に対応して身近な地域で支援が受けられるようにするために、障害種別による区分をなくし、多様な障害のある子どもを受け入れるようにしていく通園施設の一元化に向けた考え方がある。

こうした通園施設の一元化に関し、その必要性やあり方について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

障害種別にかかわらず身近なところで障害児支援が受けられるよう通園施設の一元化する必要があると考える。ただし、障害特性に応じた専門性を確保するための体制整備等の検討が必要である。

【大谷委員】

通園施設は現在、様々な子どもを受け入れ、一元化は進行している。「障がい」種別で区分するのはすでに困難な状況となっており、ここでは子どもの状態に合った適切な対応(専門性)が、どのように担保されるのかが課題である。地域的な柔軟性や子どもへの最も適切な対応(専門性)がネットワークや地域資源によって補完されていくシステムが過渡的には求められている。

【大濱委員】

障害別の特別な通園施設は不要。

たとえば、医療ケア的設備を保育園や学校の中に作り、そこに専門家が派遣されていくべき。

●障害児だけ一元化をするのではなく、就学前教育・保育全体で、いろいろな個性の子どもがともに生き、ともに育っていく環境の保障をめざすべきである。

インクルーシブ教育に不安を持つ障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 一元化については反対です。知的障がいの中でも区分して欲しいと思っているのに障がい児一元化は絶対に無理です。
  • 障がいのある子どもといっても、身体、知的と多様な場合があり、身体に問題のない知的障がい児は多動児も多く、その中に身体障がい児を一緒にというのは危険が伴うと思います。それぞれの障がいに適性のある通園施設が必要だと思います。
  • 一元化は必要である。施設のスタッフの意識の向上を望む。
  • 知的と身体一緒では難しいと思います。それに関わる人たちの負担も増えるし、一元化なんて言っていること自体本当に障がい児を理解しているのか?と思います。

(障害児の親の意見は以上)

このように、インクルーシブ教育を行うには、支援教員が普通学校や保育園・幼稚園にしっかり配置され、支援教員が毎日の問題を、夜などに、専門機関に毎日電話で相談できる体制が必要。その一方で、多動の知的障害児や重度全身性障害児等の介護については個々人の対応を熟知したヘルパーをつける必要がある。

【尾上委員】

上に指摘した専門職の機能とともに必要なことは、通園施設においては、子どもを地域へ送り出すための通過施設としての役割を強化し、地域の保育所などと連携して、通園児を地域に送り出し、バックアップをしていくことである。そのためにも、障害種別による区分をなくし、一元化、及び、在籍児の縮小化を図り、地域での支援拠点としての機能を強化することが必要である。

何よりも、障害児の専門機関としての機能強化とは、障害者の生活様式を強制したり、狭めていくことではなく、地域でともに育ちあうための支援を行うことのできる機関として、その機能を果たしていくことである。また、そのための人材の確保(養成)が求められている。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害児の通園施設について、障害種別による区分をなくして、多様な障害のある子どもを受け入れられるようにすることができるのであれば、それは理想的であると考えられる。また、特に人口密度の低い地方において、障害児の人数が少ない場合には、障害児の通園施設を障害種別ごとに設置することが非合理的になる場合もあることを考えたときには、そうした一元化は不可避であると言うこともできる。ただしその場合、「ハコ」としての施設を共有していても「ソフト」としての支援はきちんと障害特性に沿ったものにするための取り組みを強化しなければ、「ただそこにいるだけ」になってしまい、何の効果もないものになってしまうことに十分留意すべきである。そのうえで、さらに、障害児通園施設に多様な障害児を受け入れるのみならず、障害のない児童との交流の機会を設けることで、「選別して分離する」という流れを固定化しないことが重要であると考える。

【北野委員】

A.通園施設の一元化以上に、統合保育・統合幼稚園教育が必要。

R.これは、成人の通園施設での一般に言えることだが、経営上の安易な3障害一元化は、その利用者にとって望ましくない。様々な日中活動の選択肢があって、たまたまそれを選択する人が、精神障害者であったり、身体障害者であったり、知的障害者であるという設定は望ましくはあるが、その際、それぞれの障害と個別性に見合った合理的配慮と適切な支援者が不可欠であろう。同じことは障害児にも言えるが、障害児は、成長・発達・自立といった共通の目標が存在するとは言うものの、それぞれの個別性も大きいゆえに、それぞれの障害と個別性に見合った合理的配慮と適切な支援者の養成が課題である。

【清原委員】

⇒ 三鷹市障がい者福祉センターの通園対象児は、障がいの種別に関わらず医療ケアの必要のない障がいのある子どもです。

より高度な専門性と専門教具を必要とする盲聾の子どもには盲聾特別支援学校幼児部の通園を基本とし、障がい者福祉センターでは理学療法などの専門療法を提供しています。

医療ケアの必要な障がい児の身体的症状はともすれば短時間で激変し生命にも影響を及ぼす危険もあるため、緊急処置のできる医療システムが必要です。基礎自治体単独の療育通園施設では、全ての障がいのある子どもを対象とする一元化は困難であると思われます。

【佐藤委員】

そもそも、三種別それぞれの通園施設の最低基準に代表される条件の不十分さの現状を認識し、改善していく必要がある。たとえば、幼児期に相応しい遊びを主とした活動が求められるにもかかわらず、肢体不自由児通園施設の保育士は子ども10人に1人でよいという現行の基準である。知的障害児通園施設にはPT、OT、STなどの配置基準はない。

さらに、全国の施設の設置状況を見ると、身近な地域に通園する社会資源がないという現状が一元化によって解決される状況ではない。たとえば知的障害児通園施設が県内に1ヵ所しかない自治体が現実にある。施設整備そのものが課題である。

また、三種別通園施設がこれまでに蓄積してきた障害の種別に応じた療育やリハビリテーションの専門性が確実に保障されなければならない。一元化によってその課題をあいまいにしてはならない。

【新谷委員】

現実問題として、難聴児、視覚障害児では対応がまったく違っていて、1つの教室で同時に学ぶ事は出来ずに、結局は施設内に複数の個別クラスを準備することになると思います。ただ、重複児においては1つの施設内にあらゆる様々な障害に対する専門家がいればあらゆる面で対応できるのでメリットは考えられます。1つの障害をもつ子どもと複数の障害を持つ子どもを1施設で、支障なく支援できるのであれば一元化は有効ですが、その施設はかなり大きなものとなると思います。

【関口委員】

基本的に通園施設等の一元化は望ましい。教育の問題ともダブルが、インクルーシブを基本とすべき。

【堂本委員】

(意見)身近な地域での支援の観点から通園施設等が障がいの重複化に対応するためにこども発達センターとして改編する事が望ましい。

その場合に障がい特性に応じた専門性を担保する人員・職種の配置、設備等の必要な整備を行なうことを前提として検討する必要がある。

また、医療ケアを要する就学前期のハビリテーションや専門療育の必要性から医師・看護師、理学療法士の配置等から医療型発達センターを位置づけ在宅支援サービス機能を付与する。

【中西委員】

こうした通園施設の一元化に関し、その必要性やあり方について、ご意見を賜りたい。

身近な地域での支援という視点から見ると、多様な障害に対する対応が可能な通園施設の一元化は、有効な施策である。

ただ、ここで十分注意を要することは、多様な障害に対応することで専門性が広く浅くなってしまい、困難事例に対応することが難しくなってしまうという危険性である。そのため、必要に応じての通園施設への専門家の派遣、施設職員の研修なども必要ではないかと思われる。

【久松委員】

多様な子どもが通園できる通園施設の一元化は必要と考えるが、財政の観点から合理化策に走りやすいリスクが大きい。また、個々のニーズに対応できる人材の配置が適切になされるかどうか疑問も残るので慎重な検討が必要である。

通園できない子どもとその保護者の支援のために訪問支援体制の強化を図ることが必要である。

【松井委員】

障害児の通園施設を多様な障害のある子どもに対応できるよう一元化することは、障害児や保護者にとって比較的近くでそうした施設が利用できるようになるという意味でも、望ましいことである。それに伴って、多様な障害のある子どもに対応できるだけの専門職員の配置や施設の整備なども求められる。

もっともすべての通園施設をいきなり転換することは現実的に困難なことから、まずはモデル施設での試行からはじめ、その実績を見たうえで、他の通園施設の転換をすすめるといったステップを踏む必要があろう。

市町村を基本とした相談支援体制について

1.身近な行政が子どもについての権利と責任を一層明確に自覚することは重要であるが、小規模な町村では障害のある子どもの数は少なく、こうした子どもとその家族を効果的・効率的に支援するサービスが質的・量的に保障できるのかという論点もある。こうした点についてどう考えるか。さらには、町村への相談を専門的な相談支援につなげる体制を地域の実情に応じてつくっていく場合の課題について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

小規模な町村では、障害児に限らず、障害者の数も少なく、様々なサービスを整備することは困難と考えられる。従って、設置基準や指定基準の要件緩和や小規模に対する加算措置、高齢者サービスとの併設などにより、一定のサービスを確保することが考えられる。

また、これら町村における相談支援を専門的な相談支援へつなげることが必要と考えるが、近隣の専門的な相談支援機関から巡回支援できるような体制整備と財政措置が必要と考える。

【大谷委員】

国・県・市町村が連携することが基本である。市町村に委託する事は、格差を生みやすいが、自らの市町村の子どもを支援するのは当然である。格差を最低限に押えるために、そのノウハウや制度は県・国が担うべきである。民間ベースで多くの支援施設が存在し、多くの社会資源もまたある状態で、信頼のおける支援を委託する事も、市町村・県・国の責任で行うべきである。

【大濱委員】

子どもとその家族を効果的・効率的に支援するサービスが質的・量的に保障できるのかという論点については、「人数がある程度固まらないと質的・量的に保障できない」という考え方自体が、入所施設やデイサービスなどの集団での処遇を前提においているもの(権利条約で否定されている障害者だけの特殊な生活様式)であり、おかしい。ホームヘルプ・(場合によっては基準該当の)訪問看護など1対1のサービスなどを基本にすれば、1人しか重度の障害児がいない村でも問題ない。

相談支援については、相談事業所が広域での情報交換を充分行うことを義務化しレベルアップされる仕組みを作るとともに、障害児をもつ家族も、近隣の事業所ではなく、遠方の事業所も選択できるようにする(とてもまれな障害やニーズを持つ場合は全国団体直営の東京の相談支援事業所なども使えるようにする)ことで、解決可能と考える。

●事業所がないのであるから、行政自体が事業所になる、あるいは代わりになる仕組みを市町村独自で工夫する。例えば、パーソナル・アシスタント制度の導入。(資格要件の緩和で、地域の人材を活用する。)パーソナル・アシスタントのうちの誰かをパーソナル・コーディネーターとしてコーディネートを担うことによって、報酬を上乗せする。

町村への相談を専門的な相談支援につなげる体制を地域の実情に応じてつくっていく場合、情報の蓄積と、広域での関係機関のネットワークの構築が第一の課題である。

なぜなら、町村へ相談があった場合、そこが窓口になって、必要な相談・支援をしてくれるところを紹介することが望まれるが、実際には、町村が情報の蓄積もネットワークも持っておらず、橋渡しができていないのが現状である。(地域受け入れ病院、在宅医、訪問看護、訪問介護、専門相談機関などを探すのは、親の自助努力に委ねられているケースが多い。)

【尾上委員】

かつての療育等支援事業が一般財源化され、さらに、障害者自立支援法においては、委託相談支援事業が地域生活支援事業の一つとして市町村の事業となったが、財源的にも地域における相談体制を担える人的確保や障害当事者によるピア・カウンセリング等も確固としたものとの位置づけは得られてはいない。障害児の支援において、こうした当事者によって担われている相談事業やサポートは、その障害児のエンパワメントと地域自立にとっては不可欠であると考える。どの地域においても、必要な支援が得られるように、都道府県と市町村の責任の明確化・役割分担と連携が必要不可欠である。

地域において、障害児に介助などのサービスを提供している事業者も多くはなく、ましてや当事者のエンパワメントにとっての当事者相談の意義やその存在自体を知らない事業所や従業者も少ない。障害児に対するサービスを家族を前提としたものではなく、一人の生活者として必要な支援を受けていく存在としてのサービス利用の拡大は不可欠であり、障害当事者による関わりの重要性についてもサービス提供事業者が熟知していくことが必要である。

さらに、障害児支援は、往々にして家族や保護者に対する支援をも視野に入れなければならない。そこでは、これまでの児童相談機関の役割は不可欠である。一人一人の障害児の支援に、障害当事者と児童支援の機関、そこに専門家も必要に応じて関わるような相談の枠組みが求められている。

【門川委員・福島オブザーバー】

この論点は、障害のある児童だけではなく、障害のある成人についても同じ問題が生じていることをまず指摘したい。

また、相談支援において「話を聞く、相談に乗る」ということも重要ではあるが、そうした相談が、実際のサービス提供につながることもまた同様に重要であることも指摘したい。

そのうえで、小規模な町村であって専門的な相談支援機関やサービス提供機関が存在しない場合には、町村の役割を、障害のある児童及び保護者の「伴走者」として割り切る必要があると考える。すなわち、町村の担当職員は障害のある児童及び保護者と、当該町村外にある専門的な相談支援機関やサービス提供機関との「間に立つ」のではなく、そうした障害のある児童及び保護者が専門的な相談支援機関やサービス提供機関を利用する際の「利用を支援する」立場に立つということである。そして、このように、小規模な町村の役割を限定することによって、役割分担の明確化につながるとともに、障害のある児童及び保護者の「利用を支援する」ことを通じて、専門的な相談支援機関やサービス提供機関との実効性のあるネットワークを形成することにも繋がるのではないかと考える。

【清原委員】

⇒ 障がい児の対応には子ども家庭支援の視点が不可欠であり、対応には各分野の専門療法士や医師による専門的な支援が必要です。小規模自治体が単独で各分野の専門療法士や医師を確保することには人財、財源の面でも過剰な負担がかかります。近隣自治体でネットワークを組み、センター機能的な施設で療育支援を行うことが効率的であると考えます。

【佐藤委員】

過疎地をかかえる北海道や離島が多い鹿児島県では、道県の単独事業としての通園事業や児童デイサービス事業への補助の取り組みが実施されている。これらの市町村事業が安定的にあらゆる地方で展開できるよう、国の支援方策が必要である。

鹿児島県の離島では、せっかく立ち上げた児童デイサービスが自立支援法施行後、休園せざるをえないなどの困難もかかえているが、児童デイサービスの利用を無償としている自治体も多い。鹿児島県の例はぜひともヒアリングしていただきたい。

【新谷委員】

ひとつの町村レベルで対応できないのであれば、複数行政区分で対応するか都道府県が支援するなど、居住地にかかわらず同レベルの支援がなされる体系が必要と考えます。

【関口委員】

いくら障害児が少ないとはいえ、障害児にとってはその地域が生活圏であるがゆえに、専門的な相談支援は町村に出向いて手厚く実情に沿って相談支援を関係者と共に実施すべきである。

【堂本委員】

(意見)市町村を基本とする場合において小規模な町村に対する配慮は不可欠で地域間格差がないようにすることが重要であり、市町村をバックアップする障がい保健福祉圏域、都道府県域との重層的なネットワーク、一次的な総合相談から専門的相談のシステム化が必要である。

【中西委員】

都道府県レベルの療育センター等と、市町村の専門的施設の連携は必須である。それに対応する専門家の数は全国的に見てもまだまだ十分とはいえないので、その育成は急務である。「障害児とその家族」という単位で考えると、小規模であるがゆえに支援策の質的量的低下を招く要因のような印象があるが、「支援を必要とする家庭」という視点に変えて考えれば、小規模であることがフットワークを軽くし、地域資源の有効活用につながる。また、そのなかで障害児の親の会(家族会)、ピア・カウンセリングなどを手段として、家族間での自助を促進する環境を設定していくことは支援策の有効利用につながる。

【久松委員】

すべての町村で行うのは人的、経済的な面で困難であるので、町村の保健所と県教育・福祉サービス機関(ろう児の例でいえば、ろう学校、聴覚障害者情報提供施設、ろうあ児施設等)とが連携できる体制が必要である。

【松井委員】

一定数以上の障害児の利用を考えれば、町村でなく、市単位での相談支援体制の整備が現実的であろう。もっとも市についても人口が3万人前後から数十万人までとかなりの幅がある。人口3万人前後の市であれば、単独で専門的な相談支援体制を整備することは困難と思われることから、近隣の市との連携により、そうした体制を整備するのが、妥当。そうした体制は、市障害者基本計画や市障害福祉計画などに基づいて計画的に整備する必要がある。

2.障害児には、その時々に応じて保健・医療・福祉・教育・就労など様々な関係者が支援を行うことが必要である。

身近な地域でこうした様々な分野の関係者の連携の強化を図るため、地域自立支援協議会の活用(子ども部会の設置)等により関係機関や関係者間の連携をつくっていくことが重要と言われるが、こうした考え方について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

既述したように、障害児支援において、その時々に応じて保健・医療・福祉・教育・就労など様々な関係者が連携し、支援を行うことが必要であると考える。そのため、地域自立支援協議会(子ども部会)は、そのネットワークづくりやサービス基盤の整備などにおいて、重要な役割を有していると考える。従って、自立支援協議会の速やかな法定化を望みたい。

【大谷委員】

この考え自体は大切であるが、多くの地域自立支援協議会は、充分に機能していない。その原因は、本当に当事者の立場に立った地域自立支援協議会となっていないからである。これまでのこうした条項の多くは官僚主義的に行われているからである。地方に到達する頃には、本来の目的からはずれ、地域の様々な利害などによって決定されていくからである。

関係者、関係機関のいちばんの問題点は、インクルーシブ教育、保育、福祉、医療、保健を目指すという基本目標が明確になっていないことである。どのようにしてスタッフに教育を提供し、どのようにしてインクルージョンの方向に向けていくのかについての明確な方針なくして、連携だけを取り上げても意味は薄い。インクルージョンを前提とした連携を進めることが不可欠である。

【大濱委員】

もっと当事者が介入できるようにしないと、絵に描いた餅になる。

当事者が参加して施策を決めていくべきである。

現行の地域自立支援協議会は、サービスが足りなくて困っている当事者が中心の会ではないため、長時間介護の必要なケース等で、自立支援協議会が給付抑制の意見を言うケースがある。そのような自立支援協議会ならば、ないほうがよい。現状で困っている当事者を過半数にすべきである。

障害児の親からの意見(全脊連が行った今回の課題についての親からのヒアリングより)

  • 世間一般でいうほど、地域でもそんなに親身になって問題を解決しようと思っているようには思えませんので、全体的に見直しが必要なのではないでしょうか?実際なされてない訳ですので。もっと障がい児と向き合って親の意見に耳を傾けて頂きたいです。

【尾上委員】

障害者自立支援法によって取り組まれるようになった地域自立支援協議会の内容については、これまで障害別で取り組まれていた地域における障害者の課題を考えていくものとして有効に動いている市町村もあるが、いまだ、連携の内容、具体的な障害者ケースをその中で検討し、支援の枠組みを拡げていくことにいたっていない市町村もある。

地域自立支援協議会において子ども部会を設置していく等は、これまで児童関連の機関に狭められてきた障害児の課題を障害者全体の課題として、保護者や家族への支援、保育や教育関係機関との関わり等、人生の段階特優の課題に対する取り組みが全体化されることにおいては意義があると考える(しかしながら、以下に述べるように、自立支援協議会の必須の構成メンバーや取り組み等の条件設定が必要である)。

ただ、まだまだ具体的な連携にいたっていない地域の存在、さらには、障害者の地域での自立生活と社会参加への意識の拡大を図る中で、障害児のことを考えていくことがなければ、これまでのように、医療モデルに重きを置いた地域との隔絶や隔離を当然視する支援が行われてしまうことになる。

そうならないように、地域の中で育つ中で、将来に渡っても地域で暮らし続けられるというイメージを持ちやすくすべく、ロールモデルとして地域で自立生活をしている障害当事者、そして、ピア・サポーターとしての障害児の保護者の参加が深津である。

いかに支援していけば、地域での自立と社会参加を可能にしていけるのか、との視点の確保とそのための障害当事者の参加がなければ、本来の自立を果たせてはいけない。そのためにも、地域自立支援協議会における必須の構成メンバーと取り組みのガイドラインの作成が望まれるし、障害児に関する取り組みを実行できる制度設計が必要だと考える。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害児については、就学時・就学中・卒業時のいずれの段階においても、環境の大きな変化があり、適切な支援が継続されにくい状況にあることから、特に障害児がそれぞれの段階で保健や福祉に係る適切な支援を受けているかどうかについては、関係機関が相互に連携を作っていく必要が高い。

障害をもつ児童生徒が、就学前から卒業後にわたって継続的に適切な教育及び支援を受けられるよう、特に個別教育計画の仕組みがより実効性のあるものとなるよう、特定の児童(いわゆる「ケース」)の個別教育計画についてのフォローアップを行うのみならず、地域の実情に合わせてどのような個別教育計画を立てるべきかということも含めて、関係機関や関係者がそれぞれの役割を明確にし、主体性と責任を持ったうえで、地域自立支援協議会という枠組みを活用して地域における障害児支援体制を確立するのであれば、非常に望ましいと考える。

なお、いわゆる支援機関のみならず、障害当事者団体や親の会、自治会といった地域団体などとも連携を図り、その知見や体験を共有することで、より障害児の立場に立った実効性の高い支援を行うことができるのではないかと考える。

【北野委員】

A.地域自立支援協議会とその「子ども部会」の活用が望まれる。

R.今後私たちが一定の地域エリアに構築すべき「総合相談支援センター」の主要な業務は以下のように考えられる。

①必要なサービスと結びついていない事例の発見
②ライフサイクルを一貫してサポートできる体制
③各種相談支援体制(保育、教育、就労、住宅を含めて)
④本人中心の地域自立生活支援計画(サービス機関ごとの個別サービス計画ではなく、本人の生活希望にもとずく総合支援計画)作りのサポート
⑤そのための本人と家族・支援関係者会議の開催
⑥地域全体で支援するに当たって支援の困難な事例の検討と展開
⑦精神病院と入所施設からの地域移行・地域定着支援
⑧必要な社会資源の発見と創造とそのための権限
⑨本人の利用するサービス事業所へのスーパーヴィジョンやモニタリング、さらに一定の苦情解決や権利擁護センターと連携した虐待ケースへの相談支援
⑩それらを可能とするための、障害当事者(団体)と障害児・者に関係する行政と支援の関係者、そして地元産業や地域住民が参加・参画する「地域自立支援協議会」の運営と活用

このような「総合相談支援センター」が切に求められる。

さらに、その中の⑩の「地域自立支援協議会」の部会として、「子ども部会」が設けられる事が多いが、それはこれまで関係がスムーズではなかった教育と医療と福祉と就労の関係者が、個々の子供の支援の個別性と、ライフサイクルを一貫して支援するという普遍性の両者を支えるために、連携・ネットワークを構築することを意味する。これら、専門機関は、個々の子どもとその家族の要請と、それを根拠づける「地域自立支援協議会」があって初めて、それぞれの門戸を開くのだ。

【清原委員】

⇒ 出生直後から乳幼児期の相談支援のあり方の5と同じ

なお、三鷹市障がい者地域自立支援協議会では、4つの部会を設けており、その一つが「療育・教育支援部会」であり、支援の在り方や事例検討など行っているところです。

【佐藤委員】

連携の重要性な時期であるが、子ども期は保護者の意向や子どもの障害の状態などにかかわって、特に公的責任が問われることに留意しなければならない。これまでもふれたように、乳幼児期は母子保健が責任をもつべきである。

自立支援協議会において、どれだけ自治体の責任が発揮されるのかが重要だと思われる。

【新谷委員】

連携も重要ですが、中心となるコーディネーターの設置がポイントです。また支援の地域格差がないように都道府県、国の支援(県レベル、国レベルでの支援協議会の設置等)も必要と考えます。

【関口委員】

賛成であるが、現状の地域支援協議会は地域差がありすぎる。

【堂本委員】

(意見)都道府県と市町村における地域自立支援協議会の機能を児童福祉法、いずれは子ども基本法の中で位置づけ、子どもの独立した協議会とする事が効果的と思われる。

【中西委員】

賛成である。市レベルでの、児童福祉、障害者福祉、保険の部門が連携して協議体がつくられケースもある。積極的にすすめていただきたい。

【久松委員】

現行の地域自立支援協議会はあらゆる専門家、地域行政に携わる方々の連携ができるという点で利点があるが、障害をもつ当事者は参画しにくい状況にある。例えば、コミュニケーション保障・支援を必要とする聴覚障害をもつ人は活用しにくい。既存の聴覚障害者情報提供施設の機能を拡大強化していき、聴覚障害をもつ人が活用できるようインフラを整備することが必要である。

【松井委員】

障害児についてその発達段階に応じた個別支援計画を多様な分野の関係者が連携協力して策定するには、地域自立支援協議会の子ども部会などを活用することが、きわめて重要である。また、地域自立支援協議会が十分機能するには、他分野の関係者の取り組み実績を積み重ねる必要がある。テーマによってどの機関がイニシアティブをとるのがよいかなども、実績の積み重ねからわかってくるものと思われる。

その他

【大久保委員】

今後「障害児支援」を議論する上で、厚生労働省において、平成20年に11回にわたり、家族の団体、有識者、事業者(支援者)等がともに検討を行い、まとめた「障害児支援の見直しに関する検討会 報告書」(平成20年7月22日)が示されており、それを資料として活用することが望ましいと考える。

【大濱委員】

自立支援法 障がい児童での問題点

権利条約19条(b)「障害のある人が、地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(パーソナル・アシスタンスを含む。)にアクセスすること」

権利条約24条(b)「障害のある人が、他の者との平等を基礎として、その生活する地域社会において、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができること」の規定に則り下記の件を早急に法・通知等で解決を図る必要がある。

現況の自立支援法は、親ありきで、「子供は親が見るべき」と自治体に言われ、多くの自治体で、ヘルパー時間数が少ししか決定されない。

子供でも、人工呼吸器使用なら、24時間のヘルパー制度などを使えるようにすべきで、介護者の心理的負担等を考えて、2人介助を基本に。

通学にもヘルパーが使えるように。

医療的ケアは関わるヘルパー事業所、ヘルパーが非常に少ない。これを行政がバックアップして医療的ケアのできる事業所を多くするべき。同意書がなくても、通常のケアとして、関われるよう、医行為の範疇から外し、研修をしっかり位置付けるべき。研修と看護師の巡回指導支援があれば可能との当事者の意見。

重度訪問介護が障害児(全身性だけでなく全障害)に使えるようにすべき。(1人親や共稼ぎの場合、日中、連続10時間前後、障害児が家に1人でいなければならないが、このような場合に必要。学校がない日曜や夏休みなどに働く親もいる。これがないと、障害児施設に入るしかない)

【佐藤委員】

その他1 放課後・休日の保障を

第5回推進会議の「教育」のテーマで紹介したように、現在、障害のある学齢児の放課後・休日の支援を主目的とした国の制度は存在せず、その確立が求められている。

2008年12月の社会保障審議会障害者部会の報告では「放課後型のデイサービス」の新設が提言され、2009年3月の障害者自立支援法等改正案においても「放課後等デイサービス」の創設が盛り込まれていた。2008年末には、障害のある子どもの放課後活動事業の制度化を求める請願書が衆議院および参議院で採択された。

このような流れを具体化する段階である。

その他2 子どもに関する部会の設置を

「子どもに関する部会の設置を」、「子どもの最善の利益を」などを含む次の意見を参考にすべきである。

2010年3月20日

障がい者制度改革推進会議への「障害児」に関する要望

障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会

2008年、障害者自立支援法の改正議論と並行して、「障害児支援の見直し」の作業が行われた。「見直し」によって得られた結論は、障害者自立支援法の枠組みを維持することを前提にしていたためにまったく不十分であったが、成人期とは異なる障害をもつ子どもへの支援の特質に焦点があてられたことは重要である。

そもそも「子ども時代」は特別のケアおよび援助を受ける資格のあることが世界人権宣言で宣言されている。障害のある場合もまずは「子ども」であることを重視しなければならない。

その上で、乳幼児から学齢までのこの時期は、障害のある人びとの他のライフステージとは異なる特徴がある。

  • 障害の診断や、その可能性を指摘される時期である
  • 障害そのものにたいする治療やケアだけでなく発達への視点をもった支援が必要である
  • 本人だけでなく保護者への支援、きょうだいなどの家族への支援が重視される時期である
  • 学校教育との関係がつねに意識される時期である

児童期の支援はかならずしも障害の診断(判定)がスタートではない。保健福祉サービス、保育・教育において、障害のない子どもとの境界を明確にすることが困難な局面が多く、子ども全体への支援や子育て支援策を手厚くすることが施策立案の基礎におかれなければならない。他方、障害が明らかな場合もすみやかな支援が開始されなければならないことはいうまでもない。こうした特徴から、支援費制度導入によって児童デイサービスに、障害者自立支援法によって児童福祉法下の施策にも持ち込まれた保護者の申請・契約をもって支援が開始される制度は、児童期の特性には相応しくない。必要な場合は、いつでもすみやかに特別な支援が開始されるしくみを展望しなければならない。

また、近年、社会的養護の施策との重なり合いも求められている。

以上から、障がい者制度改革推進会議の今後の審議において、障害一般施策の検討とは別に、子どもに関する部会を設置することを強く要望する。

具体的な課題

①児童福祉法にある子どもの権利規定を、子どもの権利条約が具体化されるものに改める。そのさい、子どもの権利条約第3条に規定されている「子どもの最善の利益」)が重視されるべきである。障害がある場合の特別なケアの権利は、子どもの権利条約第23条(障害児)および障害者権利条約第7条(障害のある児童)にそって明文規定する。

②乳幼児健康診査(健診)での障害の早期発見を重視し、それにつづく親子教室などの事後指導事業での早期療育、障害に対する医療・リハビリテーション(現状でいえば、補装具や育成医療などの改善充実を含む)などを、障害の発見もれ・対応もれを出さない系統的な施策として実施する。そこにおいては、障害受容期の親や家族への相談支援も重視する。

③障害児の通園施設、児童デイサービス、入所施設、放課後支援については、その支援、指導の困難さの実態に鑑み、人員、施設整備に関する現行の施設最低基準を抜本的に見直し、改善する。その際、障害の軽減、治療のために必要とされる各種訓練士、生活支援のために必要とされる各種相談員の配置を新たに規定する。また、障害者自立支援法によって日額現員制になった施設運営費の支給を、月額定員制に改める。

④保育所、幼稚園、児童(学童)クラブなど一般施策の施設に通所、通園する障害のある子どもについて、その支援、指導の困難さの実態に鑑み、必要とされる人員の加配について、抜本的に改善する。

⑤生命・安全と健康の権利が脅かされている子どもたちを保護し発達の保障をめざして取り組んでいる入所施設の最低基準を抜本的に改善する。

⑥障害のある子どもの医療、福祉に関わる制度の利用は、教育が無償であることと同等に、基本的に無償とする。

⑦すべての施策において、質量両面における地域差を生じさせないために、経費の一般財源化をやめ、国の補助金による義務的な財政保障のもと、地方自治体が実施責任を果たす。

※子どもの権利条約第3条「子どもの最善の利益」

  1. 子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。
  2. 締約国は、親、法定保護者または子どもに法的な責任を負う他の者の権利および義務を考慮しつつ、子どもに対してその福祉に必要な保護およびケアを確保することを約束し、この目的のために、あらゆる適当な立法上および行政上の措置をとる。
  3. 締約国は、子どものケアまたは保護に責任を負う機関、サービスおよび施設が、とくに安全および健康の領域、職員の数および適格性、ならびに職員の適正な監督について、権限ある機関により設定された基準に従うことを確保する。

【土本委員】

しょうがいのある こどもを まず かくり しゅうよう することを やめるべきです。

仲間たちは じどうしせつ から そのまま おとなの しせつ に おくられてきました。

うまれた ときから そだって いく あいだに おやも きぼうを もてるような ちいきの サービスを ふやして いかないと めんどう みれきれないと いって にゅうしょしせつに こどもが おくられてしまう。

おやが いっぱい いっぱい に なったら さいあくのばあい おやに ころされて しまいます。

こどもに しゃかいの つごう おとなの つごうを おしつけないで ほしい。

しょうがいのある こどもを ひとりの にんげんとして あつかう べきです。