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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付
障がい者制度改革推進会議担当室 御中

意見書 レジュメ

① 障がい者等の範囲、定義の見直しに関し、制度の谷間となっている引(ひ)きこもり
全国引きこもりKHJ 親の会(家族会連合会) 本部理事長 奥山 雅久
②『制度の谷間』への平準公平化としての生活機能障害の考察提言
同上 奥山 雅久
③「ひきこもり外来」医師からの提言」
◇長期化・重篤化したひきこもりへの支援の必要性について
新潟市特別医療法人 精神科心療内科 中垣内 正和

特定非営利活動法人〔内閣府認証〕
全国引きこもりKHJ 親の会(家族会連合会)
本部 理事長奥山 雅久
〒339-0057埼玉県さいたま市岩槻区本町1-3-3
FAX 048-758-5705
メール webmaster@khj-h.com
URL http://www.khj-h.com

尚、4月19日当日に下記参考資料を持参いたします。

  • 内閣府公開講座、厚労省シンポの特集号:全国機関紙「旅立ち」55号 70部
  • 最新 第7次全国アンケート調査冊子 (徳島大学+家族会) 3冊
  • 研究報告:引きこもり外来「長期ひきこもりにおける心身機能の変化について」 3冊

①意見

当障がい者制度改革推進会議の目指すべき基本テーマである、障がい間の偏見差別 の撤廃としての障がいの範囲、定義の見直しに関し、制度の谷間となっている、いわゆる 「引(ひ)きこもり」の緒症状(疾患、障害)→精神疾患、障害による引(ひ)きこもりを加入さ せる必然性を具申致します。

  • その論拠として、今6月に厚労省から出される「引きこもりのガイドライン」では、診断基準 であるDSM-4やICD-10に含まれる全ての障害概念を対象に含む、とあります。
  • すなわち、統合失調症、発達障害、不安障害、パーソナリティー障害、気分障害、 適応障害、強迫性障害、パニック障害等や重度の摂食障害、PTSD、癲癇、解離性 障害 等 を指します。(主に上記精神疾患、障害者等で未受診の引きこもり)
  • 当該制度への加入は、引きこもりのこれらの障害への早期対応の促進が図られ易くなる。 従って専門家の育成や対応スキルの集積、回復プロセスへの社会環境整備等が促進 されるばかりでなく、このことへの官民協働への基盤的な制度として当該制度が貢献する こととなります。
  • そして、青年から壮年化へと蓄積してしまっている長期重篤な引きこもり者へと遷延化し ている現状の阻止が図られ、いわゆる動態論のなかで、*○1 二次障害への移行の阻止が、 国家財政の*○2 費用対効果面でも当該制度が貢献することとなりましょう。
  • さらには、いま一つの困窮閉塞している「既に長期重篤な大人の引きこもり者」への支援 や生存権の担保は、当該制度が当事者や当該家族への大きな希望の光となり、励まし となり憲法第二五条に鑑がみ叶うところです。

* ○1 :栄養障害や栄養不良による脊髄の湾曲、放置した為の骨折、発声障害等の 身体疾患の合併症、知能の高度な低下などよる生活機能障害(ひきこもり外 来医師の報告)、他に全身衰弱による瑕疵や歩行困難等

* ○2 :大人の引きこもり当事者の生活費100万円/年間×100万人=1兆円 現在は100万軒の老いた親が面倒みているが、親亡き後国家の財政か・・・

②「制度の谷間』への平準公平化としての「生活機能障害」考察提言

当障がい者制度改革推進会議が真にWHO理念に則った方向への改革を目ざ すとするなら、「生活機能障害」の診断基準が必須と感じております。

以下に意見者の「私的体験と引きこもり」を事例として考察陳述致します。
私(意見者)は、思春期より白血病性骨肉種で左下肢離断(切断を重ね根元か ら左足を失う)で身体障害者手帳を有する者です。

さらに同疾患の転移により右肺切除と左上肺葉固定(放射性同位元素照射で 肺葉内ケロイド固定で肺機能四分の1)と後刻の別系統の胃癌で胃と胆嚢の切 除摘出などの面で身体的弱者です。

しかし幸いにも、今日まで30年間の会社勤務と10年余間引きこもり家族 会の全国代表の役務に耐えて来られました。

この私事は一例に過ぎませんが、その私から見れば、けして身体障害を軽く 診るわけではありませんが、「長期重篤な引きこもり当事者は『目に見えない障 害者』」と感じております。

すなわち、この様な身体障害者でもたまたま社会参加が可能な例が在るのに もかかわらず、長期重篤な引きこもり当事者は、いわゆる対人緊張、対人不信、 対人恐怖などにより、社会参加はおろか人そのもの、しいて言えば家人すら受 け入れられない面もあり、人間に生まれて人間の社会に入り難いレベルの方々 です。しかも「引きこもりガイドライン」の論拠となる多くの公的機関の研究 発表でも、引きこもりはDSM-IVやICD-10の全ての障害概念を含む、 とあります。全国的に現場引きこもりの家族会を見てきた私としてもこの障害 概念は正に実感であり、『目に見えない障害』と陳述致します

もしここに、ICF的理念での『生活機能障害度』を福祉支援への診断基準 に援用するならば、「上記障害概念で人に生まれ人の社会に入れない(アンコン トロール)」は、かなり上位の障害度となりましょう。

「人として生まれ人の中に入れないこころの傷」は人生そのものが成り立ち 難い深刻な「生活機能障害」です。

『制度の谷間』にあるこの引きこもり案件が「障がい者制度」に加えられる ことを強く希望致します。

③ ◇長期化・重篤化したひきこもりへの支援の必要性について

新潟市 特別医療法人佐潟さがた荘 精神科・心療内科 医学博士 中垣内なかがいと 正和まさかず
私は、2000 年の柏崎監禁事件以来、ひきこもり外来を拓いて、親の相談をうけ、主とし て親を強化する方法によって、ひきこもり当事者の家族との来院を図り、9 年間で約172 名の当事者の来院を得た。精神療法、社会参加プログラム、集団療法、薬物療法、居場所・ 自助グル―プ・親の会の設置など複合的な方法を駆使して対応し、当事者の6 割近くは就 学・就労などの社会参加を開始するにいたった。

平成 22 年2 月、論文「長期ひきこもりにおける心身機能の変化」(アディクションと家 族誌)に発表するにあたり、15 年以上のひきこもり者15 名(全体の9%)を長期化群とし て抽出したところ、平均して17 歳から開始して、その期間は約20 年にも及び、受診時に は37 歳に達していた。この群は、ひきこもり問題が騒がれだした西暦2000 年にはすでに 平均30 歳となり、10 年のひきこもりを経過していた群である。ひきこもり発生の原因とし て、中学不登校群には社会不安障害や思春期うつ病、高卒群には受験をめぐる葛藤・挫折 が多かった。長期間のひきこもりを経て受診した段階においては、ほとんどのケースが「回 避性、シゾイド、自己愛性などの重篤なパーソナリティ障害」(DSM-IV)と診断され、極 度の栄養不良・栄養障害や放置された骨折、発声障害など身体疾患の合併が多く、なかに は知能低下まで来たしたケースもあった。13 名が入院による社会参加プログラムを受け、 高卒認定資格4 名、自動車免許1名取得と就学者は一定数存在したが、就労者は2 名であ り、15 年以内の他群と比較して就労率が極度に低かった。受診時にうつ病、被害妄想、興 奮状態などの精神疾患を合併したケースも少なくなく、総じて高度の「生活機能障害」を 引き起こしており、経済の自立はおろか、生活の自立も困難な一群と思われた。全国のひ きこもり総数を100 万人とみなした場合には、単純に推測すると、生活機能障害を起こし た長期ひきこもり者は5~10 万人は存在すると推定される。2008 年の親の会(KHJ)の統 計では、当事者の平均年齢30 歳、平均期間10 年に達したと報告されたが、このまま対策 のないまま5 年放置された場合には、15 年ひきこもりに達することになる。「生活機能障害」 は極端な運動不足、社会的刺激・人間関係の欠如、精神生活の低下、身体疾患の合併、偏 った食生活による栄養不良、栄養障害など複合的な要因によるものと思われる。単一障害 の判定による現行の障害者年金制度では、精神障害・知的障害・身体障害の3障害を合併 して、とくに生活機能障害をきたした長期ひきこもり者に対する福祉対応は大きく不足し ている。「ひきこもり」に不登校を含むことで一次予防は広がり、ひきこもりの対象を統合 失調症、不安障害、うつ病性障害、発達障害に広げることによって、2、3次予防の充実 を図ることができる。しかし、すでに長期間ひきこもって、「生活機能障害」を惹起した10 年以上、15 年以上の中長期群に対する対策はいまだ大きく不足し、新ガイドライン(予定) においても焦点は十分当たっていない。「長期化を予防することの重要性」と「生活機能障 害をきたしたひきこもりに対する精神保健福祉的な対応」の緊急の必要性を訴えたい。(了)