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<意見書のレジュメ>

平成22年4月26日
全国特別支援学校長会 会長 岩井 雄一

I、総論

特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援 するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高 め生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う教育です。

また、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やそ の他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎 となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっています。その 点においてはインクルーシブ教育と特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向い ているものと考えています。

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な考えや仕組み を整備していくための計画が必要ですし、国民の理解も大変重要であると考えます。

インクルーシブ教育システムについては、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させ る」との権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的 体制や物的条件の整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

こうしたインクルーシブ教育システム実現に向けた教育分野の種々の課題や制度設計の議 論を行うに当たっては、今後早期に全特長をはじめ多くの教育関係者・専門家を加えた教育 部会を設置し、必要な条件・環境整備のないままに拙速な制度改革が進められることによる 学校現場への重大な影響・弊害が生じないよう、現場の実態等を十分踏まえた慎重な検討・ 議論を行っていただくようお願いいたします。

II、具体的要望

1、学籍の一元化については慎重に制度設計をして下さい。

学籍の一元化に伴う算定根拠は、全員が地域の学校に学籍を持つことを前提にした場 合、希望によって他の選択ができる場合など異なります。慎重な制度設計が必要です。

通常学校における教育内容、支援体制、教職員定数及び学級編制の在り方のほか、特 別支援学校の存在意義を十分検討する必要があります。

また、寄宿舎は、本人が望む場合は、就学の機会を保障し、なおかつ選択肢を増やす ことにもなるので、特別支援学校に寄宿舎を設置をして下さい。

2、児童生徒などの当事者のためになる制度改革を進めて下さい。

インクルーシブ教育システムにおける人的体制の整備、施設設備などの物的条件の整 備、環境の整備、教育課程の在り方の検討などの条件整備が進まない場合、障害の状態 により、児童生徒が通常学級の大集団に入れなく、結果的に教育が受けられないという 弊害が起こる可能性があります。

特別支援学校の教育課程は、個々の障害の状況に応じて弾力的に取り扱うことが可能 になっており、通常の学校の教育課程との整合性などについて十分検討が必要です。

3、保護者の意向が十分尊重された支援が充実するようにして下さい。

障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、 一貫した教育的支援が必要です。就学期においても、従来以上に「個別の教育支援計画」 作成プロセスへの保護者の参画を進め、結果として保護者理解の下、その意向を十分反 映した形で就学先や実際の指導・支援のあり方が決定されるように工夫することが大変 重要です。幼児期から学校卒業後まで障害のある幼児児童生徒への教育的支援が充実す るようにして下さい。

平成22年4月26日
障がい者制度改革推進会議
議長 小川 榮一 殿
全国特別支援学校長会 会長 岩井 雄一

I、はじめに

全国特別支援学校長会(以下、全特長)は、第5回本会議の審議に当たり、全国連合小学 校長会長、全日本中学校長会長と本会長の連名で、障がい者制度改革推進本部長鳩山由紀夫 内閣総理大臣宛に、「障がい者」制度改革推進会議における協議に対する要望を書面で提出 しました。

今回は、その要望を受け止め、教育関係者を交えた検討体制を考慮していただき、このよ うな機会を全特長にいただき、ありがとうございます。

以下、本会としての意見を述べさせていただきます。

II、総論

特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援 するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高 め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもので す。

また、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やそ の他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎 となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っています。

その点においてはインクルーシブ教育と特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向 を向いているものと考えます。

現在、障害者の権利条約の批准に向けて国内法律の整備に向け活発な議論が、本会議で行 なわれていることに心より敬意を表します。

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な考えや仕組み を整備していくための計画や国民の理解も必要です。

インクルーシブ教育システムについては、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させ る」との権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的 体制や物的条件の整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

こうしたインクルーシブ教育システム実現に向けた教育分野の種々の課題や制度設計の議 論を行うに当たっては、今後早期に全特長をはじめ多くの教育関係者・専門家を加えた教育 部会を設置し、必要な条件・環境整備のないままに拙速な制度改革が進められることによる 学校現場への重大な影響・弊害が生じないよう、現場の実態等を十分踏まえた慎重な検討・ 議論を行っていただくようお願いいたします

III、特別支援教育の担ってきた役割

平成19年以降の新たな特別支援教育制度の枠組みの下、特別支援学校では高い専門性や 指導・支援のための充実した施設・設備及び教員の経験・スキルを生かし、障害のある児童 生徒一人一人のニーズに応えた細かい指導・支援を進めてきました。

併せて、地域全体としての特別支援教育の充実・発展に寄与すべく、地域の小学校・中学 校等に対するセンター的機能を発揮してきました。

このような取組は着実に成果を上げ、多くの特別支援学校の保護者・PTA関係者からも、 自立と社会参加に向けた教育・支援の実績・成果を高く評価する声が聞かれます。

また、小学校・中学校においても、発達障害をはじめとする支援を要する児童生徒への効 果的な対応・支援を図るべく、地域の保健・医療・福祉等の関係機関との連携及び特別支援 学校等との協調・協働を通じ、校内体制の整備や通級指導の充実等による通常の学級での指 導・支援が充実するように取り組んできました。

しかしながら、通常の学級に在籍する発達障害等の支援を要する児童生徒の数は年々増加 の一途をたどり、指導・支援に必要な人的措置や施設・設備の整備が追いつかないまま、現 在、児童生徒一人一人の障害の状況に応じた十分な支援ができないという憂慮すべき状況に あります。

このような状況の中、本年初めより、障害者権利条約の批准に向け、内閣府の障がい者制度 改革推進会議における障害者施策についての検討・議論が本格化し、学校教育の在り方も重 要な論点・検討事項として審議されてきました。

新しい特別支援教育の枠組みの中、相互の緊密な連携・役割分担の下に指導・支援の実績 を着実に上げてきた特別支援学校や小学校・中学校としては、多くの教育・学校現場で深刻 かつ重大な混乱・影響が生ずることがないことを願う次第です。

特別支援教育の前身である障害児教育・特殊教育は、盲・聾・病弱教育から始まり、昭和 54年の養護学校義務化により全ての児童生徒に教育が実施されるようになりました。その 結果、我が国は世界に類することの無いほどの高い就学率を誇っています。

(2009年の障害による就学免除・猶予者が、義務教育段階児童数の0.0005%の5 6名である。平成21 年学校基本調査より)

今後は、これまで培ってきた特別支援教育の優れた部分を小学校・中学校へと移行するこ とが大切だと考えています。

IV、特別支援教育の成果

全特長では、約1000校の一人一人の校長が、特別支援教育実施の責任者として、自ら が特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに、リーダーシップを発揮しつつ、体制 の整備等を行い、組織として十分に機能するよう学校を運営しています。

さらに、校長は、特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児児童生徒 の将来に大きな影響を及ぼすことを深く自覚し、常に認識を新たにして取り組んでいます。

これまで、私たちが取り組んできた体制の整備としては、

1、特別支援教育に関する校内委員会の設置

学校における組織的な対応が可能な体制づくりを進めてきました。

2、幼児児童生徒の実態把握

保護者の理解を得ることができるよう慎重に説明を行い、学校や家庭で必要な支援や配 慮について、保護者と連携して検討を進めてきました。その際、実態によっては、医療的 な対応が有効な場合もあるので、保護者と十分に話し合ってきました。

特に幼稚園、小学校においては、発達障害等の障害は早期発見・早期支援が重要である ことに留意し、実態把握や必要な支援を着実に行ってきました。

3、特別支援教育コーディネーターの指名

特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を「特別支援教育コーディネータ ー」に指名し、校務分掌に明確に位置付けてきました。

特別支援教育コーディネーターは、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、 校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相 談窓口などの役割を担ってきました。

4、関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用

長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医 療、福祉、労働等の様々な側面からの取り組みを含めた「個別の教育支援計画」を活用し た効果的な支援を進めてきました。

また、小学校・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定す るなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めています。

5、「個別の指導計画」の作成

幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため「個別 の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めてきました。

6、教員の専門性の向上

特別支援教育の推進のためには、教員の特別支援教育に関する専門性の向上が不可欠で す。したがって、各学校は、校内での研修を実施したり、教員を校外での研修に参加させ たりすることにより専門性の向上に努めてきました。

また、教員は、一定の研修を修了した後でも、より専門性の高い研修を受講したり、自 ら最新の情報を収集したりするなどして、継続的に専門性の向上に努めてきました。

7、地域における特別支援教育のセンター的機能

特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域に おける特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ってきました。

特に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校の要請に応じて、発達障害 を含む障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の 策定などへの援助を含め、その支援に努めてきました。

8、保護者からの相談への対応や早期からの連携

保護者からの障害に関する相談などに真摯に対応し、その意見や事情を十分に聴いた上 で、当該幼児児童生徒への対応を行ってきました。

その際、プライバシーに配慮しつつ、必要に応じて校長や特別支援教育コーディネータ ー等と連携し、組織的な対応を行っています。

また、「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政 令(平成19 年政令第55 号)」において、障害のある児童の就学先の決定に際して保護者 の意見聴取を義務付けたこと(学校教育法施行令第18 条の2)に鑑み、小学校及び特別 支援学校において障害のある児童が入学する際には、早期に保護者と連携し、日常生活の 状況や留意事項等を聴取し、当該児童の教育的ニーズの把握に努め、適切に対応してきて います。

9、交流及び共同学習、障害者理解等

障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学習は、障害のあ る幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育む上で重要な役割を担っており、また、障害 のない幼児児童生徒が、障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を 深めるための機会です。

このため、各学校においては、双方の幼児児童生徒の教育的ニーズに対応した内容・方 法を十分検討し、早期から組織的、計画的、継続的に実施することなど、一層の効果的な 実施に向けた取り組みを推進しています。

さらに、居住地の小学校・中学校に副次的籍を置く「居住地校交流」を実践することが、 東京都や埼玉県、横浜市他でも進められています。

10、進路指導の充実と就労の支援

障害のある生徒が、将来の進路を主体的に選択することができるよう、生徒の実態や進 路希望等を的確に把握し、早い段階からの進路指導の充実を図っています。

また、企業等への就職は、職業的な自立を図る上で有効であることから、労働関係機関 等との連携を密にした就労支援を進めています。

11、特別支援教育支援員等の活用

障害のある幼児児童生徒の学習上・生活上の支援を行うため、教育委員会の事業等によ り特別支援教育に関する支援員等の活用が広がってきています。

この支援員等の活用に当たっては、校内における活用の方針について十分検討し共通理 解のもとに進めるとともに、支援員等が必要な知識なしに幼児児童生徒の支援に当たるこ とのないよう、事前の研修等に配慮もしています。

V、具体的要望

1、学籍の一元化については慎重に制度設計をして下さい。

学籍の一元化に伴う算定根拠は、全員が地域の学校に学籍を持つことを前提にした場 合、希望によって他の選択ができる場合など異なります。慎重な制度設計が必要です。

通常学校における教育内容、支援体制、教職員定数及び学級編制の在り方のほか、特 別支援学校の存在意義を十分検討する必要があります。その際、特別支援学校は、児童 生徒の学籍があることによって学級認定され、学籍のある児童生徒の障害に対応した施 設・設備が整えられ、専門的な教員の配置がなされていることに留意してください。

また、寄宿舎は、本人が望む場合は、就学の機会を保障し、なおかつ選択肢を増やす ことにもなるので、特別支援学校に寄宿舎を設置して下さい。

2、当事者のためになる制度改革を進めて下さい。

障害のある児童生徒にとっても、小学校や中学校に通う児童生徒にとっても共に学べ る学校づくりに向けて、理念を掲げ条件整備を進めることは大切です。

しかし、インクルーシブ教育システムにおける人的体制の整備、施設設備などの物的 条件の整備、環境の整備、教育課程の在り方の検討などの条件整備が進まない場合、障 害の状態により、児童生徒が通常学級の大集団に入れなくなり、結果的に教育が受けら れないという弊害が起こる可能性があります。

特別支援学校の教育課程は、個々の障害の状況に応じて弾力的に取り扱うことが可能 になっており、通常の学校の教育課程との整合性などについて十分検討が必要です。

3、保護者の意向が十分尊重された支援が充実するようにして下さい。

障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、 一貫した教育的支援が必要です。就学期においても、従来以上に「個別の教育支援計画」 作成プロセスへの保護者の参画を進め、結果として保護者理解の下、その意向を十分反 映した形で就学先や実際の指導・支援のあり方が決定されるように工夫することが大変 重要です。幼児期から学校卒業後まで障害のある幼児児童生徒への教育的支援が充実す るようにして下さい。

障害種別(視覚障害)における意見書

全国盲学校長会

1 視覚障害(全盲あるいは弱視)の児童・生徒が学ぶ際の留意点について

晴眼者は目で見ることにより、視覚によって周りの状況を理解することができる。しかし、視覚障害のある児童・生徒は、視覚 による周りの状況の把握が難しく、学習面においても、聴く、触る・触れる、匂いを嗅ぐ等の認識力を活用し、時間をかけた指 導が不可欠である。

盲学校では、児童・生徒の視覚障害の程度に応じて、点字や拡大文字等、一人一人のニーズに応じた文字を使用して指導 を行っている。以下、不用意に普通学級でのインクルーシブ教育に移行した場合の具体的な問題点を挙げる。

  • ① 盲学校の小学部低学年においては、点字の習得が必要な児童に対して、点字を読むことや点字を書く(打つ)ことを、点 字に習熟した教員による指導により、各教科の学習や自立活動で指導を行っている。点字に習熟しない教員による通常 の学級での対応や指導は極めて困難である。
  • ② 児童・生徒が教室環境等を把握するのに、視覚障害児童・生徒の行動特性を理解し、指導の専門性のある教員による細 かな説明を聞いたり、実際に歩いたり・触ることで、わかるようになるが、通常の学級で対応は困難である。
  • ③ 児童・生徒の登下校に際して、歩行指導の専門性のある教員が安全面への配慮を十分に行いながら、通学指導(白杖を 使った歩行指導)を行っている。通常の学級においての指導は困難であるだけでなく、極めて危険である。
  • ④ 視覚に頼った授業では理解が難しいので、言葉での細かい説明や具体物を触って理解する必要がある。それは、視覚 障害児童・生徒の行動特性や、触察の専門性を有し、指導内容・方法に習熟した教員により、初めて授業を理解し、確か な学力を習得できることとなる。通常の学級における授業では理解が極めて困難となる。
  • ⑤ 社会見学や移動教室、修学旅行等、校外での学習においても、細かい説明を聞いたり、時間をかけて歩く、触ることで理 解を促しているが、通常の学級で十分な指導ができるか疑問である。
  • ⑥ 視覚障害の児童・生徒が点字を習得するには、早期からの取組みが重要であり、中学校や高等学校からでは、困難さが 増し、点字習得は極めて困難となる。

2 施設面や指導者側の問題点等

視覚障害の児童・生徒にとっては、学習環境が重要である。施設・設備面の充実や指導者の専門性が不可欠である。

  • ① 児童・生徒の見え方に応じて、書写台の使用や拡大鏡の使用が必要になる。教室内にそのスペースを確保することが必 要になる。また、点字教科書は冊数が多くなるため、教室内に保管するスペースを確保する必要がある。
  • ② 活字教科書や点字教科書、拡大教科書ではページ数が違い、目的のページ数を指示するにも、活字・点字・拡大の内容 を教員が知っておくことが必要である。(小学校では担任、中学・高等学校では、視覚障害のある生徒を教えるすべての 教科の教員)
  • ③ 点字を使用して学習する児童・生徒の参考資料には、点字の資料が必要である。そのためには点字変換ソフトや点字編 集ソフト、点字印刷機はもとより、教員が点字に習熟し、点字に変換する際の、分かち書き等も知っておく必要がある。
  • ④ 見え方に応じた見やすい使用文字ポイントの資料を準備できるか疑問がある。(小学校では担任、中学・高等学校では、 視覚障害のある生徒を教えるすべての教科の教員)
  • ⑤ 教室内や廊下等の置き物等を変えると、歩行に支障をきたすので、事前に周知するなどの十分な配慮が必要である。
  • ⑥ 児童・生徒自身が見えづらいことをはっきりといえる環境が必要である。(弱視の生徒が盲学校に転校してきて「この学校 では見えにくいって言っていいんだ」と友達同士で話していたことがある。)
  • ⑦ 弱視児童・生徒においても教室等の照度、階段の段差の色による識別等、視覚障害に応じた環境改善が必要である。
  • ⑧ 火事や地震等の非常時に、視覚障害児童・生徒が一人で避難するのは、困難であり時間を要する。安全確保のための人 員確保、立体教材による避難経路図等が必要となる。

障害種別(聴覚障害)における意見書

全国聾学校長会

1.聴覚障害のある生徒にとって、精神的な安定を図り、基礎学力や社会性を培うためには、生徒同士が互いにコミュニ ケーションできる環境を確保することが大切です。

  • 平成 21 年度の聴覚障害教育を行う学校(以下、聾学校)は約100 校あり、幼稚部から高等部専攻科までに約6500 名の幼児児童生徒(以下、生徒)が学びました。
  • 社会性を育成するためには集団が欠かせません。都市部では比較的確保できますが、それ以外の地域では生徒数が少 なく、集団確保が難しいという課題があります。
  • 聴こえは、ほとんどの生徒が裸耳で60dB~120dB にあり、幅があります。
  • コミュニケーション手段には、手話、指文字、聴覚活用、口話、キュードスピーチ、文字、カード、空書など様々あ ります。
  • 平成 19 年度の聾学校生徒が、重複学級に措置されている割合は15.4%でした。この年、特別支援が必要な生徒の割 合の 6.3%を導き出した方法を用いて、学芸大学と校長会が共同で調査したところ、聾学校普通学級に措置されている 生徒の内、約30%に発達障害が見られました。
  • 平成20 年度に、全国聾学校の小学部6年生205 名と中学部3年生251 名が使用しているコミュニケーション手段を 調査しました。結果は、小6では、口話、聴覚活用、指文字、日本語対応手話、日本手話、キュードスピーチ、その 他の順に、84.4%、89.3%、87.8%、90.2%、14.6%、20.0%、1.0%で、中3では、同様の順で89.6%、88.4%、93.2%、 94.4%、15.9%、12.4%、1.2%でした。

以上の例から分かるように、学習集団の大きさ、聴こえの程度、重複や発達障害の状況、コミュニケーション手段 の状況、更に家庭環境等は一定していません。また、聴覚障害児と通常の児童生徒を、統合して教育したり、分離し て教育するという考え方は、共に必要で、一方がよいとか悪いという問題でないことを確認する必要があります。聴 覚障害教育を成立させるためには、少なくとも、コミュニケーションが取れる環境作りが必要条件です。

2.生徒の聴力や障害の状況も多様化しています。聴力が低下した高齢者を聾者に入れないのと同様に、聴覚障害教育の コミュニケーション手段を手話に限定することなく、実情に合わせて捉えてください。

手話の語彙数は、辞書と比べると10 分の1未満であり十分とはいえません。それでも、30 年前に比べて手話使用人 口は飛躍的に増え、手話が社会的に受け入れられてきています。

手話を言語として位置付けて学習していくことは、理解力の向上につながるので効果があります。しかし、聴力や 障害の程度に幅があるにも関わらず、全ての者を包含して聾者として捉え、手話で指導するという仕分けは現実的で はありません。それは、補聴器の進歩による聴こえの改善、医療の進歩に伴う人工内耳など、20 年前に比べてみると、 多くの者が恩恵を受けているからです。

また、生徒により個人差はありますが、視覚優位であれば手話+口話、聴覚優位であれば手話+聴覚活用、中間で あれば手話+聴覚口話と考えられるので、多くの聾学校では、手話と聴覚口話を併用したコミュニケーション手段を 用いています。

議論にある手話で学習するという試みは、常に通訳者を必要とする状況を作り出します。大学に通ったり社会生活 を営む際、聴覚障害者1人に対して数人必要とするので、大勢の通訳者を必要とし、必然的に通訳という雇用を生み 出すことになると思います。

3.言語獲得のためのコミュニケーション手段の流行はあっても、聴覚障害教育の言語指導、聴覚活用、手話指導、教科 指導、職業教育等の専門性は不易なもので、担保していく必要があります。

各学校とも、①発音・発語、読話等を生かす口話法、②聴覚の状態を知り、聴覚を最大限生かす聴覚活用、③会話を 容易にする手話・指文字、④教科の専門性・指導方法などの研修を行っています。

  • ① 口話法の基礎的な知識を持つことは、聴覚障害教育の配慮事項を身に付けることにつながります。特に、可塑性の高 い時期にある幼稚部教育の役割は非常に大きいと考えます。
  • ② 多様な生徒に対応するために、最近の人工内耳施術者に対する配慮事項を含めて、聴覚活用についての基本的な知識 を身につけることが必要です。
  • ③ 手話力の指標にしているものは、全日本ろうあ連盟他公認で、全国手話研修センターが編集している「全国手話検定 試験」です。手話学習期間が2年位の力(2級)がなければ指導もおぼつかないので、このレベルをクリアする必要 があると考えています。
  • ④ 教科指導を行うためには、通常の教育以上に内容を深くつかみ、コンパクトに、しかも無理なく無駄なく教える指導 力が求められます。

4、聴覚障害教育から見たインクルーシブ教育の問題点や課題

全国聾学校に在籍する生徒の、聴覚障害や発達障害の程度は様々である。このため情報保障(コミュニケーション保 障、視覚情報等)や配慮を十分に行っているが、この状態を通常学校の中で展開すると、幾つかの問題点や課題が出て くることが考えられる。

1.聴覚活用が不十分な生徒に対しては、手話による教育が主になるが、コミュニケーションが成立するかどうか。

  • 聴覚障害の出生率は1000 分の3 前後で、聾学校に通学している生徒は、その10 分の1 程度である。手話を使う環境 からすれば、周りが全て手話の世界であればいいが、現実的には不可能なので、一部に呼びかける程度になる。
  • コミュニケーションが取れなければ、精神的に落ち着かないので、抑圧された生徒を生み出してしまうのではないか。 聾学校における30 年以上の統合教育(インテグレーション)や15 年以上の通級指導の歴史の中に、成功した例や失 敗した例がある。成功例の感想には、授業が分からなかった、友人関係がうまくいかなかったというものが半数を占 めてはいるが、本人の努力と才能で克服した者たちである。そうでない学習空白等があり不適応を起こして、聾学校 (高等部・中学部)にU ターンしてきた事例は数多くある。
  • 教員が手話を身につけるのは、手話の学習環境がなければ難しい。

2.補聴器を使用している生徒のために音環境を整える必要があるが、施設設備の改修ができるかどうか。

  • 聴覚活用による情報保障を行うためには、施設設備改修でかなりな金額がかかるので、不可能である。
  • 補聴器やシステムを整えれば、聴こえるようになることではない。更に、聴こえないことによる不便さを、勇気を出 して、周りの生徒に伝えていくことが必要になる。

3.異動者や新規採用者が、早く専門的ノウハウを持つ必要があるが、容易に身につけることが困難である。

  • 聾学校の中でも専門性を身に付けるために計画的に教員を育成していくのであるが、数年かかるので、絵に描いたよ うには行かない。
  • 教員養成の問題は、現職もあるが大学での養成方法にも言及する必要がある。

障害種別(知的障害)における意見書

全国特別支援学校知的障害教育校長会

1 知的障害教育の基本的考え方

知的障害教育においては、「児童生徒の障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識、 技能、態度及び習慣を育成していくこと」が求められています。このことを踏まえた上で、以下の点に留意して慎重な検 討をお願い致します。

(1) 知的障害教育の教育課程の特色

知的障害の子どもの教育は、小学校、中学校の特別支援学級(知的障害学級、自閉症・情緒障害学級)及び特別支援学 校(知的障害)の幼稚部、小学部、中学部、高等部で行われています。教育の目標は、基本的には幼稚園、小学校、中学 校、高等学校と同じです。しかし、知的発達に遅れがあり、社会生活への適応が困難であること等を考慮し、生活する力 を高め、社会参加・自立するための知識・技能・態度や基本的生活習慣を養うことに重きを置いています。

教育課程の特色は、障害の状況や学習上の特性などを踏まえ、生活する力を高める「生活中心の教育」です。教科の内 容を系統的に学習するだけでなく、具体的な生活経験を通じて各教科の指導内容を総合的に学習する必要があります。こ のため、指導形態として、各教科・領域(道徳、特別活動、自立活動等)別の指導の他に、各教科を合わせた指導(日常 生活指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習)を行っています。したがって、各教科、道徳活動、「外国語活動」(小 学校のみ)、総合的学習の時間並びに特別活動によって編成される小・中学校の教育課程と大きく異なります。

(2) 一人一人の教育ニーズに対応した指導

指導にあたっては、一人一人の子どもの教育ニーズを把握し、障害の程度や発達段階及び障害に応じた個別の指導計画 が立てられ、それに基づいた指導が行われています。また、指導にあたっては様々な学習上の工夫をしています。例えば、 子どもと教師の一対一の個別指導、複数の教師による小集団・大集団による指導等、学習集団編成においての配慮や一人 一人の子どもの運動能力や感覚機能等を高めるための教材・教具の作成、開発を行っています。

知的発達に遅れのある子どもたちは、抽象的な理解力やコミュニケーション能力に課題がある場合が多く、自分の心情 や考えを適切に伝えたり、即時に判断することが困難な傾向があります。そのために、行動特徴や心理特性については、 一人一人の子ども達の姿をよく見つめる必要があります。興味・関心に合った活動を計画し、進んで意欲的に活動し、達 成感・成就感が持てるように適切に支援することが大切だとされています。子ども達とかかわる上で最も重要なことは子 ども達を豊かな個性の持ち主として受け止め、一人一人の子どもの差に配慮した指導を展開することのできる教師の専門 性だといわれています。

(3) 卒業後の社会参加に向けた支援

卒業後の社会参加を進めるためには、学校と関係機関が連携を図り、生徒一人一人の障害や能力、本人の希望等の状況 に応じた様々な支援を行っていくことが大切です。そのため特別支援学校(知的障害)は、ハローワークや障害者職業セン ター、就業・生活支援機関と連携して一人一人の生徒に応じた進路開拓を行っています。また、在学時から個別の教育支 援計画や個別の指導計画を活用し、進路指導を進めると共に、卒業時には、個別移行支援計画を作成し、卒業後の支援の 在り方を明らかにしています。生徒が様々な支援を選択し、活用しながら卒業後の社会生活を豊かにしていくため、学校 では自己理解・自己選択・自己決定の力をつけるための進路指導の充実に努めていくことが求められています。

特別支援学校(知的障害)高等部を卒業した後は、それぞれの障害の程度や能力に応じて進路の選択をします。企業就労 については厳しい状況が続いていますが、雇用推進の諸施策、各学校の職業教育の充実強化等により、上向きになってき ています。尚、全国的には偏りは見られますが、特別支援学校(知的障害)高等部卒業生の企業就労率は27,1%(平成20 年 度)となっています。

2 知的障害教育の課題

(1) 特別支援学校(知的障害)在籍児童・生徒数の増加と施設の狭隘化及び発達障害のある生徒への対応

特別支援学校(知的障害)の在籍者数は増加の一途をたどっており、平成9 年度約53,000 人に対し、現在(平成21 年度)約83,000 人となり、この十数年間の間に約30,000 人増加しています。在籍者数の推移を見てみると、小学部・ 中学部高等部とも増加しているが、なかでも高等部の増加が一番高く障害の軽度の生徒に加えて、知的障害の程度が境界 線級の発達障害の生徒の顕著な増加も指摘されています。

このような在籍者の増加に伴い、各学校においては、特別教室を普通教室に転用したり、普通教室をパーティションで 分割したりして急場を凌いでいるのが現状です。施設設備、教員の配置、専門性の維持・向上、自閉症のある子どもへの 対応、教育課程、指導体制等の教育環境の整備や教育的対応の在り方についての改善が喫緊の課題となっていいます。

(2) コーディネータを通じた外部支援の現状と課題

特別支援学校においては、「これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を活かして、地域における特別支援教育のセンタ ーとしての機能の充実を図ること」とされ、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校の要請に応じて、障害のある幼児児童生 徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の作成などへの支援に努めること」とされました。

特別支援学校(知的障害)の幼小中高校への支援の状況については、本会会員(約540 校)に対する「平成21 年度全国調 査」によれば、96,000件で昨年度に比べ17,000件増加していました。一方、特別支援教育コーディネータの指名は1,759名(昨 年度比61 名増)で、一校あたりの平均では3,2 人でした。コーディネータの指名の状況は、専任が16%、授業軽減有り46%、 授業軽減無し38%で、他の教師と同じように授業を持ちながら小・中学校の支援にあたる役割を担うなど、大変厳しい状 況が続いています。今後とも支援要請が増加傾向にあることが予想されることから、新たな人的な配置等、制度的な対応 が求められます。

障害種別(肢体不自由)における意見書

全国特別支援学校肢体不自由教育校長会

1 医療的ケア体制について

  • 医療的ケアとして①注入、②吸引、③導尿等のケアがあり、学校教育を行う上で、不可欠である。(現状では、知 的障害を伴わない肢体不自由の児童生徒も含め、多数の児童生徒について医療的ケアを欠かすことができない特別支 援学校の実態があるとともに、小・中学校教職員が現状のまま医療的ケアを行うとするならば、その実施体制や安全 の確保には大いに懸念がある。)
  • 小・中学校において、医療的ケアを支援・実施する常勤看護師及び教職員に医療的ケア研修を実施し、指導・助 言・育成・相談支援が可能となる専門医配置は絶対条件である。
  • 重症心身障害の児童生徒の医療に関する専門医(指導医)及び看護師の確保が不可欠である。(現状では、求人難 のために医療専門職の確保が、極めて困難な実態が在る。)
  • 保健室要員(養護教諭、看護師、非常勤看護師、各科の校医、薬剤師等)の確保が必要である。

2 個々の児童生徒の実態に応じた教育環境の総合整備

  • トイレ(車いす対応便器、寝台、シャワー、手すり等)、洗面台(車いす使用者対応)、バリアフリー(スロープま たはエレベーター<車いす・電動車いす使用者用>設置)等の整備が前提である。
  • 個の実態に応じた自立活動に関する専門性ある人材(PT・OT・ST他)の確保と、自立活動のための施設・ 設備が不可欠である。
  • 個に応じた学習用・医療用備品(机、椅子、教材・教具、医療器具等)が必要である。
  • 個に応じた個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成とともに、個に応じた進路指導などの学習を保障する必 要がある。
  • 個々の摂食機能に応じた給食<4段階の形態食:初期食、中期食、後期食、普通食及びアレルギー対応用除去食> を確保し、摂食指導を行うためには、専門的職歴を有する栄養士と経験と技能を有する給食委託業者が不可欠である。 (現状では大いに不足している。)

3 通学手段等の確保

  • 通学時に、自力で通学が困難な子どもの通学手段の確保と、各家庭の事情により通学支援ができない家庭に対する 通学手段(スクールバス、タクシー、通学支援ヘルパー等)の保障が必要である。
  • 課外活動・校外遠足・修学旅行・移動教室等における交通手段(リフト付バス等)の確保及び引率する医療関係 者(医師、看護師)の確保が必要である。

4 訪問教育対象者への対応

  • 在宅及び入院加療中の児童生徒に対し、教育面において、知識・経験の高い教員を確保し、教育機会を保障する必 要がある。また、担当教員の派遣費用やスクーリングのための交通手段等の確保が必要である。

5 肢体不自由障害のある児童生徒全てに対する教育の機会均等

  • 例えば肢体不自由の単一障害であるなどの、一部の児童生徒のみがインクルーシブ対象とはならない教育制度の設 計が不可欠である。また、同一校内で、重度・重複や医療的ケアの対象児童生徒の保護者だけに負担を強要せず、他 の健常な児童生徒の保護者と同等な支援や保障が確約されることが不可欠である。

6 後期中等教育(高等学校等)への進学への対応

  • 現在、高等学校は、単位取得者でないと上級学年への進級が不認可という現状であるが、小・中学校に就学した者 が、高校進学時に、高校での教育が履修(単位修得)可能となるための障害に対応した教育内容・方法、学校環境整 備、支援体制を保障する制度が、義務教育制度の変更と同時期に、確立されている必要がある。

障害種別(病弱)における意見書

全国病弱教育特別支援学校長会

1 学籍について

学籍は完全に一元化するのではなく、特別な教育的支援がどうしても必要な児童生徒については二つの学籍をもて るようにして教育の保障をするべきだと考えます。完全に一元化だと、病院に入院中の児童生徒や病気治療中のため に通学できない児童生徒の教育を行う環境がなくなってしまいます。

病気になって入院した児童生徒が病院内(又は隣接した)の学校において教育を受けても良いと医師の許可を得る と、現行制度に則って病院の中にある学校(病弱の特別支援学校(又は病院内にある特別支援学級)に転校し教育を 受けることになります。その際、責任を持って教育を行う学校(学級)を明確にするとともに、必要な教員を確保す るため、現在は学籍を小・中学校等から移しています(転籍)。転籍により、学級が認定され、学級数に応じた教員が 配置されます。学籍の移動なしには学級は認定されないため、病気の児童生徒の教育を行う保障がなくなってしまい ます。インクルーシブ教育の考え方に基づき、もし学籍が一元化され、病弱の特別支援学校(又は病院内の特別支援 学級)に学籍が移されないことになると、学級認定が無くなり教育に必要な教員が配置されなくなります。

病気になっても「わが子に教育を」という親の願いは強く、また、「病院に勉強の環境があってよかった」という声 もたくさん届いています。医師からも「学校が治療の励みとなり、治療の効果が上がった」との評価をいただいてい ます。

病気になって長い入院生活になっても地域の小・中学校との関係をとぎらせることなく、病気が改善したときには円 滑に地域の学校に戻れるように準備をしながら教育を進めています。また、教育を受けるためとはいえ、学籍を移動 させることは、児童生徒や保護者にとって、地域の小・中学校との関係が切れるような不安をいだかせます。そのた め、新たな法制度として、病弱の特別支援学校(又は病院内の特別支援学級)の教員配置や教育予算等の諸条件を確 保しつつ、地域の小・中学校と病弱の特別支援学校との二つの籍を持てることが望まれます。病気の児童生徒が安心し て病気の治療に専念でき同時に勉強への意欲や学習の継続が行われる環境を整えていく必要があると考えます。

2 集団での学習活動について

もし病弱の特別支援学校や病院内の特別支援学級が制度上なくなるならば、地域の小・中学校の教員が、病気の児童 生徒の教育も責任を持って行うことになります。病気の児童生徒は入院して治療を受けていますので病院を訪問して 指導するしか教育の方法がないことになります。しかし、病気の児童生徒が地域の学校の学籍のまま、地域の学校の 教員の訪問による指導を受けるには、二つの課題があると考えます。

一つ目は担任が病院に訪問している間は担当している学級に担任の先生が不在になるということです。病気の児童 生徒は治療や体力の関係から午前中に授業を受けることが望ましく、午後は安静の時間とすることが多くなっていま す。学級担任が病院を訪問して指導を行うため、例えば週3 日午前中2 こま(現在の東京都の病院訪問の授業時数) 学校を不在にすることは出来ません。また、いつ児童生徒が病気になるかわからない中では、年度はじめに入院する かもしれない児童生徒のことを予測して小・中学校等に教員を配置することは出来ず、病気の児童生徒以外にも多大な 影響が出ることになります。

二つ目は入院している児童生徒に対して集団授業が出来ないことです。一定の治療が進むとベッドサイドの指導か ら病院内の学級へ登校しての指導に切り替わります。そこで感染等に注意しながら小集団での授業を始めるとともに、 地域の学校に戻ったときの準備が始まります。小・中学段階では学習内容のみならず、人間関係の力や集団適応力を育 成することも教育の大事な側面です。しかし、在籍している小・中学校の学級の担任による訪問教育だけでは、この様 な集団での活動が保証されず、退院後不適応を起こす可能性が心配されます。

以上のような問題点も踏まえてご検討くださいますようお願い致します。