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資料1

障害のある女性の課題認識と課題解決の方向性について
~障害のある一女性としての視点から~

大日方 邦子
障害者政策委員会 委員

○前提

 「障害者である女性」と一言で表現されても、経験や意見は多様である。「障害のある一女性」としての個人の体験や意見であり、障害のある女性を代表(代弁)しての発言ではない。
 私自身としては、「障害があること」と同じ程度に「女性であること」をアイデンティティとして認識する機会が多くあり、さらにそれは肯定的な感情を伴うことが多い。

〇就労に関する性別統計の重要性について
~男女共同参画社会の実現に向けた取り組みの中で育ってきた女性として~

  • 男女雇用機会均等法の改正と自身の大学卒業後の就職活動の時期が一致していたことは、自身のキャリアを形成するうえで、好影響があったと認識している。
  • 自身の経験をふまえ、特に就労に関する性別統計は、政策上の課題整理と提言において、重要な視点と認識している。
  • 内閣府男女共同参画局によると、日本は他の先進諸国に比較して、女性の社会参画が低い水準にあり、世論調査からも固定的性別役割分担意識に関しての偏見が強いことが伺えるという社会課題がある。自身の体験をふまえた課題認識とも一致する。
  • 障害者政策について現状把握と課題解決に向けた施策にあたっては、就労収入や就労率、就労支援制度の利用等について、男女の差があるかどうか、まず現状を把握することが必要。

〇「全ての女性が輝くための社会」の実現に向けた取り組みは、障害のある女性も対象

  • 女性の社会への参画は日本全体の課題であり、政府の重要な取り組みの一つ。産業競争力会議(平成 24 年)が定めた「成長戦略進化のための今後の検討方針」では、女性の活躍は、日本社会の在り方を変える重要な取り組みであると定めている。
  • 障害のある女性も含めた全ての女性が活躍しやすい社会実現に向けた努力が必要。
  • 国や地方自治体の政策を決定する様々な委員会や有識者会議の委員構成では、ポジティブ・アクションの取り組みが推進されていると認識している。障害者政策委員会においても、「障害のある女性」の参画に向けたポジティブ・アクションの取り組みが必要。

〇障害者権利条約第 6 条の重みと国際社会の関心

  • 権利条約6条において「障害のある女子」について明記されている点に注意を払うべきで、国際社会からの関心は高いと考えるべき。
  • 条約批准国には、あらゆる調査をジェンダーの視点からも集計、公表することが求められていると考える。

(参考)

〇委員として認識したスポーツ基本計画の策定を通じて認識した「統計の重要性」

  • スポーツの世界では、性別による区分は平等の観点から、前提として議論されることが多い。女性アスリートの活躍はオリンピック、パラリンピックのいずれにおいても重要な視点である。
  • 文科省中央教育審議会 スポーツ・青少年分科会 臨時委員として、「スポーツ基本計画」策定の審議に関わらせていただいた。「障害があり」「女性であること」のいずれの視点も、求められている立場にあったと認識している。
  • スポーツ基本計画では「スポーツを通じてすべての人々が克服で豊かな生活を営むことができる社会」(スポーツ基本法の理念)を創出するため、「年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適正等に応じたスポーツに参画することができる環境を整備すること」を基本の政策課題として定めた。
  • また、スポーツ基本計画では、スポーツ実施率について「成人の週1回以上が 65パーセント程度、週 3 回以上の実施率が 30 パーセント程度となること」を目標としている。これら実施率について平成25年度に調査を実施したところ、成人一般の週1回のスポーツ実施率が 47.5%に対して、障害のある人の同実施率は 18.2%であることが分かった。自身の経験などを通じて、障害のある人のスポーツ実施率が健常者に比べて低い可能性について予見する関係者は多くいたが、立証するデータが明らかになったことで、課題認識を共有し、政策立案することができた好事例と考えている。

〇スポーツ分野における「障害者スポーツ」への取り組みと「女性の活躍」推進

  • 女性アスリートの活躍への社会の関心は高い。ロンドン大会の日本選手団における女子選手割合は、オリンピックで 53.2%、パラリンピックでは 33.5%だった。
  • 女性アスリートの、妊娠・出産などのライフイベントと競技生活や指導者としてのキャリア継続に向けた支援や、女性に必要な医科学サポートに関する研究調査が行われている。平成 26 年度から障害者スポーツに関する事業が文科省に移管されたことにより、障害のある女性トップアスリートへのサポートや調査研究が進むことも期待。
  • トップアスリートの活躍は、障害者に対するステレオタイプな社会の思い込みを変える推進力になる。とりわけ、障害のある女性アスリートの活躍は、社会の認識を大きく変える力となりうる、と信じている。