ヒアリング項目に対する意見書
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】情報の保障
民主制を維持し発展させる上で、民主制の過程における政治的権利の実現において、情報の 保障、特に知る権利の保障は、要の役割を果たすといわれているが、障害者にこれが保障され ているかについて、今後の対処方針も含めて、どのように考えるか。
1,選挙公報などの行政の提供する情報
回答
【結論】
総務省としては、視力に障害のある有権者が投票しやすいように、候補者の氏名 、政策等を点字で記載した「選挙のお知らせ版」を視覚障害者に配布することに加 え、音声コード、テープで作成された「選挙のお知らせ版」の活用についても各都 道府県選挙管理委員会に依頼してきており、今後とも障害者団体等とも連携しなが ら、視覚に障害のある方の投票環境の向上に努めてまいりたいと考える。
【根拠、理由】
○ 総務省においては、これまで、視覚障害者が公職の候補者又は政党等の政策、 公約等を知ることができるように、国政選挙や統一地方選挙が行われる都度、各 都道府県選挙管理委員会に対して、啓発活動の一環として、公職の候補者の氏名 等を点字で掲載し「選挙のお知らせ版」を視覚障害者等に配布するように助言し てきているところである。
○ さらに、平成19年の参議院議員通常選挙においては、点字による「選挙のお 知らせ版」に加え、音声コード、テープで作成された「選挙のお知らせ版」の活 用についても各都道府県選挙管理委員会に依頼したところであり、同様に先の衆 議院議員総選挙においても依頼したところである。
○ 点字及び音声による選挙公報の発行を制度化することについては、従来から、 各選挙管理委員会が選挙運動の期間中の限られた期間内に誤りなくこれらの媒 体による選挙公報を調製することができるか、その調製した選挙公報を視覚障害 者に公平に配布することができるか等の技術的な問題があり、これの実現には至 っていない。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】情報の保障
民主制を維持し発展させる上で、民主制の過程における政治的権利の実現において、情報の 保障、特に知る権利の保障は、要の役割を果たすといわれているが、障害者にこれが保障され ているかについて、今後の対処方針も含めて、どのように考えるか。
2,政見放送などの選挙に関する情報
回答
【結論】
政見放送などの選挙に関する情報提供については、障害者に対してさらなる配慮 を行うよう、今後とも実施・検討してまいりたい。
【根拠、理由】
○ 総務省においては、以下の動きからわかるように、政見放送などの選挙に関す る情報提供は、選挙運動の手段として、また有権者の知る権利を保障する手段と して重要なものであると考えている。政見放送については、現在、衆議院小選挙 区選挙の政見放送についていわゆる「持込みビデオ方式」が採用されており、候 補者届出政党は持込みビデオに手話や字幕を付すことができるところである。
○ 従前は参議院の比例代表選挙のみで実施していた政見放送時の手話通訳を付 しての収録を平成21年からは衆議院比例代表選挙にも対象を拡大したととも に、手話通訳士に対する研修の支援を実施してきた。
○ 政見放送への字幕付与についても、上記と同様、衆議院小選挙区選挙について はいわゆる「持込みビデオ方式」の採用により可能となっているところ。その他 の選挙については放送事業者からの聞き取りなどによりその実現可能性を検討 するとともに、各方面からの意見を踏まえ、課題解消に向けて具体的な検討を進 めているところ。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
1,選挙権、被選挙権に関する欠格条項(成年被後見人であること)
回答
【結論】
「事理を弁識する能力を欠く常況に在る者」について、選挙権を認めることにつ いては、慎重に検討すべきものと考えるが、いずれにせよ、選挙権及び被選挙権を 有する者の範囲をどのように定めるかについては、選挙制度の基本に関わる問題で あるので、各党各会派において十分ご議論いただくべきものと考える。
【根拠、理由】
○ 公職選挙法第11条は、成年被後見人について、選挙権及び被選挙権を有しな いとされている。
○ 従来、禁治産者について、心身喪失の常況にある者であることから、選挙権及 び被選挙権を認めないこととされていた。その後、平成11年の民法改正におい て、「禁治産者」が「成年被後見人」の制度に変更され、その定義が「心神喪失 の常況にある者」から「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在 る者」に改められたが、その対象は一致するものである。そこで、禁治産者同様 、成年被後見人についても選挙権及び被選挙権を認めないこととされたものであ る。
○ 選挙権及び被選挙権を有する者の範囲をどのように定めるかについては、様々 な角度から検討すべき課題であるが、「事理を弁識する能力を欠く常況」にある 者については、多くの諸外国においても同様に選挙権及び被選挙権の欠格事由と されているところである。
○ 現実の問題としても、個別に事理を弁識する能力について判断することは実務 上困難でもあるため、成年被後見人に選挙権及び被選挙権を認めることについて は、慎重に検討するべきものと考える。
〔参考条文〕
(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一 成年被後見人
二~五 〔略〕
2・3 〔略〕
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
2,投票所への移動支援
回答
【結論】
総務省としては、投票所への移動が困難な有権者に対する投票機会をどのように 確保していくかは重要な問題と認識しており、その手段を検討してまいりたい。
【根拠、理由】
○ 投票所への移動支援についての具体化策としてはいくつかの手法が考えられ るが、自治体が投票所まで案内するヘルパー制度については
- ① どのような者を対象とすべきか
- ② 対象となる方を遺漏なく案内できるか
など、選挙の公平・公正の観点から、困難な問題が多いと考えている。
○ 一方、中山間地域など投票所から距離のある地域における有権者の投票機会の 確保のため、投票所まで巡回バスを運行する市町村もあるところ。総務省として は、投票所への移動が困難な方々の投票機会を確保するための、市町村の取組み を支援するとともに、選挙の公正確保との調和を図りながら、今後ともその手段 を検討してまいりたい。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
3,投票所の物理的バリアー
回答
【結論】
総務省においては、投票所の選定に当たっては、高齢者や歩行が困難な身体障害 者等の便宜を考慮して適切な施設を選ぶことのほか、エレベーター等昇降設備のな い2階以上の室に設けることは避けること、段差がある場合にはスロープを設置す ること、視覚障害者や歩行が困難な身体障害者の誘導等について十分な配慮を行う こと等を助言しているところであり、今後とも身体障害者等の便宜を考慮した投票 所の設置に努めるよう助言してまいりたい。
【根拠、理由】
○ 投票所は、市町村の選挙管理委員の指定した場所に設けることとされている。 投票所の施設の選定にあたっては、総務省においても国政選挙や統一地方選挙に 対して、上記のとおり助言しているところである。
○ なお、国政選挙における投票所の設置に関し、段差解消のためにスロープを設 置するなど、投票所における障害者対策のために要した経費については、国費(選 挙執行経費)にて措置しているところ。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
4,投票所内での障害に応じた必要な配慮
回答
【結論】
投票所内での障害に応じた必要な配慮については、総務省においても点字による 候補者名簿等の備え付け、投票所の段差解消の措置、障害者に配慮した投票所の設 備・備品の用意等について助言しているところであり、投票所を設置する市町村選 挙管理委員会において、適切に措置されているものと考えているが、今後とも身体 障害者等の便宜を考慮した投票所の設置に努めるよう助言してまいりたい。
【根拠、理由】
○ 投票所内の設備等については、公職選挙法施行令第32条において、投票の記 載場所について、他人が選挙人の投票を見ること又は投票用紙の交換その他の不 正の手段が用いられることがないようにするために、相当の設備をしなければな らないこととされていることのほか、特段の規定はない。
○ ただし、総務省においては、国政選挙や統一地方選挙に際し、投票所の設備等 に関して、
- 点字による候補者名簿等を各投票所の受付場所に少なくとも1部ずつ備え付け ること
- 高齢者や歩行が困難である身体障害者等の便宜のため、投票所に段差がある場 合にスロープを設置することのほか、投票記載台についても幅が広く堅固なもの を用意すること
- 投票所内の設備の配置等については、選挙人にわかりやすくするため、案内図 の掲示、順路の明示等適切な措置を講じるとともに、視覚障害者や歩行が困難な 身体障害者の誘導等につて、十分な配慮を行うこと
- 必要な数量の虫めがねや老眼鏡の備え付けることのほか、投票記載台に照明灯 を設置するなどして、投票所内の氏名等掲示について見やすいものとなるようで きる限りの便宜を図ること
などを助言してきているところ。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
5,投票所内で投票できない場合の現行の代替措置(郵便投票など)
回答
【結論】
現行制度で投票することが困難な方々の投票機会をどのように確保していくか は重要な問題と認識しており、政府としても選挙の公正確保との調和を図りながら 引き続き検討して参る所存であるが、各党各会派においてもご議論いただきたいと 考える。
【根拠、理由】
○ 投票機会の拡大に向けては、これまでも、
- 海外に在住する日本国民を対象とした在外選挙制度の創設、
- 遠洋航海の船舶に乗船する船員を対象としたファクシミリ装置を用いた不在 者投票の実施、
- 郵便投票による不在者投票対象者の介護保険の要介護5の方々への拡大、
- 南極地域観測隊の隊員等のファクシミリ装置を用いた不在者投票制度の導入
など、逐次制度の拡充が図られてきた。
○ 現行制度上、投票することが困難な選挙人の方々については、できる限り選挙 権の行使の機会を拡充することが望ましいと考えている。一方で、選挙の公正か つ適正な実施も確保しなければならないことから、政府としてもそれらの調和を 図りながら引き続き検討して参る所存であるが、各党各会派においてもご議論い ただきたいと考える。
〔郵便等投票の対象拡大について〕
○ 郵便等による不在者投票については、かつては医師等の証明により広く郵便投 票が可能であったところ、病気と偽って郵便投票をするなど不正が横行し、いっ たん廃止されたという経緯がある。
○ したがって、郵便等投票の対象者を拡大するとした場合、投票の公正確保の観 点から、郵便等投票の対象者の範囲をどうするか、その公的な認定方法をどうす るか、また、全国的に平等な取扱いが可能か等の様々な課題がある。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】選挙の仕組み
選挙権、被選挙権や投票の仕組みは、公職選挙法によって規定されているが、現行の法律で、 障害者の選挙権や投票権は障害のない人と同等に保障されているかについて、今後の対処方針 も含めて、どのように考えるか。
6,点字投票の場合における投票の秘密
回答
【結論】
点字投票の場合における投票の秘密は守られている。
【根拠、理由】
○ 公職選挙法第52条においては、「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名 又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない。」と規定 されており、また、同法第227条においては、選挙事務に関係の国若しくは地 方公共団体の公務員又は立会人等が選挙人の投票した被選挙人の氏名等を表示 したときに対する罰則も規定されている。
○ さらに、同法第66条の規定により、開票について、開票管理者は、開票立会 人とともに、各投票所の投票を開票区ごとに混同して投票を点検しなければなら ないこととされている。
これらの規定により、投票の秘密は守られているものである。
ヒアリング項目
【ヒアリング項目】政治活動
障害者が候補者として、選挙活動や政党の活動等に参加する際に必要な支援(たとえば、手 話通訳や移動介助者は選挙運動員とは別枠で、介助者として保障する)について、今後の対処 方針も含めて、どのように考えるか。
回答
【結論】
選挙運動のあり方にかかわる問題であるので、各党各会派において十分ご議論い ただくべきものと考える。
【根拠、理由】
○ 障害者の政治参加を勧めることは、重要な課題と認識している。
○ 一方で、選挙運動については候補者間の公平を図ることも重要であることから 、公平性を確保しつつ、どのような障害者にどのような支援措置をどの程度講じ ることができるかとなると、様々な課題があるものと考える。
○ いずれにせよ、選挙運動のあり方にもかかわる問題であるので、各党各会派に おいても十分ご議論いただきたいと考える。
〔参考:障害者が候補者となる場合の公職選挙法上の措置〕
○ 障害者の政治参加を勧める観点から、音声機能や言語機能に障害を持つ方が、 政権放送の録音・録画を行う場合には、あらかじめ提出された録音用原稿に基づ き日本放送協会が録音したものを使用することができることとされている。