音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

会議レポート
第1回総合福祉部会(2010年4月27日:厚生労働省)

「アクセシブルな会議の運営」という視点から

2010年5月7日
(財)日本障害者リハビリテーション協会情報センター

 4月27日に厚生労働省で開催された第1回総合福祉部会を傍聴した。障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は、障害者に係る総合的な福祉法制の制定に向けた検討を行うために設置された。障がい者総合福祉法(仮称)の制定までには3年かかる見通しで、5月中に当面必要な対策について議論すべきことを出してもらい、6月から総括的な、当面の措置を中心として新しい法律の骨格がどうあるべきかの議論を始める予定になっている。
第1回総合福祉部会では部会の運営、及び障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について委員から意見書が提出され、55名の委員のうち、23名の委員よりヒアリングを行った。

 福島大臣は挨拶の中で、以下のように述べた。
「障がい者制度改革推進会議が発足した日のときに、これは歴史的な日だと申し上げました。……障がい者制度改革推進会議のもとで、障がい者総合福祉法を作る、障がい者差別禁止法を作る、障がい者基本法を改正する、この3つをきっちりなしとげて、障害者権利条約を批准したいと考えています。多くの人たちの力なしでは成し遂げられない。
こういう形で議論していく、全国発信をしたり、手話の方、要約筆記があって、介助者の皆さんがあって、こういう運営をすること自体、実は新しい形だと思っています。ほんとうにみんなで力を合わせて障害者施策を大きく進めてまいりましょう。」

 障害のある方々に平等に情報が保障され、意見を述べる権利と手段が保障されることは大変重要である。福島大臣の言葉にあるように、まさに「新しい形」である。そのためには、「アクセシブルな会議の運営」が非常に重要である。
 第8回障がい者制度改革推進会議レポートに引き続き、第1回総合福祉部会を「アクセシブルな会議の運営」という視点からレポートしてみたい。

1. 会場のアクセシビリティ

 建物のアクセシビリティは障害者の方もそうでない方も大変重要な要素である。会場は厚生労働省、中央合同庁舎第5号館で開催されている。東京メトロの出口からは直結しておりアクセスは良い。会場に着くと、係りの方が要所要所に立って案内をされていたので、誘導が行き届いていた。会場は広く、車椅子の出入りもスムーズにできる。

2.手話通訳者

 手話通訳者は1人の委員に対し、3名配備されている。それとは別に会場から見える位置に手話通訳者が交代で通訳を行う。リアルタイムで放送される映像と同じ内容を映し出すモニターも傍聴席に用意されているので、聴覚障害のある傍聴人はそのモニターで会議の内容を手話、字幕で観ることができる。

3.指点字通訳者

 委員の中には盲ろうの方がいるので、2名の指点字による通訳者が委員の隣に同席する。

4.要約筆記者

 聞こえに障害がある方のためには5名の要約筆記がサポートを行い、スクリーン上に要約筆記が映し出される。

5.ルビ付き資料

 意見書は漢字の理解が困難な委員、参加者のためにルビ付きとルビなし両方が用意される。ルビ振り版の意見書は各委員が用意をするが、技術的なサポートについて必要であれば担当室が情報を提供している。テキスト化できない写真や複雑な表やグラフは、その意味するところを要約した資料要約版を作り、リビを振るように担当室から求められている。

 第1回総合福祉部会では毎日新聞論説委員の野沢和弘委員から出された意見書の中の一つに「わかりやすい文章で意見を出そう」という提案があったので紹介する。

 漢字にルビをふるだけではわかりやすくならない。さいしょから漢字をすくなくした方がよみやすい。文章は短くする。複雑なこうぞうの文章はやめる。専門用語はつかわない。抽象的なことばはやめる。比喩もやめる。スペースをあけたりする。それを提案したい。たとえば、つぎのように書きかえると、少しわかりやすくなるのではないか?

当該対策と障がい者総合福祉法(仮称)との関連についても、可能な限り言及してください。

あなたが書く意見と 障がい者総合福祉法(仮称) との関連についても できれば書いてください。

資料38(野沢和弘委員)より抜粋

6.点字資料

 点字が必要な視覚障害者のためには点字資料が用意される。

7.発言を行う場合の注意点

 発言を行う前には、挙手、その他の方法で議長に知らせ、指名を受けた後、名前を名乗る。簡潔に、しかもわかりやすい発言を心がける。名乗らないで発言した場合、特に視覚障害者や聴覚障害者にはだれがしゃべっているのか全くわからない。しかし、時間も押してきている中、名乗るのを忘れた方々が数名あった。

8.情報公開

会議の資料は事前にPDFで厚生労働省のウェブサイトに掲載される。部会の動画(手話と字幕入り)も同時に配信され、いつでも見れるよう掲載されている。

総合福祉部会のウェブサイト
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/index.html(厚生労働省)

9.休憩時間の確保

 手話通訳、指点訳者、要約筆記者には非常に高い集中力が求められ、心理的、肉体的負担が伴う。そのため、1時間ごとに必ず15分の休憩時間を確保する。障害者の委員の方、そうでない方、また傍聴者にとっても集中力を持続させるためには休憩時間は必須であり、きちんと実践されていた。

 第1回総合福祉部会は予定時刻より80分延長して終了した。意見発表に入る前、部会の進め方に対する質問や提案に予想以上に時間が費やされた。各委員からの意見発表は持ち時間5分で、4分になると機械音と赤いランプで知らせる仕組みになっていた。制限時間を大幅に越えてしまう委員はいなかったが、23名という大勢の発表者だと少しずつオーバーしてもかなりの時間超過になってしまう。それに加え、プログラム終了前に厚生労働省から平成23年に実施する全国障害児・者実態調査(仮称)と、そのためのワーキンググループについての説明があった。それについての質疑応答もあったことも、終了時間の遅れにつながった。80分の延長は手話通訳者、指点字通訳者、要約筆記者、介助者にとってはかなりの負荷になった。また集中力の持続という意味では全ての参加者にとってかなりハードだった。

 しかしながら、東室長がこの部会の運営に関しては「未体験ゾーン」という言葉で表しておられたが、これだけの大人数の委員で部会をやるということ自体はじめての経験で、やってみないとわからないという部分もある。みんなが参加して、より良い法律を作るために方向性を決めること、議論をすること、まとめること、その全てが大きなチャレンジある。アクセシブルな会議の運営という面でも回を重ねるごとに、パワーアップしていくことを期待する。

参考文献:
1. 第1回総合福祉部会資料38(提出委員:野沢和弘)