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自閉症児政策として現場からの要望(要約) 日本自閉症協会

「障がい者総合福祉法(仮称)」をめぐる、自閉症児・者支援の在り方に関して、日 本自閉症協会から以下の要望を行います。

発達障害障害者支援法の見直しを行い、今後とも本協会の意見を十分聴取するよう取 り計らって下さい。

また本人や家族の孤立周囲の合意的配慮が得られにくいので、まず障害を分けて対処 を考えることが必要と思います。そして特に強調すべきことは、成人期となると、自閉 症、広汎性発達障害にかかわる緊急な対処を必要とする潜在的な問題が圧倒的に多い事 を知って欲しいのです

以下要望内容の概要を列記します。

  • *障害者支援に関わる法律、制度の制定において、障害名として『自閉症』を明記して 下さい。米英のように、「自閉症法」の制定をお願いします。
  • *国の審議会に専門家の配置を行うとともに、市区町村の自閉症にかかわる対応の体制 を強化してほしいと思っています。
  • *自閉症についての支援実績のある専門家や専門組織の見解を求める緊密な連携した 施策を行うよう行政改革をお願いします。
  • *自閉症の人たちの各ライフステージに応じた支援体制の整備、強化を図ってほしい と思っています。特に、支援人材の育成、確保は急務です。そのために、支援者育成事 業と資格認定を検討し、実現してほしいと思っています。
  • *早期診断、早期発見にかかわる保健所健診制度の専門化および小児神経科、児童精神 科医療の充実を図り、診療報酬点数の引き上げを行ってほしいと思っています。
  • *早急に地域中心に傾き、入所施設抑制の「脱施設化政策」を改善し、、従来から重度 の障害である自閉症の行動障害を無視している、自閉症の特性対応に有効な自閉症施設 (自称)を自閉症総合援助センター(仮称)として有効に活用する施策をとって欲しい。
  • *20 歳未満の児童が成人施設等に入所したときの特別児童扶養手当の継続支給を行 ってほしいと思っています。
  • *発達障害者支援センターの再生、強化とそのブランチ整備を図り、全国的な需要に対 応してほしいと思っています。
  • *自閉症手帳の創設を行い、年金、就労等に有利な道を開いてほしいと思っています。
  • *高等学校に直接支援学級(自閉症学級)の創設を図るとともに、高等学校中退者の進 路体制の整備を図ってほしいと思っています。
  • *従来の身体障害、知的障害、精神障害の就労支援方式では対応困難な自閉症に特定し た就労前および就労後の支援システムの構築を図ってほしいと思っています。また、特 別支援学校における自閉症に対する職業教育の早期開始を行ってほしいと思っていま す。また、企業への自閉症就労施策の強化および啓発を図ってほしいと思っています。

自閉症児者対策として日本自閉症協会からの要望

発達障がいに関わる施策を検討する場合には、発達障がいとして一括せず、自閉症、 高機能広汎性発達障がい、AD/HD、LD その支援内容課題について、共通のものもあ るが、むしろそれぞれに「全く違った支援」も必要となるということを強く認識してい ただきたいと思います。

自閉症スペクトラムにおける、対応し難い強度行動障がいとして、また知的障害を伴う 自閉症は既存の教育や就労支援に適応できにくく、さらに最近は、成人期以降の家庭内 での家族からの孤立や抗争が生じ、本人及び家庭への支援困難な高機能広汎性発達障が い(自閉症、アスペルガー等)の事例が多くなっていることです。

1、法律・制度について

*法律・行政に関わることについて

障がい者基本法の付帯事項に記載されても、発達障害者支援法が制定されても,一向 に自閉症対策は前進していない。自閉症の人の困難な生活実態を考え、必要な法律、規 定等の整備を行ってほしい。また、自閉症の特性は、社会的生活枠組み(常識的な規制) から逸脱しやすい。この社会的生活枠組みの緩和なくしては地域生活が困難である。真 のインクルージョンが極めて困難な障がいである。英米における自閉症法制定に次いで、 我が国においても、自閉症法の制定を行ってほしい。そして、その中で現在の現実的に 支援資源の皆無な状態を改善してほしい。

我が国の発達障害に関わる政策においても、自閉症スペクトラムは知的障害を伴う自 閉症と高機能の自閉症スペクトラムに二分割されている。また国においても厚労省、文 科省、法務省等が同じような自閉症に関わる課題を、省庁毎の異なった縦割りの対策を 立てて対処している。国会議員、行政関係者も、自閉症の実体に触れ、理解している発 言が極めて少ない。特に要望したいことは、自閉症者の支援に携わる事業者等から実態 を把握し意見を聴取してほしい。

2、自閉症児への支援

*障がいの一元化の困難性

一部の地域では、障がいの一元化は理想的なことではあると思われるが、一部の地域で は(主要都市等)、過度の環境の刺激の為、支援の困難さや、自閉症の生きにくさをも たらす。これを防ぐために、整理された環境づくり、専門的な支援者が必要である。障 がいの一元化により、特に自閉症の障がい特性が顕在化される。これを、排除の方向に 向けず、その障害特性へ対応できる支援者の育成、確保を行ってほしい。特に支援者の 専門性の向上を図る施策を求めます。

*自閉症児への適切な支援環境の構築を

①通所施設から

きめ細かな障がい児の福祉

(1)障がい児に必要な医療、療育等を地域において提供することができる施設の整備を どう考えているか、現状としては、地域生活のなかで、制度も変わり、自閉症児が幼 稚園・保育所に通う傾向にある。しかし、以下の問題がある。

  • ◆現状の幼稚園・保育所の体制のなかでは、自閉症児の対応に困っている。
  • ◆訪問・巡回指導等を受けている幼稚園や保育所も多いが、その時々のアドバイスで は表面的な理解による形だけを変えた対応となり、余計に自閉症児が混乱してしま う傾向にある。
  • ◆理解されないまま集団参加だけを求められるケースが多く(行事参加を含む)、児 童の内面的な負担を増し、二次的障害を引き起こしやすい。(児童を取り巻く、人 や状況に対する過度の緊張感や抵抗が増え、現実の状況に向き合えず、常にうつろ な状態となる。)
  • ◆高機能の自閉症スペクトラムの子どもは、幼稚園や保育所では、どうにかまぎれて 適応しているが、小学校でその障がいが顕在化されてくる。
  • ◆子どもに向き合えない親が、長時間子どもを預けられる保育において、自閉症児の 親子関係の改善に関しては放置されたままになる。
②入所施設から

現在の障害児入所施設では、自閉症・発達障害の子どもが増えてきている。また、 その支援の難しさ故、指定基準の職員数では慢性的な人員不足を抱える状況にある。

この施設支援の中で、優れた人材の確保が必要となる。知的障害児に比べて、知的障 害を併せ持つ自閉症児への支援の難しさは、強度行動障害の支援などで周知のことで ある。また最近は、高機能広汎性発達障害(高機能自閉症スペクトラム)の子どもで、 家庭や地域、学校等で非常に支援困難が訴えられている。自閉症児施設はもとより、 知的障害児施設においても、支援困難な自閉症の具体的な行動やその心理的内容など の特性を理解して対応するような施策を求めたい。自閉症児施設には第1種(医療型) と第2種(福祉型)があるが、設置以来、その数が変わっていないどころか1施設減 っている。(全国で8施設から7施設へ)これは、地域支援が整ってきたことである が、強度行動障害児に関しては、現在の施設利用制度では対応できにくく、民間法人 などへの一層の助成措置が必要である。

一方、成人施設においては、従来のグループホームやケアホームの構想では対応が 難しい。他の障害者支援入所施設(特に知的障害者入所施設)が自閉症児・者の支援 拠点として適切に利用できるように再編する必要がある。(実情として、知的障害者 施設には自閉症者が多く入所している。)また、知的障害者入所更生施設の中に自ら、 自閉症者施設と称し、全国の67施設が集まって全国自閉症者施設協議会を設けてい る。そして、入所型の自閉症者施設が社会から隔離状況にならないようにその機能を 多様化し、通所や、ショートステイやグループホームのバックアップなどとサービス 機能の多様化を図っているので、これを正式に自閉症総合援助センター(仮称)とし て認知して制度化して欲しい。(たとえば、自閉症圏の人々を対象とする入所施設の 拡充と整備 の必要性として、医師のところへも親の高齢化と共に在宅指導が困難に なってきてるケースが増えている。最悪の場合に退所し得る入所施設があってこそ通 所施設が生きてくる。今日も、77 歳の父親が来院し、乱暴や無断外出・徘徊を繰り 返す35 歳の子どもを、「殺してしまおうと考えることがある。殺人罪で服役しても、 あと数年の寿命だから」と訴えていた。)

3、支援の特性に関して

*コミュニケーション支援の提供体制について

「障がい者総合福祉法」の中で、司法に係る手続きにおいて「障がい者の意思疎通の 仲介に関する援助を提供する体制を充実する」とあるが、自閉症のようにまさにライフ ステージを通して、その部分に要援護性の核心がある障害の場合、援助サービスの提供 主体となる専門性を有する機関をどこに求めるかということが問題になる。これは、発 達障害特に自閉症の対応困難ケースに臨床的に関わり、実際に支援し得た経験をもつ機 関(または施設・事業所)でなければならないと思われる。また、現行制度で言えばまず 早期健診制度から考えて、専門である小児神経医学、児童精神医学の専攻者が極めて少 ないことは早期発見を遅らせたり、その後の医療体制が整っておらず、わずかに保健師 が自閉症の事例に取り組むことから対応されている状況も感じられている。診療報酬の 見直しを初めとして専門家としての医療関係者の確保を求めたい。また、制度化されて いる発達障害者支援センターが自閉症に関わる相談に当たるが、その傾向として、高機 能の青年、成人期からの自閉症関係者の深刻な相談が目立って多くなってきている。現 在の同センターの人員では、サービス供給はとうてい不可能である。そこで、発達障害 者支援者センターの陣容を大幅に拡大(人員の配置増、施設・設備整備の新設)して、サ ービス提供体制をも備えた機関として位置づけると共に、もしそれを市区町村における 地域生活支援事業として行うのであれば、センターの整備目標数値を市区町村ごとに1 箇所以上とするなど、相当思い切った施策をとることが望まれる(それでもなお、サー ビスの質的確保の問題は別にある)。

発達障害者支援センターの機能強化のための人員増については、国、都道府県レベル では難しいと思う。実態から考えると、既存の知的障害者施設や相談支援、就労支援関 係者に対する自閉症支援者育成研修を短期集中、並びに継続的な支援者支援、支援現場 の支援を継続して行なう体制をとる方が現実的である。その際、座学の他、現場研修を 必須とする。実習受け入れ施設として、現在の該当施設や支援機関の実態も厳しいと思 うが、支援者支援の核となるような人材育成を最優先したいので、その分の経営上の保 障が必要である。ただ、支援人材の資格制度や、支援施設の指定について、この際、導 入しても良いが、現場の実情に沿わないような資格や指定では意味がない。

また教育については、自閉症児は、制度上の位置づけとして自閉症児学級や国から筑 波大学に移管された自閉症児のモデル校として久里浜特別支援学校があるが、校長に身 体障害教育の専門家が相次いで赴任している。このような状況に憂慮の声も聞かれてい る。長年、自閉症教育が情緒障害教育という曖昧な状況に置かれていたこともあり、、 子どもの発達に合わせた進路の選択が困難なことが多い。例えば、以下のようなことが 挙げられる。

  • ◆特別支援学校に就学すると、その後の子どもの発達に合わせて、小学部の途中か ら特別支援学級、普通級に移行することが難しいことがある。そのため、親は先々 を考え現状の児童に見合わない選択(例えば、重度の場合でも特別支援学校を敬 遠する等)をしてしまうことがある。
  • ◆就学判定で『特別支援学級』となるが、親の意向・選択で通常級に通わせると、 通級を希望しても受けられない。また、『特別支援学級』の判定になり、通常級に 通わせると介助員がつかないという現状がある。しかし、これらのことは就学時 に明確な説明がない。
  • ◆教員だけではなく、特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーの自閉症 理解がない状況にある。そのため、誤ったアドバイスで悪化してしまうことがあ る。

学校現場においては、一部の知識により、自閉症児全てが同じ体制に入れられるこ とも少なくなく、個々の子どもへの正しい理解が得難くなる。まずは教員の自閉症児 理解の為の基本的な研修が必要となる。一案として、国・地方自治体・市区町村・民 間機関の連携による有能な自閉症児者支援現場におけるインターンシップ制度の整 備及び拡大を展開していくことが必要である。また、そこから、他支援現場へのスー パービジョン(指導助言)体制の整備を行い、自閉症児者支援の質的向上を切望して いる。是非とも政策として取り入れて欲しい。

*サービス支給内容の決定と実際のサービス供給という考え方について

現在の市町村で行っている障害者へのケア・マネジメントは、かなりの地域格差が あり公平な状況とは言い難い。この状況に加えて、障がいの範囲を広く考えた、いわ ゆる制度の谷間の障がいが加わることになると、その専門性を持った支援員人材の確 保が市区町村レベルで必要になる。また福祉サービスに関しても、居住地域において 提供するためには、かなりの社会資源の整備を必要とする。組織や人材の育成に関し て、自閉症支援ニーズの見えにくい支援困難な障害であることの認識を求めたい。全 国どこでも市区町村レベルで福祉サービスを提供できるようにするためのシステム 作りが必要である。

基本として、自閉症児・者が地域社会で生涯にわたり安定した支援を受けられる体 制を整備する様な地域資源の整備を行わなければならない。(最近国連で世界自閉症 啓発デーを決議し制定したことからもその深刻さが分かると思う)現在では、国・地 方自治体・市区町村・民間機関の連携が不足し、その情報や対策が自閉症児・者やそ の家族に及んでいない。また、民間事業者等からの情報及び意見聴取が十分でないた めに、自閉症児・者やその家族のニーズに合わせた施策が展開されていない。さらに 前述したように、サービスの提供の主となる専門機関が明確でない。そのため、地域 の現状に十分に考慮し、今後の自閉症児・者の地域生活事業を包括的に取り組む新た な行政拠点あるいは現行の福祉資源の整備、拡大が緊急に必要である。例えば、地域 の行政機関は、発達障害者サービスに生涯関係していく機関総ての連携をはかり、本 人に関しての有効なサービスの受け継ぎを行わせ、生涯にわたる本人へのサービス状 況の確認を行うことや、特に自閉症に関して、親亡き後対策として、自閉症者施設の 整備を行うことなどが求められる。

*自閉症者の社会生活・就労の問題

「障がい者総合福祉法」の「障がい者の総合福祉施策の改革推進の方向性」において、 「サービス体系の在り方」及び「就労支援の在り方」をみると、障害者へのサービスを 「生活・社会参加サービス支援」「居住支援(新グループホーム)」に統合し、更に就労 支援においても「一般就労以外の就労的事業(授産施設、福祉工場、更生施設、小規模 作業所等)を整理し、(中略)統合、簡素化するとともに、就労支援体制を強化する」とあ るが、この方向性は、現行の障害者自立支援法の方向性そのものであり、就労支援強化 の名の下に、障害者の自立=就労という図式になんら検討が加えられていないことにま ずは危惧を覚える。自閉症者のように社会性の獲得に障害のある人たちにとって、就労 するための前提となる「職場という社会」に入ることがまずもって非常に高いハードル である。それは、例えば知的障害を伴う自閉症者の場合だと特に顕著であるが、日常的 な生活そのものが援助者の存在なしには成り立っていないのである。自閉症者は、身辺 自立は出来ていても、単に作業スキルを高めるための職業訓練が為されればいいという ものではなく、働く場での人間関係や自信や自尊心を得る事を重視しているからである。

従って、施設内就労、授産施設、作業所、あるいは特例子会社なども含め、自閉症の人 たちが集団で働ける場を確保することが重要である。職場という集団の中での人間関係 を良好に構築することや、そこで受けるストレスをどのように消化するかとか、逆に職 場以外の生活の中で受けたストレスを職場に持ち込んでそれをいかに自傷・他傷・物壊 しといった行動障害という形で表出しないようにするか、といった部分での援助を多大 に必要とする。しかもそれらは一過性のことではなく、就労できた後も継続的に行われ る必要のあることである。そうした部分への目配りをした制度体系になっていくことが 望まれるが、それにはむしろ現行の制度を細分化もしくは、全く新たな支援体制(上記 のコミュニケーション支援の提供制度とリンクしてもいいかもしれないが)の構築を求 めたい。