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全国特別支援学級設置学校長協会意見書

平成22年4月26日
障がい者制度改革推進会議
議長 小川 榮一 様
全国特別支援学級設置学校長協会
会長 瀧島 順一
(練馬区立大泉中学校)

本会議の審議にあたり、このような機会を全国特別支援学級設置学校長協会(以 下、全特協)にいただき、有り難うございます。下記の「項」につきましたて本協 会の説明並びに意見を述べさせていただきます。

  1. はじめに「全特協」について
  2. 特別支援教育における「特別支援学級の役割」と「インクルーシブ教育 システム並びに障害者の権利に関する条約」への検討・審議について。

意見書

1,はじめに「全特協」について

「全国特別支援学級設置学校長協会」は、通称「全特協」といい、各都道府県単 位にある特別支援学級設置校長会の連合体として、昭和39 年11 月岐阜県で結成大 会を開催、今年度で創設47 年を迎える。

この間、特別支援学級設置学校長協会は、障害のある児童生徒の教育活動の課題 解決をはじめ、調査研究、施設・設備の改善充実等を目指し行政機関への働きかを 行う等、障害のある児童生徒の教育活動に対し真摯に取り組んできた。また、就学 相談や入級後の教育相談、進路指導の在り方、発達障害への対応等、校長としての 識見を深めるために研修の機会を重ねてきた。さらには、教育活動の根幹である、 保護者、地域社会との連携を深め障害のある児童生徒の理解・啓発を図るとともに 児童生徒一人一人の障害を理解し、適正な教育活動を展開するための学校経営に邁 進してきた。

現在、全国小中学校(平成21 年度学校基本調査)の33,122 校のうち67.9%に特 別支援学級(22,478 校)が設置されている。学級数42,067 学級、在籍児童生徒数 135,166 人が設置学級の教育活動を通して充実した学校生活を送っている。この設 置校に求められるものは校長の正しいリーダーシップと教員の正しい専門性である。 そのリーダーシップと専門性が児童生徒一人一人の教育ニーズに応える指導となり、 社会から求められる人材育成教育に結び付くものである。

2,特別支援教育における「特別支援学級の役割」と「インクルーシブ教育システ ム並びに障害者の権利に関する条約」への検討について。

①「特別支援学級の現状と課題」について述べる。

障害のある人が困難さを感じる現代社会の中で、特別支援学級に求められる教育 は何か。それは、障害のある児童生徒が自立できる「生きる力」の育成である。

では、生きる力を培う特別支援学級はどうあるべきか。校長として学校経営の視 点に立って述べる。

現在の特別支援学級には、教育環境の整備、教育課程の編成等多くの検討事項や 改善事項がある。また、論じるまでもないことであるが学校に特別支援学級が設置 されているということは障害のある児童生徒が教育活動を実践している事であり、 同時に毎年、新年度に入級する生徒が見込まれるということでもある。(学校教育法 81条に規定されている)

その特別支援学級で重要なことは、そこに在籍する児童生徒、保護者や地域社会 から信頼される特別支援学級でなければならない。学級は児童生徒一人一人が通学 できる喜びを感じ、自らの夢や希望に向かい努力できる学級であること。その結果、 児童生徒自身が学習活動を通して自分自身の成長が伝わる学級。また、気の合う友 達と遊びや生活を通して共感することができる学級。担任の教師に会える喜びを感 じる学級等々、特別支援学級も通常の学級も学校には通う喜びがなければならない。 そのためには、教科学習や日常生活、学校行事、生徒会活動さらには放課後の部活 動等、自分自身の存在感と認知される場面や場所が学校には必要である。

では、現状の特別支援学級は児童生徒一人一人が十分に満足できる学級・学校と なっているか。まだまだ工夫、改善、充実せねばならぬところがある。例えば、教 育計画や学校行事等は通常の学級を基本対象として考え進められるために、特別支 援学級に在籍する障害のある児童生徒に十分配慮され計画が立案されているか、な ど振り返ってみるに十分満足させる状況にないことも事実である。その結果、とも すると学校生活への不適応が始まる生徒がいることも現実である。このことは特別 支援学級だけではなく通常の学級にも共通する課題である。

このような状況を鑑みるに、教育の現場として重要であり備えるべき要件は「個 別の指導計画」、「個別の教育支援計画」である。現在、この「個別の指導計画」と 「個別の教育支援計画」の作成率は多くの学校で児童生徒それぞれ個別に備えられ ている。しかし、「個別の教育支援計画」の活用については各校とも十分とはいえる 状況ではない。

また、「個別の指導計画」については児童生徒一人一人の障害の状態・状況及び 成長発達との整合性を図り活用されることが必要である。

特に「個別の教育支援計画」は幼児期から学校卒業まで長期的な視点をもって支 援の方法や内容をまとめ作成されるものである。よって「個別の教育支援計画」は 教育のみならず福祉、医療、労働など様々な面から、個人の障害に配慮しつつ計画 が立案されるものである。このことからも関係機関との連携、協力が必要不可欠で ある。

「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」は障害のある児童生徒の教育を保 障するものであり教育活動を展開する上で備えるべき要件である。

以上、雑ぱくではあるが特別支援学級の「現状と課題」の一部について述べた。

では、上記の特別支援学級の「現状と課題」を踏まえ、これより「障がい者制度 改革推進会議」への意見を述べる。しかしながら、大変失礼ではあるが、貴会議の 状況について十分に見えていないところがあることをお許しいただきたい。

本会議は「障害者の権利に関する条約」の批准に向け論議・審議を進められてい るとのことである。

私自身が「障害者の権利に関する条約」を何度となく読み返す中で、条約を逆説 的に読み取るならば、今日の文化的な日本社会の中で、障害があることによって、 これほどまでに差別され、固有の尊厳や国民としての権利、基本的人権、平等性が 剥奪されることは極めて憂慮すべき状況にあることが理解できる。また、各項には 「認め」の文字が多く記されている。そして、第24 条「教育」では「確保、強化、 提供、配慮」の文字が多く記されている事に気付く。このことから、障害を理由に 教育に対しても権利や制度に不合理があったと読み取れる。

しかしながら、大変無責任は捉え方ではあるが、「条約」についての理解や読み 取りはできるものの、本協会や多くの教育関係者が積み上げてきた現況の教育制度 やシステムを改善、変更するには十分な検討・論議が必要であることは私が申すま でのことではない。

このことから鑑みるに、貴会議の検討・審議を深めるためには、さらに十分なる 時間をかけ、教育の在り方にかかわる検討・審議を行うことが必要であると考える。 また、教育に関わる検討・審議は教育関係者、発達障害関係団体などの専門家を交 えて論議・審議されることが障害のある児童生徒の望ましい教育へと結び付くのも であると考える。

現状のような教育関係者等が不在の中で検討・審議されることは、教育の有り様 が保障されるか否か、極めて憂慮しがたい状況にある。

重ねて申し上げるが、これまでに築き上げてきた「障害のある児童生徒の教育の 在り方、教育の場」を十分に尊重していただくとともに性急かつ拙速で不透明なイ ンクルーシブ教育システムへの転換に向けた検討・審議は極めて憂慮される。

また、一部内容を読み取ると「特別支援学級」は差別を助長する教育の場である かのように、読み取ることもできるが、「特別支援学級」は個に応じた教育を行う場 であり、個人の尊厳を保障する教育制度である。そのことを検証することからも、 貴会議の委員の皆様には「特別支援学級」に関わる学校視察を強く願いたい。

特別支援学級は地域の学級として、障害のある児童生徒一人一人の個性を伸長し、 人権を尊重する場であると確信している。権利条約の差別に当たる場ではないこと を強く書き記したい。

これまでの歴史の中で積み重ねられてきた特別支援教育の在り方や制度は日本 の教育制度の貴重な財産であることを、改めて認識していただきたい。

今後の検討・審議される「インクルーシブ教育システム」、「障害者の権利に関わ る条約」については、その基本理念を踏まえ、国民すべてが固有の権利を享有され るためにも「教育に関わる」検討・審議は、教育関係者並びに障害者団体を交え十 分に時間をかけ検討・審議されることを強く望むとともに、正しい検討・審議こそ が障害のある児童生徒一人一人の教育の権利を保障、尊重するものである。

以上を申し述べ、全国特別支援学級設置学校長協会の説明と意見とする。