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資料4-9
(6月5日ワーキング・セッションⅢ資料2-1)

【障害者政策委員会ワーキング・セッションⅢ:インクルーシブ教育システム】
~第1回における質問への回答~

平成27年6月5日
文部科学省

障害者基本計画(第3次)の実施状況では、高等教育における支援の推進の箇所で授業等における情報保障が明記されているが、平成25年10月にとりまとめられた「教育支援資料」の中では、聴覚障害者への情報保障が明記されていない理由。

○「教育支援資料」は、平成25年の学校教育法施行令改正による就学先決定の制度改正を受け、義務教育段階における障害のある児童生徒に対する就学手続及び教育支援が円滑に行われるよう、制度改正の概要、障害の実態把握の方法、教育的対応などを取りまとめた資料である。

○この「教育支援資料」においては、「第3編 障害の状態等に応じた教育的対応」のうち「Ⅱ聴覚障害 4 聴覚障害のある子供の教育における合理的配慮の観点」の項目において、① 教育内容・方法、② 支援体制、③ 施設・設備のそれぞれの面から情報保障の考え方を含む合理的配慮の観点について記載している。

2.ICTの充実について明記されているが、現在、音声認識や遠隔通訳による授業支援の事例が増えており、実施状況の中に明記していく必要があるのではないのか。
文部科学省として、今後、ICT等の充実は考えているのか。

○文部科学省では、平成26年度から「学習上の支援機器等教材活用促進事業」を実施。企業・大学等が学校・教育委員会等と連携して、児童生徒の障害の状態等に応じて使いやすく、入手しやすい価格の支援機器等教材の開発に対する支援を行っているところ。

○また、学校において、ICTなどに関する外部専門家の支援を受けつつ、支援機器等教材を活用した指導方法に関する実践的な研究を実施している。

○さらに、国立特別支援教育総合研究所において、平成26年度に、障害の状態や特性等に応じた教材や支援機器等の活用に関する様々な情報を集約・管理し、発信するための「特別支援教育教材ポータルサイト」を開設した。

○文部科学省としては、上記の取組の実施等により、特別支援教育におけるICT等の活用を推進しているところ。

3.特別支援教育に関する教職員の専門性の確保について、教員の人事異動が3~4年と短期間化しているため、点字や手話のできる教員の確保が困難になっていると聞いている。点字や手話を取得するには時間がかかるため、このような状況に対する文部科学省の対策は。
○文部科学省としては、障害のある児童生徒への教育に関する教職員の専門性の向上が大変重要であると認識しており、従来より、
①都道府県教育委員会等による、特別支援学校教諭免許状取得のための免許法認定講習の受講機会の拡大や、効率的な受講の促進等の要請
②各教育委員会の指導者を対象とした、国立特別支援教育総合研究所による専門研修
③特別支援学校教諭免許状の保有率向上のため、文部科学省から大学に対して免許法認定講習の開設を委託する「特別支援教育に関する教職員等の資質向上事業」の実施
などにより、教職員の専門性の向上に関する取組を推進してきたところ。

○国立特別支援教育総合研究所が実施する研修においては、主に特別支援学校の教育を対象として、視覚障害教育等の専修プログラムを実施しているところ。

○また、点字や手話に関する校内研修等も行われているほか、聴覚障害の特別支援学校において、聴覚障害のある教員が中心となり教員の研修等を行っている事例もある。

○これらを通じて、引き続き、障害のある児童生徒への教育に関する教職員の専門性の向上に取り組んでまいりたい。

4.障害のある児童生徒等の就学手続きについて、どのような手順で就学先を決定するのか。

○具体的な手続の流れは以下のとおり。

(1)早期からの教育相談
教育・保育・福祉・医療等の関係機関が連携し、早期からの本人・保護者への情報提供や教育相談を行う。
(2)学齢簿の作成と就学時健康診断
市町村教育委員会は、10月末日までに市町村内に住所を有する就学予定者(その年度中に満6歳に達する者)について「学齢簿」を作成し、11月末日までの間に就学予定者の健康診断を行う。
(3)総合的判断
就学時健康診断等により障害が確認された就学予定者の就学先について、市町村教育委員会は、医師、教育職員、児童福祉施設等職員などからなる教育支援委員会等を設置し、専門家や保護者の意見を聴取しつつ、総合的に判断する。なお、判断に当たっては、本人・保護者の意向を可能な限り尊重するものとしている。
(4)入学時期及び学校の通知
市町村教育委員会又は都道府県教育委員会は、1月末日までに入学期日及び就学すべき学校名を保護者に通知する。
5.学校が作成する「個別の教育支援計画」と障害児通所支援事業所等が作成する「障害児支援利用計画」は連携しているのか。また、都道府県教育委員会等で設置されている特別支援教育地域連携協議会の設置率とその効果について把握しているのか。

○学校が作成する「個別の教育支援計画」と障害児通所支援事業所等が作成する「障害児支援利用計画」の連携を進めるよう、平成24年4月に厚生労働省と文部科学省連名の文書により、教育委員会等関係機関に依頼している。

○教育機関と医療・保健・福祉・労働等の各関係機関の連携は重要であり、各自治体において、「特別支援連携協議会」等が設けられているところであるが、設置率については調査していない。

6.特別支援教育支援員を地方財政措置ではなく、文部科学省の一般会計で予算を計上できないか。

○特別支援教育支援員の配置に必要な経費については、地域の実情に合わせて、国からの地方交付税として地方財政措置されているところであり、その配置実績を踏まえて、年々拡充してきているところ。

○今後とも、特別支援教育支援員の充実に努めてまいりたい。

7.通常学級への通学を希望している子供がいるが、障害のある子供一人での通学は無理なので、通学に対する予算を計上できないか。

○障害のある子供の就学に当たっては、通学方法を含め、必要な支援や学校と保護者の協力の在り方について、設置者・学校と本人・保護者の十分な話し合いの上で就学先を総合的に判断することが必要であると考えている。

8.個別の教育支援計画の作成率が78.7%とあるが、この数値はどのようなものなのか。障害のある児童生徒全員に対して作成すると100となるが、発達障害の子供を全員把握はできないのが現状ではないのか。

○個別の教育支援計画の作成率である78.7%は、作成が必要な子供がいない学校を母数から除いて算出した作成率である。

○個別の教育支援計画の作成が必要と判断された全ての子供に対して作成されるよう、今後とも周知をしてまいりたい。

9.通常学級に通っている障害のある子供たちへの施策について。特に、学校外の活動や体育の授業への参加率や、これらに対する現状の取組の推進状況として把握していることはあるのか。

○いわゆる校外活動や体育の授業への障害のある児童生徒の参加率は把握していない。

○校外活動については、特別支援教育支援員の配置等により、児童生徒の状況に応じた支援が行われているところであり、引き続き、配置に係る地方財政措置等を行ってまいりたい。

○また、体育の授業の指導方法等については、障害のある児童生徒の体育活動における指導の在り方調査研究を実施しているところ。

○さらに、学校以外の場での活動に関しては、全ての子供たちの豊かな教育環境の実現のために、放課後や週末等において、特別な支援を必要とする子供など多様な子供たちの状況に配慮した、きめ細やかな支援が必要である。このため、文部科学省においては、全ての子供たちを対象として、地域住民等の協力を得て、学習活動やスポーツ、地域の伝統芸能など、様々な学習機会を提供しているところ。

10.短期入院を繰り返す子供への教育支援は。

○文部科学省としては、平成6年に、入院中の病気療養児の実態把握、適切な教育措置の確保等を内容とする通知「病気療養児に対する教育の充実について」を発出し、さらに平成25年に、厚生労働省による「小児がん拠点病院」の指定等を踏まえ、各都道府県教育委員会等に対し、病気の子供への指導に当たっての留意事項等を整理した通知「病気療養児に対する教育の充実について」を発出し、就学に係る手続きの簡素化等、病気療養児の教育の改善充実について教育委員会等に周知している。

○また、「長期入院児童生徒に対する教育支援に関する実態調査」を初めて実施し、本年5月に結果を公表したところであり、今後、この調査の結果も踏まえ、短期入院を繰り返す子供を含む長期入院児童生徒に対する更なる教育支援について、検討を進めてまいりたい。

11.特に病気の子供が学校行事に参加するためには、学校保健師の役割が大きいと思うが、小中学校における学校保健師の設置状況はどうなっているのか。

○お尋ねの学校保健師という職は法定された職ではないと承知している。

○なお、公立小・中学校における医療的ケア行う看護師は、平成26年度に約380人配置されている。(文部科学省調べ)

○また、児童生徒等の養護をつかさどる養護教諭は、国公私立を通じ全国の小中学校に約3万人配置されている。(平成26年度学校基本統計)

12.障害者基本計画3(1)8に教育と福祉の地域連携について書かれているが、具体的に教育と福祉の地域連携はどのように進められているのか。

○障害のある児童生徒の自立と社会参加に向けては、職業教育・進路指導を充実する必要があると考えており、平成21年3月に改訂した特別支援学校学習指導要領においては、地域や産業界と連携し、職業教育や進路指導の充実を図ることを規定する等の改善を図ったところである。

○また、文部科学省においては、各種会議等により、都道府県教育委員会等に対し、労働・福祉関係機関との連携の強化、厚生労働省関連の事業の活用等について、周知しているところである。

○さらに、文部科学省では、平成26年度から「キャリア教育・就労支援等の充実事業」を実施しており、例えば、特別支援学校、ハローワーク、雇用担当課、教育委員会等による就職支援のための会議の設置などが実施されているところ。

○今後とも厚生労働省と協力し、教育と福祉等関係機関との連携に努めてまいりたい

13.病気や障害のある子供の疎外を防ぐため、周りの子供たちの思いやりや友情を育てていくことの教育的位置付けは。

○障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進することは重要であり、特別支援学校及び幼・小・中・高等学校の学習指導要領に、交流及び共同学習について明記している。

○さらに、文部科学省としては、自治体や学校の参考となるよう「交流及び共同学習ガイド」を作成しているほか、交流及び共同学習の組織的、計画的な実施等について実践研究を行う「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」を実施しており、今後とも交流及び共同学習の推進に努めてまいりたい。

14.就学先決定について、学校教育法施行令の改正のみを主張するのではなく、本人・保護者の意思の尊重の観点や、地域の学校において「着実に前に進んでいる」と言えるものがあれば良いと考えるが、そのような方法での現状分析・データがあれば提供いただきたい。

○平成25年9月に学校教育法施行令が改正され、平成26年4月入学の児童生徒から新しい手続が適用されている。

○新制度は、個々の障害の状態や教育的ニーズ等を踏まえ、本人・保護者の意向を可能な限り尊重しつつ、総合的な観点から就学先を決定するという仕組みであり、制度改正の効果は、小・中学校への就学者数のみによっては評価することができないと考えている。

○例えば、文部科学省においては、総合的な判断を行うために市町村教育委員会が設置する教育支援委員会等の検討対象となった者の数や、教育支援委員会等における取組状況について調査を実施しているところであり、就学予定者として教育支援委員会の検討対象となった者の数は、平成25年度、平成26年度ともに制度改正前より増加し、それぞれ39,208人、42,352人であった。
また、教育支援委員会等において早期からの支援や本人・保護者に対する情報提供等を実施する市区町村数も増加しており、制度改正の理念を踏まえた就学手続及び教育支援の体制が整備されつつあると考えている。

○なお、小・中学校等における個別の教育支援計画の作成率等の体制整備の進捗状況についても参考になり得ると考えている。

15.学校教育における教科書については、文部科学省が所管している一方、特別支援教育に係る教科書については、拡大教科書以外のマルチメディアデイジー教科書等はボランティアが主体となっている。文部科学省はボランティアを支援する立場にないはずだが、今後の文部科学省の取組についてどのように考えているのか。

○発達障害等により、通常の検定教科書等において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な児童生徒が使用する音声教材を作成するボランティア団体等が、音声教材をより効率的に製作することができるよう、平成26年度から新たに、文部科学省において調査研究委託事業を実施しており、平成27年度も引き続き実施しているところ。

○なお、本調査研究を通じてボランティア団体等により製作された音声教材は、学校や児童生徒に提供され、それぞれの児童生徒の障害の特性に応じて使用されている。
あわせて、音声教材を製作するボランティア団体等が製作に当たり必要となる教科書のデジタルデータの提供を実施しているところ。
そのほか、音声教材の更なる普及促進を図るため、教育委員会の担当者や学校教員等を対象とした音声教材普及推進会議を平成 26年度から実施しており、今後も実施していく予定。

○今後もこのような取組を通じて、音声教材を製作するボランティア団体等を支援していくとともに、音声教材の普及促進を図っていきたい。

16.就学相談時に、特別支援教育支援員の配置の対象は発達障害の児童生徒のみで、知的障害の児童生徒には特別支援教育支援員は配置できないと言われる場合が多いようだが、実際はどうなのか。

○特別支援教育支援員とは、幼稚園、小・中学校、高等学校において障害のある児童生徒等に対し、食事、排泄、教室の移動補助等学校における日常生活動作の介助を行ったり、発達障害の児童生徒に対し学習活動上のサポートを行ったりする支援員であり、各自治体が支援の必要な児童生徒等の実態に応じて配置するものである。その配置に必要な経費は、国において地方財政措置している。

○知的障害のある児童生徒に対して特別支援教育支援員を配置できないということはないが、障害の状態や教育的ニーズによっては、特別支援教育支援員による日常生活等のサポートではなく、特別支援学級等において、特別な教育課程の編成を含むより包括的な支援を行うことが適当である場合もあることから、就学相談等において、市町村教育委員会と保護者等が十分に話し合った上で支援方法を決定することが重要である。

17.1月31日までに就学通知が発出されない子供の人数は把握しているのか。

○お尋ねの人数について網羅的な調査は行っていないが、新制度の理念を踏まえ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを目指すために、合意形成に時間がかかる事例もあると承知している。

18.「インクルーシブ教育システムモデル事業」はどのようなものか。

○インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育を着実に推進していくため、各学校の設置者及び学校が、障害のある子供に対して、その状況に応じて提供する「合理的配慮」の実践事例を収集するとともに、交流及び共同学習の実施や、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)を活用した取組の実践研究を行い、その成果を普及することで、各地域における取組の充実を図るものである。(参考資料参照)

19.障害のある子供とない子供が「同じ場」で学ぶための合理的配慮の好事例はどのようなものがあるのか。

○文部科学省では、平成25年度から、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築事業を行っている。この事業を通じて、各学校の設置者及び学校が、障害のある子供に対して、その状況に応じて提供する「合理的配慮」の実践事例を収集するとともに、交流及び共同学習の実施や、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)を活用した取組の実践研究を行っており、その好事例については、インクルーシブ教育システム構築支援データベースの中で公開しており、現在、115事例が登録されている。

○事業の報告の中で障害のある子供は、集団学習でしかできない経験を積み重ねることで、集団の中で自己を表現することが可能になり以前よりも学習意欲が高まること、障害のない子供は、障害のある子供と共に学ぶことで共生社会の概念を当たり前のものとしてとらえられるようになったこと等が報告されている。