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ヒアリング項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

【総論】

○ 特別支援教育の推進に関する政府としての基本的考え方は、「インクルーシブ 教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえ、発達障害を含む障害 のある子ども一人ひとりのニーズに応じた一貫した支援を行うために、関係機関 等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、教 員の特別支援教育に関わる専門性の向上等により、特別支援教育の推進を図りま す。」(子ども・子育てビジョン〔平成22 年1 月29 日閣議決定〕より)とする ものである。

○ 文部科学省としては、インクルーシブ教育システムについて、理念だけではな く人的・物的条件整備とセットでの議論が必要と考える。条件整備が整わない中 での理念のみのインクルーシブ教育は、結果として、子どもの「能力を可能な最 大限度まで発達させる」との目的(障害者権利条約(以下「権利条約」とする) 第24 条)を損なう恐れがあることに留意すべきであると考える。

ヒアリング項目①

【ヒアリング項目】教育基本法 差別禁止条項の不存在

教育基本法4条1項は、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地 によって、教育上差別されない」としつつも、この中に、「障害」という文言はな い。「障害」という文言を挿入して、障害に基づく差別の禁止を明文化すべきとの 考え方について、どう考えるか。

回答

○ 第4条第1項は、憲法が定める法の下の平等や教育を受ける権利を保障する ために、すべての国民が等しく教育の機会を与えられ、教育上差別されない旨 を規定するものであり、同項に掲げられている事項は、憲法第14条第1項と 同じくあくまで例示である。したがって、障害が明示されていなくとも同項の 規定により障害の有無による差別は禁止されていると解すべきものである。

(H18 教育基本法改正審議における国会答弁と同旨)

(参考)

・憲法第14 条第1項:

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分 又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されな い。」

・教育基本法第4条第1項:

「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えら れなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門 地によって、教育上差別されない。」

○ なお、このような教育基本法の現行の規定ぶりについて、権利条約に照らし て特段の問題があるとは考えていない。

ヒアリング項目②

【ヒアリング項目】学校教育法 異なる教育目的の設定

学校教育法72条は、特別支援学校(従来の盲、聾、養護学校)について、「幼稚 園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施す」ものと規定している。

1、この普通教育と異なる「準じる」教育は、普通教育より一段低い教育ないしは 一般とは異なる教育という響きを与え、障害児を普通教育から排除する結果や分 離の根拠となっているという考え方について、どう考えるか。

2、この目的設定は、障害者の権利条約の差別(第2条)に該当するとの考え方に ついて、どう考えるか。

3、障害者の権利条約第24条第1項が「この権利を差別なしに、かつ、機会の均 等を基礎として実現する(政府仮訳)」と規定している点に合致していないとの 考え方について、どう考えるか。

回答

○ 特別支援学校に在籍する障害のある児童生徒等に対して、幼・小・中・高等 学校と同一内容の教育を行うことは現実的に困難な場合があり、障害の状態等 に応じて配慮した教育を行うことは必要と考える。(「準ずる」の解釈につい ては、先般改訂された特別支援学校学習指導要領等においても、幼稚園教育、 小学校教育、中学校教育及び高等学校教育と同一の目標を掲げていることに加 え、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要 な知識、技能(幼稚園においては態度や習慣など)を授けることを目的として いることが解説において明確化されている。即ち、「普通教育より一段低い教 育ないしは一般とは異なる教育」を含意するものではない。)

ヒアリング項目③

【ヒアリング項目】特別支援学校の設置

学校教育法80条は、普通学校の場合と異なり、都道府県が「特別支援学校を設置 しなければならない」と設置を義務づけており、さらに、同法78条は、特別支援学 校には「寄宿舎を設けなければならない」と規定している。

1、これらの規定は、障害者の権利条約第24条第2項(b)「障害者が、他の者との 平等として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、か つ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することが できること(政府仮訳)」という規定に合致していないとの考え方についてどう 考えるか。

2、また、親からの分離を禁止する障害者の権利条約第23条4項「締約国は、児 童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」に合 致していないとの考え方について、どう考えるか。

回答

すべての学校において特別支援学校と同等の教育を提供することは困難な 状況にあることを考慮すれば、障害のある子どもに対する教育の機会を確保す るため、都道府県に特別支援学校の設置を義務付けることについて、直ちに権 利条約の趣旨に反するとは言えないと考える。

○ また、寄宿舎の設置義務については、特別支援学校の設置数が小・中学校に 比べて少なく、在籍児童生徒の通学区域も広域となる実態に鑑み、通学が困難 な児童生徒のために寄宿舎の設置が必要との考え方によるものであり、このこ とが直ちに権利条約の趣旨に反するとは言えないと考える。(保護者の意思に 反し、特別支援学校在籍児童生徒の保護者からの分離を行うとの趣旨のもので はない。)

○ なお、「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないこと」に ついては、就学先の学校の決定に関する本人・保護者の選択権の保障の問題と 関連するものと考える。(後述)

ヒアリング項目④

【ヒアリング項目】特別支援学級の設置

学校教育法81条は、普通学校の通常学級の他に、特別支援学級(従来の特殊学級 )の規定を置いている。

この規定は、普通学級ではない学級での教育を前提にするものであるが、これは 障害者の権利条約第24条第1項のinclusive education(インクルーシブ・エデ ュケーション)に合致していないとの考え方について、どう考えるか。

回答

○ 障害のある児童生徒に対して障害の状態・ニーズ等に配慮したきめ細かな教 育を少人数で効果的に行うことを目的として、特別支援学級において教育を行 うことが直ちに条約第24 条第1 項に反するとは考えていない。

なお、特別支援学級に在籍する児童生徒と通常学級に在籍する児童生徒との 「交流及び共同学習」を実施しており、特別支援学級に在籍する児童生徒が、 通常の学級において学習したり、学校行事等に参加したりするなどの取組を行 っているところである。

(交流及び共同学習については、小・中学校の新学習指導要領(H20.3)及び 高等学校・特別支援学校の新学習指導要領(H21.3)において明確に位置づけた ところである。なお、全国連合小学校長会の調査(H21.7~8 時点)によれば、 全体の約95%の学校で、通常学級と特別支援学級との間の交流及び共同学習を 行っている。)(本人・保護者の選択権の保障の問題については後述。)

ヒアリング項目⑤

【ヒアリング項目】就学先決定の仕組み

学校教育法第17条は、保護者にその子どもを小学校、中学校に就学させる義務と ともに、特別支援学校に就学させる義務を別個に課している。そしてその親の義務 の履行として、学校教育法施行令は、障害のない人(子どもを含む)については、 学校教育法施行令5条により、市町村教育委員会が入学期日等の通知や学校の指定 を行うのに対して、障害のある人については、学齢期を迎える前の子どもを対象と する就学時の健康診断によって、同施行令22条の3が規定する障害と障害の程度に 該当する障害の存在が分かると、同施行令11条により、原則として(例外は認定就 学者)、都道府県教育委員会が特別支援学校の入学期日等の通知や学校の指定を行 うことになる。

1、障害のある人の就学先の決定を法律ではなく施行令に委ねているが、立法府の 関与を要しない政令に委ねるべきではないとの考え方について、どう考えるか。

2、学校教育法施行令5条、11条ならびに22条の3項による「障害に基く分離」制 度を廃止すべきとの考え方について、どう考えるか。

3、障害のある人が生活する地域社会にある学校に学籍を一元化すべきとの考え方 について、どう考えるか。

4、障害のある人及びその保護者が、特別支援学校、特別支援学級を選択する権利 の保障がなされていないとの考え方について、どう考えるか。

5、「義務教育制度について、障がい者が障がい者以外の者と共に教育を受ける機 会を確保することを基本とし、障がい者又はその保護者が希望するときは、特別 支援学校又は特別支援学級における教育を受けることができるようにするものと する。」(第171回通常国会に議員提案により参議院へ提出された「障がい者 制度改革推進法案」(以下、「改革推進法案」という。)第9条第1項)との考 え方について、どう考えるか。

回答

(1)就学先の決定プロセス及び本人・保護者の選択権の保障、学籍の一元化、障 がい者制度改革推進法案(以下「改革推進法案」とする)第9 条第1 項への対 応について

就学先決定に係る現行の考え方(学校教育法施行令第22 条の3 に定める就学 基準に該当する場合、原則特別支援学校に就学する法制度)については、文部 科学省としても見直すことを検討している。【別添①参照】

保護者に全面的に選択を委ねることについては慎重な検討が必要と考える。 (通常学校における合理的配慮の内容にもよるが、本人にとって、その精神的 ・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させるための教育(権利条約第24 条第1 項(b)による)が受けられなくなる可能性があるほか、他の児童生徒等へ の影響等に関する考慮が必要と考える。)

○ また、就学先決定のプロセスにおいて、保護者の意見を最大限尊重する仕組 みを構築するとしても、決定主体は義務教育の実施責任を有する教育委員会と することが法制度上必然であると考える。

○ さらに、就学先決定後も、教育委員会が指導・支援に責任を負い、継続的な 就学相談・指導等を行うなど適切かつ柔軟に対応することが必要であると考え る。

○ 学籍の在り方については、特別支援学校の場合も、居住地の小・中学校に副 次的籍を置く「居住地校交流」を推進することが有効な方策であり、東京都や 埼玉県、横浜市他の先行する取組の成果・課題等も踏まえ、今後モデル事業の 推進等を通じ、全国的な取組の促進を図っていくことが重要と考える。その際、 「副次的籍」を含む学籍の在り方について、教員配置の在り方を含めて検討す ることが必要と考える。

○ なお、上記について検討する際には、通常学校における教育内容、支援体制、 教職員定数及び学級編制の在り方のほか、特別支援学校に必要とされる機能や、 役割等についても併せて十分に検討することが必要と考える。

○ いずれにせよ、就学先の学校において十分な支援体制を整えることが必要不 可欠と考える。(合理的配慮の内容)

(2)就学先の決定手続きを政令で定めていることについて

○ 現行法令上、児童生徒等が就学する学校種を具体的に定める就学手続きは、 学校教育法第17 条第3 項において保護者の(学校等に就学させる)「義務の履 行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は政令で定める」とされ ている規定を受けた学校教育法施行令第1 条から第22 条の2 までに規定する就 学事務に関する事項により規定されている。

○ 就学先の決定を含めた就学事務については、義務教育の実施責任を有する教 育委員会が最終的に判断すべきものであり、その手続きについて政令で規定す ることについて法体系上特段の問題があるとは考えていないところである。

ヒアリング項目⑥

【ヒアリング項目】合理的配慮の具体化

1、合理的配慮の具体的内容について、障害のある人および保護者、学校、学校設 置者の三者が合意形成をしながら策定すべきとの考え方について、どう考えるか 。

2、「義務教育について、障がい者と障がい者以外の者の意思疎通を仲介する者の 配置の促進、障がい者に係る教育に関する専門的知識を有する教員の充実等の人 的体制の整備、障がい者が十分な教育を受けるために必要な学校の施設及び設備 の充実、障がい者が使用するための教材の普及等の物的条件の整備その他の障が い者が教育を受ける環境の整備を行うものとする。」(改革推進法案第9条第2 項)との考え方について、どう考えるか。

3、合理的配慮の内容について、障害のある人及びその保護者に不服がある場合に は、異議申立手続きを用意すべきであるとの考え方について、どう考えるか。

回答

○ 合理的配慮の具体化については、本人・保護者、学校、学校設置者が合意形 成をしながら策定することが重要と考えるが、一方で、現実的な合理的配慮の 内容に関する検討が必要と考える。

○ 現在、各学校においては、障害のある児童生徒等一人一人の教育的ニーズを 明確にし、必要な合理的配慮について検討するため、保護者及び支援の専門家 等を交えて個別の教育支援計画の作成・活用の取組を進めているところである。

○ また、文部科学省の「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」に おいては、就学移行期(就学前の段階から義務教育段階への移行期)に、市町 村の教育委員会が中心となり、保護者や関係機関と連携して個別の教育支援計 画を作成し、当該計画を就学先の学校に引き継ぐことが適当である旨提言され ている(平成21年2月)ところであり、当該計画の作成過程において、保護者、 学校、教育委員会の3者が合意形成をしながら「合理的配慮」の具体的内容の 策定が図られるべきものと考える。

○ 合理的配慮の具体化に係る必要な人的体制及び物的条件の整備については、 前項に述べた就学先決定プロセス等との関連において、必要な財源措置等につ いて検討する必要がある。【別添②参照】

○ 合理的配慮の内容等に関する不服の場合の対応については、推進会議等にお ける議論等を踏まえた検討が必要と考える。

ヒアリング項目⑦

【ヒアリング項目】聴覚、視覚に障害がある場合の教育

1、手話言語を学習する権利を保障すべきという考え方について、どう考えるか。

2、手話又は点字についての適格性を有する教員を確保すべきという考え方につ いて、どう考えるか。

3、教育におけるあらゆる形態様式のコミュニケーションを保障すべきという考 え方について、どう考えるか。

回答

○ 現在のような特別支援学校で保障される手話や点字を学ぶ環境は重要である と考える。

○ 特別支援学校等における聴覚障害等のある児童生徒等に対する指導に当たっ ては、意思の伝達を活発に行うため、児童生徒等の聴覚障害等の状態等に応じ、 手話等のコミュニケーション手段を適切に選択・活用する工夫が行われている。 なお、聴覚障害のある児童生徒等が効果的に手話を学ぶためには、一定程度の 集団の確保が必要と考える。

○ さらに、国立特別支援教育総合研究所において、手話を含めた多様なコミュ ニケーション手段を活用した指導が行われるよう、都道府県の指導的立場にあ る教員等を対象として、手話を活用した指導法を含めた専門的な研修を行って いるほか、聴覚障害教育における指導法に関する研究等を行い、その成果の普 及を図っている。

○ なお、視覚・聴覚に障害がある場合の教育については、特別支援学校におけ るICT機器・支援技術の活用の有効性も確認されていることから、今後、通 常学校を含め、これらの取組を更に推進することが必要と考える。

○ これらの取組を通じて、多様なコミュニケーション手段を活用した指導の一 層の充実を図られるよう、指導内容・方法の工夫・改善や教員の専門性の向上 に努めることが必要であり、今後検討してまいりたい。

ヒアリング項目⑧

【ヒアリング項目】特別支援教育

1、特別支援教育が障害者の権利条約に定めるインクルーシブ教育に合致していな いのではないかとの考え方について、どう考えるか

2、特別支援教育の強調は、通常学級における障害児への必要な支援、ないしは合 理的配慮の確保をおろそかにし、分離教育につながるという考え方について、ど う考えるか。

回答

○ 特別支援教育の推進に関する政府としての基本的考え方は、「インクルーシ ブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえ、発達障害を含む 障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた一貫した支援を行うために、関 係機関等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を進めるとと もに、教員の特別支援教育に関わる専門性の向上等により、特別支援教育の推 進を図ります。」(子ども・子育てビジョン〔平成22 年1 月29 日閣議決定〕 より)とするものである。

○ 平成19 年4 月に特別支援教育制度の新しい枠組みがスタートして3 年が経 過した。この間の特別支援教育に関する評価として、内閣府調査(平成21 年3 月)によれば、現在受けている教育の満足度について、小学校段階では全体と して76%(特別支援学校小学部在籍者については84%)、中学校段階では77 %(特別支援学校中学部在籍者については83%)が「満足している」「やや満 足している」との結果が出ているところである。

○ また、特別支援教育体制整備に関する文部科学省調査(平成21 年9 月時点) によれば、公立小・中学校においては、ほぼ全ての学校で校内委員会の設置及 び特別支援教育コーディネーターの指名が行われている一方、私立をはじめと して幼稚園や高等学校における体制整備に遅れが見られる。また、公立小・中 学校においても、「個別の教育支援計画」、「個別の指導計画」を作成してい る学校の割合は、それぞれ59%、84%であり、これらの取組を一層充実させる ことが必要となっている。

さらに、全国連合小学校長会の調査(平成21 年7~8 月時点)によれば、発 達障害のある児童に対する指導について、対象児童の増加等により管理職であ る校長(14%)や教頭(20%)が自ら指導に当たる場合があるなど人員不足の 状況が顕著であり、今後の対応として「指導できる教員の増配置」及び「指導 補助員・介助員等の配置」を望む声が、それぞれ全体の73%、56%から寄せら れるなど、今後の特別支援教育の充実のための人的資源の強化が強く求められ ている状況である。

○ いずれにせよ、インクルーシブ教育と特別支援教育は相反するものではなく、 同じ方向を目指したものであり、その時々の状況に応じて不断に促進すること を、より適切に行っていくことに尽きるものと考える。

具体的には、小・中学校等における校内体制整備(校内委員会の設置、特別 支援教育コーディネーターの指名、個別の指導計画及び個別の教育支援計画の 作成等)を着実に進めているほか、通級指導担当教員や特別支援教育支援員を 拡充するなど、特別支援教育を支える仕組みの充実を図る中で、小・中学校等 における障害のある児童生徒に対する支援内容が向上・強化しているところで あり、今後ともこれらの取組を更に推進することが必要と考える。

ヒアリング項目⑨

【ヒアリング項目】後期中等教育等

「後期中等教育(中等教育のうち義務教育終了後に行われるものをいう。)、高等 教育その他の義務教育以外の教育について、前二項の措置に準ずる措置を講ずるも のとする。」(改革推進法案第9条第3項)との考え方について、どう考えるか。

回答

○ 後期中等教育については、義務教育段階のインクルーシブ教育についての議 論を踏まえ、今後詳細について検討していくべきものと考える。

○ なお、文部科学省の「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」に おいては、平成21年8月に、高等学校における特別支援教育の必要性、特別支援 体制の充実強化、発達障害のある生徒への指導・支援の充実、高等教育入学試 験における配慮や支援等について議論をした結果を取りまとめているところで ある。

○ 高等教育については、各大学がどのような学生を受け入れてどのような教育 活動を行うかは、その大学の特色等に応じて自主的に決定するものであるが、 文部科学省としては障害のある者に対して高等教育の機会の提供を適切に図っ ていくことは重要であると考えている。

○ 大学入試センター試験においては、試験時間の延長、代筆による解答、別室 における受験等の配慮を行うほか、毎年度各大学に対して発出している「大学 入学者選抜実施要項」において、試験時間の延長、点字・拡大文字による出 題、特別試験場の設定等の具体例を示し、障害のある者が不利にならないよう 各大学に配慮を求めている。

○ また、学生の入学後の学習支援については、各大学等において、聴覚障害を 持つ学生向けのノートテイカーの配置、定期試験の試験時間延長、施設面では エレベータやスロープの設置など、様々な措置が講じられている。

○ 文部科学省においては、このような取組を支援するため、国立大学に対して は、

①国立大学の運営費交付金において、障害のある学生の教育環境の整備に対 する支援を行っているほか、

②施設の整備に際し補助金を措置し、障害のある学生に対する支援を行って いる。

また、私立大学に対しても、

①私立大学等経常費補助金の特別補助において、各大学の障害者受け入れ人 数に応じて、補助金を増額する措置をとっているほか、

②私立大学の施設のバリアフリー化を推進するための補助を行っている。

○ さらに、独立行政法人日本学生支援機構においても、各大学等で実施されて いる障害学生に対する取組事例等の情報提供や障害学生の修学支援のための研 修会を実施している。

○ 文部科学省としては、今後とも以上のような措置を通じ、障害のある学生に 対する支援の充実に努めてまいりたい。

【参考資料】

障害のある児童生徒の就学及び教育・支援に関する各国の現状等について

(※本資料は聞き取り等に基づき整理したものであり、今後精査を要する。)

英国

(1)関係法令:特別な教育ニーズ・障害法(2001年)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

ステートメント保持者(幼~高等部):221,670人(2.7%)
ステートメント不保持の特別なニーズ教育対象者:1,433,940 人(17.8%)
特別学校:85,320人
通級指導教室(PRU):15,230人

(2009年)
※ステートメントとは、児童生徒のあらゆる特別な教育的ニーズ及びそ のために必要な支援を記述した法的な判定書。重度の障害のある場合 やスクール・アクション・プラスまでの支援では当該児童生徒のニー ズに応じられないと判断された場合に地方当局が作成する。ステート メント不保持の場合には、スクール・アクション及びスクール・アク ション・プラスという段階的な支援の枠組みがある。特別な教育的ニ ーズ(SEN)が軽い子どもについては、スクール・アクションで対応(IEP の作成・評価、校内資源の活用)。スクール・アクションで効果が十 分ではない場合は、スクール・アクション・プラス(スクール・アク ションで行う内容に加え、地方当局等からの資金援助や巡回教師など の外部専門家の活用)で対応する。

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況:

  • 最重度の子どもも保健医療機関ではなく、学校に就学させるようにな っており、初等教育就学率は99%。
  • 非行や乱暴などの問題で退学させられ、かつ、どの学校からも受入拒 否されている状態になっている子どももいるが、基本的に就学猶予や 免除はない。

(4)就学先決定者:地方行政局の教育担当部局

(5)就学先決定プロセス:

ステートメント作成の子どもは、地方行政局の教育担当部局が保護者の 意見聴取を行い、親の意向または他の子どもへの効果的な教育の提供と 矛盾しない限り、通常学校で教育

(6)学級編制基準:

初等教育学校第1~2学年 上限30人、それ以降の学年については特に 定めていない。

(7)1学級当たり児童生徒数:

初等教育平均24.6 人(2007年)
前期中等教育平均22.6人(2007年)

フランス

(1)関係法令:障害者の権利・機会・参加及び市民権の平等のための法律(2005年)

教育法典(2008 年改正)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

通常学校(国民教育省所管)の就学者:188,000人(1.48%)
うち特別支援学級:54,725 人(0.43%)
厚生省管轄の施設での通年就学者:76,000人(0.59%)

(2008 年度)
※フランスの通常学校とは国民教育省管轄の学校を指し、障害のある子 どもが学業不振児のための適応教育・職業教育を専門に行う学校及び 部門(中等教育段階)に就学している場合や知的障害以外の単一障害 のための特別学校(全国で8校)に就学している場合も、通常学校へ の就学として扱われている。

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

  • フランスでは家庭で義務教育が可能であるが、障害があり未就学が推 定5,000 人(学齢児の0.04%)
  • 厚生省管轄の施設で未就学が推定15,000 人(学齢児の0.12%)(2005 年度)

(4)就学先決定者:保護者(ただし、障害に応じた教育を受ける意思がある場 合には、障害者事務所(MDPH)の委員会が就学先及びその支援内容を 決定)

(5)就学先決定プロセス:

  • 保護者が、居住地に最も近い通常学校に学籍登録。その後保護者の意 思で、県の障害者事務所(MDPH:県議会議長が設置する独立機関)に 個別就学計画の立案のための評価を申請。専門家チームが保護者と緊 密に通常教育を第一に計画を立案し、障害者事務所内の委員会が決定。
  • 個別就学計画ではできる限り通常学校での就学が実現されるように支 援が立案される。通常学級に入る場合、学校支援員などの支援を受け て通常学級に入る場合、通常学校内の特別なクラスに入る場合などが ある。これらが難しい場合には,通常学校の学籍を残したまま厚生省 管轄の施設で療育と合わせた就学となる。
  • 学籍を登録された学校長は必要に応じ保護者にMDPH への申請を文書 で推奨。4 ヶ月反応なければ教育行政部門から MDPH にその旨を連絡 し、保護者と連絡をとるために必要な手段を講ずる。

(6)学級編制基準:上限人数無し

(7)1学級当たり児童生徒数:

初等教育平均22.6 人(2007年)
前期中等教育平均24.3人(2007年)

ドイツ

(1)関係法令:ドイツ連邦共和国における特別支援学校に関する勧告(1994年)

各州が法律的責任

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

特別な教育ニーズのある生徒479,795人(5.7%)
うち特別支援学校:407,170人(4.8%)
うち通常学級:72,625人(0.9%)
(2006年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

[ノルトライン・ヴェストファーレン州の場合]
障害の状態等によって就学義務を免除、または猶予する仕組みはない。

(4)就学先決定者:市町村の学校監督委員会

(5)就学先決定プロセス:

  • 保護者、学校等が、各障害の特殊教育教師等によって構成される市町 村の学校監督委員会に申請する。
  • 学校監督委員会が就学手続きの責任を有し、障害及び特別な教育的ニ ーズの特定、必要な支援、教育課程、就学先の決定をする。

(6)学級編制基準(上限人数):

[ノルトライン・ヴェストファーレン州の場合]
初等教育24人(範囲18-30人)
前期中等教育24~28人(範囲18-30人)

(7)1学級当たり児童生徒数:

初等教育平均22.1人(2007年)
前期中等教育平均24.7人(2007年)

豪州

(1)関係法令:障害者差別禁止法(1992年)

障害者教育基準(2005年)
各州が法律的責任

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

[ニューサウスウェールズ州の場合]
特別支援学校:0.53%
特別支援学級:1.86%
通常学級:2.04%
(2009年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

最重度の障害の子どもも基本的に就学させる。

(4)就学先決定者:地域の教育事務所が主宰する「委員会」

(5)就学先決定プロセス:

  • 就学先に係る実質的「決定権」は保護者が保持
  • 決定の主体は地域の教育事務所が主宰する「委員会」
  • 障害のある生徒が在籍する教育環境は、その生徒のニーズや彼らのニ ーズによって左右されるが、子どもの教育環境は、その生徒のニーズ や彼らのニーズに応じられる環境によって、左右されるが、子どもの 教育環境について決定を行う権利は保護者が有している。

(6)学級編制基準:

[ニューサウスウェールズ州の場合]
(目標値)
初等教育第1学年22人
第2学年24人
第3~6学年=30人まで。

前期中等教育30人まで。ただし、科目によっては1クラスの生徒数は更 に少なくなる。

※目標値を基本とするものの、最終的には各学校のニーズを考慮した上 で決定、例外的に1-2名上回ることもあるとのこと。

(7)1学級当たり児童生徒数:

初等教育平均23.8人(2007年)
前期中等教育平均23.8人(2007年)

(参考)米国

(1)関係法令:連邦法ADA(障害のあるアメリカ人法:2008年改正)

連邦法IDEA(障害のある個人の教育法:2004年改正)
ほとんどの教育原則を各州が規定

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

特殊学校(分離学校):0.35%
通常学級で40%以下の時間:1.82%
通常学級で41-79%の時間:2.65%
通常学級で80%以上の時間:6.71%
(2007年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

原則、障害のあるすべての子どもに無償で適切な公教育を提供

就学率7~13歳 98.3%(2006年)
14~17歳 96.4%(2006年)

(4)就学先決定者:IEP(個別教育計画)チーム

※IEP チーム:特別支援教育が必要な児童生徒のために、教員、保護者そ の他の関係者で構成。カリキュラムを作成するとともに、必 要な支援等を行うもの。

(5)就学先決定プロセス:

  • 障害児童生徒を可能な限り障害のない児童生徒と共に教育
  • 補助機器やサービス等を使っても通常学級では満足のいく教育が達成 できない重度の障害については、特殊学校・特殊学級その他を選択
  • 公的機関は、教育・サービスのニーズに適合する教育の場の選択肢の「連 続体」を確保
  • 地域の通常学級以外を教育の場とする場合、IEPミーティングにおいて その必然性の説明責任、決定にいたる根拠をIEPに記載
  • IEPチームで、ニーズ、プログラム、目標について合意に至る前に教育の 場の決定は行われない

(6)学級編制基準:

[ケンタッキー州の例]
第1~3学年 上限24人
第4学年 上限28人
第5、6学年 上限29人
前期中等教育 上限31人

(7)1 学級当たり児童生徒数:

初等教育平均23.1 人(2007年)
前期中等教育平均24.3 人(2007年)

日本

(1)関係法令:

障害者基本法(2004年改正)
教育基本法(2006年改正)
学校教育法(2007年改正)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

特別支援学校:0.58%
特別支援学級:1.26%
通級指導(通常学級):0.50%
(2009年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

1979年の養護学校義務化以降、就学免除・猶予は逓減
(2009年の障害による就学免除・猶予者:56 名[義務教育段階児童数の 0.0005%])

(4)就学先決定者:市町村教育委員会

(5)就学先決定プロセス:

(現行制度)

  • 就学基準に照らし、該当する場合特別支援学校、特別な事情ある場合 は地域の小学校へ就学認定
  • 就学先検討・決定に当たり、保護者の意見聴取を義務付け (改革案)<文部科学省調査研究協力者会議等による>
  • 就学基準の他、障害の状態・ニーズ、保護者の意見、専門家の意見、 地域学校の状況等を総合的に判断し決定
  • 個別の教育支援計画の作成を通じ、保護者のプロセスへの積極的参画、 十分な意向の反映を図る

(6)学級編制基準:上限40人

(7)1学級当たり児童生徒数:

初等教育:平均28.2人(2007年)
前期中等教育:平均33.2人(2007年)

【別添①】

就学先決定の仕組みの見直しについて

1.学校教育法施行令の改正(H19.4 施行)

○ 就学先決定時の保護者からの意見聴取義務付け(第18条の2)

○ 特別支援学校対象児童生徒等の障害の程度に関する規定の改正(第22条の3)

  • 改正前→「盲学校・聾学校又は養護学校に就学させるべき (中略) 心身の故障の程度は・・・」
  • 改正後→「政令で定める(中略)障害の程度は・・・」

2.学校教育法施行令第22 条の3 に定める就学基準

→「分離制度」の基準ではなく、手厚い教育・支援を提供しうる特別支援学 校の目的・機能を規定したもの

3.今後の就学先決定手続きの在り方(H21.2 文部科学省調査研究協力者会議の提言ポイント)

○ 一人一人の教育的ニーズに応じた就学先決定手続きの導入を提言

○ 現行規定(学校教育法施行令第5 条:第22 条3 に該当する場合、原則と して特別支援学校とし、特別の事情ある場合、小学校に就学可)について、 障害の状態及び教育的ニーズ、保護者の意見、専門家の意見、学校・地域の 状況等を総合的に判断し、最も適切に教育的ニーズに対応できる学校を就学 先として決定する仕組みに改めることが適当

4.保護者の選択権の保障

○ 障害者権利条約で規定された「障害のある児童の意見」

  • 当該児童の年齢・成熟度に従い相応に考慮されるものであり(権利条約第 7 条3)、義務教育段階就学時点では、当事者の意見は通常保護者を通じ て表明されるもの

○ 学校教育法施行令の改正(H19.4 施行)

  • 就学先決定時の保護者からの意見聴取義務付け(第18条の2)

○ 保護者の意向の反映(H21.2 文科省調査研究協力者会議提言ポイント)

  • 就学移行期における個別の教育支援計画の作成に当たっての保護者の参加促進
  • 上記計画の内容・実施につき保護者への情報提供・相談及び意見聴取を 十分に行う等により、保護者との共通認識を醸成。

○ 就学先に係る決定主体(H21.2 文科省調査研究協力者会議提言ポイント) ・保護者への情報提供や相談を十分に行うとともに、保護者の意見を十分に 踏まえた上で、制度としては、義務教育の実施責任を有する(学校の設置 者たる)教育委員会が決定(就学先決定後も、教育委員会が指導・支援に 責任を負い、継続的な就学相談・指導等により、適切かつ柔軟に対応)

5.就学先決定の仕組み、保護者の選択権の保障に関する見直しの方向性・検討例

○ 保護者への十分な情報提供(例:地域の小学校及び特別支援学校への体験入学等)

○ きめ細かい就学相談(例:より早期からの相談・支援、県教育委員会と市 町村教育委員会の連携強化、就学委員会への多様なメンバー[障害当事者団 体の地域支部、親の会他]の参画・意見反映等)

○ 個別の教育支援計画の作成プロセスの充実・強化(例:保護者の参画・関 与の拡大、外部専門家・関係機関の連携による支援メニューの明確化等)

6.就学先決定手続きにおける「保護者の意向」の尊重が困難又は必ずしも適切ではないと考えられるケース例

○ 保護者の児童本人への「虐待」が疑われる場合(保護者の参画・了解を得 ての個別の教育支援計画の作成が困難又は不可能)

○ 障害の有無が明確でない、又は保護者の障害受容が得られておらず、保護 者が就学前健診の受診や「個別の教育支援計画」の作成を認めない場合(障 害の状態及び教育上のニーズの把握、これに基づく指導・支援計画の検討が 不可能)

○ 行動・情緒面の障害等により、他の児童に重大な危害等が及ぶ恐れが強い 場合(cf.英国のステートメント作成児に係る親の意向尊重の留保条項: 「他の子どもへの効果的教育の提供と矛盾しない限り・・・」)

○ 地域の小学校への医療的ケアを要する児童(重度・重複障害等)の受入れ に当たり、当該自治体の財政事情等により、必要な環境・条件整備(設備面 ・看護師等医療スタッフ確保など)が物理的に困難な場合(例:財政再建中 の地方公共団体で、条件整備に必要な予算・人員等の確保の見通しが立たな い場合など)

cf.特別支援学校で医療的ケアを要する幼児児童生徒数[H21.5 現在]

幼稚部~中学部計5,313 名[在籍児全体の8.6%]
在籍率は、幼稚部 3.0%[対前年度+0.5 ポイント]
小学部 10.4%[同+0.4 ポイント]
中学部 6.5%[同+0.3 ポイント]
総数増加と共に重度重複化が相対的に進んでいる。

7.諸外国の例

○ イギリス:地方行政局が保護者の意見聴取を行い、親の意向または他の子 どもへの効果的な教育の提供と矛盾しない限り、通常学校で教育

○ フランス:居住地域の通常学校に学籍登録、その後保護者の意思で,県の 障害者事務所に個別就学計画の立案のための評価を申請、障害者事務所 内の委員会が決定

○ ドイツ:保護者、学校等が、市町村の学校監督委員会に申請、委員会が必 要な支援、就学先の決定

○ オーストラリア:就学先に係る実質的決定権は保護者が保持、決定の主体 は地域の教育事務所が主宰する委員会

→ 子どもにとって適切な就学先が選択できるようするためには、就学先決定 までのプロセスが重要

【別添②】

障害のある児童生徒への十分な教育に必要な人的体制・物的条件の整備について

(義務教育段階)

インクルーシブ教育システムについては、理念だけではなく人的・物的条件整備とセ ットで検討することが重要である。障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ機 会を確保しつつ、障害者権利条約に規定された、子どもの「能力を可能な最大限度まで 発達させる」との目的を損なわないようにするため、必要な人的体制・物的条件整備の 検討について、以下のとおり二つの想定の下に行った。

1.想定A

(1)基本的な考え方

居住地域の小・中学校の通常学級への就学を原則とし、保護者が希望する場合のみ 特別支援学校に就学するものとする。この場合、小・中学校においてどのような障害 の子どもにも対応できるよう条件整備を行う必要があるとの考えの下、必要な条件整 備として(2)のとおり仮定する。

(2)基本的な考え方を踏まえた想定・必要な条件整備(仮定)

  • ① 現在、特別支援学級に在籍している子どもは通常学級に移動する。
  • ② 通常学級には、発達障害を含む障害のある子どもが在籍していることを考慮し、 学級編制は25人とする。
  • 特別支援学級に在籍していた子どもが在籍する通常学級には、学級担任に加えて 障害の状態に応じた専門性を有する教員を1名配置する。また、個別指導等を確保 するためリソースルームを設置する。
  • ④ 現在、特別支援学校に在籍する障害が比較的軽度の子どもはすべて小・中学校に 移動し、重度の子どもは1/3が小・中学校を希望するものと想定する。
  • ⑤ 特別支援学校から小・中学校に移行した子どもは専門的な指導の必要性が大きい ことから特別支援学級で対応することとし、特別支援学級の学級編制は6人(重度 の子どもは3人編制)とする。
    また、指導には障害の状態に応じた専門性を有する教員が対応するとともに、重 複の障害の子どもには更に支援員を配置する。
    さらに、特別支援学校の子どもが小・中学校に移行することから、多様な障害の 状態に対応する教育の専門性を特別支援学校が提供するためのセンター的機能を強 化する。
  • 医療的ケアが必要な子どものために看護師を配置する。
  • ⑦ 上記に伴う不足教室を増築する。すべての小・中学校において、校舎内の移動や生 活に支障がないように、身障者用エレベーター、スロープ、身障者トイレ等を完備 する。

(3)必要なコストの試算

ア 教員等の増員のために必要なコスト

教員の増員 322,200人 2兆1,517億円
支援員の増員 8,500人 102億円
看護師の増員 1,800人 36億円

教員等所要経費の合計 2兆1,655億円

イ 施設・設備の整備のために必要なコスト

不足教室等の増築 25人学級対応 6兆1,160億円
特別支援学級増築 43,200教室等 1兆6,060億円
バリアフリー設備 2兆2,610億円

施設・設備所要経費の合計 9兆9,830億円

合計 12兆1,485億円

※以上の試算については、今後詳細な検討が必要である。また、以上のほか障害の状態 に応じた教科書の作成(拡大教科書、点字教科書等)、コミュニケーション支援及び このためのICT環境の整備等を行うためのコストが発生する。

※通級指導のための教員の加配が別途必要。

※特別支援学級は居住地域の学校に設置されているものと仮定している。

※専門性のある教員の確保が課題。

参考:平成19年度

  • 幼・小・中・高等学校の教諭普通免許状保有者の現職教育による特別支援学校 教諭二種免許状の取得 1,061件
  • 大学等における直接養成によるもの 3,748件

計 4,809件

2.想定B

(1)基本的な考え方

特別支援教育体制の一層の充実を図りながらインクルーシブ教育システムに漸進的 に移行するものとする。就学先の学校については、保護者に小・中学校と特別支援学 校それぞれの教育と提供可能な合理的配慮について十分な情報提供を行い、保護者の 希望を踏まえつつ、義務教育の実施に責任を有する教育委員会が総合的に判断する。 上記の考え方の下、必要な条件整備として(2)のとおり仮定する。なお、この条 件についても今後精査するとともに、インクルーシブ教育システムへの漸進的な移行 を図るものである。

(2)基本的な考え方を踏まえた想定・必要な条件整備(仮定)

  • ① 通常学級の学級編制は現行どおり40人とする。現行の就学先の決定においても、 実質的には保護者の希望が踏まえられていると考えられることから、特別支援学校 に在籍している子ども(保護者)のうち、比較的障害が軽度な子どもの1/3が小 ・中学校を希望するものと想定する。
  • 特別支援学校から小・中学校に移動した子どもは、専門的な指導が必要なことか ら特別支援学級に在籍するものとし、特別支援学級の学級編制は6人とする。また、 指導には障害の状態に応じた専門性を有する教員が対応する。さらに、特別支援学 校の子どもが小・中学校に移行することから、多様な障害の状態に対応する教育の 専門性を特別支援学校が提供するためのセンター的機能を強化する。
  • 医療的ケアが必要な子どものために看護師を配置する。
  • ④ 上記に伴う不足教室を増築する。バリアフリー環境の整備のため、すべての小・ 中学校(平均1校あたり3校舎、1体育館と想定)において1校舎を中心として身 障者用エレベーター、スロープ、身障者トイレ等を整備する。

(3)必要なコストの試算

ア 教員等の増員のために必要なコスト

教員の増員 16,100人 1,075億円
看護師の増員 800人 16億円

教員等所要経費の合計 1,091億円

イ 施設・設備の整備のために必要なコスト

特別支援学級拡充 13,800教室等 4,780億円
バリアフリー設備 7,600億円

施設・設備所要経費の合計 1兆2,380億円

合計 1兆3,471億円

※以上の試算は、今後詳細な検討が必要である。また、以上のほかに、障害の状態に応 じた教科書の提供(拡大教科書、点字教科書等)、コミュニケーション支援及びこの ためのICT環境の整備等を行うためのコストが発生する。

※通級指導のための教員の加配が別途必要。

※専門性のある教員の確保が課題。

参考:平成19年度

  • 幼・小・中・高等学校の教諭普通免許状保有者の現職教育による特別支援学校 教諭二種免許状の取得 1,061件
  • 大学等における直接養成によるもの 3,748件

計 4,809件