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2010年4月13日

難病をもつ人の地域自立生活を確立する会
代表代行 西田 えみ子

意見書のレジュメ

1.「制度の谷間」のない障害者制度に関する意見

  • 制度の対象にならないために、助けを求めても助からない人への緊急対策、経 過措置の必要性について
  • 既存の制度から排除されている人の生活について

2.当会の障がい者制度推進会議総合福祉部会への参加に関する意見

以上の意見を1ページ目に記載しました。

資料① 介護、就労等における「制度の谷間」にある対象とは…P2
資料② 制度の谷間があり介助等が利用できない難病等の事例…P3
資料③ 障がい者総合福祉法にむけた障害者手帳要件緩和措置の案…P4~5

「制度の谷間」のない障害者福祉の改正は急務。障がい者総合福祉法部会での当会の参加保障を

難病をもつ人の地域自立生活を確立する会
代表代行 西田 えみ子
〒101‐0054 東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5F
TEL 03-3296-7137 FAX 03-5282-0017

1 「制度の谷間」にある当事者の生活は待ったなしです(資料①、②参照)。マニフェスト、与党3 党合意である「制度の谷間」のない障がい者総合福祉法に向けて、障害者手帳要件による入り口規制 を見直し、緊急対策、経過措置を講じてください。

長年にわたり、介護等も受けられないまま地域で孤立し、入退院を繰り返し、命の危険にさらされ ている仲間がいます。無縁社会のなかで年間3 万2 千人にものぼる孤独死があり、「制度の谷間」に ある若年者の孤独死も多発しています。12 年連続で年間3 万人を超える自殺者のなかでメンタル的要 因以外でも、制度の谷間にある病者の自殺は1 万人を越え、社会問題化しています。既得権確保のた めに一部の人の障害者福祉に限定したり、目先の予算削減ありきで問題を放置し続けることは、更な る社会的損失につながります。人道的な観点からも、支援を必要としている方の実質的な救済措置を まずは講じるべきです。障害者総合福祉法の成立を待たずしてもできる緊急対策、経過措置を早急に 講じてください。障害者手帳をもっていない難病等の人でも、医師の意見書、1 週間の利用計画表等 を提出したものは、入り口で排除せず、他のものとの平等を基礎として日常生活、社会生活上の参加 に制限が認められる人は介護、就労支援等の対象としてください(資料③参照)。人と人との協議調 整による支給決定にむけて、ソフトランディングさせていく経過措置にもつながります。

私たちへの対策は、障害者自立支援法の成立時や3度の緊急対策からも洩れ続けた経緯があり、マ ニフェスト選挙をなし崩しにする行為は政治不信も助長します。今回こそ優先順位をあげて対策を講 じるべきです。

2 私たち抜きに、私たちに関することを決めないでください。ヒアリングだけの白紙委任は出せませ ん。障がい者総合福祉法の部会において、医療の議論だけでなく、介護や就労等の「福祉の谷間」の 問題について提言を続けている当会の議論への参加を求めます。

前述のように「制度の谷間」にある当事者の生活は待ったなしで、大変危機感をもっています。社 会モデル、医療モデルといったイデオロギー対立だけに議論を終始させることなく、実質的な救済措 置を進めるための議論が必要です。すでに制度の対象となっている既存の団体、臓器や疾病別といっ た不合理な対象だけの障害者施策となれば財務省にも予算要求時に説得力を欠きます。マニフェスト をなし崩しにするのか、全ての必要な人がアクセスできる障害者施策をめざし、対象を広げていくの か、障害者運動も分岐点にきていると思います。ここで方向を誤れば、なんで障害者ばかりといった、 福祉内格差を広げ、より低い方への負のスバイラルに自ら手を貸すことにもなります。全ての市民の ためのアクセス可能なセイフティーネットとしての役割もあることを強調すべきです。そのためにも マニフェスト事項である「制度の谷間」にある当事者である、当会の参加の保障を求めます。当会の 「障がい者総合福祉法の部会」の参加承認の決議をお願いいたします。

資料① 介護、就労等における「制度の谷間」にある対象とは

障害者自立支援法の身体障害については、第四条(定義)で身体障害者福祉法の対象と規定してあるの で、下記の谷間にある方々がどんなにその障害が重度で、介護や就労支援が必要な状態でも、入り口で 排除されます。基準にある障害を2次障害等で発生した場合においてのみ限定して対象となります。精 神障害、知的障害については、このような手帳要件がないにもかかわらず、身体障害だけ手帳要件が設 けられ2 重に入り口規制されています。

身体障害者手帳(身体障害者福祉法)で対象外とされている障害

①臓器別で排除されている障害
すい臓、脾臓、胆道等の臓器に起因する障害は対象外
*日本は腎臓、心臓、大腸等だけに限定。肝臓も数値基準等が厳しく、介護等が必要であるにも 関らず、対象とならない方がいる
②疾患ごとで排除されている障害
血液・リンパ、免疫系(HIVを除く)の障害は対象外
*日本は免疫障害をHIVだけに限定。膠原病等の他の自己免疫性疾患は対象外。
③代謝及び酵素系の障害も対象外
④皮膚障害等に関わる障害も対象外
⑤活動障害は認められていても原因となる機能障害の違いで排除されている障害
A 2km歩行できるかどうかについては、筋肉、骨格、神経に原因がみとめられる機能障害が ある人だけに限定。血液、免疫、臓器等の障害が理由で2km歩行できない人は対象外。
B 下記の症状が継続して障害とされるのはHIVだけ。血液・リンパ、免疫等を原因として同 じように社会的制限が認められていても対象外。
・一日一時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労が月に七日以上ある、
・月に七日以上の不定の発熱(摂氏三十八度以上)が二か月以上続く
・軽作業を超える作業の回避が必要である等

介護保険は65 歳以上で若年者は対象とならず、40 歳以上の特定疾病も15 疾病に限られる

難病居宅生活支援事業は難治性疾患克服研究事業130 疾患と慢性リウマチに限られる。又、この事業を 実施している自治体も全国で35%しかないために、住む地域によって利用できる人、できない人が出 てしまう。

障害者の雇用の促進等に関する法律や特定求職者雇用開発助成金においても、実際の就職のときに必要 となる障害者の法定雇用率や給料を補填する特定求職者雇用開発助成金については身体障害者手帳の 保持が要件となっているために、上記の手帳制度で谷間にある方々利用できない現状。結局は生活保護 制度等、他の制度に過重に負担がいく仕組み。障害者職業リハビリテーション等の訓練の対象では障害 者手帳要件を問わず対応しているので、訓練だけに終わらせることなく、就職時にも利用できるように 支援の継続性を担保すべき。

資料② 制度の谷間があり介助等が利用できない難病等の事例

①33歳女性 埼玉県在住 骨髄性血小板増多症 19 歳ごろから症状あり 障害者手帳なし 一人暮らし

<症状>脳梗塞に近い状態で体が動かなくなる。だるさ、痛みが酷く、動いた日の翌日から続く。一日一時間以上安 静にして寝ている必要が毎日ある。感染しやすいので人ごみを避ける必要があり、少しのタバコの煙でも脾臓の痛 みが出る。日光による火傷や体のだるさも酷く外出制限がある。特に免疫が弱くなっているのでカビや科学洗剤に も弱い。生理は四日間最低寝込む(出血過多)。甲状腺、腎、肝機等の機能低下、全身いたるところに症状がでる。 以上のような症状が10 年以上続いている。

<介助>家事支援等による体力的軽減が必要。週に1,2 回でも

<外出>通院、買い物をかねて週に1,2 度。外出後は寝たきりになって体力の調整が必要。

【当事者の声】
この10 年間で私がやっていた生活が全部だめになり、失うばかりでした。若くして症状がでたので、働いて、貯金をた める機会も奪われました。週3 日働けているときも、一日、一日出勤するのに覚悟がいりました。お化粧をするだけで も疲れてしまって、帰ってきてもぐったりで寝ているしかない状態。体がついていかない。介助、年金などあれば、でき る範囲は自分でやっていきたい。今は、なんでもかんでも自分でやるしかない。様々な相談機関に行ったり、電話した りしましたが、理解してくれ心配し同情はしてくれますが、「ここでは何も出来ないんです…ごめんなさい…」と言う結果 ばかりで、何も変わりませんでした。これから先の生活も心配。歳をとっていくとどうなってしまうのか、なにかあれば 今の居場所すらなくなってしまのではと思うと心配。

②46歳女性 福島県在住 多発性肝嚢胞 33歳時に診断 障害手帳なし 一人暮らし

<症状>不定熱、腹水が内臓を圧迫し、腹囲の増大、腸閉塞を起こし食事が困難になることも。腹痛・腰痛、足のむく み・しびれ、ヘルニア、極度の疲労感、息切れ等、台所に立つのもやっとの状態。利尿剤の副作用も強い。月に3回 の救急通院を繰り返し入院へ。その後も制度改善なし。

<介助>家事支援、通院介助が必要

<外出>通院、買い物以外で外出なし。用事が済めばすぐベッドに横になっています。

【当事者の声】
腹水の内圧などもあり内臓を圧迫しています。無理をしないで、腸が飛び出さないように、皮膚が裂けないように活 動を制限する必要があります。いろいろな相談機関でもわからないと言われ、疾患名で差別され、余命があるかない か、歩けるか歩けないかなどの見た目で線引きされています。行政の支援窓口がないため、自分ひとりで、かかりつ け医、一般病院、専門病院間の連携もこなさなければならず、どの制度にもあてはまらない私は、自分で自分のケア マネージャー、ホームヘルパーです。心身疲れ果て絶望感でいます。

⑥35歳女性 1型糖尿病 10歳発病 障害者手帳なし

<症状>低血糖、高血糖昏睡を度々起こす。デスクワークなどの軽作業を越える作業の回避が必要

<介助>入浴、発作、通院の送迎で家族の介助を受けている。高血糖で動けない日は、家事支援が必要。

<収入>夫の収入のみ。家計は赤字。募集条件を満たしたアルバイトに応募しても病気を告げると不採用になる。

<外出>夫の病気や疲労が重なり、低血糖による交通事故を起こした。血糖値の変動が予測できないため予定が組 み難く、血糖値の処置で予定より時間がかかったり、約束をキャンセルすることがある。

【当事者の声】 死は私を苦痛、困りごと、痛み、心配を取り除いてくれる、只1つのモノだと思っています。子供達に、 夫に迷惑だけは掛けたくない。それが望みです。

*介護保険、障害者自立支援法、難病居宅生活支援事業の対象外です。

資料③ 障がい者総合福祉法にむけた障害者手帳要件緩和措置の案

1、まずは基準に不備のある障害者手帳の入り口規制を緩和する。下記のプロセス①、②、(③)の資 料を提出したものは障害者手帳がなくても④以降のアセスメントを受けることができるようにする。 ⑤以降の現行の支給決定過程を受け必要であると認められた場合は自立支援給付、訓練等給付の対象 とする。⑤以降の支給決定過程で必要ないと見なされた人は対象外。

注意 障害と見られたくない方は申請しなければ対象となりません。

2、補そう具、自立支援医療については、現行でも別基準がある。必要であれば、障害認定、補そう具 認定、自立支援医療認定を含めて別基準の改定を別途整理する。

プロセス①

医師の意見書の提出

  • *障害者自立支援法ですでに添付することに なっている医師の意見書の添付
  • *判定は自立支援法で運用している指定医
  • *必要であれば、6ヶ月の継続確認があって もいいのでは。

<趣旨>

  • ①生活、社会参加上の制約となる障害のイ ンペアメントの確認
  • ② 一時的な風邪や疾病でないことの証明。
  • ③医師の立場からの生活上の制約の補足

下矢印

プロセス②

サービス利用計画表の提出

  • *障害者自立支援法ですでに利用しているサ ービス利用計画表の添付
  • *難病の居宅生活支援事業でも実施している

<趣旨>

  • ①社会モデルに基づく、ソーシャルワークの 実施
  • ②1 日、1 週間のどのような生活のスケジュー ルで、どのようなサービスがどれぐらい必 要か判定材料とする。
  • ③生活スケジュールの全体把握をしないまま 排除されないようにする。1 日、1 週間のタ イムスパンで障害状況がどのようであるか 丁寧に聞き取る。

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プロセス③

障害年金基準の「その他の障害」での補足

  • *障害年金 3級「その他の障害」で判定基準 で補足。(判定用紙は現行のものを活用)
  • *現状の障害状態を把握することが目的であ るので加入要件はその際問わない。
  • *必要があれば、すでに添付できることにな っている病状・就労状況等申し立て書を添 付
  • *判定は日本年金機構で判定可能

<趣旨>

  • ①障害年金制度には「その他の障害」の判定 項目がある。身体障害者基準にはないので、 制度の谷間、漏れを解消。
  • ②就労支援の対象について、障害ゆえの稼働 能力の減退を判定
  • ③稼働能力の減退がどの程度続いているか年 次をおって把握。

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プロセス④

障害手帳をもつ人と同等の社会生活上の制限があるとみなす

資料①、②、③のアセスメントで障害が認めら れるものは、入り口で排除せず、障害者手帳が あるものと社会生活上の制限が同等に継続して いるとみなし、⑤以降の支給決定のアセスメン トを受けることができるようにする。

<趣旨>

①インペアメントだけの基準で排除されない ように、日常、社会生活上の制限がどれだ けあるかとの関係の中で対象かどうかを判 定する。

注意

  • ここまでが手帳要件に代わる入り口の判定
  • この後、障害者手帳がある人と同じ、支給量の支給決定をうける

下矢印

プロセス⑤  これ以降障害手帳のある人と同じ

障害手帳がある人と同等の支給決定を受ける

  • 勘案事項による聞き取り
  • 障害程度区分判定(廃止されるまでの間)
  • 市町村審査会
  • 非定型の審査会
  • 最終的な自治体での支給決定

<趣旨>

  • ①人と人との協議調整による社会モデルを採 用する必要がある。
  • ②経過措置として、人材育成も含めた移行期間 中は現行の支給決定を活用。
  • ③支給量の判定。ここで支給量が必要ないと判 定される場合は対象外とすることができる。

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支給決定通知の送付

<Q&A>

問1
市区町村が障害手帳のない人の日常生活、社会生活上の制限を判定することはできないのでは?
回答
市区町村は、既存の指定医の医師の意見書、サービス利用計画の作成、日本年金機構の障害判定、 病状・就労状況等申し立て書、CW,保健士、本人との協議調整による聞き取り調査、以上の総 合資料をもとにした審査会の判定をもとに判断すればよく、現状でも行っている支給決定です。 介護保険、難病居宅生活支援事業ではもっと少ない資料で支給決定しているので、十分可能です。
問2
障害者手帳のない人のサービス量を判定することはできないのでは?
回答
プロセス⑤は手帳の有る、無しにかかわらず同じプロセスで、現在も支給量を決定しているので 大丈夫です。

以上のプロセス①~⑤を経た場合であっても支給対象としない、難しいという説明こそ、問題を先送り にするための議論で、公平な支給決定とはいえません。障害者権利条約でいう、他のものとの平等に反 します。窓口を閉ざさず、人と人とが丁寧に生活状況を話し合い、判定することが必要です。