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場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議
第7回(H22.4.12) 資料2

情報へのアクセスに関する意見一覧

情報へのアクセスの基本的な考え方

情報アクセスとサービスに関する法制化について

情報アクセスとサービスの実施にあたって

著作権について

その他

第七回障がい者制度改革推進会議 意見提出フォーマット
情報へのアクセス

○情報へのアクセスの基本的な考え方

障害者の権利条約第21条は、「締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者との平等を基礎として情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる」ことを明記している。
同条約が明記している表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利について、障害者基本法等に明文化することについて、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

明文化すべきと考える。

すべての人が、それぞれ理解可能なかたちで情報にアクセスできることは、民主主義の根幹を成す基本的な権利である。知的障害のある人への情報保障は、こうした観点からも十分に為されるべきである。

一方で、日本語の言語体系においてどのような表現(文法や仮名遣い等)や表示がわかりやすいのか、公共施設や公共機関等での案内表示や災害・非常時の情報伝達はどのようにすればわかりやすいか、映像や活字、音声などそれぞれの伝達形態でどのような表現手法がわかりやすいのかなど、知的障害のある人への情報保障については研究も社会的な理解も十分には進んでいない。このような知的障害のある人を取り巻く情報環境を確実に改善していくため、障害者基本法への明文化を含め、より積極的な施策が必要ではないか。

「私たち抜きに私たちのことを決めないで」「自分の暮らしは自分で決める」という当事者の思いを実現していくためには、特に知的障害や発達障害のある人の場合、情報保障は必須と考える。

【大谷委員】

障害者基本法等において、表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利を明文化すべきである。

日本国憲法で定める表現の自由は、自己実現の価値、自己統治の価値という二つの重要な価値を有しており、優越的地位を有する重要な基本的人権である。また、表現の自由は本来受け手の存在を前提としたものであるので、表現の自由を実質あるものとするためには、知る権利や情報にアクセスする機会も保障されなければならない。国連人権B規約19条2項において表現の自由の中には「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む」と規定されているのもこの趣旨を表すものである。

ところが、現実には、医療モデルのもと、障害者は治療・リハビリテーションに専念すべき存在とされた結果、このような表現の自由の制限がなされる事例が少なくなかった(たとえば、従来ろう学校では手話の使用が禁止されてきていたが、これは教育という名目で表現の自由を不当に制限するものであった。また、言語障害者が口頭で投票依頼ができない代わりにビラを作って配布したことが公職選挙法違反とされたことも表現の自由に対する制限である。)。

したがって、障害者基本法等において、表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利を明文化する必要性は大きい。

【大濱委員】

表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利について、障害者基本法等に明文化すべき。

【尾上委員】

当然、「表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利」について明文化すべきである。

特に、日本においては表現の自由に関連している、「知る権利」とそのための情報公開や情報保障の仕組みは十分に整備されてこなかった。また、日本語という音声言語以外の多様な言語や、そのコミュニケーションの形態や方法も広く認められてこなかった。

そうした中で、何らかの障害のために、通常の活字や音声言語でのコミュニケーションで対応できなければ「二級市民」であるかのような取り扱いがなされてきた。例えば、未だに障害者向け職員採用枠試験においても、過半数の都道府県で「活字印刷物に対応できる者=点字は不可」との欠格条項がまかり通っている。また、同様に、面接の際に手話通訳を選択できる都道府県は半数以下である。

その意味で、「表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利」は、単に、それらの権利の行使が認められるようにするというだけでなく、そうした多様なコミュニケーションの形態や方法を使う障害者の存在が、権利主体として社会に認められていくプロセスとしても重要である。

こうした点をふまえて、視覚・聴覚・盲ろう者はもとより、知的障害者や言語障害等、多様な形態・方法のコミュニケーションが認められ、また、権利として情報サービスが利用できるよう、法律での明記が必要である。

【勝又委員】

是非明文化すべきだ。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害者の権利条約第21条に明記されている権利は、障害者と社会との関わりの基礎となるものであって、障害者基本法等において明文化するべきであると考える。

なお、明文化の際には、とりわけ、障害者は、表現及び意見表明の自由並びに情報へのアクセスといった権利が、「何もしない」状態では極めて制約されてしまうということに鑑み、社会(国)が適当な措置を講じることで積極的に保障すべきなのであるという趣旨を明確にする必要があると考える。

【川﨑委員】

障害者基本法に明記することが必要である。さまざまな場面において、障がい者に対する情報アクセスの配慮をすることが求められる。

【北野委員】

A.明文化すべし。

R.権利条約の批准の最低条件であると共に、それがなければ、そのことで社会参加・参画に制約を受ける障害者への人権侵害をきたすため。

【清原委員】

私たちが社会生活を営む上で、他者とコミュニケーションを行い、関係を構築することは人間として大変重要な要素であり、障がい者にとっても、それは最大限に尊重され、保障される必要がある。したがって、そのことを障害者基本法等に明文化することは意義あることである。

【佐藤委員】

明文化は必要である。

1995(平成7)年5月、郵政省電気通信審議会はその答申において「情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権」と明確に示したが、以後すでに15年経っている。

障害者権利条約は、すべての人のために不可欠な権利としてアクセシビリティの保障とICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)の利活用を位置づけている(第2条「コミュニケーション」、第9条「アクセシビリティ」、第21条「情報へのアクセス」など)。障害のある人にとってICTは無が有になる希望の道具である。その利活用によって社会参加と自己表現が可能になることはさまざまな分野で活躍する障害当事者の姿が物語っている。

しかし、この10年ほどの間に、わが国のパソコンやインターネット、携帯電話などICT環境は激変し、障害のある人の利活用の格差も広がっている。JDが行った調査 注1)では、「困ったことがある」の問いに、パソコンでは72.1%、インターネットで68.6%、携帯電話でも55.5%の障害のある人たちがYESと回答している。

注1)障害者のIT活用における福祉用具の実態に関する調査研究 2007年3月http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/datait/IT2007123.html

アメリカでは差別禁止法としてのADAのもとで、「リハビリテーション法508条」によって連邦政府はアクセシブルなICTの調達を義務づけられており、ICT全般のアクセシビリティの底上げに大きな力を発揮している。同様の動きは、欧州でも「Mandate 376」などにより進められている。

わが国は、「JIS X8341」など世界をリードする技術基準をいち早く整備し、ユニバーサルデザインによるすぐれた携帯電話やデジタルTV放送の字幕対応、また障害者のための支援機器も多数開発されている。しかし、政府調達においても、障害者の差別禁止という点でも、強制力のある法制度や施策がなく、「技術」はあっても普及せず「利用」できない状態がある。

以上、障害者権利条約に基づき、障害のある人を社会から排除しないとするインクルージョンの理念を基本にしながら、現時点で実現性の高い平等な権利を実現できる「reasonable accommodation」(合理的配慮)を位置づけ、実質的な平等を確保するためにICT分野の利活用に関する国内法の根本的な見直しが必要である。

障害者基本法の改正にあたっては、つぎの、日本障害者協議会情報通信委員会の意見が参考になる。

障害者基本法改正における意見

日本障害者協議会情報通信委員会 2010年1月20日

障害者基本法改正にあたっては、障害者権利条約前文、第2条、第3条、第9条をふまえて、積極的な情報アクセス保障を位置づけるべきである。

「情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権」(1995年、郵政審議会)として位置づけられた障害者とICT施策は、その後の「IT基本法」でも、すべての障害者の情報バリアフリーとして発展してきた。また、日本のJIS規格は、世界をリードする技術基準となっている。障害者のための支援機器や支援技術も開発されてきた。

しかし、障害者一人ひとりの「利活用」面では、欧米とは異なり、強制力のある法制度や施策がないために、なかなか普及しない現状がある。ICT分野でも強制力のある立法化が切望される。

具体的には、現行の「(情報の利用におけるバリアフリー化)第十九条」は、次のよ うに改正すべきである。

情報及びコミュニケーション

第**条(現第十九条)

障害者は、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、必要な情報及びコミュニケーションが保障される権利を有する

2 国及び地方公共団体は、障害者がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、自らが選択するコミュニケーション手段を使用することができるよう必要な施策を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、障害者がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器や支援技術の普及、情報通信技術及び放送の利用の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。

なお、「Information and Communication Technology」を「公定訳ひな祭りバージョン」は「情報通信機器」と修正したが、この分野の研究者や関係諸団体内から「ソフトや人的なサービスが抜け落ちてしまいかねない」などの反論が噴出している。「文脈によって「機器」と「技術」とを使い分けるべきである」との意見も一部にあるが、権利条約の文脈からは「Information and Communication Technology」は「情報通信技術」と訳すことが一般的であり、「公定訳」は修正されるべきである。

また、「Assistive Technology」は「支援技術」と訳すべきである。さまざまな「機器」だけでなく、ソフトウエアや人と人の「支援」の過程も大切にする概念を含むものとして、総務省や経済産業省などの施策や関係する団体でも90年代後半以降、積極的な意味をもつものとして「支援技術」は位置づけられているからである。

【新谷委員】

表現の自由、知る権利は分野を問わず保障されるべき権利ですので、障害者基本法に権利を明記すべきと考えます。障害者基本法には「コミュニケーション」に関する定義を置き、表現の自由、知る権利を具体化したコミュニケーション権を基本的人権として規定すべきと考えます。

個別の問題として、情報化社会と言われて久しいのに情報提供装置の文字表示(字幕率)はテレビ全体で約30%、(衛星放送の大部分は字幕が無い。)映画2~3%、オンデマンド0%、インターネット動画ほとんど0%等と聴覚障害者がアクセス可能なものは極めて限られいて、知る権利、情報サービスの享受は、はなはだ不十分です。このため、各分野の事業の規定において、文字表示化、字幕付与化の義務付けが必要です。更に個別上記事業に関する法律や規定に常に障害者のアクセス権を保障する条文が不可欠と考えます。今検討中の通信・放送総合法にも障害者のアクセス権を保障する条文が必要です。

【関口委員】

明文化すべきである。

しかしそのためには、コミュニケーションの支援者が必要な場合が精神障害者にはあり、権利主張を支援するためにも、人的な介助が必要。

現行の通院等介助や移動介助は精神障害者の場合は身体介護なしとなっており、屋外の移動にしか使えず、こうしたコミュニケーション支援やアドボケイトの保証がないことは問題。

また精神保健福祉法における措置入院の要件(自傷他害のおそれ)には大臣告示により、侮辱や名誉毀損まで入っており、日本の精神障害者は表現の自由を侵害されている。

現実に、ビラをまいたことを持って名誉既存の恐れとして措置鑑定された事例や、法務省人権擁護局に精神病院での使役を訴え法務局が調査したことを持って措置鑑定にまわされた例がある。

さらに

1.「読書の自由」の保障…例「移動式図書館」が、精神科病院も含めて「巡回」し、貸し出し業務を(例え、住民票が、その「自治体」になくても)行うこと。国会図書館を含め、「読書の権利」は、万人に保障されるべきであると思う。

2.ネットへのアクセスの「自由」
今時、この「自由」は、「最低限」は、保障されるべきだ。

3.「信書の自由」
これがなんと、「前回の精神保険福祉法「改正」」で、主治医の判断で、「制限可能」になってしまったのだ!これはひどい!目に見えた「憲法違反」です!

4.「面会の自由」
本人が「会いたければ」、「医療上の配慮」よりも「本人の意向」が優先されるべきである。

(下記参照)

Q11は入院時に対人関係に支障が生じた関係調査だが、家族以外では面会の自由が保障されていないために友人や職場などが貴重な社会資源として反けることがある。

Q11.精神科病院にかかったあと支障を生じた人間関係はありますか。

(該当事項に全て○) n=663(不明を除く)

Q11.精神科病院にかかったあと支障を生じた人間関係

棒グラフ Q11.精神科病院にかかったあと支障を生じた人間関係

家族 290
親戚 159
友人 267
学校の先生 44
近所 147
職場 232
その他 71

Q11.精神科病院にかかったあと支障を生じた人間関係 人数
家族 290 43.7
親戚 159 24
友人 267 40.3
学校の先生 44 6.6
近所 147 22.2
職場 232 35
その他 71 10.7
サンプル数 663 100

引用文献:精神医療ユーザーアンケート「ユーザー1000人の現状・声」シリーズ
第四回 精神医療ユーザー調査報告書2009年度版 誰でもできる精神病の予防とその対策

5.携帯電話はインターネットとならび現代社会の必須のコミュニケーション手段である。入院しつつも患者は家族や友人また支援者や公的機関と自由に連絡が取れる。

困ったときに頼りになるのは「友人」であり「人権アドボケイト(人権センター)」であり、家族や理解ある親戚、職場の同僚である。

写真機能や動画機能で病棟内を撮影し、それをアップしたプライバシー侵害事例などもまれに耳にするが、それは、携帯のカメラ機能に厳重に封印をしておけばそれですむことである。

むしろ、入院患者が身近なコミュニケーション手段を奪われることによって、社会とのつながりを失っていく可能性は大変高いといえよう。

無論「充電」をどうするかといった「技術的な問題」もあろうが、筆者の知る限り、詰め所で充電をしているところも多い。

また場合によっては、考えられる「迷惑電話問題」も現在「拒否機能」等もついており、また多くの特に若い患者はお金のかからない「メール機能」を駆使しているようだ。

かつて「閉鎖病棟」から「紙飛行機」に託して外部と必死に連絡を取っていた時代もあった。その後公衆電話の設置が義務図けられたが、いまや携帯電話の時代であることは万人が認めるであろう。

精神科病院に「医療精密機械」等が存在するケースはまれだと思うが、いずれにせよ「開放」「閉鎖」等を問わず、携帯電話の所持、使用は当然の権利として認められるべきである。

面会の約束や差し入れの希望、そして地域に移行して生活していくうえでも、携帯電話に慣れておくことは不可欠だと思われる。

P.S ただし電話代は使用状況によっては、大変高額になる場合も考えられるので、「金銭管理能力の状況」によっては、多少の「教育的な配慮」が必要な場合は「理論的」にはありえるではあろう。もっとも、現実にそのような事例に遭遇したことは筆者はない。

また、病室内での長時間の通話は他の入院患者の療養の妨げになる可能性もあるが、これは、病室内での通話は控えるように指導すればすむことであろう。

【堂本委員】

同条及び第9条(アクセシビリティ・施設及びサービスの利用可能性)の趣旨を踏まえ、明文化に向けた検討をすべきと思われる。

【中西委員】

障害者基本法で表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利について明文化し、さらに情報アクセス新法を制定しその中で手話通訳、要約筆記、指点字、点字訳、拡大文字印刷等の配慮を行政に義務付ける必要がある。その中には、一般向けの研修会に手話通訳者等をつけると主催者側の負担となっている事態を解消する為行政からの補助金を出す制度を織り込むなど、いままで当事者や関係団体が負担していた情報面での合理的配慮を、公的負担とすべきである。

【長瀬委員】

明文化が必要である。

国際的に見て、障害分野での情報へのアクセスに関しては、1994年に採択された国連の「障害者の機会均等化に関する基準規則」が情報とコミュニケーションに関して規則5で規定して以来、その重要性への認識が高まってきた経緯がある。それは情報社会の到来が背景にある。

しかし、日本は一般に「情報は権利」という概念がない。マジョリティの言語情報アクセス環境とは異なる言語や方法、ニーズをもつ人の権利は長らく視野の外におかれてきている。たとえば、活字印刷文を読み書きできる人・音声言語コミュニケーションに対応できる人でなければ社会的に失格という、人間への見方が、大手を振っている。視覚障害者、難聴者、ろう者はもとより、知的障害者、高齢者、日本語が母語ではない人などをはじめとする「万人の権利」として、そして社会の質の向上に不可欠な「双方向のもの」として、情報アクセシビリティをとらえることが重要である。権利として社会に浸透定着させるには、まず、法律で明文化する必要がある。

なお、情報アクセスは当然ながら、他の権利(たとえば、司法へのアクセス、教育、雇用・労働、政治的・公的活動への参加、文化的生活やレクリエーション、レジャー等)の基盤ともなる点でも非常に重要である。

【久松委員】

障害者権利条約に明記されている諸権利、特に情報アクセス権や平等に情報サービスを受ける権利は、障害者も含めた国民の権利として広く認知されているとは言い難く、また、その平等に受ける権利の保障がいまだに実現されていない現状を踏まえて、またアクセシビリティの法的根拠を示すためにも、障害者基本法での明文化が必要である。

手話を日常の言語として用いるろう者においては、手話及び手話通訳の権利行使と職業としての手話通訳者の配置、手話を使わない聴覚障害者には、文字、要約筆記を中心とする情報保障、すべての聴覚障害者に共通するものとして、振動、光等の音及び音声以外の情報を保障することの権利を明文化する必要がある。

さらに、権利条約にも「自ら選択するもの」と明記されているように、聴覚障害者の場合、障害の程度または聴力を失った時期によって選択するコミュニケーション手段・態様(様式)がまちまちであり、個々が必要とする手段・態様(様式)を複数選択出来るように保障するべきである。現状では、情報にアクセスするためのコミュニケーション手段・態様(様式)が、「音声のみ」「文字(墨字)のみ」で提供されている場合が多くあるが、本来は「音声+文字(墨字)」または「文字(墨字)+点字」「文字(墨字)+手話」「手話+音声」「音声+文字(墨字)+点字+手話」などのようにさまざまな組み合わせで情報を提供する必要がある。

また、知的障害者や発達障害者のために、わかりやすく伝える、わかりやすい言葉を用いる、図記号を用いてコミュニケーションを図り情報提供すること等が必要である。

こうして、聴覚障害者を含め、個々が障害の枠を超えて各々必要とする手段・態様(様式)を選択、または複数選択ができるようにすることで、権利の行使が保障されるべきである。

【松井委員】

前述のような権利について、障害者基本法などに明文化すべきである。

【森委員】

障害者の権利条約で明記している表現の自由、知る権利、平等に情報サービスを受ける権利については、障害者基本法等に明文化し障害者週間をはじめさまざまな機会を活用して、多くの国民の理解の促進を図る必要がある。

障害があっても、また障害あるからこそ、豊かな生活を行うために情報へのアクセスは必須である。障害のない市民に関する情報へのアクセスの便宜性が、障害者にとって、障害のために利用できなかったり、障害ゆえに差別をもたらしたりする状況はあってはならないことである。

○情報アクセスとサービスに関する法制化について

1.いわゆる「バリアフリー新法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)における基準の設定や基本計画の策定と同様に、情報アクセス分野のバリアフリー化を総合的に推進する法制化が必要であるかどうかについて、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

必要と考える。

既述の通り、知的障害や発達障害のある人にとっての情報アクセスについては、わが国では取り組みが遅れている。こうした状況を改善するためにも、「情報のバリアフリー化」を推進するための立法措置は必要と考える。

ただし、その対象を「障害者」に限定するかどうかについては議論が必要ではないか。わが国において、情報アクセスに困難さを抱えているのは決して障害者だけではない。日本語を母語としない人、高齢者、子どもなども含めた、情報アクセスに困難さを抱える人を広く対象とする法律とすべきではないか。

【大谷委員】

情報アクセス分野のバリアフリー化を総合的に推進する法制化は必要である。

「バリアフリー新法」は、障害者等の移動の自由を保障したものであり、身体の拘束から解放するという人身の自由の要素、また広く知的な積極の機会を得るための手段とする精神的自由の要素を有するのであり、これを保障する必要性から制定された。

情報アクセス分野のバリアフリー化は、障害者等の表現の自由を保障するものである点で、移動の自由と勝るとも劣らぬ重要な人権保障である。

しかしながら、現実には、テレビには副音声、字幕、手話通訳が付されないことが多いことなど、情報アクセス分野のバリアフリー化はきわめて不十分と言わざるを得ない。

それゆえ、情報アクセス分野のバリアフリー化を総合的に推進するために法制化をする必要性はきわめて大きい。

【大濱委員】

法には、権利条約2条に基づく「意思疎通」と「言語」の定義を明記すべき。

また、21条についてもすべて盛り込むべき。

権利条約

第二条(抜粋)

「意思疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)をいう。

「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」

第二十一条 表現及び意見の自由並びに情報の利用

締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者と平等に情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。この措置には、次のことによるものを含む。

(a) 障害者に対し、様々な種類の障害に相応した利用可能な様式及び技術により、適時に、かつ、追加の費用を伴わず、一般公衆向けの情報を提供すること。

(b) 公的な活動において、手話、点字、補助的及び代替的な意思疎通並びに障害者が自ら選択する他のすべての利用可能な意思疎通の手段、形態及び様式を用いることを受け入れ、及び容易にすること。

(c) 一般公衆に対してサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間の団体が情報及びサービスを障害者にとって利用可能又は使用可能な様式で提供するよう要請すること。

(d) マスメディア(インターネットを通じて情報を提供する者を含む。)がそのサービスを障害者にとって利用可能なものとするよう奨励すること。

(e) 手話の使用を認め、及び促進すること。

【尾上委員】

情報のバリアフリー化とコミュニケーション保障に関する法律が必要である。

まがりなりにも、この間、公共交通機関や建物においてはバリアフリー法や自治体での福祉のまちづくり条例が制定されてきた。(もちろん、それらの法制度においても、別項で見る通り大きな課題はあるが)

それに比べて、情報のバリアフリーや、一人ひとりのコミュニケーション保障については、交通・建物のバリアフリーに比べて、法制度的に未整備の状況にある。こうした状況を解消していく意味でも、ぜひとも必要である。

その際、情報通信機器や放送等のアクセシビリティを義務づけていくことともに、そうしたITや情報技術だけに限ることなく、手話や要約筆記、触手話・指点字、知的障害者のファシリテート等の支援等も、教育・労働・生活等、様々な場面で、個人のニーズに応じて確保できるような法制度とすることが必要である。

【勝又委員】

推進する法制化が必要だと思う。

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセス分野のバリアフリーは、ハードとソフトの両面から促進するべきであるとともに、個別に生じた様々なトラブルについて人的な支援を行うことも担保しながら進めるべきであって、これらの要素を盛り込んだ、情報アクセス分野のバリアフリーを総合的に推進する法制化が必要であると考える。なぜなら、ますます情報化が進む現在、情報アクセス分野のバリアフリーが進まなければ、もともと情報から疎外されやすい立場にある障害者がますます情報から疎外されてしまい、社会参加がより困難になってしまうからである。

また、情報アクセス分野のバリアフリーとは、情報アクセシビリティ(情報へのアクセスのしやすさ)を確保することである、と言い換えることができるが、情報アクセシビリティの確保は、交通分野におけるバリアフリーと同様に、障害者を含めた「すべての人」が情報化社会で生活するうえで必要不可欠な「インフラ」の整備、すなわち公的な条件整備の取り組みである、ととらえる発想が必要である。

なお、現状においては、とりわけ公的機関における情報アクセシビリティが立ち遅れている。そうした情報アクセシビリティの立ち遅れは、例えば先日の津波の際に、視覚障害者・聴覚障害者等が津波警報が発表されたことを知ることができなかった、という事態が発生したように、人命をも脅かすものであることから、特に公的機関を対象として早急に情報アクセシビリティを確保するための法的・財政的措置をとるべきであると考える。

【北野委員】

A.情報アクセス分野のバリアフリー化を含めて、総合バリアフリー法(総合アクセス法)を制定すべし。

R.人間の移動交通と、物品の移動交通と、情報の移動交通は、総合的に把握され、基本的にすべての障害者が、平等に知る権利と意見表明権と参加・参画権を保障されるべきである。

【清原委員】

IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)第八条では「利用の機会等の格差の是正」として、「情報バリアフリー」の理念が規定されている。その上で、現実には、情報アクセスに関する具体的な法体系が多様に存在していることを考慮する必要がある。

私も委員として審議に参画した、情報通信審議会答申「通信・放送の総合的な法体系のあり方(平成20年諮問第14号)」を受けて政府で法制化作業が進み、「放送法等の一部を改正する法律案」が先ごろ閣議決定され、今国会での審議がされる予定と聴いている。

情報アクセス分野のバリアフリー化を総合的に推進する取組の重要性を認めつつ、こうした法整備の経過にあって、必要に応じて法制化を図ることにより、情報バリアフリー社会の実現を目指すことが求められる。

【佐藤委員】

アメリカやヨーロッパのように、差別禁止法制のもとで、アクセシブルなICTの調達の義務づけをはかる法律が必要である。

とりわけ、権利条約のつぎの項目(いずれも要点のみ)を具現化する法律を整理する必要がある。

第4条 一般的義務

(f)ユニバーサルデザインを促進するため、研究及び開発を約束し、又は促進する。

(g)新たな技術(情報通信技術、移動補助具、装置及び支援技術を含む)であって、研究及び開発を約束し、又は促進し、並びにその新たな技術の利用可能性及び使用を促進する。

(h)移動補助具、装置及び支援技術(新たな技術を含む)、障害者にとって利用可能なものを提供。

(i)障害者と共に行動する専門家及び職員に対する研修を促進すること。

第9条 アクセシビリティ

1 他の者と平等に、自然環境、輸送機関、情報通信(情報通信技術及び情報通信システムを含む)並びに公衆に開放され、又は提供される他の施設及びサービスを利用することができることを確保するための適当な措置。

(b)情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に係るサービス含む)。

2 次の適切な措置をとる。

(a)最低基準及び指針の実施を発展させ、公表し、及び監視すること。

(c)研修。

(d)点字の標識及び読みやすく、かつ、理解しやすい形式の標識。

(e)生活支援及び仲介する者(案内者、朗読者及び専門の手話通訳を含む)。

(f)障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進。

(g)新たな情報通信技術及び情報通信システム(インターネットを含む)の利用。

第21条 表現、意見表明、情報アクセス

障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通(略)の権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

(a)適時に、かつ、追加の費用を伴わず、一般公衆向けの情報を提供すること。

(b)手話、点字、補助的及び代替的な意思疎通並びに障害者が自ら選択する他のすべての利用可能な意思疎通の手段、形態及び様式を用いることを受け入れ、及び容易にすること。

(c)民間の団体が情報及びサービスを障害者にとって利用可能又は使用可能な様式で提供するよう要請すること。

(d)マスメディア(インターネットを通じて情報を提供する者を含む)がそのサービスを障害者にとって利用可能なものとするよう奨励する。

第24条 教育

1 締約国は、あらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する。

(a)点字、代替的な文字、意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式並びに適応及び移動のための技能習得。

(c)視覚障害若しくは聴覚障害又はこれらの重複障害のある者(特に児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保。

4 研修には、適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れる。

5 合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。

第29条 政治参加

締約国は、障害者に対して政治的権利を保障し、及び他の者と平等にこの権利を享受する機会を保障する。

(i)投票の手続、設備及び資料が適当であり、利用可能であり、並びにその理解及び使用が容易であること。

(ii)適当な場合には技術支援及び新たな技術の使用を容易にすることにより、障害者が、選挙及び国民投票において脅迫を受けることなく秘密投票によって投票する権利並びに選挙に立候補する権利並びに政府のあらゆる段階において効果的に在職し、及びあらゆる公務を遂行する権利を保護すること。

第30条 文化・レクレーション・余暇・スポーツ

締約国は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認める創造的、芸術的及び知的な潜在能力を開発し、及び活用する機会

知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保

【新谷委員】

「情報アクセス分野とサービス」いうのが何を指すのか漠然としています。放送・通信、Web、図書館サービスの利用、新聞など印刷物の利用から、司法の場や交通機関の情報アクセス、介護から教育など自治体サービス、民間サービスなどでのコミュニケーションにまで範囲が拡がります。

情報アクセスやコミュニケーションは全ての生活分野で保障されなければならないものですが、個別法による補完は避けられず、基本法と個別法との関係を当事者も入れて法技術的に整理し、検討する必要があると考えます。

なお、聴覚障害者向けの情報保障アクセスという言葉であれば、①聞える人には気付かれ難いこと、②移動のバリアと情報のバリアとは物理量的に極端に異質であり、③あらゆる人間の行動に密接に関係する情報アクセスであることから、その意味で情報のバリアフリー化をまとめる意味はあると思います。(他の肢体不自由な人と福祉ベクトルが異なる注意喚起になると思う)

「バリアフリー新法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の中にあっても、情報のアクセスや構内放送サービスの享受はできないので、「バリアフリー新法」の条文に情報アクセス、情報サービスの項目を設けないと駅勤務者の聞える人には情報保障、情報アクセス配慮(事故、異変等)を意識され難いと思います。

【関口委員】

法制化すべきである。その際、精神障害者の持つバリアにも留意すべきである。

【堂本委員】

独立した法律とするのか、他の法律の中に盛り込むのかなど手法は様々考えられるが、いずれにせよ、何らかの法制化を検討すべきと考える。

【中西委員】

新法の制定が必要である。

これまでの移動アクセスについては、エレベーターの設置やバスの低床スロープ化等の場合には国の補助金があって初めて推進が果たせた。情報アクセスについても新法を作ることによって補助金制度が充実していく道が開かれるので、是非とも新情報アクセス法は法制化されねばならない。

【長瀬委員】

ニーズに対応できるよう、社会基盤を整備し、個別の合理的配慮を提供できるようにするには、総合法が必要である。

ハートビル法(1994年)、交通バリアフリー法(2000年)、そして両者を統合したバリアフリー新法(2006年)という法的整備を重ねてきた物理的バリアフリーと対比しても、情報面に関する取り組みはバラバラのままで、法制化が立ち遅れてきているためである。

電話、放送通信などの情報通信インフラのユニバーサルデザイン化をはじめとして、手話通訳、指点字通訳、触手話通訳、文字通訳、知的障害者の情報支援などを個人に提供する具体的な法制度の整備が必要である。

なお、現在、提案のある「読書バリアフリー法」の動きとの連携も検討が必要である。

【久松委員】

コミュニケーションは人間が生きる上で欠かせない基本的人権である。社会のあらゆるところで情報が発生・流通しており、これらの全てに対してアクセスしたり支援したりするために利用料金を課金するのは現実的ではなく、「応益負担」はもちろんのこと「応能負担」による仕組みとも相容れない。

論点にある情報アクセス分野のみならず、情報を獲得し活用する分野、コミュニケーション分野は法制度が整備されていないため格段の遅れをとっている。そこで、「バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)」と同様に、情報アクセス分野、情報獲得分野、コミュニケーション分野のバリアフリー化を総合的に推進する新たな法制度として「情報・コミュニケーション保障法(仮称)」の新設が必要である。

(1)聴覚障害に関係する場合

手話通訳、要約筆記等の情報保障、コミュニケーション保障については、手話通訳者・要約筆記者等養成、手話通訳者・要約筆記者等設置、手話通訳者・要約筆記者等派遣制度を推進することが必要である。

さらに、言語バリアフリー政策の一環として手話言語を公用語としての地位を確保し、手話通訳者の国家資格、職業的地位の獲得を目指した個別法としての「手話言語法(仮称)」の制定が必要である。この「手話言語法」については、欧州、オセアニア州等にて広く普及しており、隣国韓国でも今年中に韓国国会に上程する動きがみられる等世界の大きな潮流になっている。

(2)視覚障害に関係する場合

文字(墨字)と同様に点字がいつでもどこでも常備され使用できるように、権利として保障されなければならない。そのために、点訳者の養成、点訳者設置制度を推進することが必要である。さらに文字(墨字)の代読者養成、代読者設置、代読者派遣を推進することが必要である。また弱視者のための文字拡大機器等をあらゆる公共機関に常備設置しあるいはいつでもどこでも貸し出しができるようにする必要がある。

(3)盲ろう者の場合

触手話、指点字等の盲ろう者向け通訳者養成、通訳者設置、通訳者派遣を推進することが必要である。

(4)音声言語の音声発信機能の障害または手話言語の手話発信機能の障害(手や指あるいは腕等の運動機能に障害があった場合、手話を表現することが困難になる)の場合

言語態様(様式)の代替を選択することを保障し、言語障害者が意思表明をするための代読者の設置・派遣制度を整備する必要がある。手話での表現が困難な場合は、その代読について研究開発し本人の望む意思表現手段を選択できるように保障することが必要である。

(5)発達障害または知的障害の場合

わかりやすい用語を使いわかりやすく伝えることができるよう、コミュニケーション支援を行う介助者の養成、派遣、設置制度を推進する必要がある。

なお、「バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)」の呼称であるが、情報バリアフリー・コミュニケーションバリアフリーの総合的な法制度と区分するために、今後、「移動バリアフリー新法」と呼ぶことが望ましい。

【松井委員】

情報化が今後さらにすすむことを考えれば、情報アクセス分野のバリアフリー化をすすめることは、きわめて重要であり、そのためにも法制化は必要である。もっとも単独の情報バリアフリー法とするのか、あるいはバリアフリー新法の対象領域として情報も含めるのかは、検討が必要と思われる。

【森委員】

バリアフリー新法がこれまで果たしてきた役割と国民の理解の促進をもたらしてきたことを考えるとき、情報アクセス分野のバリアフリー化を総合的に推進する法制化についても大きな効果が期待され、その実行が求められる。

2.情報アクセス(例えばテレビ放送における手話や字幕、電話リレーサービスなど)の最低基準及び指針の必要性についてどのように考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

必要と考える。

特に知的障害のある人の場合、単に漢字にルビをふればいいということではなく、「比喩や観念的な表現、二重否定など持って回った表現は避ける」「一文に盛り込む情報量を抑え、むやみに接続詞で文をつながない」「言葉の省略をしない」「イラストや写真を効果的に組み合わせる」など、ある程度のルールがある。こうした点を知的障害のある人および情報アクセスに同様の困難さを抱えている人への情報提供の基準および指針として設けることで、「わかりやすい情報提供」の必要性を周知し、社会の中に位置づけることにつながると考える。

また、絵文字や記号による案内表示については、「標準案内用図記号」や「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」等により規格の統一的使用を徹底させる必要がある。

【大谷委員】

必要である。

電話リレーサービスについては、米国のADAタイトルⅣにより、電話リレーサービスが義務づけられるようになった。また、テレビ放送における字幕等についても、米国連邦通信委員会(FCC)が政令を定めている。日本も同様の規定を置くべきである。

さらに、インターネット上のホームページに対する情報バリアフリーに関する指針も必要である。視覚障がい者にとってはインターネット上のホームページにアクセスすることが困難であり、利用が非常に制限されているのが現状である。このような現状を改善すべく、ホームページのバリアフリー指針も求められる。

【大濱委員】

法制化が必要。最低基準を設けるべき。

テレビ放送については、まずNHKから全番組に手話や字幕を義務化し、順次民放にも広げるべき。

諸外国で実施されている水準を下回らないように最低基準を作るべき。

【尾上委員】

日本では、技術指針としては比較的高い水準のものがつくられてきているが、それらを義務づける法整備が進んでおらず、そのために、技術的には対応可能であるにも関わらず、進展があまり見られない状況になっている。

アメリカでは、1990年代にADAで聴覚障害者向けの電話TDDに対するリレーサービスが、24時間・追加の料金無しに利用できるように義務づけたことや、通称・字幕デコーダー法によって新たに製造・販売されるテレビやVTRに字幕デコーダーの機能を内蔵することを義務づけたことなどが広く知られている。そうした法律の結果、当時、日本製のVTRでは英語の字幕放送(クローズドキャプション)が表示される機能が内蔵されアメリカで売られた(英語字幕の表示になるので日本国内では英会話字幕端子として表示)が、日本では法整備がなされていなかったため日本の聴覚障害者向けに(日本語)字幕表示チップ内蔵のビデオテープレコーダーが製造されることはなかった。

アメリカと比べて約20年遅れになるが、日本でも最低基準・指針を策定するとともに、事業者や製造メーカーに字幕等の義務付けを課す法律が不可欠である。

【勝又委員】

必要だとおもう。手話などを必要としない人が大多数だから、必要な人が明らかにしてもらわないとわからない。

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセシビリティの確保が実効性を伴うものとなるようにするために、情報アクセスの最低基準及び指針は必要であると考える。

【川﨑委員】

ニュースや政見放送、災害の情報や警報など、公共性の高い番組には基準を設けるべきである。

【北野委員】

A.アメリカのADAおよびリハ法改正508条等を参考にすべし。

R.ADA第Ⅳ章の「電話リレーサービス」及び、リハ法改正508条の「障害のある人がない人と同様に利用できる(アクセシブビリティ基準を満たした)電子化・情報機器の利用・調達」が、その参考になる。

【清原委員】

これらの基準や指針に関しては、まずは現行で実施されているものの制度間の整合性や適正性を検討する必要がある。特に、技術革新の速い昨今、情報アクセスに関する技術的な可能性も急速に変動することが予想されることから、適切なタイミングで基準や指針の見直しがなされ、改正等が実施されるよう、PDCAサイクルの着実な実行ができるシステムが構築されることが重要と考える。

【佐藤委員】

必要である。

また、「情報アクセス」は、政府のどの機関が責任持つのか。たとえば、つぎのような意見がJD情報通信委員会に寄せられている。

○総務省情報通信利用促進課は「情報の利用におけるバリアフリー」の具体化を本格的に推進すべき。
○字幕放送、解説放送は、対象時間を設けることなく、すべてのテレビ番組で行うべきであるが字幕、解説、手話放送はだいじょうぶなのか?
○2011年度から本格的に導入される地上デジタル放送だが、「すべての障害者」が障害のない人と平等にサービスの対象とされているのか
○全国的な緊急災害放送や市町村レベルでの情報保障など災害時の情報対策は万全か
○電子投票のアクセシビリティは確保されたのか。

【新谷委員】

聴覚障害者はコミュニケーション手段が異なるので、指針は必要と思います。これも総合法として実施するか、個別法に入れるか議論する必要があります。

アメリカではFCCやアクセス委員会がそれぞれの立場で連邦政府や州政府、民間業界団体に助言をしています。

【関口委員】

障害者に低廉な価格での、インターネットサービスを提供することが望ましい。

現在、携帯電話で行われているような割引等を含む。

【堂本委員】

千葉県においては、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」に基づき、障害者差別に関する相談を行っているところであるが、相談事案の中には、必要な配慮がなされていないために情報にアクセスできないといった内容の相談が多く寄せられているところである。

たとえば、

  • 自治体の作成した印刷物に、音声コードが付いていない。
  • ケーブルテレビに加入したが、番組表が点字化されていない。
  • 電車遅延の情報が、駅の放送のみで行われ、聴覚障害者に伝わらない。
  • 自治体の窓口に問合せをしようと思ったが、電話番号しか記載されておらず、メールアドレスやファックス番号が書いていないので、聴覚障害者は問い合わせができない。
  • 一部の選挙において、政見放送に字幕や手話がついていない。

などの相談である。

そこで、千葉県では、障害のある人がきちんと情報にアクセスできるようにするための指針として「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」を策定したところであるが、このような最低基準及び指針を策定することは、極めて重要なことであると考える。

【中西委員】

公共放送、選挙公報についてはただちに義務づける。一般テレビ放送における手話や字幕はすでに技術的に必要な人には配信できる方法が生まれているので、進める事はできるはずである。電話リレーサービスについては、新情報アクセス法の中で制度化すべきである。

【長瀬委員】

必要である。

先進的な例として、米国では1990年の米国障害者法(ADA)により、電話リレーサービスの義務化、同法ならびに同年のテレビデコーダ回路法(米国内で販売される13インチ以上のテレビにデコーダの内蔵の義務化)、1996年の電気通信法による字幕放送の推進例がある。

ADAが、24時間電話リレーサービスを通信事業者に義務づけたように、基本的に行うべきものとして事業者に義務づけることが必要である。テレビ放送も手話・字幕をつける計画をもって確実に進めることを放送事業者に義務づけなければ全面化にいたることはない。また、災害時などは手書きの紙を画面に示すのでもよいわけで、方法手段を選ばず、障害がない人が受けとることができている情報がリアルタイムで障害がある人にも伝わるようにすることと、自身の安否情報やSOSも発信もできるようすることが必要である。日本語が母語ではない人にも伝わりやすい表示表記(たとえば、平仮名やローマ字表記など)が必要である。そうした実際的な指針もあわせて作成、実地に移せるようにすべきである。

【久松委員】

(1)固定通信・公衆電話・移動通信・緊急連絡

ユニバーサルサービスとして、電話リレーサービス(テレビ電話・メール・FAX等による中継システム:欧米で普及しているシステム)を電話と同等の基本的な社会資源(インフラ)として使えるような規定が必要である。テレビ電話は業者が異なると通信できないという非互換の問題があり、普及にいたっていない。警察・消防にある全国統一電話番号と同様に、全国で統一されたテレビ電話・FAX・Eメールの番号・アドレスが必要である。行政窓口にも同様の要望がある。これらの問題を解決するため、最低限、相互の通信を可能とする電話リレーサービスの普及が促進されるような仕組みの制定が必要であると考える。

警察・消防への緊急連絡も同様で、今の法律のままではどの官公庁もFAXやメール等をやりたがらずたらい回しにされている。このような現状を踏まえ、最低基準および指針を「標準化」によってではなく、「法制化」が必要と考える。

(2)地上テレビジョン放送・衛星放送・インターネット

マスメディアにおいても、あらゆる人が同等の情報を平等に受け取れるように、テレビジョン・コマーシャル放送(テレビCM)を含むすべての番組(生放送含む)への字幕・手話の付与、解説放送の実施の義務化、障害者向けCS放送の推進につながる規定を盛り込む必要がある。

地上波アナログ放送、地上波デジタル放送における解説放送・字幕放送の実現達成率が発表されているものの、放送衛星(BS放送)、通信衛星(CS放送)、インターネット配信では字幕すらつかないケースがほとんどである。内閣府の政府インターネット配信にも字幕がつくようになったことは評価したいが、手話通訳の付与(挿入)は実現していない。残りの動画配信や他の官庁のインターネット配信にも引き続き手話通訳や字幕の付与が必要である。また、国会や地方の議会の中継に手話通訳や字幕、解説を付与することが障害をもつ国民への義務と考えるべきである。

また、アナログ放送からデジタル放送への切り替えが迫っているが、デジタルテレビの字幕機能が義務付けされていないため、安価なデジタルテレビでは字幕が全く見られない。テレビの最低基準として字幕機能を義務付けることが必要である。

(3)聴覚障害者が的確に情報を取得できる情報提供システム(情報提供施設の活用)

聴覚障害者が情報にアクセスするための重要な手段として、手話通訳・要約筆記の利用がある。手話通訳・要約筆記サービスについては、今後「情報・コミュニケーション法(仮称)」にて規定していく必要がある。

身体障害者福祉法に定められている聴覚障害者情報提供施設は、視覚障害者情報提供施設と同様に長年、情報アクセスの確立・普及、人権擁護において大きな役割を果たしてきた。今後制定される新しい枠組みにおいても、聴覚障害者が的確に情報を取得できる情報提供システムを構築する上で、既存の情報提供施設の機能拡大、情報提供施設のないところは新規に設置することが欠かせない要件であることは論を待たない。

特に、災害情報について、災害が発生する都度、聴覚障害者への情報保障の不十分さ、配慮漏れ等による取り残しが繰り返されている。聴覚機能や音声に頼らずにあらゆる情報を交換できる視覚的情報手段や手話による情報保障が確保できなければ、聴覚障害者は災害弱者となる。災害弱者の発生を繰り返さないためにも災害対策本部に必ず災害弱者担当者を配置し、あらゆる弱者のことを考慮しているか自己点検する仕組みが必要である。緊急事態に備えたマニュアルや想定内容の全てにおいてあらゆる弱者を考慮しているか今一度再点検が必要と考える。そのためには全国各地にある聴覚障害者情報提供施設が核になって情報保障、災害支援システムを構築する必要がある。

(4)共用品・ユーザビリティ製品・サービス

近年、UD(ユニバーサルデザイン)という言葉が一般的になってきている。特に企業は、これを消費者(お客様)に提供する様々な製品やサービスの、消費者(お客様)が快適に使える基本的な品質として捉える考え方が一般的になってきている。このことは誰もが障害なく情報にアクセスすることが可能になる考え方と同質のものであり、赤ん坊から老人まで多種多様な人々のニーズに応え快適な街づくりに一役買うことのできるデザインといった意味でも、今後基本的な規格として情報アクセスと結びつけて考えていく必要がある。UDは特に障害者のためのものではないが、「障害者に優しい機器・サービスは健常者にも優しい」という言葉がよく言われており、UDを必須の規格として指針に盛り込む事も検討する必要がある。

(5)講座、学会、研修、会議等での情報・コミュニケーション保障システムの整備

専門分野における講座、学会、研修会、会議等に参加するあらゆる障害者の情報保障を図り主体的に参画することができるよう、通訳者、介助者、IT(補聴システム、拡大文字機器、磁気ループ、遠隔装置によるモニターテレビ等)の積極的な活用が必要である。また事前資料の配布、ルビ付き資料の用意、点字版の用意等会議等運用が円滑に行われるように配慮する必要がある。

その際、通訳者、介助者の通訳時間、介助時間、人数等、負荷のかからないよう配慮することが当然に求められる。

【松井委員】

テレビ放送などの情報アクセスを確保するには、最低基準や指針の策定は必要である。

【森委員】

情報アクセスに関する権利は、誰もが当たり前に有する権利であり、聴覚障害や視覚障害、言語障害がある人等に対する情報アクセスに関する支援はきわめて重要である。現在、さまざまな技術の進展をもとに各種情報アクセスに関する支援の充実が可能であることを鑑みて、障害のない人と同等の情報アクセスを可能にする支援の充実を図る必要がある。また、支援の充実を図ることは、単に現在対象と考えられる障害のある人だけではなく、その支援技術の開発を通してさらに多くの人々に対するユニバーサルデザインとしての便利さの開発につながることも考えられる。

電話リレーサービスについても負担可能な料金体系をもとに継続的な利用が図れるような環境整備が求められる。

3.情報アクセスのバリアフリー化に向けた最低基準及び指針の策定においては、どのような事項に留意することが必要か、とくに当事者の参画はどのようにあるべきか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

特に知的障害や発達障害のある人の情報アクセスについては、既述のとおり、日本語圏での研究は、たとえばヨーロッパ語圏に比較して遅れていると考えられる。まずは、知的障害や発達障害のある人を交えて、どのような情報伝達のかたちであればわかりやすいのか、研究を進める必要がある。基準および指針の策定については、そうした研究とリンクさせながら作業を進めるべきと考える。

また、障害のある人への情報提供の在り方は、障害種別によって大きく異なる。各障害の分野で検討を進めると同時に、放送・通信・活字情報など各情報形態においてどのような基準等を設けるべきか、当事者が参画する作業部会を設置するなどして検討していく必要がある。

【大谷委員】

最低基準及び指針の策定において、情報アクセスに障がいのある人々が委員に入るなどの方法で参画が必要である。国連・障害者権利条約33条3は、国内における実施及び監視について、「市民社会(特に、障害者及び障害者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する。」(政府仮訳)とあり、この趣旨を十分に実現するためには、上記のような参画を推進するのが条約の趣旨に合致する。

【大濱委員】

最低基準及び指針の策定においては、策定のための会議に障害当事者を3分の2以上参加させるべき。(家族のヒヤリングも必要)

留意点としては、言語障害においてもリレーサービスが必要。

【尾上委員】

1.で述べた通り、情報面でのバリアフリーは長年にわたって課題として指摘されながら、法整備は非常に遅れてきている面がある。そうした点から、関係する障害当事者の参画のもと、現在の問題や課題等を洗い出した上で、それに対する解決方法や求められる基準や指針に盛り込むべき内容を検討すべきである。

また、その際、特に、情報・コミュニケーションは障害ごとの違いに加えて、きわめて一人ひとり個別性が強い分野でもあるので、丁寧な検討が必要である。

【勝又委員】

利用者が利用しやすくなければ意味がないので、当事者の参画は必須だとおもう。企業などの提供者と行政も参画して、実効性のあるものにすべき。

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセスのバリアフリー化に向けた最低基準及び指針の策定にあたっては、実際に情報にアクセスする当事者である障害者の参画が必要不可欠であると考える。

ただし、情報アクセス分野の技術進歩は急激であって、最低基準及び指針の策定が追いつかない事態が想定されるうえ、新しいメディアや技術が登場した際には、予測もしなかったアクセシビリティ上の困難さが生じるといった事態も生じうると考えられる。

そこで、そもそもの技術開発の場面において情報アクセシビリティに十分配慮することと、事後に判明したアクセシビリティ上の困難について適切に対応するべきであることを「情報アクセス分野におけるバリアフリー総合法」で企業に義務付けたうえで、情報アクセシビリティへの配慮についての具体的な最低基準及び指針を、障害者・企業・行政が協力して、海外を含めた先進的な事例をもとにガイドラインを整備する、といった仕組みを構築することが必要であると考える。また、そのようにして整備されたガイドラインそのものも、障害者をはじめ多くのユーザーからの要望や意見に応じて適宜修正・改善するなど、柔軟に対応していくべきである。

なお、情報アクセス分野においては、国際的な規格をどのように定めるかということとも密接に関係していることから、業界団体や行政機関が情報通信分野における国際規格に関する交渉等を行う場合に、情報アクセシビリティについても主体的に十分な配慮を行う必要があることにも留意すべきである。

【川﨑委員】

障害者施策に関することや、その他障害者に関係する施策に関することに関して検討を行う場合や、策定の会議を行う場合、必ず当事者が参画することが必要。その場合会議に参加する当事者の数は、有識者等を合わせた数の半数を下回らないようにすることが必要である。

【北野委員】

A.最低基準及び指針の策定にあたっては、障害当事者の参画を明確にすべし。

R.現在、地域主権戦略会議において、各種の基準や計画の策定における当事者の参画の義務づけのみならず、基準や計画の義務づけそのものを自治体の裁量とすることが、地域主権と見なされつつある。しかし、それは大きな間違いである。それは、かつて戦前の国家主義が国民のためという名目で、国民の命や生活をないがしろにしたのと変わりがない。地域主権とは、当事者である住民主権ということであって、当事者である住民を抜いた地域などというものは幻想である。諸外国で10~20%と見なされている障害者と、2050年には総人口の39%を占める65歳以上の高齢者という、将来の過半数の地域主権者の参加・参画や創意・工夫を抜いた基準や計画など意味がない。

もちろんそのことは、国レベルでの基準やガイドラインの、自治体への一方的な強制だけを意味しない。言うまでもなく最低基準(ナショナル・ミニマム)など無いに越したことはない。現状ではそれすら達成できない自治体も、将来は、それぞれの創意・工夫に基づいて、それをはるかに超えた適正基準(ローカル・オプティマム)であってしかるべきであろう。

ところで、そのような適正基準を真摯に検討するのは誰であろうか?それは、だれあろう、そのことに利益を有する当事者、とりわけそれを利用・活用することでその生活の質を規定される、当事者本人であろう。

それゆえに、国のレベルにおいても、また自治体のレベルにおいても、その最低基準や適正基準の作成にあたっては、当事者参画が不可欠である。

およそ、国民主権を抜いた国家主権が歴史の悪夢のあるように、当事者住民主権を抜いた地域主権は、反インクルージョンの危険な臭いがする。

【清原委員】

当事者の意見が適切に反映できるシステムとすることがなによりも重要である。それに加えて、通信業界におけるユニバーサルサービスの問題と同様に、そのための費用負担を誰が担うのか、といった問題をどのように整理するのかについても検討が不可欠である。

【佐藤委員】

具体的な数値目標の設定や市民参加のもとでの総合的な施策推進が必要である。とくに、開発段階から障害者や関係団体と十分に協議することが重要である。

【新谷委員】

手話、要約筆記、指点字等の各コミュニケーション手段それぞれで、最低基準(主用する聴覚障害者の共通認識と思う)というものがあります。最低基準及び指針を策定するのであれば、主用する障害者が集まり共有できる最低規準を検討する必要があります。

【関口委員】

障害者の参加により、情報提供や表現の自由その他が確保されているかどうかモニタリングする仕組みが必要である。

【堂本委員】

前述した千葉県のガイドラインでは、

① 障害者条例に基づく障害当事者からの様々な相談内容を踏まえ、策定に着手したこと
② 策定に当たっては、視覚、聴覚などの障害当事者からなる研究会を立ち上げ、当事者の意見を十分踏まえた上で、指針の策定を行ったこと

など、徹底した当事者参加のもとで作り上げたところである。

今後、最低基準及び指針の策定に当たっては、当事者の参画は必須のものと考えるが、一方で、事業者などの声にも十分耳を傾け、双方の理解を深めながら進めることが大切であると考える。

【中西委員】

政府は情報アクセス新法の協議機関を事務局長、協議委員の過半数を障害当事者で構成し、新法の内容、対象、サービスの種類と程度について早急に協議し、全省庁を通じて実施すべきである。

なお当事者の中には、言語障害、情報機器の使用に障害がある者を含まれる。ALSの当事者からは、最新のテレビやオーディオ、ラジオ、携帯電話などはボタンが多い反面、小さくなりすぎて身体障害者は使えないと聞く。

今の社会は情報が多く、障害者はそれらを入手できなければますます取り残されてしまい、仕事はおろか、生活すら出来ないのが現状である。

【長瀬委員】

当事者の参画は不可欠である。何が最も切実な課題であるのか当事者の視点から明らかにし、限られた資源の中で、最優先事項から取り組んでいくために欠かせない。

多様な障害者自身の参画の推進が必要であると共に、「障害種別」で括って考える発想にとらわれず、異なる障害状況、異なるニーズ、異なる環境の個人の経験と意見を反映できるような参画のありかたが必要である。「個別具体的な異なるニーズをもつ個々人がいる」という前提で、当事者参画もその幅で確保し、よく議論して、策定する必要がある。

【久松委員】

情報アクセスの最低基準および指針を定めるにあたり、今後、予想されるさまざまな放送態様(形態)・情報発信手段・様式にも対応できるような仕組みの検討が必要である。

①放送メディアと通信メディアの融合が深まるにつれて、これまでの放送関連で積み重ねてきた字幕の仕様やノウハウなどが他のメディア、例えばネットワークコンテンツ等に適用されない部分が出てくる。個別に規定するとどうしても後追いになるので、あらゆる情報に対して効力を持つ新法を設定する方が効果的ではないかと考える。デジタル家電制御・ホームネットワーク等の新しい機器への取り組みにも同じことが言える。また、個々に規定するのであれば、技術・サービスの発展により、規定の基準が変化する可能性もあるため、個々の規定は柔軟に変更ができるようにする必要がある。

②当事者の参画について

機器・サービスの企画、設計、開発の段階に、障害者も当事者となって関与することが必要である。参画にあたって、個々の障害の状況にみあった合理的配慮がなされるのは当然である。

特に、デジタル放送の仕様を規定するARIB(電波産業会)では、デジタル放送サービスの運用細部を定めるARIB TR-B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」を規程する際に、聴覚障害者の意見を答申する機会がなかった。このため、一つの画面で二つ以上の映像を同時に流すことができないという現在の仕様ができてしまっている。これが、デジタル放送で手話放送がいまだに実現できないでいる理由である。このような誤りは今後あってはならないし、繰り返されてはならない。直ちにこの運用規定を改める必要がある。

【松井委員】

最低基準や指針の策定については、情報アクセスニーズを確実に充足するためにも、障害当事者団体および障害者がその策定過程に参加できるようにすることは、重要である。

【森委員】

情報アクセスのバリアフリー化に向けた最低基準及び指針の策定に関してはそれを利用する障害者に大きな経済的負担が生じないように十分な配慮が求められる。これまでに情報アクセスに関するバリアを体験してきた当事者の参画は必須のことであり、その体験に基づくニーズをもとに支援の充実を図ることは、現在対象と考えられる障害のある人だけではなく、その支援技術の開発を通して、将来的にもさらに多くの人々に対するユニバーサルデザインとしての機器・環境整備の開発につながることが十分に期待される。

○情報アクセスとサービスの実施にあたって

情報アクセスのバリアフリー化に向けた最低基準及び指針の実施において、その実施状況に対する監視を行い、必要に応じて改善を図ることができる仕組みについて、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

知的障害の分野から言えば、どのような情報伝達の在り方がわかりやすいのか研究が進んでおらず、基準や指針の根拠となるべき土台が確立されていない状況で、何らかの監視機関を設けることには慎重にならざるを得ない。

まずは、研究の深化と効果的なマニュアルづくり等が優先されると考える。

また、表現の自由や著作権などの点から考えても、そうした監視の仕組みが機能するかどうか、障害分野にとどまらない議論が必要だと考える。

【大谷委員】

実施状況に対する監視、改善に関しても、情報アクセスに障がいのある人々が委員に入るなどの方法で参画が必要である。国連・障害者権利条約33条3は、国内における実施及び監視について、「市民社会(特に、障害者及び障害者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する。」(政府仮訳)とあり、この趣旨を十分に実現するためには、上記のような参画を推進するのが条約の趣旨に合致する。

【大濱委員】

法により具体的な改善の権限を持った、当事者が過半数の第3者機関とすべきである。

【尾上委員】

上記の基準づくりとも関係するが、障害当事者参画の基に、その実施状況の調査・監視を行うとともに、必ず、利用者を交えた評価の仕組みをつくり、その評価に基づいて改善できるような仕組みをつくることが必須である。

【勝又委員】

情報アクセスのバリアフリーに限ったことではなく、基準や指針をきめた事項については定期的な監査と指導が必要だ。「必要におおじて改善を図る」というのはだれがどのように改善を図るのか、意味が不明。

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセス分野におけるバリアフリー化のための最低基準及び指針の実施状況を監視し、必要に応じて改善を図るという仕組みは、特に公的機関や放送事業者等に限定した場合には、有効であると考えられる。なぜなら、多くの民間事業者が作成しているWebサイトや印刷物をすべて監視するということは物理的に不可能である一方で、公的機関や放送事業者等が率先してバリアフリー化のための最低基準や指針を遵守するための強力な仕組みを構築することは、それら公的機関や放送事業者等と関係のある多くの民間事業者におけるバリアフリー化を促進することにつながるからである。

したがって、公的機関や放送事業者等については、情報アクセシビリティの確保を義務化し、障害者をはじめとする一般ユーザーからの苦情を公的機関や放送事業者等が受け付け、適宜改善を図るとともに、第三者機関が定期的に監視することが必要であると考える。なお、公的機関や放送事業者等における情報アクセシビリティの確保に際しては、これらの仕組みに加えて、アメリカにおけるリハビリテーション法508条による規制がそうであるように、公的機関の購入する情報通信機器・サービスを、障害者も含め誰もが利用できるものでなければならないとし、公的機関内外の利用者が当該機器やサービスを実際には利用できなかった場合には、利用者が苦情を申し立て、裁判で争うこともできる、というような、公的機関の調達に関する仕組みづくりが緊急に必要であると考える。

【川﨑委員】

実施状況について監視し、改善勧告あるいは改善命令を出せる仕組みを作ることは必要である。

【清原委員】

この点に関しては、新たな仕組みと組織を作ることも有効と思われるが、「電気通信事業紛争処理委員会」のような現在ある組織で、利用者と事業者との間の調整がなされることが可能かどうか、といった検討も有用かもしれない。

【佐藤委員】

障害者、関係団体の参画のもとでの監視は重要である。

【新谷委員】

イギリスには政府メディア監視機構(オフコム)、アメリカには連邦通信委員会(FCC)という行政独立機関があって、放送・通信のモニタリングを行っています。また、FCCは施策策定や規則制定も行っています。日本にも同様の監視機関を設けるべきだという意見が障害者放送協議会で議論されて、視聴覚障害者向け放送番組の普及の指針を作る意見が総務省の研究会に出されています。施策検討に当たっては、障害者当事者の参画保障とその意志を尊重する仕組み、専門家のバックアップの仕組みが必要です。

【関口委員】

障害者が多数の委員となるモニター委員会を設置し、委員会において最低基準を確定し、監視や改善命令が出せる仕組みをつくる必要がある。

【堂本委員】

条約第9条第2項に規定されているように、最低基準及び指針の実施を監視(モニター)することは必要であると考える。

なお、その仕組みづくりには、十分な検討が必要であると思われる。

【中西委員】

これまでの情報バリアフリー化の推進については、掛け声のみで実施が進まなかった事に鑑み、新情報バリアフリー法においては、各都道府県単位に障害当事者を過半数とするモリタリング委員会を設置し、新法の実施義務違反や最低基準の遵守等を勧告、助言できる機関を設置すべきである。

新情報バリアフリー法の中においては、実施の最低基準と指針を提示し、期限を定めての実施を促さねばならない。

【長瀬委員】

調査項目も当事者参画の議論で決めて、定期調査、結果のとりまとめと公表、それをもとにした評価監視委員会などによる評価、実効力をもつ実施勧告を出すなどの一連の流れが必要である。

【久松委員】

情報アクセスのバリアフリー化に向けた最低基準および指針を検討し規定する第三者機関とともに、それらの実施にあたり、実施状況の監視およびフィードバックを行う第三者機関の設置が必要と考える。どちらの機関も、少なくとも当事者や当事者団体を含めて障害者+行政関係者+情報アクセス専門家+通訳者で構成されるべきである。

情報流通コンテンツに字幕・手話や音声ガイドを付与する場合、それらを管理する機関があると、バリアフリーなコンテンツの流通を促進する効果があると期待されるので設置を進めるべきである。

【松井委員】

最低基準や指針の策定過程と同様、その実施において、その状況をモニタリングし、必要に応じて改善をはかるためにも障害当事者団体および障害者が参画できる仕組みをつくることは、重要である。

【森委員】

実施状況に関する監視体制を整備することはきわめて重要である。情報関連における技術の進展と環境整備に関する進展は著しく、今後ともにさらに大きな進歩・進展が予想されるので、その折々に情報格差が生じないように留意することはきわめて重要であり、適宜、監視を行い、状況に応じて必要な改善を行うべきと考えられる。

○著作権について

情報アクセスと著作権についてどのように考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

本年施行の改正著作権法により、著作物を障害のある人が利用しやすい形態で作成する行為は範囲が大幅に拡大され、対象も発達障害が含まれることになった。この動きは、大いに歓迎したい。知的障害のある人にとっても、著作物の音声化や拡大文字、デジタルデータ化は、情報伝達の幅を広げる観点から、非常に有用だと考える。

一方、知的障害のある人には、言い回しや文体の改編を伴う書き換えが必要な場合も多く、そこには著作権の壁が大きく立ちはだかっている。たとえば著作権で保護されている文学作品については、知的障害がある人にも「読んでみたい」と考える人は少なくないが、わかりやすく言い換えることは認められないものがほとんどのため、そうした文化に接する機会を得られていない。

一方、新聞など時事情報については、読みやすい文章での提供を一刻も早く実現する必要がある。著作権法の改正によるか新聞社や通信社など個々の取り組みによるかは別として、日常的な情報の提供は、知的障害のある人の権利と生活の自由を保障する上で欠かせないと考える。

【大谷委員】

障がいがあることから、著作物をそのままの形式では利用できない多くの人々が存在している。しかも、障がいは多種多様であることから、著作物を利用することができない理由も多様にわたる。すなわち、視覚障害者、聴覚障害者だけでなく、ALS(筋萎縮性側索硬化症)やCP(脳性麻痺)を有する人々には、形式変換(電子化)が必要であり、また、高齢や疾病等でいわゆる「寝たきり」の状態になった人々に対する情報アクセスも検討しなければならない。

著作権法は、原則として複製権等各種の権利を定める一方で、例外的に障害の種別に応じて著作権を制限するという形式で障害者の権利との調和を図っている。しかしながら、このような限定列挙的な権利制限規定では多種多様な障がいに対応できない。それゆえ、著作権法において、権利制限の一般規定(フェアユース規定)を置くことを検討すべきである。

【大濱委員】

著作権に特例を設けて、情報アクセスに支障がないように法で解決すべき。障害者向け情報には著作権者への了解や利用料を免除する法に。

【尾上委員】

基本原則として、点字や音声情報、テキストデータ等、その人に応じた形態・方法での情報提供がもっと容易になされるようにする必要がある。著作権保護はもちろん重要ではあるが、そのために障害がある者が情報にアクセスが制限されてしまうのは大きな問題である。障害者の情報アクセス保障の観点から、著作権との関係や、著者等からの提供許諾の方法などを検討すべきである。

例えば、この間の法律改正によって、活字出版物の点字化は著者の了解を得なくてもできるようになったが、テープなど音声情報にするのは、公共図書館では認められているが、民間団体の場合は著者の許諾が必要になる。民間団体での音訳もできるような見直し等が課題となっている。

また、一部の出版社・出版物では視覚障害者や上肢障害(紙のページをめくるのが難しい)等に対して、購入した読者に対してテキストデータでの提供を行っているが、きわめて例外的である。視覚障害者の中にも点字を主に使う人と音声読み上げなどを使う人と多様である。テキストデータは音声読み上げに適しており、その提供をしやすいものにしたい。

【勝又委員】

著作権のうち「著作人格権」は侵されるべきではないと考える。しかし、情報アクセスの保障は著作権によって制限されるべきものではないと思う。

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセスはそもそも著作権を侵害するものではないということを明確にすべきであると考える。なぜなら、著作権が有効になるためには、著作物へのアクセスが現に可能であることが必要であるからである。すなわち、通常の方法では著作物へのアクセスが不可能あるいは困難な場合において、元の著作物をアクセス可能な形態へと変更することは、著作権の侵害にはあたらず、むしろ著作物へのアクセスを保障することを通じて著作権の保護の範囲を広げることとしてとらえるべきであるといえる。

このようにとらえた場合、障害者がアクセス可能ないかなる形態に著作物を変更することも、原則的に自由とすべきである。また、なんらかの理由で一定の制約をもうける必要がある場合でも、どのような形態に変更したのかということを含めて著作権管理機関に届け出ることと引き換えに、当該変更行為そのものについては著作権侵害にはあたらないと明示するような法制度の整備が必要である。なお、その際、アクセス可能な形態へと変更するために要する費用をどのように分担すべきかということについては、明確な結論を出す段階にはなく、当事者による議論が必要であると考える。

【川﨑委員】

特別の指針を設けるべきである。

【清原委員】

たとえば、文学作品等の点訳に関して、著作者の同意が得られないため、点訳ができないといった現実の問題がある。このことは一方で表現の自由の視点から著作権者を尊重するべきであるという課題もあることから、障がい者の情報アクセス権の尊重を図りつつも、一つの立場からの問題提起にならないように、社会の合意を図るべく慎重な配慮がなされるべき課題であると考える。

【佐藤委員】

権利条約第30条第3項は、著作権法が文化的作品へのアクセスを妨げることがないよう、すべての適切な措置を執ることを求めており、一定の権利(著作権)制限が必要であると考えるが、関係者の十分な協議と世論の喚起が必要である。

2006年12月の著作権法改正で第三十七条視覚障害者等のための複製等)の3項は次のようになった。

「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。<後略>」

政令では公共図書館や学校図書館、障害者施設や高齢者施設などが規定されている。この改正は、これらの施設が、本などの印刷物を著作権者の許可なく音声や電子情報に複製し、視覚障害者やディスレクシア(難読・不読症)、知的障害者等文字の読み取りに困難がある人にネット送信できることとしたもので、画期的なものである。

ただし課題も多い。

視覚障害者等がインターネットを使って必要な本などをダウンロードして困難なく活用できるかどうか。全国に約3100ある公共図書館で障害者サービスを展開しているのは600程度に過ぎないといわれており、公共図書館の端末が使いやすいかどうか。こうした図書館や施設が複製した本などを共有して活用するネットワークが形成されるかどうか。複製を作る費用が十分かどうか、等々である。

3月24日、参議院議員会館に於いて読書バリアフリー法を求める集会が、活字文化議員連盟、文字・活字文化推進機構、2010年国民読書年に障害者・高齢者の読書バリアフリーを実現する会の主催により開催された。「情報バリアフリー法」と「読書バリアフリー法」の関係の議論も必要であろうが、できるところから出発し、やがて必要に応じて統合すればよいと思われる。

【新谷委員】

情報アクセスで著作権が問題になるのは、著作物の著作権者あるいは放送事業者のように一時利用者がアクセシブルな形で提供していない時に、それを利用しようとする時著作権の許諾が必要となる点です。

著作権者、一時利用者にアクセシブルな提供を義務つけることがまず必要で、そうすれば著作権が問題になる利用の必要性は下がります。

また、現行著作権の一定の制限がされているが、範囲を拡大して、フェアユースの考え方を認めるべきです。

なお、障害者放送協議会著作権委員会から以下の意見をいただいています。

障害者の権利条約第30条では、「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」としている。

今回の著作権法改正により、障害者等の著作物利用や情報保障の確保が一歩前進したことは確かではあるが、はたして条約に書かれているような「すべての適当な措置」が取られたのかというとはなはだ疑問である。

このことは、障害者放送協議会著作権委員会でも指摘をしてきたが、今回の著作権法改正では一部不徹底な部分が残されており、いわば「積み残し」とも言うべき課題がある。さらなる抜本的な著作権法改正が必要と考えるが、障害者の権利条約の批准が喫緊の課題であることを考え合わせると、現在検討中の「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)」の導入により解決していくことが現実的と考える。

【関口委員】

著作権については配慮されるべきであるが、情報アクセスのバリアフリー化を徹底する必要がある。

著作権者は、著作を出した時点で、情報保障を法律によって承諾していると考えるべきである。

【堂本委員】

情報通信機器の飛躍的進歩により、情報アクセスが極めて容易になった一方で、知的所有権の侵害の問題が生じ、著作権保護が叫ばれていることは事実である。

しかし、著作権保護が、障害のある人の情報アクセス権を妨げることのないよう、必要な措置をとることが大切である。

このような中、本年1月からは、著作権法の改正が行われ、①著作物の複製等を行える主体の範囲の拡大、②複製等、行うことができる範囲の拡大など、障害のある人の情報利用の機会の確保のための措置がとられたことは、大きな前進であったと考える。

しかしながら、障害のある人が健常者と同様に情報アクセスできるようにするためには、さらに解決すべき課題があるものと考えられ、今後、条約の趣旨に沿った一層の検討が必要と考える。

【中西委員】

これまでの心ある著作者、編集者はワードによる著作の情報バリアフリー化をおこなってきたが、一般の著作物においてもこれを障害者の利用に限っては著作物に義務づける制度を新情報バリアフリー法の中に設ける。

現在は著作物を購入した障害者にデータ化された著作物が送られるにシステムになっている。しかし韓星民の研究によると、このようなテキストデータは、著作権者・出版社の両方が拒否しているがために提供が困難であることが多い。しかし実際は著作権者は同意しているが出版社が拒否している場合もあり、データ提供を認めると、それは出版社の労働を増やすことになり、出版業界にとってはその労働を自分たちが担わなければならないのは不当であるとの理由からであるという。

【長瀬委員】

「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法令が文化的作品への障害のある人のアクセスを妨げる不合理な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適切な措置をとる」と規定している障害者の権利条約第30条第1項(3)という観点から、引き続き、情報アクセスの確保に向けた著作権法の見直しが必要である。

障害分野の本でさえ、出版社が著作権を理由に視覚障害者等へのテキストデータ提供に消極的なことがある。どのような質と内容で著作権保護をするかは検討しなければならないことだが、著作権が理由で読者が著作物にアクセスできないのでは本末転倒である。個別には、原稿等依頼の時点で、著作権および情報アクセシビリティの見解を示して提供承諾を得るなどの方法があるが、基本的に法律が情報アクセシビリティを進めるうえでボトルネックになっていることについては、法律のほうを見直さなければならない。

【久松委員】

基本的なところは日本版フェアユース制度(新たな技術やサービスの出現に柔軟に対応できる法制度とするため、権利者の利益を不当に害しない公正な利用であれば許諾なしに著作物を利用できるようにする規定)の導入の中で解決していく必要がある。改正著作権法における課題は、字幕・手話・手話通訳の挿入のために必要とする映像作品のマスターを容易に入手でき、補償金を必要としないこと、CS障害者放送統一機構による「目で聴くテレビ」でいつでも手話や字幕が付加されたものを放送できること、及びインターネットによる提供である。

いま流通している情報に、字幕、手話を付与する場合、著作権および関連する周辺の権利(知的財産権等)の所在がしばしば問題になる。また、今後は、流通しているコンテンツにDRM(デジタル著作権管理)によるアクセスコントロールが実施されるケースが増加することが予想される。聴覚障害者情報提供施設(視覚障害者情報提供施設含む)、障害者向け放送事業体、障害者支援NPO等の公益法人などにおいて、字幕・手話を付与するためにこれらの情報を複製する場合にDRMによるアクセスコントロールが支障となる。

これらの障害者用情報提供施設、放送事業体、公益法人で字幕・手話を付与する場合、コンテンツ提供側はアクセスコントロールのない媒体を無償でこれらの団体に提供する仕組みが保障される必要がある。

【松井委員】

情報アクセスの保障するため、著作権にかかわらず該当する障害者が利用できるようにすることは、適切である。

【森委員】

障害者権利条約第2条及び21条の規定からも、差別なく、一般の人と同様に情報保障がされるべきである。また、著作権法の改善は不十分であり、障害に基づいて情報アクセスに関する不便性が生じないように、可能な限りの支援を行うことは当然のことであると考えられる。

○その他

【大濱委員】

国民の知る権利は障害者も同じ、情報バリアフリーの解消の観点から手話、点字は言語として専門の養成所を設ける等して欲しい。

ニュース、公報紙等では必ず、手話・字幕・点字を入れるべきです。

【尾上委員】

情報バリアフリーの検討を進めていくために、具体的な実態をふまえ、当事者の参画の上での情報アクセスの基準や指針づくりが必要である。

例えば、具体的な現状の例示として、視覚障害者にとっての情報バリアーの現状・課題には次のようなものがある。

  • 図書館のバリアフリー …誰でも使えるための条件整備が必要
  • 国会図書館の電子図書アーカイブ …アクセス不十分
  • ホームページ …閲覧のためのアクセシビリティの向上が必要(PDFや画像ファイルなど、音声リーダーで対応できないものがある)
  • 携帯電話のタッチパネル化 …視覚障害者にとってはアクセス不可
  • TV地上デジタル …番組以外の諸情報(天気など)へのアクセス困難(リモコン操作含む)
  • 金融機関で自署が求められる現状の代替案が必要
  • ATMのアクセス困難 …郵便局のATMでは音声でボタン操作が可能だが、他の金融機関では使用できる機械が限られている
  • 選挙公報は自治体の裁量で全文点訳しているところもあるが、「お知らせ」という形式になっている。自治体間格差が激しい

また、聴覚言語障害者にとっての情報バリアーの現状・課題には次のようなものがある。

  • 連絡先として電話番号しか書いていない広報や案内(FAX、電子メール必要)
  • 音声ガイドに従ってのみ操作する電話通信(宅急便の再配達の連絡 FAXか音声ガイドしかない-メールサービスがやっと最近はじまったが双方向ではないので、音声電話のような、その場でやりとりして確認できるという安心感がない)
  • 放送の字幕(テレビ番組、映画、ドラマ、ほか)著作権問題が字幕をつけるときのネックになる
  • ・政見放送の手話、字幕 あくまで各政党の判断でやれるという範囲であり、義務づけではないし制度基盤もない
  • 議会傍聴の手話通訳、文字通訳

【門川委員・福島オブザーバー】

情報アクセス分野のバリアフリーには、会議等におけるバリアフリーや、公的機関等における窓口対応におけるバリアフリーといった事項も含まれていることを強調すべきである。現在、まさしくこの障がい者制度改革推進会議においては、この面における先進的な取り組みが実施されていることから、その取り組みの詳細についてのノウハウを蓄積するとともに、特に公的な会議やシンポジウム等において、あらゆる参加者が情報へアクセス可能なようにするためにはどのようにすべきか、ということについての検討が必要であると考える。

【佐藤委員】

1)専門家や自治体職員、教員などに対する研修

権利条約第4条の1-iの「この条約において認められる権利により保障される支援及びサービスを一層効果的に提供するため、障害のある人と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する訓練を促進すること」の規定がある。研修は重要である。

2)コミュニケーション機器や入力支援機器を消してはならない。

つぎの指摘は重要である。

■東京都障害者IT地域支援センター 堀込真理子

この数か月で、コミュニケーション機器や入力支援機器のメーカー・販売店がどんどん消え、重い障害のある人たちのコミュニケーション機器やサービスが無くなろうとしています。

国は商品開発には予算をつけるものの、その普及には目を向けません。よい製品や技術はすでにたくさん出ています。それを必要な人に届け、個々の環境にあった利活用を保障することが急務にもかかわらず、企業に丸投げで企業任せの現状があります。これでは、この不況の時期、メーカーも販売店も「体力」の限界です。「法律ができたあかつきに、肝心の製品やサービスがなくなっているのではないか」などの声も聞きます。とても不安です。

【新谷委員】

【電話リレーサービスについて】

社会の通信インフラの主流である電話へのアクセス、電話サービスの享受が出来ない。聴覚障害者が電話の効率的なサービスを受けるには電話リレーサービスが不可欠である。仕事を効率的に行うには音声による電話の同時双方向通信が社会の主要インフラとなっている現状に鑑みれば、聴覚障害者が企業・団体等での職務の遂行する場合、電話の同時双方通信が不可欠である。電話が出来ない聴覚障害者は与えられる仕事の質的内容に大きな制限を受ける。電話リレーサービスの法制化・義務付け化を行い、電話リレーサービスの事業化が必要である。聴覚障害者が職場において、他の健常者が分からない聴覚障害特有の装置を使うのではなく、職場のインフラを使いこなすことが、職場定着上不可欠である。

図 各種製品に関する障害者配慮規定全体図

JIS Z8071 ガイド71
「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針」
指針作成のガイド
JISX8341-1
「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器・ソフトウェア及びサービス第一部:共通指針」
共通指針
JISX8341-2 第二部:情報処理機器
JISX8341-3 第三部:ウェブコンテンツ
JISX8341-4 第四部:電気通信機器
個別指針
各種製品に関する障害者配慮規定全体図

通信に関する経緯(一連のアクセシビリティ規定の体系は上図の通り。)

総務省が国際通信のアクセシビリティ標準として提案し、国際規定化して、帰ってきた国際規定の内容には電話リレーサービスの実施が記載されているが、日本のJIS規定の本文には反映されず、付属書に書かれてしまった。日本で電話リレーサービスの事業化の根拠は無く、権利条約第21条を根拠に総務省へ改めて、社会通信インフラとしての電話リレーサービス事業の実施を求めたい。

JISX8341-4「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器・ソフトウェア及びサービス」第四部:電気通信機器

上記第1部から第4部までいずれも表題に「サービス」の項目が入っている。

なお付言すると、日本において、通信アクセシビリティの国際標準まとめ実施の実績作りのためにITUに提案し、国際合意を得るために、電話リレーサービスを含めた規定として提案し、ITUにおいて、国際標準として合意した実績を作った。しかし、それが日本に戻ってきたら、日本の規定に含めないというやり方は、国家としてやるべき方策ではなく、日本人として情けないし、我々から見ても姑息な方法として映る。国際社会からも日本のこうした裏表に対して信頼されないであろう。

【通信・放送総合法】

通信・放送の総合的な法は検討中と思いますが、以下のことが気になります。

通信・放送の総合的な法体系の在り方<平成20年諮問第14号>答申http://www.soumu.go.jp/main_content/000027457.pdf

法体系を作るに当たって、伝送設備規律、伝送サービス規律、コンテンツ規律、プラットフォーム規律と分けて検討しています。規律の意味するところはよく分かりませんが、法の内容の章分けとして使っているならば、障害者福祉の観点が抜けており、障害者を意識した法とすべきです。

障害者福祉の規律を他の規律と同格とした通信・放送の総合的な法体系の検討が不可欠です。

【関口委員】

精神障害者に対する偏見的尺度として、「病識」がある。

病識は、本人が治療を必要としていない場合、治療を強制するために使用される概念である。本人が病気であることを認識していないことを、「病気が悪化している」などとして、本人の問題として対処している事実がある。

本人が必要としていない医療を施すことは、医療ではなく制裁である。

同時に、治療やサービスを必要とする者には、「病識があり、症状は良好」などとして、サービス給付をしない。

拒否すると強制し、要求すると貰えないと言った、あまのじゃくな対応をされている。

YesがYesであり、NoがNoであることを、重視されるような表現の自由を規定されるよう望む。

【土本委員】

わたしたちは わかりやすい じょうほうが ほしいと ずっと いいつづけて います。

さいていでも ぶんしょに ふりがなを つけろと いいつづけて います。

しかし ふりがなを つけても りかい する ことが むずかしい ことばが たくさんあります。とくに えいご の ことばが むずかしい。

ちてきの なかまたちは ものごとを りかいして かんがえて せいり することに こんなんがあり わかりやすい じょうほうと それを 自分のものに していく たくさんの じかんが ひつようです。

パソコンを つかい こなす 仲間は とても すくないです。

やくしょへ いろいろな ようじ で いっても たんとうしゃの いっている ことは むずかしい。

ふくし せいどや サービスに ついても なんど せつめいを うけても わからない ぶぶんも あります。

わたしたちには じょうほうを わかりやすく つたえてくれる せんもんの 人が いつも ひつようです。

ちてきの 仲間たちが じょうほうを えていくうえで ひつようとする ぐたいてきな はいりょや サービスは まったく ありません。

しゅわ や ようやくひっき などと おなじように ちてきの 仲間たちに わかりやすい じょうほうを つたえる 支援サービスを つくって ほしい。

てちょう や ねんきん ふくしサービスを うけられる ことを しらされていない 仲間たち。

かいしゃ で とつぜん しごとを やめさせらる 仲間たち。

はたらく人の けんりを ちゃんと せつめい されない 仲間たち。

あくとく しょうほうを しらないために ひがいにあっている 仲間たち。

びょういんに いきたくても おかねがなくて がまんしている 仲間たち。

しらいない と いう ことで だまされ つづける 仲間たち。

などなど じょうほう を うける しえん がない ために おおくの なかまが ひどいめに あって いる。

【長瀬委員】

(情報アクセス、コミュニケーション、「生きること」)

現在、マイノリティの立場で情報アクセシビリティから遠ざけられている人々がいるということが、どれほど、個々人の人生にも、社会全体にも、萎縮、絶え間ない不安と緊張、不利、損失をもたらしているか、という基本認識の共有を求めたい。

現在までかけられていない費用が新たにかかるというので、「国庫も赤字だから、事業者は価格競争しているから」できないといった「理由」が常にもちだされがちである。厚生労働省管轄の障害保健福祉関係予算で、地域生活支援事業は440億円、前年度からの増額はなく、市町村は、地元の聴覚障害者グループがノートテイカー(筆記者)派遣を求めても、お金がないから実施できないと言っている。たとえば、ある自治体で差別禁止条例をつくるために、聴覚障害者を含む市民の手で会議をたちあげたが、その会議で必要なノートテイカーは自前で用意するしかないといった状態がある。

財源の議論は、対人的には社会的な投資、社会的利益のために、現在の予算の「配分」を分離・隔離ベースから共生協同ベースへと基本的に変更する問題として、そしてインフラ整備、技術開発やサービスに携わる人を含めた新規雇用の創出という「社会経済活性化」の問題として、事業者負担と国庫負担をどのようにするかなど、積極的な方向へ議論を導きたい。

「情報へのアクセス」と論点には書かれているが、情報が伝えられず、十分に受けとることができなければ、本人が吸収し発信することも当然できないし、人とつながることができず、社会参画などとてもできない、その意味で情報アクセスの問題は「一方向」ではなく「双方向」のものであることの認識をもってほしい。

マジョリティの言語・情報環境で情報アクセス、コミュニケーションにとくに不利不便を感じていない人々は、空気のように意識することなく日々過ごしているので、なかなか理解も想像も及びにくい。従って、基本認識の共有をはかることが必要である。

情報アクセスと特にコミュニケーションについて、以下、参考資料として福島智オブザーバー(全国盲ろう者協会・東京大学)の論文を福島さんの御了解のもと、掲載します。

「「インフォメーションデバイド」と知的障害者のエンパワメント」

皆さん、こんにちは。アジア各国からお集まりの知的障害者関係の皆さんと今日一同に会することを、とてもうれしく思います。

21世紀を迎え、私たちはますます多様化し、複雑化する高度情報技術社会、つまりIT社会で生きることを要求されています。しかし、ご承知のように、この「インフォメーション」へのアクセスやその利用に困難を抱える人には、デジタル・ディバイドという問題が指摘されています。つまり、ITを利用する上でコンピュータをはじめとする情報機器の操作や活用、たとえばコンピュータへの情報の入力と出力を行う上での「読み書き能力」、つまりコンピュータリテラシーなどに大きな格差が生じてくるという問題です。

しかしながら、私は知的障害者を含む多くの人にとって、こうした操作性、あるいは機能面でのデジタル・ディバイドだけでなく、いわば「インフォメーション・ディバイド」とも言うべき構造的な問題が生じてくるのではないかと思います。

たとえば、視覚・聴覚の重複障害によりあらゆる情報の入手に困難を抱える私のような盲ろう者に対して、知的障害者は、入手した情報の処理や利用に困難を抱えているという特徴の相違はあるものの、この「インフォメーション・ディバイド」の問題は共通しているように思えます。どうすればこの困難な問題に対応していけるのでしょうか。私自身の体験も踏まえつつ、情報とコミュニケーションをキーコンセプトとして、この問題を考えてみたいと思います。

まず、私自身の体験をご紹介したいと思います。

私は9歳で失明し、18歳で失聴した全盲ろう者です。私が盲ろう者となったのは今から22年前、ちょうど国際障害者年の年である1981年のはじめのことでした。そのときまで私は全盲だったわけですが、全盲の生活と全盲ろうの状態とはまるで違うということに、私はそのとき気付きました。18歳で全盲の状態から盲ろう者になったとき、とてつもなく大きな衝撃を私は受けました。それは私の周りからこの現実世界が消えてなくなってしまったような衝撃でした。言い換えれば、それはまるで、この地上からちょうど地球の「夜の側」の宇宙空間、つまり、太陽の光がとどかない暗黒と真空の無重力の宇宙空間に放り出されたような感覚でした。私は絶対的な虚無と孤独感を味わったのです。

なぜ盲ろう者になったとき、私はこれほど大きな衝撃を受けたのでしょうか? それは夜空の星や海に沈む夕日といった美しい風景が見えなくなったからでしょうか? それとも、朝、目覚めたときに窓から流れてくる小鳥たちの歌声やオーディオセットから流れるバッハやモーツァルトの美しいメロディが聞けなくなったからでしょうか。

私はこれらの問いにいずれも「ノー」と答えます。もちろん、「風景」や「音楽」が感じられなくなったことも寂しいのは確かです。しかし、私に最も大きな苦痛を与えたものは、見えない、聞こえないということそのものではなく、他者とのコミュニケーションが消えてしまったということでした。

私は驚きました。他者とのコミュニケーションがこれほど大切なものであるということをそれまで考えたことがなかったからです。私は深い孤独と苦悩の中で考えました。「人は見えなくて、聞こえなくても生きていけるだろう。しかし、コミュニケーションが奪われて、果たして生きていけるのだろうか」と。

このように、私は絶望の状態にありましたが、その暗黒と静寂の牢獄から解放される時がやってきました。その解放には三つの段階がありました。第一はコミュニケーション方法の獲得、私の場合は新しいコミュニケーション方法の発見でした。つまり、「指点字」という新しいコミュニケーション法が母によって発見され、私は再び他者とのコミュニケーションをとり戻すことによって、生きる意欲と勇気がよみがえってきたのです。

私にとっての解放のための第二の段階は指点字という「手段」を用いて実際にコミュニケーションをとる相手、身近な他者に恵まれた、ということでした。そして、第三の段階は、「通訳」というサポート、私にコミュニケーションの自由を保障してくれるサポートを安定的に受けられる状態になった、ということです。

こうした自らの体験をとおして、私は障害者の解放、すなわち自立と社会参加にとって大切なポイントは三つあると考えています。

その第一は、生きるための基礎的な手段を提供し、生きるうえでの意欲と勇気を障害者一人ひとりがもてるように励ますことです。このポイントには、教育やリハビリテーションの取り組みが含まれます。

第二のポイントは、こうした手段を駆使して、障害者が生活していくうえで、実際に接触する身近な他者が協力する、ということです。とりわけ、同じ障害をもっている仲間の協力はたいへん有益です。このポイントには、当事者や家族の自助的取り組みや市民の差別的な意識の改革、といった取り組みが含まれるでしょう。

そして、第三のポイントは、障害者一人ひとりが自らの幸福な人生を追求することを支援する仲間を安定的に支えるための、社会の法制度的な枠組みです。このポイントには、障害者に対する差別を禁止し、その尊厳を大切にする法律の制定や障害者の福祉や労働を支援する各種制度の整備、といった取り組みが含まれるでしょう。

言い換えれば、第一の側面が障害者自身のエンパワーメントであり、第二の側面が障害者一人ひとりの身近な関係者によるサポートであり、第三の側面は法的枠組みを含む社会の制度的インフラの整備ということです。

次に、こうした三つの解放の側面に関して、「コミュニケーション」と「情報」とはどのように関わるのか、また、ITは障害者の解放にどのような貢献が可能であり、どこに限界があるのかについて考えてみたいと思います。

まず、情報、およびコミュニケーションとはなにか、について考えてみます。たとえば、日本のある代表的な辞書では、情報は次のように定義されます。

【判断を下したり行動を起したりするために必要な、種々の媒体を介しての知識。】

これにたいして、コミュニケーションは同じ辞書で次のように定義されます。【社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。】

(「広辞苑」第5版)

もちろん、これらは現在実際に用いられている「情報」や「コミュニケーション」という語の多義性、多様性から考えれば、十分な定義とは言えませんし、この他にもさまざまな定義は可能であると思います。しかし、この二つの定義を比較しただけでも、重要なことが少なくとも一つは分かると思います。それは、「情報」と「コミュニケーション」という言葉が持つ概念には、大きな質的違いがある、ということです。すなわち、「情報」は知識という静的な、そしてある意味で物質的な存在であるのに対して、「コミュニケーション」はその担い手としての人間の存在と、コミュニケイトする、という行為を前提とした「動的なプロセス」だということです。

ここで聖書を例にとってお話しさせてください。特定の宗教に関する話題を出すことをおわびします。私自身クリスチャンではありませんが、これから私がお話ししようとする内容を説明する上で助けになると思いますので。

さて、ここに1冊の聖書があるとします。聖書自体は「情報」です。それが紙でできた本なのか、コンパクトディスクなどに入った電子図書なのか、といった媒体がなんであるかに関わらず、また書かれている言語が英語であっても、日本語であっても、その他の言語であっても、聖書自体はたんなる「情報」でしかありません。しかし、その聖書の内容について、たとえば教会で牧師や神父が説教をしたり、信者同士が語り合ったりすれば、その瞬間、聖書の内容は「コミュニケーション」のプロセスに同化して、時間と共に動き、人間の実人生に影響を与えうる存在になった、といえるでしょう。このように、「情報」と「コミュニケーション」は一見似ているようで、かなり異質な概念ではないかと思います。

ところで、IT社会の特徴とはなんでしょうか。IT社会の重要な特徴の一つは、すべての人ができるかぎり多くの情報を、さまざまな情報媒体で入手し、瞬時に処理・活用することが奨励される社会なのではないでしょうか。そして、IT社会の進展と共に問題化しているのがみなさんご承知の「デジタル・ディバイド」です。

ここで改めて、デジタル・ディバイドについて、さきほどの聖書の例で考えますと、それは聖書という本の内容自体がなんらかの理由で読めないという問題に対応するでしょう。つまり、聖書そのものが手に入らないこともあるでしょうし、書かれている言語が母国語でなかったり、あるいは文字が小さすぎて読みづらかったり、周囲が暗すぎて字が読みにくかったり、その本が古すぎるのか、あるページが開いたまま紙がはりついてしまって、ページがめくれなくなっていたり・・・・などといくらでもトラブルのパターンは考えられます。

これと同じことが、コンピュータのようなIT機器の利用においても生じうるということです。たとえば、ある人が所属する国や地域、家族などの社会・経済的事情で、コンピュータ自体が入手しにくかったり、適切なソフトがなかったりする場合もあるでしょう。また、その人自身の障害や加齢などの身体的条件、教育・文化的な条件等で、画面の文字が見えなかったり、取り扱い説明書が読めなかったり、キーボードの操作ができなかったり、などといった、やはりさまざまなトラブルのパターンが想定できます。

しかし、こうした、情報媒体へのアクセスそのものの難しさは、その媒体自体の改良や工夫で対応が可能だと思います。

ところで、聖書に書かれているイエス・キリストの教えという「コンテンツ」へのアクセスはどうでしょうか。それはどのように読みやすい文字や装丁で聖書を印刷・製本しても、どのように明るい部屋で読んだとしても、分かりやすくなるとは限りません。これと同じように、どれほど使いやすいコンピュータを作っても、それでさまざまなコンテンツの利用や理解が保障されるわけではないと思います。つまり、コンテンツが含んでいる情報の意味、ねらい、意図などの理解自体が難しければ、どんなに優れたITも意味をなさないだろうということです。私はそこに「インフォメーション・ディバイド」の問題があるのではないかと思います。

一般的な意味での知的障害者だけではなく、盲ろう者のような重度の感覚重複障害者や文化的・教育的条件の制約等で「情報の内容」自体がなかなか理解できない人は、世界には数多く存在すると思います。それでは、たとえば知的障害者が直面するこのような「インフォメーション・ディバイド」はどのように解消されるべきでしょうか。

私は鍵を握るのは他者とのコミュニケーションだと考えます。つまり、聖書の例でいえば、聖書そのものの入手しやすさや文字の読み安さを向上させるだけではなく、その内容理解を助ける牧師や神父、信者仲間の存在、働きが大切であるのと似ているのではないかと思います。

その意味で、すべての人にとって価値のあるIT(インフォメーションテクノロジー)の進展は、常にC-ATコミュニケーション-アシスティブ・テクノロジーとでも呼ぶべき、コンテンツの理解を助ける支援技術と共に発展することが期待されるのではないでしょうか。さらに、それは人によるコミュニケーションサポートを常に重要な要素として含むべき支援技術なのではないかと思います。

私はさきほど知的障害者を含む障害者の解放をめざす上で重要な側面として、第一に、障害者自身のエンパワーメント、第二に、障害者一人一人の身近な関係者によるサポート、第三に、法的枠組みを含む社会の制度的インフラの整備という三つの側面をあげました。

これら三つの側面それぞれに対して、ITは重要な貢献を果たしうると思います。そこでまず大切なのは、デジタル・ディバイドなくす努力です。しかし、それだけでは不十分です。インフォメーション・ディバイドを生じさせないための支援、しかも、テクノロジーと人の両面からの広義のコミュニケーション支援がますます求められて来るのではないでしょうか。

私たちが作っている社会の究極的な目的はなんでしょうか。それは社会を構成する私たち一人ひとりがそれぞれの人生において幸福を追求していけるように相互に支援することではないでしょうか。各人が幸福を追求する上で、多くの情報が活用できることは確かに便利です。

しかし、ここで私が最後に強調したいことは、ある人が入手し、利用する情報の高度さや複雑さ、あるいは分量の多さといったものと、その人の幸福の実現度とは相互に独立した要因だ、ということです。

「情報」の活用はあくまでも幸福追求の手段の一つであり、目的ではない、ということです。それはちょうど、聖書において用いられている膨大なことばがすべて手段であって、目的は、おそらくたった一つ、「愛」ということばに集約される価値を人間の生活において実現させることと似ているでしょう。

私たち障害者を含むすべての人々が願っていることは、たんなる利用可能な情報量の増大でもなければ、たんなる情報処理の速度・効率の向上ではないでしょう。私たちは他者と共に心豊かな生活をおくることを願っているはずです。そして、そのためのもっとも重要な鍵は、私たち一人ひとりが無意識のうちに生み出してしまっている心理的なバリア、すなわち、「人間の相互理解におけるインフォメーション・ディバイド」をなくしていくことではないでしょうか。人と人との直接のふれあい、密度の濃いコミュニケーションこそが、この人間同士のインフォメーション・ディバイドを解消していく道なのだと私は確信しています。

皆さん、共に歩んでいきましょう。

ありがとうございました。

(福島智、2003年8月21日、つくば、第16回アジア知的障害会議)

【久松委員】

犯罪による収益の移転防止に関する法律(ゲートキーパー法)による本人認証や与信等の本人確認において、本人であることを電話で確認する規定があるために聴覚などに支障があって直接確認できない場合に与信できない問題がある。

とりわけ盲ろう者はFAX等の文面確認もできず不合理をこうむっている。電話リレーサービスあるいは介助人を介する本人確認の仕組みを早急に確立されたい。

なお、本件の論点は「情報へのアクセス」が中心であるが、障害者権利条約の規定にある「コミュニケーション」「言語」を含めた総合的なバリアフリー法の整備が必要であるので、以下の「情報・コミュニケーション保障法(仮称)」の制定が必要であるので、その骨子を以下に提案する。なお、言語バリアフリー政策の一環として「手話言語法(仮称)」を個別法として整備することが必要と考える。

「情報・コミュニケーション法(仮称)」の骨子を以下の通り考える。

(1)情報・コミュニケーション保障を必要とする障害者(情報障害やコミュニケーション障害を生み出さない)

(2)言語の定義

障害者権利条約の言語の定義を援用して手話を言語として定義し、日本語と同等の地位(公用語)を獲得する。

(3)コミュニケーション及びコミュニケーション手段の定義

コミュニケーションは双方向による意思の疎通、意思の発信、意思の受信等を含み、これらが個人あるいは集団において自由かつ円滑に行われるよう保障されなければならない。障害者権利条約のコミュニケーションの定義を援用して、障害者があらゆる生活の場で使用するコミュニケーション手段を定義化する。

(4)情報の定義

人間の生活や行動に影響を与えるすべての事象であり、音、光、紙、電気、電信、通信、生体シグナル等の媒体を通じて発信されるものをいう。具体的には、音声情報、文字情報、手話情報、図形情報等あらゆる情報をあらゆる媒体を通じ自由にかつ円滑に受信し発信することができるよう保障することが必要である。

(5)選択権

言語およびコミュニケーション手段を選択する権利を有する。

(6)情報保障およびコミュニケーション保障

言語およびコミュニケーションの形態、手段、様式による情報の保障と、政治、司法、選挙、医療、生活、教育、放送、通信等あらゆる場面での必要な情報アクセス、情報受信、情報発信およびコミュニケーションを保障する。

(7)通訳者(手話通訳、要約筆記、盲ろう者向け通訳者等)養成・派遣・設置の制度化

市町村レベルでの通訳を学ぶ人の養成、都道府県レベルでの通訳者の養成、通訳者派遣(広域派遣含む)、通訳者設置を義務化し制度化を図る。

(8)情報・コミュニケーション保障を支援する個別障害を対象とした総合センターの設置

なお、この総合センターは、既存の視聴覚障害者情報提供施設等の機能を拡大・発展させ、生活支援、教育支援、医療支援、就労支援、移動支援等支援機能のほかにあらゆる相談機能を含む。

【森委員】

情報へのアクセスの効率性を高めるためのさまざまな手段、方法の開発が、それらをつかえない障害のある人々に対して差別を生じるような状況を作り出す可能性も考えられうる。また、情報の授受に関してさまざまなICT技術が活用されて便利で、快適、経済的なシステムが構築されるときに、それらのシステムに適応しがたい障害のある人、高齢の人がそれらから取り残されていく不安が存在する。

これらの状況について十分に認識し、特定の人々がそれらのシステムに取り残されることを防止するためにも、種々の検討において障害者、障害者の状況について熟知している支援者の関与が求められる。