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(一社)全国福祉輸送サービス協会提出資料2

ユニバーサル社会の実現を目指して

外出支援ボランティアの輪を広げよう

いま、あなたにできることを、その場で一歩踏み出そう

一般財団法人 全国福祉輸送サービス協会

本書は、宝くじの社会貢献広報事業として助成を受け作成されたものです。

はじめに/超高齢社会を迎えるにあたって

● 交通バリアフリーの推進

 平成18年12月20日、これまでのハートビル法と交通バリアフリー法の2つの法律を統合、拡充させた法律「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」が施行されました。
 同新法は、わが国が 2015 年には国民の 4 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者となる超高齢社会を迎えること、また障害者が社会参加するうえでのバリア(障壁)をなくす(フリー)ことを目的に制定されました。

● 心のバリアフリー/偏見のない社会を目指して

 バリアフリー新法の施行で、駅や公共施設ではエレベーターやエスカレーターなどのバリアフリー設備、ノンステップバスの導入など、ハード面の整備に取り組んでいます。私どもタクシー業界は、同新法により“公共交通事業者等に規定”され、現在、業界をあげて福祉車両の導入などに取り組んでいます。
 しかし、高齢者や障害者の方々が、こうしたハード面の設備拡充と合わせ“より快適に安心して公共交通機関”を利用していくためには、ソフト面の整備が重要となります。言い換えると、私たち一人ひとりの意識の中にある心のバリア(障害者に対する差別・偏見・誤解など)をフリーにすることが求められているのです。
 本書は、駅やバス停、タクシー乗り場などでお困りの高齢者や障害者の方を見つけたら、素通りせずに、 “ひと言” 「何かお手伝いできることはありますか」と、声かけをしたうえで、お手伝いをしていただくためのガイドブックです。
 本書が、少しでも外出支援ボランティア推進の一助となれば幸いです。

目次

高齢者・障害者の方の外出支援をお手伝いする基本的な心がまえ

1.高齢者への理解とお手伝いのポイント

2.車いす利用者への理解とお手伝いのポイント

3.目の不自由な方への理解とお手伝いのポイント

4.耳の不自由な方への理解とお手伝いのポイント

5.ベビーカー利用者への理解とお手伝いのポイント

6.内部障害者への理解とお手伝いのポイント

7.知的障害者への理解

8.知的障害者へのお手伝いのポイント

 (1)券売機の前で立ち往生している人を見たら

 (2)乗り場や目的の場所がわからない人には

 (3)電車やバスで降車駅がわからない人には

 (4)パニック時の対応

9.タクシー利用者へのお手伝いのポイント

10.ご存じですか。配慮を必要とする人を示すマーク

11.外出支援ボランティアに関する基礎知識

高齢者・障害者の方の外出支援をお手伝いする基本的な心がまえ

 高齢者や障害者の方々の積極的な社会進出が増えています。駅やバス停、タクシー乗り場などで困っている高齢者や障害者の方を見かけたら、まず「何かお手伝いできることはありますか」と声かけをしましょう。その際、下記の点に注意しましょう。

ポイント1  ご本人の要望を確認する

 手助けを必要としている方の要望は人さまざまです。ご本人に笑顔で話しかけ、要望の内容を伺います。スムーズな活動ができるようお手伝いすることが基本です。

ポイント2  お手伝いの押しつけをしない

 お手伝いは、高齢者や障害者ご本人の自主的な意思や行動を尊重し、必要最小限にとどめ、お手伝いの押しつけにならないよう努めましょう。

ポイント3 無理な場合は協力を求める

 お手伝いにあたって自分には難しいと思われるときは、無理をせずに周囲の人々に協力を求めるなど、その場でできるお手伝いをしましょう。

知的障害のある方には

 「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」話すことが大切です。

1.高齢者への理解とお手伝いのポイント

 高齢とともに、視力や聴力・筋肉など身体的機能が低下します。それに伴って、動作が鈍くなり、体のバランスもとりにくくなってきます。
 高齢者は、券売機や階段、エスカレーターの乗降などが悩みのタネ。高齢者を尊重する心づかいを念頭において、ゆとりをもって応対(お手伝い)しましょう。

切符の買い方

切符の買い方がわからない高齢者の方には、券売機などの操作をお手伝い。

階段の上り下り

階段の上り下りは身体的負担が大きいもの。荷物を持ってあげるなどのお手伝いを。

シルバーカー利用者

荷物が収納でき、移動の途中で座って休憩することもできるシルバーカー。高齢者の外出を楽しくしてくれるシルバーカーですが、ときには危険も。

たたんだシルバーカーを持ってバスに乗ろうとした老婦人。ステップでつまずくおそれも。その前にぜひお手伝いを。

杖を利用している方

杖を利用している方が、階段を上るときは斜め後ろから。下りるときは本人の一段下 斜め前に立って、横向きに降りながら見守るのがお手伝いのポイントです。

手すりのある階段では、杖よりも手すりを持ったほうが安全です。

ホームや車内で体調が悪く、動けなくなっている人を見かけたら、駅員(乗務員)に知らせましょう。

2.車いす利用者への理解とお手伝いのポイント

 車いすでの外出には、階段や溝などまだまだ多くのバリア(障壁)が点在しています。車いすの方をお手伝いするときは、まず車いすの方と同じ目線の高さになって、「どのようなお手伝いが必要なのか」を尋ねてください。

車いす各部の名称

手動型

簡易電動型

車いすの折りたたみ方・広げ方

折りたたみ方

両側のブレーキをかけ、フットレストを上げます。

シートの中央を持ち上げます。

広げ方

両側のブレーキをかけ、アームレストを持って少し外側に開きます。

手のひらでシートの両側を押し広げます(指を挟まないように注意)。

人が座ってからフットレストを降ろします。

車いすの押し方 ※いつも歩いている速さより、ゆっくりと押しましょう。

平地での押し方

車いすの真後ろに立って、両手でハンドグリップをしっかり握り、一定速度でゆっくりと押します。

上り坂での押し方

後ろから一歩一歩確実に押し上げます。押し戻されないように注意を。

下り坂での押し方

急な坂道では後ずさりで下がることが原則です。

溝の越え方

車いすは、わずかな段差でもそれを乗り越えるときに衝撃があります。溝がある場合は、ひと声かけてからステッピングバーを利用して前輪をあげ、溝を通過したら前輪を降ろします。

段差を上がる場合

段差の手前で、ステッピングバーを利用し前輪を浮かせます。

バランスを取って前進し、前輪を段に乗せます。

後輪が段にぶつかったら、後輪を段上に持ち上げます。

* 段差を下りる場合は、後ろ向きになり、握りを持ち上げるようにして後輪から降ろします。

3.目の不自由な方への理解とお手伝いのポイント

 視覚障害者の方と接するときは、いきなり相手の身体に触れたり、杖を引いたりせずに、まず「何かお手伝いしましょうか」と声をかけましょう。
 もし、誘導を希望された場合は、どうしたらよいかを尋ねて行動します。

視覚障害者は、こんな状況で困ることがあります

●駅構内で

 白杖を持った目の不自由な方が、駅構内で方向がわからなくなり、通行人に尋ねようとしても、みんな忙しげに行き交うだけ。やむなく雑踏の中で、一人立ち往生することに。

●駅のホームやバス停で一人取り残されてしまった

 電車やバス、タクシーなどを並んで待っていたのに、いつの間にか列が動いて、一人だけ取り残されることに。もう進んで、乗っても大丈夫なの?

●横断歩道で

 メロディの流れない横断歩道で、車の騒音が激しく、目の前の信号が青になったのか判断できない状況。いつ渡れば安心なの?

応対ポイント

●視覚障害者の方が戸惑っている姿を見かけたら、正面に回って「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけます。いきなり、相手の身体に触れたり、杖を引くのは厳禁です。

●例えば、タクシー乗り場を尋ねられたとすれば、「右に 50m ほど行くとありますが、よかったら案内します」などと応じます。

●駅のホームやバス停で待っている視覚障害者の方には、「列が動きました」「前へ進めます」などと声をかけてください。

●横断歩道でも同様に、「青になりました」「渡れますよ」などと、ひとこと声をかけましょう。

●位置を説明するときは

 視覚障害者の方に、位置を伝える手法として「クロックポジション」があります。これは説明を受ける人の位置を“時計の文字盤の中心”にいると想定して伝えるもの。
 例えば、正面を時計の 12 時の方向として、「あなたの行く目的地は 3 時の方向にあります」といったように説明します。

目的地への誘導

誘導の基本

視覚障害者の方を誘導するときは、白杖を持っていない側の半歩前に立って、腕につかまってもらうのが一般的です。

段差や階段の誘導

傾斜路や階段では「ここから 10 段ぐらい下り階段です」「次の一段で階段が終わります」などと下りや上り、始点や終点などをきちんと伝えながら誘導します。歩く速度は視覚障害者にあわせます。

狭い通路の誘導は

狭い通路での誘導は、腕を背中の方に回して、縦に重なるようにします。障害物がある場合は、あらかじめ障害物があることを知らせ、「右に避けます」などと声かけをします。

絶対にしてはいけない行為

たとえ、短い距離でも次の 3 点は絶対に厳禁です。実際にアイマスクをして試みてください。恐ろしくて不安になるはずです。

  • 白杖をつかむ
  • 腕をつかむ
  • 肩や背中を後ろから押す

ミニ知識

線状ブロック

誘導(歩く方向)を示し、道路や廊下に沿って設置。

点状ブロック

警告(一時停止)を示し、ホームの端や交差点、階段などに設置。

盲導犬を見かけても

街中で盲導犬を見かけても、触ったり声かけは厳禁。仕事中なので、邪魔をせず温かく見守ってください。

4.耳の不自由な方への理解とお手伝いのポイント

 聴覚障害者は、外見上から障害があるかどうかわかりません。また、聞こえ方やこれまでの生活体験からコミュニケーション方法が異なります。補聴器や手話、口話、筆談、身振りなどが考えられます。
 声をかけても反応がない場合は、相手の視覚に入るようにして、笑顔でゆっくりと話しかけます。筆談によるコミュニケーションなどが有効です。

聴覚障害者は、こんな状況で困ることがあります

 電車が突然、停止。車内放送で「前の列車が事故を起こし、緊急停車した」とのこと。ざわめく乗客、早くも携帯電話で職場や自宅に連絡を入れる人も。そんななか、なにが起こったのか理解ができず、おろおろしている人が。

応対ポイント

●声をかけても反応がない場合は、聴覚障害者の可能性も考えられます。

●その場合は、聴覚障害者の正面に向いて、笑顔で声をかけるようにしましょう。

●口をはっきりと開けて、言葉を伝えます。身振り手振りを交えると、相手に伝えやすくなります。

●筆談で、伝えるときは「短い文章で簡潔に」「記号や図などを用いて表現を明確に」「最後に、正しく伝わっているかどうか」を確認します。

聴覚者とのコミュニケーションには、筆談が便利です!

あいさつの手話表現(例)

こんにちは

人差し指を向かい合わせ、指先を曲げる

こんばんは

「夜」という手話と「挨拶」という手話をあわせる

ありがとう

片手甲に直角にのせた反対の手を上げる

わかりました

片手の手のひらを胸にあてて、そのまま下になでおろす

さようなら

手を振る

また会いましょう

「また」という手話と「会う」という手話をあわせる

よろしくお願いします(良い・お願いします)

握った拳を鼻の前におく

5.ベビーカー利用者への理解とお手伝いのポイント

 電車やバスで、ベビーカーを折りたたまずに乗っている若いママを見かけます。このベビーカーに対する世間の印象はちょっと複雑。ママたちの必需品なのですが、車いすでの乗車ほど認知されておらず、冷たい視線を感じられることも。

便利なベビーカーも、こんな状況で困ることがあります

●駅構内で

 地下鉄の構内。ベビーカーを押しながらうろうろしていた若いママ。どうやらこの駅には、エレベーターもエスカレーターも装備されていない様子。長い階段を前に、彼女はいまにも泣き出しそうな気配です

応対ポイント

●笑顔で、「お手伝いしましょうか?」と声をかけます。もし、階段を上がって地上に出るのであれば、「お手伝いしましょうか」と申し出て、二人で運ぶ段取りを。

●最近のベビーカーは軽量のもので 5㎏強、外国産の堅牢なものだと 11㎏強の重量があります。これを女性一人で持ち上げて運ぶのは大変。見ぬふりをせずに、ひとこと声をかけてください。

案内図

禁止図

妊婦さんには、思いやりといたわりの心で

 妊婦は、足元がみえにくく、前かがみの姿勢やしゃがむことが難しくなります。加えて、歩幅が狭くなり、長時間の立ち姿勢は困難に。
 電車やバスで妊婦さんを見かけたら、まずは「ひとこと」声をかけて、席を譲るなどしましょう。思いやりといたわる心が大切です。

6.内部障害者への理解とお手伝いのポイント

 30 ~ 40 代の男性が、満員電車やバスの優先席に腰かけていました。周りは「何だ、この男性は!」と冷たい視線を投げかけます。実は、彼は周りの人には理解しづらいのですが、内部障害者だったのです。

内部障害者とは

 身体の内部に障害を持つ人のことで、外見からは見分けがつかないため、周りから理解してもらいにくい病気です。心臓機能障害や腎臓機能障害、肝臓機能障害、小腸機能障害、呼吸機能障害、膀胱・直腸機能障害、免疫機能障害(HIV:エイズ)があります。

内部障害者(心臓機能障害者)はこんな状況で困ることがあります

 バスの優先席で、高齢の男性がじっと我慢をしている様子。目の前で10代の若者がメールを送信しているのです。男性は、静かに「申し訳ないが、携帯電話の電源を切ってもらえませんか」とひとこと。若者は、聞こえないのか、無心にメールを送り続けています。
 「実は、私は心臓ペースメーカーを使用しているのですよ」。男性はそう打ち明けましたが、若者は相変わらず無関心のまま。やむを得ず、男性はブザーを押して次の停留所で降りていきました。

応対ポイント

●ペースメーカーと携帯電話の間は 15㎝以上離すことが望ましいと、総務省のガイドラインにも謳われています。それ以内の距離だと、携帯電話の発する電波が心臓ペースメーカーの誤作動を起こす可能性があると言われているためです。

●最近の総務省調査では、ペースメーカーにほとんど影響がないことが判明しています。しかし、優先席周辺では、ペースメーカーの使用者に配慮して、携帯電話の電源を切りましょう。それがエチケットです。

7.知的障害者への理解

知的障害の方は、こんな状況で困ることがあります

●券売機の前や駅の構内、ホームなどで

  • 誰かに尋ねたいけれど、自分から声を掛けることができない。
  • どうしてよいかわからず、その場から動けない。
  • 声をかけることができず、もじもじ、うろうろして「ひとりごと」を言ったりする。
  • 状況判断ができなくなり、混乱してうろうろ動き回る。

 これらは知的障害者の方などに、見られる行動です。見かけたら「何かお手伝いすることはありますか?」と、ひとこと声をかけましょう。

知的障害者とは

 何らかの原因で知的な発達に障害を持つ人で、言語障害やコミュニケーションなどに困難を有します。また、新しい環境への順応や目的場所までの行き方を理解することが難しいとも言われています。
 原因はさまざまですが、ダウン症など染色体異常、胎生期の中毒、出産時の障害、出産後の感染・中毒などによることが判明しています。
 知的障害者は、素早く行動することが苦手な傾向にあります。本人にわかりやすくゆっくり説明し、本人が納得できる(決定できる)ようにしましょう。

☆知的障害者が求める支援

  • 自分の意見や考えを押し付けないで欲しい
  • きつい話し方はやめて(怒られているの?)
  • 命令口調はやめて(怒っているの?)
  • 一人前として扱って
  • 話をゆっくりわかりやすくして
  • 人と比較するのはやめて

8.知的障害者へのお手伝いのポイント

 知的障害者の症状や反応は、人によってさまざまです。応対の基本は「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」が大切です。ここでは、声のかけ方から、話の聞き方、説明の仕方の基本を紹介します。

声をかける

●声をかけるときは、困っている人の前に立って声をかけます(後ろから声をかけると、驚いてパニックになる人もいます)。

●話しかけるときは、ゆっくりと、優しい口調で「何かお手伝いすることはありますか」。必ず笑顔を忘れずに。

●障害を指摘したり、無意味に笑ったりすることは厳禁(相手の気持ちを傷つけます)。逆に、こちらが怖がったり、警戒心を持つことも避けましょう。

話を聞く

●初対面の人に話をすることに慣れていないため、安心して話ができるようリラックスした雰囲気をつくります。

●話すのに多少時間がかかっても、ゆっくり待って応対します。

●断片的な言葉などから相手の状況や気持ちなどを察し、そのうえで話の内容を穏やかに確認します。

説明する

●目を見て話します。

●難しい言葉や数字などを避け、「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」わかりやすいように説明します。

●短い表現で話します。

●身振りを使って話します。

●必要に応じて、メモや絵を活用して具体的に説明し、理解力を補うようにします。

(1)券売機の前で立ち往生している人を見たら…

≪こんな状況で困っています≫

 券売機の前で、操作方法がわからないのか、そわそわしたり、おどおどしながら周りを見ている人が…。周りの人は、冷めた目で彼を見ています。

応対ポイント

●笑顔をつくり、ゆっくりと目線をあわせた後、「何かお手伝いすることはありますか」と声をかけます。

●相手が応じてきたら、簡単、明瞭に、次に何をしたいのかを聞きます。急がせると混乱して、パニックになることもあるので、落ちついて対応することが大切です(周りの人にも暗黙の了解で、状況を理解してもらいましょう)。

●相手が、こちらにうまく状況を伝えられない場合は、「どうしましたか?」と声をかけるよりも、「切符を買われるのですか?」などと、次に何をしたいのかを推測して尋ねましょう。そのほうが相手は答えやすくなります。

 券売機が、いつも使用している機種と異なっていて操作がわからない。紙幣を入れる個所に、コインを入れようとしている。券売機に表示される手順がわからず操作が難しいなど、障害者に限らず、券売機を苦手にしている人は結構多く存在します。

(2)乗り場や目的の場所がわからない人には…

≪こんな状況で困っています≫

 地下鉄の接続乗換駅で、人が行き交うなか、一人立ち往生をしておろおろしている人が…。周りの人は忙しげに通り過ぎていきます。

応対ポイント

●笑顔をつくり、ゆっくりと目線をあわせた後、「何かお手伝いすることはありますか」と声をかけます。

●相手が応じてきたら、簡単、明瞭に、次に何をしたいのかを聞きます。「乗り換えホーム(乗り場)を探しているのですか」「改札口を探しているのですか」「行く先(目的の場所)を探しているのですか」

●乗り場や目的の場所への行き方がわからない人には、時間があれば、目的の場所まで付き添いましょう。もし、それが無理な場合は、駅員に頼んだり、行き方の図やメモを渡すなど理解度に応じて、対応をします。

 事故などで普段乗車している電車の運行が中止されたことが理解できず、ホームでうろうろしていることもあります。その際は、行き先を聞いて、目的地に到達するために必要な手段や乗り方をわかりやすく説明しましょう。
 自分で説明できない場合は、駅員(乗務員)に相談しましょう。

(3)電車やバスで降車駅がわからない人には…

≪こんな状況で困っています≫

 電車やバスで、のんびりと窓外の景色を楽しんでいた人が、何となくそわそわしはじめ落ち着きがなくなりました。もじもじしながら誰かに話しかけたい様子です。

応対ポイント

●笑顔をつくり、目線をあわせた後、ゆっくりやさしい口調で「どこで降りるのですか?」「どこに行くところですか?」などと降車駅を尋ねます。

●降車駅がわかった場合には「この電車(バス)の○○駅で降ります」、乗り過ごしている場合は、「次の駅で逆のホームの電車に乗り、○○駅まで戻ります」などと、行き方をわかりやすく伝えます。

●降車駅がわからない場合は「お家はどこですか」「どこに行くところですか?」と尋ね、行く先から降車駅を推測してみます。

●もしパニックに陥って、状況判断ができないようであれば、駅員に連絡し、対応してもらいましょう。

 知的障害の方には、乗り物が好きで、列車やバスなどを乗り継いで、見知らぬ駅で降車してパニックを起こす人もいます。また、終点になっても降りずに、何度も折り返して乗ってしまうことも。気づいたら笑顔で声をかけるか、駅員(乗務員)に相談しましょう。

(4)パニック時の対応

≪こんな状況で困っています≫

 電車のホームで突然、柱などにゴンゴンと頭をぶつけだし、その後、ワーッと叫んで走っていった学生がいました。周りの人は驚き、苦笑いを浮かべています。

応対ポイント

●知的障害者がパニックになると、思わぬ行動を起こすことがあります。

●もし走っていく方向が線路側でホームから転落しそうな場合には、後を追いかけて引き止めます。

●その後、「少し休みましょう」と伝え、駅員(乗務員)に任せます。

●パニックに陥った場合、強引な対応を行うと、逆に不安が増す可能性があるので、 落ち着くまで見守ることが大切です。その時点で、駅員(乗務員)に相談します。

 パニック時には、上記のほかに「大声や奇声をあげる」「飛び跳ねたり、泣き叫ぶ」「耳をふさぎながら固まる」「暴れて周囲の人に乱暴をする」「動機や胸の痛み、めまい、吐き気、息苦しさを訴えたりする」などの症状が見られます。

9.タクシー利用者へのお手伝いのポイント

 高齢者や障害者の方が、街中でタクシーを止めるのに苦労していることも。そんなときは気軽に声をかけてお手伝いしましょう。

●街中でタクシーを呼び止められずにいたら、「タクシーをお探しですか?」と声をかけて、タクシーを止めましょう。必要であれば、乗車時のお手伝いも。

●駅構内で、タクシー乗り場などを探していたら、案内しましょう。必要であれば、乗車時のお手伝いも。

●雨の日、屋根のないタクシー乗り場で順番待ちの人が。声をかけて、さりげなく傘をさしかけましょう。もし大きな荷物があれば、トランクへの荷物入れのお手伝いも。

●タクシーが見つからずに困っている人を見かけたら、Web サイト「全国タクシーガイド」やスマートフォンの配車アプリなどでお手伝いすることができる地域もあります。同サイトやアプリを使えば、全国の提携会社の中から、近くを走行中のタクシーを呼ぶことができるので、声をかけて対処しましょう。

●事故などで電車が全面運休し、利用客は振り替えバスやタクシー乗り場へ。それに対応できない人を見かけたら、行く先を尋ねたうえ、考えられる方法を伝えましょう。

日本全国のタクシーをカンタンWeb 検索「全国タクシーガイド」

 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会では、パソコンやスマートフォン向けのサービス「全国タクシーガイド」を開設しています。タクシー情報が必要なときに、自宅から、職場から、出先から即検索! 日本全国の提携タクシー会社を検索できます。
 福祉タクシー、観光タクシー、育児支援・妊婦対応など
http://www.taxi-guide.jp/

* ユニバーサルデザインタクシー
車いすやベビーカーなどで、そのまま乗降できる新しいタクシー。一般タクシーと同じ運賃で、すべてのお客様が利用できます。

10.ご存じですか。配慮を必要とする人を示すマーク

 障害のある人や高齢者など「配慮を必要とする人を示すマーク」の意味をきちんと理解していますか。主なマーク(ピクトグラム)を紹介します。

外からは見えない障害など

ハート・プラスマーク

内部障害への理解を啓発する団体が作成。27 都道府県で採用。

ヘルプマーク

東京都が作成。義足、人工関節、内部障害、難病、妊娠初期の人を示す。

耳マーク

聞こえが不自由なことを表し、筆談や手話、ゆっくり話すなどの配慮を求める。

オストメイトマーク

オストメイト(人工肛門・膀胱保有者)の使用支援団体が作成。トイレ案内誘導に使われる。

国際共通マーク

障害者のためのマーク

障害者が利用できる施設を示します(車いす利用者に限りません)。

視覚障害者のためのマーク

視覚障害者の安全を考慮した施設や機器などに使用されます。

妊娠中

マタニティマーク

厚生労働省が作成、多くの自治体や民間が啓発に活用。

補助犬

ほじょ犬マーク

身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)同伴の啓発に使われる。

自動車に付ける

身体障害者標識

肢体不自由など、運転免許に条件が付く人が車に表示。

聴覚障害者標識

聴覚障害など、免許条件が付く人が車に表示(義務付け)。

高齢運転者標識

70 歳以上で運転に影響を及ぼす可能性がある人が対象。

11.外出支援ボランティアに関する基礎知識

●バリアフリー(Barrier free)

 障害者が社会参加するうえで障害(バリア)をなくす(フリー)こと。近年は道路や建築物などだけでなく、障害者の社会参加を困難にしているすべての障壁を取り除くことを意味しています。
 主に、「物理的バリア:建築物、住宅、駅、道路などのバリア」「制度のバリア:教育や就労、地域での自立などで生じるバリア」「文化・情報のバリア:視覚・聴覚障害者の日常生活に欠かせない情報がきちんと提供されていないことによるバリア」「意識のバリア:障害者に対する差別・偏見・誤解などによるバリア」の 4 点があげられます。
 バリアフリーデザインの推進は 1950 年代後半から米国で始まり、1970 年代に国連が「バリアフリーデザイン」報告書を発表したことで、広くバリアフリーの言葉が普及しました。

●ノーマライゼーション(normalization)

 障害を持つ人が地域社会で普通に暮らせるようにすることを意味します。1959 年にデンマークで「精神障害者ができるだけノーマルな生活を送ることができるように」と提唱された理念。後に欧米で発展し、この考え方が今日の障害者の自立生活運動に結びついています。

●ユニバーサルデザイン(Universal Design)

 できるかぎりすべての人に利用可能なように、製品や建物、空間をデザインすること。バリアフリーが障壁を取り除いていく対処療法的な意味合いがあるのに対し、ユニバーサルデザインは、障害や年齢などに関係なく多くの人が使いやすいように、そのデザインに普遍性を持たせるという意味が含まれます。今後のものづくりや情報提供などの基本的な考えといえます。

一般財団法人 全国福祉輸送サービス協会は、公共交通機関の一員として福祉タクシーの導入など積極的にバリアフリー化に取り組んでいます。

一般財団法人全国福祉輸送サービス協会
〒102-0074 東京都千代田区九段南4-8-13 自動車会館4階
TEL:03-3222-0347 FAX:03-3239-9200
ホームページ:http://park16.wakwak.com/~zenfuku/   発行:2014年7月