音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

資料3

各小委員会における審議状況について
(第1~第3小委員会)

○ 第1小委員会

○ 第2小委員会

○ 第3小委員会

第1小委員会における審議状況について

第1小委員会 座長 三浦貴子 副座長 棟居快行

はじめに

 第1小委員会においては,教育(16 条),文化的諸条件の整備等(25 条)について,現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ,共生社会構築にあたり学校教育,及びスポーツ・文化についてインクルーシブ(共に生き,共に学ぶ)という観点から,新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのか,幅広く議論した。
 上記のような本小委員会における議論について,論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると,以下のように整理することができる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は,これらの議論を踏まえて行われることが期待される。

1 インクルーシブ教育システムの構築について

(1)改正された障害者基本法を踏まえて障害者基本計画が策定されるべきであり,学校教育においては障害の有無によって分け隔てられることなく,共に教育を受けることができるようにすべきであるという意見が大勢であった。

○ 障害者制度改革,インクルーシブ教育システム構築のためには,共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進めることとともに,障害者制度改革を社会的機運として醸成すべきである。

○ 障害者基本法の第16 条第1項に「共に教育を受けられるよう」という文言が入ったことを受けて,障害者基本計画において基本方針が転換していることを明確にすべきである。

○ 障害者基本法は,第1項で共に学ぶことに配慮するとし,第2項が保護者の意見の尊重,第3項が交流及び共同学習を規定していることを踏まえ,保護者の意向を尊重し,入学段階で障害を理由に学校設置者及び学校等は障害者(障害児を含む)を排除すべきではない。合理的配慮を保障しても学校及び学校設置者が就学を保障しえないと証明し得た時には,保護者の意向に沿わないこともやむを得ないとする仕組みにすべきである。

○ 障害者基本法で確認された障害の有無によって分け隔てられない共生社会を前提に,障害の有無によって入学の時に分けないのが,インクルーシブ教育である。その上で,希望する場合には特別支援学校に入学できるようにする仕組みにすべきである。

○ 障害者基本法の改正を受け,障害者基本計画では共に学ぶことを基本にすべきである。その際に,障害の有無にかかわらずすべての子どもに対して同時期に就学通知を送付し,希望がある場合には特別支援学校も選べるようにすべきである。

○ 共に学び育つことを原則にし,このことが障害者基本計画に盛り込まれるべきである。その際,卒業後の地域生活に繋がることを重要な観点として位置付けるべきである。

○ インクルーシブ教育システム構築のために,特別支援教育の推進を踏まえた評価・検証できる仕組みを作るべきであり,例えば学校経営の評価に,インクルーシブ教育システム構築の評価指標を導入することを検討すべきである。

(2)なお,共に学ぶことの課題として,次のような意見があった。

○ 障害の種別や発達段階等により,必ずしも“共に学ぶ”ことで“学び”が充実しない可能性がある。学びの多様性,学びの連続性,それぞれの場の充実により,できるだけ皆で学ぶ仕組みに到達すべきである。

○ 共生社会では,少数派の文化や言語についても承認されるべきである。基礎的環境整備や合理的配慮を十分に保障した上で,障害者の独自性や言語も尊重するのがインクルーシブ教育である。

○ 身近な場で学べる状況を現在の状況下でどのように作るかが重要である。特別支援学校に在籍してもできる限り地域で学ぶことを考えるべきである。副籍や支援籍について,地域社会と繋がる仕組みという観点から検討を進めるべきである。

2 初等中等教育における教育内容及び教育支援体制の整備①(就学相談・就学先決定等)

(1)就学相談については,次のような意見があった。

○ 本人及び保護者の意向を最大限に尊重する必要がある。特別支援教育を必要とする“ニーズ”は,あくまでも本人及び保護者の求めによるべきである。

○ 就学相談では,地域の学校に行けることを情報提供すべきである。

○ 高等教育では障害を理由に入学拒否はしないということであった。この観点を幼稚園,小・中・高へと一貫させるべきである。

○ 相談支援では,障害者の地域生活を見通せるように地域生活をしている障害者が関わるべきである。

(2)就学先の決定にあたり,障害者・保護者の意向に沿うことを基本とすべきであるという意見が大勢であった。

○ 普通学級での学びを原則にするように,重みづけをするべきである。

○ 地域の学校への入学で拒否されないことは重要であり,同時に,子ども同士の手話でのコミュニケーションを可能にし,アイデンティティの確立ができる環境が重要である。

○ 就学先決定では,障害者・保護者の意見を最も大切なものとして尊重し,継続した相談支援を行い,かつ教育支援計画の適切な運用を徹底させるべきである。ニーズが発生した時には,速やかに計画を見直すことができる相談支援体制が必要である。その際に,情報の整理,記録保管のためにIT 技術の活用を検討すべきである。

○ 中教審の報告においては,就学先の決定については,市町村教育委員会が,本人・保護者に対して十分情報提供しつつ,本人・保護者の意見を最大限尊重して,教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことが原則としており,市町村教育委員会が就学先を決定する際には,可能な限り共に学ぶという観点を踏まえつつ,一人一人の教育的ニーズに応じた十分な教育が行われるべきである。

○ 就学先決定については,障害者・保護者の意見を最大限尊重しつつ,教育委員会や学校等との合意形成を図るのが,ベースラインである。今回の障害者基本計画には,特別支援教育システムからインクルーシブ教育システムへの大きな制度改革の中身を盛り込むようにすべきである。

○ 相談においてある就学先を強制されるべきではなく,教育支援計画では障害者・保護者の参画と共に,保護者が指名した第三者等の出席を確保しながら策定すべきである。

○ 障害者・保護者の意見を尊重するためには,連続性のある多様な学びの場を確保するべきである。子どもの発達や程度を勘案しつつ柔軟に就学先を変更できるようにすべきである。卒業後に福祉サービスをスムースに利用できるようにするために,知事部局と教育委員会が連携すべきである。

○ 就学時健康診断の障害判定基準(就学基準),特に聴覚障害に関する判定基準については「障害の範囲」に密接に関係する問題で,最新の教育的また医学的見地から再検討が必要である。

○ 健康管理の記録(乳幼児健診記録,就学時健康診断記録,学校診断記録など)は,厳重な情報管理のもと各教育段階で共有し,「個別の教育支援計画」,「個別の指導計画」の基礎に据えられるべきである。

3 初等中等教育における教育内容及び教育支援体制の整備②(合理的配慮及び基礎的環境整備等)

(1)合理的配慮を提供する際の観点については,次のような意見があった。

○ 合理的配慮は,学校現場に要請される作為義務である。基礎的環境整備は,国及び地方公共団体が行うべき義務であって,両方行われることでインクルーシブ教育が保障できる。

○ 障害のある子どもが学びの達成感をもてることが保障されるよう教育活動が行われなければならない。そのために,合理的配慮が提供されるべきである。それぞれの学びの場において,地域生活につながる力,生きる力をもつ教育ができることが大前提である。

○ 地域の学校から排除されずに,自己の地域社会において初等中等教育の機会が与えられるよう,合理的配慮が提供されるべきである。

(2)合理的配慮に関する具体的な内容については,次のような意見があった。

○ 普通学校で学ぶ子どもにも,盲学校と同様のレベルの教科書が保障されるべきである。

○ 教科書について,特に読みに困難のあるディスレクシアの子どもたちには,読み上げ機能を持つデジタル教科書,教材が保障されるようにすべきである。

○ 保護者に付き添いを求めずに,必要な人的な支援が行われるようにすべきである。

○ 障害をもつ教員にも合理的配慮が,保障されるべきである。

○ 医療的ケアについては,看護師を配置しつつ教員も支援に加わり,支援を提供できるようにすべきである。

○ 土日の過ごし方についても個別支援計画に含め,必要な支援を提供するべきである。

(3)合理的配慮に関する課題については,次のような意見があった。

○ 障害をもつ教員に関する合理的配慮について,検討する場を設けるべきである。

○ 合理的配慮の提供を担う人材については,その待遇面が不安定であるため地位を保障すべきである。教育支援計画と障害児サービス利用計画等,福祉関連の個別支援計画とを連携できるようにすべきである。

○ 障害者が体育に参加できるよう,個別支援計画で合理的配慮の在り方を検討すべきである。

○ 合理的配慮についてデータベースの収集やモデル校,モデル地域の決定では,反差別や人権教育という観点で行われるべきである。

○ 学校現場が中心になって支援内容に合理的配慮を含む教育支援計画のモデル案を策定し,活用について推進すべきである。同時に,啓発活動もすべきである。

(4)基礎的環境整備については,次のような意見があった。

○ 基礎的環境整備については,地域格差が生じないように国又は地方自治体が責任をもつべきである。

○ 学校の施設を利用する時に,ルビが無かったり,スロープが無かったりするので,障害者と話し合いながら学校施設を整備すべきである。

○ 通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校とが連携しつつ基礎的環境整備を充実すべきである。通常の学級においては,少人数学級を推進すべきである。

○ 物理的な環境整備に当たっては,市町村で計画的に整備していく仕組みをつくるべきである。

○ 地域の学校で学べるようにする人員配置をすべきであり,特別支援学校や学級で配置されている教員の定数と,普通学級とでは格差があるためそれを縮めるべきである。

○ 普通学級における合理的配慮について,予算を含めて充実させるように重点施策,優先的施策として取り上げるべきである。

○ 特別支援学校に就学した子どもたちは,地域の中で孤立してしまうことがあるため,スポーツ等を通じて地域の子どもとの交流が可能となる環境を整備すべきである。

○ だれもが使えるデジタル教科書の整備をすべきである。

(5)その他,合理的配慮及び基礎的環境整備に関連する事項については,次のような意見があった。

○ 学習指導要領については,普通学校と特別支援学校との2本立てが今後も必要なのか,検討されるべきである。

○ 通常の学級では,聴覚障害児は言語力の形成に困難を抱え,言語力形成の遅れが学科学習の遅れにつながることがある。そうした学力の遅れが積み重なる前に障害のある児童生徒を把握する仕組みが必要である。

○ 特別支援学級で学ぶ子どもについては,普通学級での交流の時間に上限を設けている自治体があるため,それを撤廃するようにすべきである。

○ 通学支援及びコミュニケーション支援の提供の在り方について検討するべきである。

○ インクルーシブ体育についての研究を進め,学校体育における合理的配慮について,ガイドラインを策定すべきである。

○ ろう教育については,専門性を確保できるよう人事異動で配慮すべきである。

○ 地域の学校に特別支援教育を熟知した教員が,配置されるべきである。

○ すべての教員が,障害者を受け入れることができるように教員が養成されるべきである。

○ 教員養成や学校へ入ってからの教員研修において,特別支援教育に関する専門性を担保する仕組みを作るべきである。

○ 高校入学試験について,全国の合理的配慮の取組をまとめウエブを活用し広報すべきである。

4 高等教育における障害学生支援について

(1)高等教育における障害学生支援については,次のような意見があった。

○ 高等教育について,障害者基本計画で独立した項目を設けるべきである。職業教育,成人教育にアクセスでき,合理的配慮を確保し,後期中等教育との連携についても含めるようにすべきである。

○ 大学入学の際に障害を理由に拒否しないことを大原則にし,同時に教育のレベルを落とさないことを前提にすべきである。理念の明確化も含め,大学の情報発信等が重要である。

○ 入試で障害を理由とした排除や差別を禁止すべきである。“レベルを落とさない”ということではなく,共生社会の構築のためには,学力だけではなく多様な人間の在り方が認められるべきである。

○ 知的障害,発達障害者について,入試で切り捨ててしまうのではなく,人間の可能性が広がる場として大学教育での学びについて検討すべきである。

○ 大学教育での教育の質については,多様な能力という観点から専門性について検討されることを期待したい。

○ 障害を理由にした出願,受験,入学拒否がおきないように,障害者基本計画で目標を設定し,大学は情報提供するようにしっかりと取り組むべきである。

○ 障害を理由に差別されず,一緒に過ごせるようにすべきである。どうやって受験するのか,通学についても支援が必要である。

○ 大学教育は専門性を担保し,人材育成する責務があり,義務教育とは異なる面がある。理念は反対されないが,理念だけで現場で実際に成果が得られないことを危惧しなければならない。

(2)合理的配慮に関する課題については,次のような意見があった。

○ 合理的配慮は学業遂行だけではなく,社会的自立をも対象にし,自治体,NPO,民間団体とも連携しつつ提供するべきである。通信教育のスクーリングに参加するための通学支援は,障害者にとっては非常に重要である。

○ 質の高いノートテイクが確保されなければ授業の理解が不十分になるため,ノートテイクの質の向上が求められるべきである。

○ 手話通訳,要約筆記について,ボランティアによる提供は支援の質に問題がある。研修の在り方を含めて,検討すべきである。特に,相談でのコミュニケーション支援は,団体と連携しながら体制を整備する必要がある。

○ 障害者を受け入れる普通学校の教育実習先が少ない実態があるが,合理的配慮として大学と関係機関が連携し提供できるようにすべきである。

○ 職業体験や実習においても学内と同じレベルの合理的配慮が提供されるべきである。

○ 大学が合理的配慮を保障し,障害者に費用負担が生じないようにすべきである。

○ 大学への通学支援の実態調査を行い,支援の在り方を検討するべきである。

5 障害者が文化的諸活動に参加しやすい環境の整備について

(1)環境の整備については,次のような意見があった。

○ 文化芸術振興にあたり,障害者が制作しやすい環境作りと評価を受ける機会の確保をすべきである。障害の有無に関わらず共に参加できる(インクルーシブな)展覧会等が開催され,様々な人が関われるようにすべきである。

○ 空き教室を利用して,身近な場所で展示できる場所を増やして頂きたい。

○ 講演,文化教室には,手話通訳・要約筆記が配置されない。また,字幕がないため聴覚障害者は参加できない。趣味や教養に関するものについても合理的配慮が提供されるべきである。ボランティアでは情報保障の質が確保されない。

○ 美術館等の説明は,ルビがなく理解できない。点字もない。障害者が美術鑑賞できるように環境が整備されるべきである。

○ 新国立劇場のオペラ鑑賞では,日本語の字幕が付与されているが,視覚障害者はそれを利用できない。劇場等のバリアフリーを進める際には,様々な意見を聞いて推進していただきたい。文化,芸術,スポーツにおいても,インクルーシブな視点で,障害の有無に関わらず一緒に参加できるようにすべきである。

○ 文化的施設における文字表示装置等の設置についてガイドラインの作成を障害者基本計画に盛り込むべきである。

(2)スポーツについては,次のような意見があった。

○ スポーツの普及,振興に当たり,障害者も指導できる指導者の養成がカギになる。障害者スポーツ指導員の資格を取りやすくする施策が必要である。

○ 障害者スポーツ指導員の養成を充実させ,どこにおいても誰でもスポーツできる環境づくりが求められる。

○ 障害児・者の体育・スポーツ(インクルーシブ体育に関する内容を含む)に関する科目を体育教員養成時の必修科目とする。

○ パラリンピックについては,オリンピックと一緒にできる競技を少しずつ増やしていくべきである。

○ パラリンピックについては,文部科学省と厚生労働省が連携し,効率的で日本独自の選手の養成システムを構築するよう検討するべきである。

○ デフリンピックの国民の認知率を高めるために,パラリンピックと併記すべきである。

○ 全国障害者スポーツ大会は,競技の種類を増やすべきである。発達障害者も参加ニーズがあるためそれに対応できるようにすべきである。

○ 障害者スポーツの普及や実施率を示すデータが存在していないため,そのためのデータ収集をすべきである。

以上

第2小委員会における審議状況について

第2小委員会 座長 藤井克徳 副座長 浅倉むつ子

はじめに

 第2小委員会においては、年金等(障害者基本法15 条)、職業相談等(同法18 条)、雇用の促進等(同法19 条)、経済的負担の軽減(同法24 条)について、現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ、新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのか、幅広く議論した。
 本小委員会における議論について、論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると、以下のようになる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は、これらの議論を踏まえて行われることが期待される。

1 障害者の就労施策全体の実施状況について

(1)施策の実施状況への意見

【全般について】

○ 雇用環境が厳しくなる中、産業政策と一体で雇用の問題を考えるべきである。

○ 施策を着実に進めるには、見込み的な形で計画に盛り込むことには慎重であるべきである。

○ 全体として福祉から就労への移行はすすんでいないのではないか。

○ 次期計画では障害者の就業率をどこまで上げるのかという視点で根拠のある数値目標が必要である。

○ 障害者を雇用する経営者の意見も十分に踏まえるべきである。

○ 一般就労、福祉的就労など、多様な働き方から最も適した働き方が選択・決定されるよう、本人や家族と就労支援関係者等との合議体のもと、本人のニーズと支援の必要度に基づいたアセスメント・支給決定が行われる仕組みの構築が必要である。

○ 総合支援法の3 年後見直しを着実に計画的に実施するべきである。

【難病について】

○ ようやく障害者施策の対象とされた難病患者の就労支援の現状と今後の方向性を示すべきである。

○ 難病は現行制度のままでは、障害の固定や永続を基本とする身体障害者手帳の認定基準には該当しづらく、症状が安定しなければ手帳や所得保障、手当等の受給率も低く、支援が受けられない。医療とのかかわり、症状の変化や状態の個別性など難病の特性に着目して、就労支援各事業の対象とするよう総合的に検討することが必要である。難病患者雇用開発助成金制度の実績や効果についての検証が必要である。

○ 難病患者が継続して働けるには、服薬や通院の保障や休暇・休憩などの配慮、職場での病気の理解促進などの環境作りが必要である。また小児期に長期入院や入退院を繰り返した難病患者に対する就労支援の在り方については、医療とのかかわりや職業訓練・能力開発への工夫・配慮が必要である。

【労働と福祉の一体的展開について】

○ どこで働いても必要な支援を得られるよう、労働と福祉を一体的に展開する必要がある。

○ 通勤支援に福祉施策を使えるようにする等、制度の谷間が生じないようにする必要がある。

○ ソーシャルファーム、コミュニティビジネス、協同組合、社会的事業所等多様な働き方について様々な観点から検討するために、パイロットスタディによる検証が必要である。

○ 福祉的就労を一般労働市場に位置付けた場合に障害年金をどうするか、賃金補填等と納付金制度の関係、労働能力評価の公平で客観的なあり方等を検討課題として計画に位置付けるべきである。

○ 福祉的就労については労働の実態が無ければ労働法適用は慎重に考えるべきであり、福祉的労働法のような新たな法制でカバーすべきである。これは今後の検討課題とすべきである。

○ 労働と福祉の一体的展開について、労働と日中活動等の福祉サービスの中間の層をどう位置づけるか等は複雑な問題である。

○ 雇用と福祉的就労の格差の解決は必要だが、そのための方法は賃金補填や事業体系の見直しに限らず、様々な観点からの検討が必要である。

○ 賃金補填は労働の対価としての賃金の性格をゆがめることにならないか。また、労働法の適用と所得保障は一体的な議論が必要であり、所得の問題だけから賃金補填を論じるべきではない。

○ 賃金補填が民間企業への雇用を促進するような制度設計もあり得る。国内の自治体やヨーロッパ等の取り組みを検討し、データに基づいて議論するべきである。

○ 福祉的就労と一般就労の格差の解消には慎重な検討が必要で、今回の計画で急ぐべきではない。

○ 雇用と福祉的就労の格差をなくすために最低賃金を適用した結果、B 型で働けなくなる人を生まないようにする必要がある。

(2)データ等についての意見

○ データの収集を今回の基本計画に位置付け、次の基本計画の審議はそのデータに基づき行うことができるようにするべきである。

○ 障害者の就労施策全体を把握するために、国(雇用と福祉)や地方自治体から投入されている財源の全体をつかみ、日本の就労施策全体に位置付ける必要がある。

○ 何をもって福祉的就労から雇用就労への移行というのか、雇用の定義(短時間労働に満たない就業を含めるのかどうか、就労継続支援事業A 型を含めるのかどうか等)を明確にしうえで、データを収集し分析する必要がある。

2 【18・19 条】障害者雇用について

(1)施策の実施状況への意見

【障害者雇用の促進全般について】

○ 障害者雇用が過去最高を更新し続けていることを評価する。

○ 今後も一般就労を支援する施策を柱として進めるべきである。雇用前の支援制度の更なる充実、雇用後、職場定着までの支援制度の充実、職場定着後の継続的支援が重要な課題である。

○ 雇用促進のための基盤整備、手話通訳等支援者の養成・確保・定着、補助犬育成事業の検討等が必要である。

○ 難病患者・長期慢性疾患患者にも障害者雇用率の適用を拡大すべきである。

【現行制度について】

○ この10 年の就労支援施策の成果を踏まえ、改善を検討するべきである。

○ 法定雇用率、納付金制度、ダブルカウント、特例子会社は障害者雇用推進の根幹となる制度である。

○ 法定雇用率を引き上げるべきである。また、公的部門との取引は雇用率達成企業に限定することを検討するべきである。

○ 雇用率は全体として向上しているが、自力通勤可能な軽度の障害者がほとんどではないか。

○ 雇用率の対象外となっている障害者の雇用を増やすことを検討するべきである。

○ ダブルカウント制度は重度障害者の雇用を進めるためには当面必要だが、インクルージョンを重視した雇用施策も重要である。

【一般就労のために本人が求める支援について】

○ 自力通勤ができない障害者や職場での支援を必要とする障害者への支援が必要である。

○ 採用時の健康診断は難病患者の雇用を困難にする。難病により退職すると再就職が困難となる。通院等への配慮、復職時の能力評価等を検討する必要がある。

○ 就労支援に当たっては、本人はもちろん家族や関係者も支援するコーディネーター機能が重要である。

○ 就労支援については、基礎自治体において就労支援センター等とハローワークの連携がこれまでなされてきており、計画に明記する必要がある。

【企業への支援について】

○ 企業内の理解者を育成する積極的なアプローチ等、企業への支援が必要である。

○ 本人への支援同様、精神障害の場合は企業への支援も重要である。就業・生活支援センターの拡充等、企業の相談を受ける場の整備が必要。

○ 事業主への支援という観点から、助成金制度等に関する議論が必要である。

【就労支援機関について】

○ 就業・生活支援センターとハローワークの役割の検討と地域格差の是正も必要である。

○ 就業・生活支援センターは大きな役割を果たしており、全障害福祉圏域に設置するべきである。今後は難病等への支援も必要になるため、職員やジョブコーチの増員について計画に盛り込むべきである。

○ 一般就労をする障害者が増えたために地域における就労支援は疲弊しており、体制の強化が必要である。今後は障害者に対する就労支援だけではなく、就業が困難な方という枠組で検討する必要がある。

○ 就労移行支援の充実、特に定着支援を制度化する必要がある。

○ 企業での雇用を成功させるカギは就労移行支援でのアセスメントと訓練、また就業・生活支援センターやジョブコーチによる本人と企業への支援であり、省庁や部局を超えた連携が必要である。

【紛争解決について】

○ 就職後の人権擁護について、未然防止と起きた時の調停等の仕組みの双方が必要である。

○ 雇用の場における人権侵害の相談・解決に向けた制度が必要である。

【その他の意見】

○ 公的部門での障害者雇用を促進する必要がある。

○ 障害のある人たちを就労に結びつけていく上でトライアル雇用は有効だが、予算が不足しており財源の拡充が必要である。また、次回の障害者計画の中にも位置付けるべきである。

○ 障害者の主訴が個別化し、支援者の専門性が問われている。支援者養成の計画が必要である。

(2)データ等についての意見

○ 行政評価の手法の進展を踏まえ必要なデータと評価・活用の仕方を検討する必要がある。

○ 計画が障害者雇用にどのような効果を与えるのか、アウトカムの視点が必要である。

○ 雇用されている障害者の人数だけではなく、定着支援と雇用継続等に関する指標が必要である。

○ 新たな政策はデータに基づいて立案されるべきである。

○ 具体的には以下のようなデータが必要である。

  • 障害者の雇用形態(正規又は非正規)や障害別の雇用率についてのデータ
  • 就労への移行がスムーズに行われているか(求職登録の期間等)についてのデータ
  • 離職者の状況、最賃減額特例のデータ(都道府県格差の実態等)
  • 雇用に関する男女別や一般市民との比較をしたデータ
  • 障害女性の就労状況についての事例調査を含むデータ 等

3 【18・19 条】福祉的就労について

○ 就労継続支援B型では工賃は低いが、そこでも障害者が誇りを持って働ける状況を作る必要がある。

○ 一般就労が困難な障害者等の働くことについての意向が尊重されるよう、一般就労の促進のみを重点施策とせず、多様な就業の機会の一つとして、福祉的就労を充実させることが重要である。

○ 福祉的就労の工賃問題を検討するに当たり現行制度の検証、評価が必要である。

○ 工賃倍増計画は成果を上げていない。これを達成するには障害者基本計画を自治体に浸透させ、官公需や優先発注を位置付ける必要がある。

○ 福祉的就労の場の送迎加算とは別に、支援を得ながら自分で通所することへの助成が必要である。

4 【15・24 条】所得保障等(年金、諸手当、経済的負担の軽減等)について

(1)施策の実施状況への意見

【所得保障(年金や諸手当)について】

○ 障害者の雇用・就労を推進する施策とともに、年金や手当による所得保障も不可欠である。

○ 非効率的な給付や重複する給付は見直すという視点も必要である。

○ 現時点で公的年金制度の完全一元化、最低保障年金等の新年金制度の検討において障害年金については議論されていないため、基本計画では現行障害年金の改善についての検討規定を入れるべきである。

○ 生活保護ではなく、雇用と所得、社会保障によって生活できるように施策を改善するという観点から、障害基礎年金の改善が必要である。

○ 消費税が上がればマクロ経済スライドが起動し障害基礎年金も下がるので、現行制度を改善するという観点から年金生活者支援給付金法案は通すべきである。

○ 働いて稼ぐ額と年金との相関関係等、所得保障制度のあり方を再検討する必要がある。

○ 給付水準が高い障害厚生年金は、障害基礎年金と切り離して議論すべきである。

○ 生活保護給付の受給対象者には障害者が多いため、生活保護と年金制度や手当との関係も問題になる。

○ 在日外国人等の無年金問題にどう対応するのか。

○ 基礎自治体による無年金障害者への対応が地域格差になってはいけない。こうした基礎自治体の対応等をデータ化し、是正の方向につなげるべきである。

○ 多くの基礎自治体が講じている難病の方への手当と年金の関係も問題になる。

○ 難病等はざまに落ちている方を含め障害者の所得保障を体系づけるべきである。

○ 諸手当については地域的な格差を解消し、全ての障害を対象にするべきである。

○ 住宅等特別のニーズには手当等で充足する等、年金に限定せず所得保障制度全体のあり方を考える場が必要である。

○ 職場の支援体制を整備し、働いて所得を得たいと考える人が働けるようにすることが必要である。

○ 働くことが中心でない人が地域で当たり前に暮らせる体制をつくる必要がある。

【経済的負担の軽減】

○ 基礎自治体は障害者の社会参加を促進するために創意工夫をして割引や減免等を実施している。

○ 税制控除は所得がある方が対象で、所得がなく非課税の方は使うことができないので、所得の再分配から考えると公平ではない。また、障害者の適用実態についての調査もない。

○ 減免はJRや博物館、美術館等に行くことができる人等、移動の手段や自由が確保されている一部の人しか利用できない。

○ 経済的負担の軽減の制度は障害者が低所得だからかわいそうだという意識につながる面もあるので、基本的には所得保障の制度で対応するべきである。

○ 障害者はヘルパーの交通費や入場料等を支払っており、1人分の料金では社会参加できない。

○ 自立支援医療の入院費等医療費やその他の軽減策を精神障害者や難病患者にも拡充すべきである。

○ 障害福祉サービスや就労支援事業などの利用者負担問題を改善すべきである。とりわけ就労支援事業における利用者負担は、ILO基準を踏まえ無料とすべきである。

○ 労働行政の訓練等は無料だが、自立支援法の就労支援は負担が伴うという矛盾は整理すべきである。

○ 家賃や住宅改修費の助成制度等についても今回の基本計画の中に位置付ける必要がある。

(2)データ等についての意見

○ 障害者の経済活動や生活実態、消費実態を明らかにする基礎データを整備するべきである。

○ 経済的扶養の実態を明らかにするためにも障害者の家族の実態把握が必要である。

○ 施策の進ちょく状況の評価・検証のための指標づくりの際に諸外国の例を参照するべきである。

○ 男女別集計によると女性は障害基礎年金だけを受ける人が多く、男性に比べて年金受給水準が低い。女性の就労形態の違いが年金に現れている。

○ 年金を受給していない障害者に対する包括的実態調査が必要である。また、年金の要件を満たさない理由とその割合、地域差の状況等も把握するべきである。

○ 無年金障害者の推計値を更新すべきである。

5 【18・19 条④】就労施策に関するその他の事項について(自営業・起業への支援等)

(1)施策の実施状況への意見

【自営業・起業への支援について】

○ 自営業の場合に職場介助者や移動支援が得られないという制度上の問題点を改善するべきである。

○ 自営業、起業のための職業的な自立に向けた訓練や経済的支援を講じるべきである。

○ 基礎自治体が情報通信技術等の研修を在宅就業促進のために提供することを奨励する枠組が必要である。また、起業への支援についての基礎自治体とハローワークの連携を計画に明記する必要がある。

【障害者優先調達推進法等について】

○ 障害者優先調達推進法を実効性があるものにするよう新基本計画に書き込むべきである。また、この法が自営業にも適用されることを周知するべきである。

○ 優先調達推進法に民間企業を加え、発注企業への支援策を検討するべきである。

○ 工賃、賃金の向上に向けた取り組みの必要性を新基本計画に入れ込むべきである。また、優先調達推進法の有効な運用のカギになる共同受注窓口を同法による受注主体と認めその整備を急ぐ必要がある。

(2)データ等についての意見

○ 自営業や起業を支援する施策をつくるために、実態調査が必要である。

○ 自営業に従事している障害者の実態と必要な支援についての実態調査が必要である。

(以上)

第3小委員会における審議状況について

第3小委員会 座長 氏田照子 副座長 北野誠一

はじめに

 第3小委員会においては、障害者基本法の条文のうち、消費者としての障害者の保護(27 条)、選挙等における配慮(28 条)、司法手続における配慮等(29 条)に関する施策について、現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ、新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのかを検討した。時間の制約の中かで不十分な所もあるが、委員及び専門委員から出された意見を基に整理したものである。
 上記の各条文は改正障害者基本法において新設された条文であり、障害者基本計画の推進状況(平成22年度)及び「重点施策実施5 カ年計画」の進ちょく状況においては、限定的な内容にとどまっていることから今後の施策の推進が望まれる。
 本小委員会を通じて、障害者権利条約とそれを踏まえた改正障害者基本法で明記された、地域で暮らす障害者の諸権利の実現に向けて、いよいよ本格的な取り組みが、わが国でも論じられ、展開しようとしているのだという、強い意気込みが感じられた。
とりわけその消費生活における被害の防止・選挙等の公民としての政治参画支援・犯罪に関わる司法行為とそのプロセスにおける各種のバリアフリーや必要な支援の徹底・触法障害者の地域生活支援といった、これまでともすればないがしろにされてきた、地域生活に欠かせない事象に対する支援が論じられたことの意義は誠に大きい。これらを実現しなければ、「他の者との平等を基礎として」という基本理念に基づく障害者の地域生活に、真のリアリティーは成立しない。
 上記の各条文の論点に関する本小委員会の議論について,論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると、以下のように整理することができる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は、これらの議論を踏まえて行われることが期待される。

1 障害者の消費者被害の事前防止及び被害からの保護

【情報提供及び相談支援の整備】

○ 消費生活センターへのアクセスを改善する必要がある。例えば、ろう者の電話等での本人確認については、手話通訳によって確認できる方法が必要である。また、消費者生活センターの連絡先が電話番号しかないため、聴覚障害者は相談自体ができないことがある。FAXもしくはE-Mailなどでの窓口対応が必要。

○ 福祉サービスや銀行、郵便局や飛行場、駅、商店、レストラン等その他の提供者側と消費者である障害者との対等な関係の在り方を苦情の申立てやフィードバック等の必要性も含めて捉えなおす必要がある。

○ 障害者に身近な地域の窓口の設置や民生委員、障害者団体、消費者団体の活用等も検討されるべきであり、グループフォーラム等の事例もあるが、消費者団体や地域で活動する様々な団体と障害者との連携の促進を図る見守りネットワークの県単位開催の必要がある。

○ 情報提供に関しては、消費生活センターの窓口において相談員の体制が不十分であり、小規模な自治体における体制は広域的に整備する必要がある。

【クーリングオフの改善】

○ クーリングオフは,制度として利用できるための周知が必要である。書面により説明を行うことが求められているが,これは文字が読めない人(知的障害者、視覚障害者等)は活用することができないため改善が必要である。

○ 障害者については、クーリングオフの期間を通常よりも長くすることが必要。

【消費者被害の対応】

○ 消費者被害については、被害実態の掘り起しが必要であり、悪質な事業者については、行政でしっかりと対応すべき。

【啓発活動の推進】

○ 医療機関と患者の間には適正な役務の提供が求められており、インフォームドコンセント等も含めて消費者基本法の理念との関係で考える必要がある。

○ 障害者については、一般の消費者と比べて、情報及び交渉力の面で格差が生じており、行政が積極的にエンパワーメントする必要がある。

○ 消費者庁において、作成している見守りガイドブックは、ロールプレイング等も掲載されており、今後、“分かりやすい版”等も作成が必要。

○ 消費者としての権利に関する理解を深めるため、消費者教育推進法との関連を踏まえて啓発活動等に積極的に取り組む必要がある。

2 選挙等における必要な配慮の提供

【個別の配慮に関連して】

○ 知的障害者の場合、文字は書けないが記号や色の識別が可能な人はたくさんいる。他の国で実施されている例を参考として、記号・マーク等での候補者の識別、それによる投票が実行されることが必要。

○ 病院等に入院中の選挙人には、そもそも選挙公報も投票入場券もその病院には送られてこない。この点の配慮を入院中も行う必要がある。

○ 選挙の点字による「お知らせ版」が選挙公報と同じ内容ではない。点字や録音媒体という技術的な制約にあまり縛られずに、選挙管理委員会のサーバー上にホームページで音声による選挙公報を出せば、時間的にも技術的にもロスなく視覚障害者に情報を提供できる場合もあるので、より柔軟な方法を検討する必要がある。

○ 投票所の車いす用の投票ブースは低いので、隣接する一般投票ブースから投票内容が見られるのではないかという心配がある。ブースの位置等の配慮が必要。

【政党及び立候補者による配慮に関連して】

○ 聴覚障害者が個人演説会等において候補者の政見等を知る機会をできるだけ確保することが必要。演説会等で演説内容を要約筆記し、その文字をOHPスクリーンに投影することを可能にすること。

【郵便投票制度の見直し】

○ 参政権保障の観点から郵便等投票ができる者及び郵便等投票における代理記載のできる者の範囲を拡大することが必要。具体的には、介護保険の要介護5に該当しない者でも事実上、外出が困難と認められる在宅の寝たきりの高齢者、重度の紫外線アレルギー、精神病等の疾病のため外出できない者などに拡げること。

○ 郵便等投票については、視覚障害者が点字で投票できるようにすること。

【不在者投票制度等の見直し】

○ 知的障害者の施設においては、本人が1人で投票所に行くことが困難な現状があり、入所施設内で不在者投票ができる施設の対象として知的障害者等の施設も含めることが必要。

○ 郵便投票等による不在者投票や不在者投票施設における不在者投票は、障害者がほかの人と同様に投票所で投票することができない場合に対する暫定措置とすべきであり、基本的には投票所に行って投票できるようにすることが必要。

○ 知的障害者の施設で不在者投票を可能にすると、投票所に出かけることが社会参加の機会のひとつであったことが、それを制限することにつながる懸念がある。

○ 不在者投票のできる施設に知的障害者の施設を入れることは、都道府県の選管連合会からの法改正要望でもある。当該施設の入所者が対象になるが、その施設で投票するかしないかは、あくまでも本人の選択になる。

○ 老人ホーム等の施設における不在者投票の在り方がこのままでいいのかどうか、運用上、問題がある(施設の長等に誘導されて投票する等)ので、知的障害者や高齢者(特に認知症の人等)の不在者投票に伴うチェック機能が望まれる。

【その他の制度上の見直し】

○ 最高裁判所裁判官国民審査の視覚障害者の点字投票では、一般投票と同様に記号等により投票できるようにすること。

○ 聴覚障害者が選挙運動を行うに当たっては、電話でお願いすることはできないが、一方で、FAX、携帯メールになると公職選挙法に抵触する制約があるため、柔軟な見直しが求められる。

【留意点】

 郵便投票、代理人投票等の不在者投票制度や選挙運動の見直し等の公職選挙法に関係する選挙制度の問題点の指摘については、選挙制度は議員の身分に密接にかかわるため、国会において各党各会派で議論されるべき問題であることに留意する必要がある。

3 成年後見制度と選挙権について

○ 後見人に託す財産上の法的な保護がなされる一方で、被後見人になったときに選挙権を奪われてしまうのは人権上の大きな問題。人権を尊重する前提で制度に不備があるという視点で見直すことが必要。

○ 選挙の公正を確保するため、一定の場合にどうしても選挙権を制限しなければならない必要があるときは、成年被後見とは別に、本人の選挙権を行使したいという意思や能力に着目し、選挙権を喪失させるのが相当かどうかを特に判断する新たな審判制度を設ける必要があるのではないか。

【留意点】

 本項目については裁判で係争中(4 件)の事案であり、司法権の独立性に留意し、今後の訴訟の動向を注視する必要がある。また、選挙権及び被選挙権を有する者の範囲をどのように定めるかについては、選挙権の本質に関わる問題であることから、国会において各党各会派で議論されるべき問題であることに留意する必要がある。

4 公的活動への障害者の参画の拡大(審議会委員への登用の促進等)

○ コミュニケーションに課題がある障害者にとっては、その人の障害特性に見合った支援方法を具体的に提案する必要がある。

○ 知的障害者等の審議会等への参画については、自治体の先進的な事例を参照し、本人への事前の十分な情報保障と合わせてできる限り推進する必要がある。

○ 国や自治体の各種の審議会等における当事者(本人・家族等)の参画の割合の設定については、二つの考え方が示された。一つは、男女共同参画政策において女性の委員参加に中期及び長期の数値目標が設けられて進捗が定期的に公表されているのと同様に、障害者についても、審議会の種類に関わらず一定の数値(比率)を定めてその実現をめざすこととしてはどうか。もう一つは、障害者の制度・政策に関する審議会等は過半数を目指し、障害者にも関わる医療や福祉、教育等の一般的な審議会または国民一般の生活に関わる委員会等については今後の検討課題とするという意見が出された。

5 司法手続における必要な配慮の提供について

【刑事裁判手続】

○ 捜査では、障害者が被疑者となった場合に求められる配慮と犯罪の被害者となった場合に求められる配慮がある。とくに障害者が被害者となった場合、適切な聞き取りが必要になる。

○ 取調べの可視化では、取り調べ後の弁護士の関わり方などについて運用面での検証が必要。

○ 取調べの可視化では、録音・録画の対象は知的障害等の障害者を想定しているため、本人の意思決定の確認方法については継続的な検証が必要。

○ 刑事裁判では、障害特性に見合った適切な情報保障が行われなければ真実を見誤りえん罪が生まれてしまう危険性がある。

○ 裁判員制度では、被告人が障害者である場合、一般市民である裁判員が障害について十分理解していないと誤った判決をしてしまう可能性があるため、障害者への適切な理解を持ってもらうことが必要。一方、裁判員に障害者が選ばれた場合、十分な情報保障がなければ裁判員としての職務を果たせないことになる。

【民事裁判手続】

○ 現在の民事裁判制度の諸規定では、障害者に対する配慮がほとんど記載されていない。とくに裁判費用については、障害が理由で追加的に発生する費用は国庫で負担する必要がある。

【刑事裁判・民事裁判に共通する問題】

○ 司法に関係する全職員に対する障害者に対する理解、合理的配慮等について十分な研修が必要。

○ 傍聴の問題として、裁判所では車いすの傍聴が困難な場合もある。ろう者の傍聴者が手話通訳者を見にくいことがある。障害者が障害のない者と同様に裁判を傍聴できる配慮が必要。

○ 司法に参加する機会が増えているが裁判所における障害者に対する配慮が十分ではない。被告人への情報提供、また傍聴人への情報提供、盲ろう者や難聴者等のコミュニケーションについて裁判体ごとに対応が異なる。

○ 裁判所から訴状が視覚障害者に送られてきたときに、視覚障害者が訴状を理解できない。裁判所による配慮とともに、行政による代読や代筆等のサービス等による在宅の障害者が司法手続きに関する十分な情報保障を受けられる体制が必要。

【留意点】

 司法手続において必要な配慮の提供には、行政だけの取組だけではなく、裁判所における取組も不可欠である。一方で、裁判所の取組事項については、三権分立の原則との関係で、行政が策定する障害者基本計画に盛り込むことは、なじまないものであるという点にも留意しておく必要がある。

6 司法手続等における研修の実施について

○ 障害者に対して現場でどういう支援が必要なのか、裁判官、警察官、検察官、刑務官の研修が重要な課題。障害を理解するのが難しい言語障害のある人などに関する研修も必要。

○ 「知的障がい専門委員会」の中に知的障がいの当事者が入っていない。当事者参画という原則から構成等の再考が必要。

○ 福祉的支援の保護観察に関連して、保護司に対する研修について検討が必要。

○ 刑務所には、知的障害+ろうの人、重複障害の人もいる。刑務官には、障害の種別、特性ごとに研修に入れていくカリキュラムがないようなので、きちんとした研修システムを入れることが必要。

【留意点】

 裁判所の取組事項については、三権分立の原則との関係で、行政が策定する障害者基本計画に盛り込むことは、なじまないものであるという点にも留意しておく必要がある。

7 障害を有する受刑者・出所者等に対する処遇及び支援の在り方について

【受刑者の処遇】

○ 日本では刑務所の中で健康保険が使えない。一般と同程度の医療水準をどう担保するかを考える必要がある。

○ 電話相談の経験では、どう訴えても詐病であると言われて薬を投与してもらうことができない。今までかかっていた主治医と連絡をとりたいなどの訴えが多いのが現状。

○ かなり重い状態にならないと医務官のところまで情報が入ってこないという実態があるのではないか。情報の流れの検証と刑務官、医務官のスクリーニングに関する研修が必要。

○ 刑務所内の介助について、福祉機器の提供と同じように介助の位置づけを明確にする必要がある。

○ 刑務所内の介助に関連して、介護が必要な人は福祉刑務所のような特化ユニットを今後はつくることも必要ではないか。

○ 刑務所内の聴覚障害者については、手話通訳や要約筆記の派遣を利用し専門的な人を配置するべき。

○ 日本は欧米の刑事施設と比べて処遇が非常に厳しい。刑務官は怒鳴りっぱなしで知的障害者は萎縮してしまい、自分の言いたいことも言えない状況を経験した。処遇のあり方の再検討がまず必要。

○ 受刑者への処遇に関するプログラムと出所後の地域定着支援のあり方については、今後の基本計画及び障害福祉計画の段取りの中でどの程度までを目標にしていくかを考える必要がある。

【出所者に対する支援】

○ 処分決定に至るまでの過程を踏まえて、社会に戻る段階で支援プログラムをつくる必要がある。

○ 各刑事施設では、医療や介助等の様々な合理的配慮にかかわる対応に非常に格差がある。各刑事施設全体に共通するガイドラインの策定と実施が必要。

○ 地域生活・定着支援センターは、都道府県が実施主体になって民間だけではできないことを補うが、まだ緒についたところ。先行モデルを目標にしていったらいいのではないか。

○ 累犯障害者の地域移行にあたっては、安易に施設入所が選択されることがないように配慮が必要。

○ 地域生活・定着支援センター等と刑務所内でのプログラムの展開を合わせて個別支援計画をつくる必要がある。

【その他の意見】

○ 刑務所を満期で出所しても、精神保健福祉法による通報がされると措置入院になる。満期で責任を果たしているのに、一方的な通報で精神保健福祉法による措置入院につながる事例もあるのはおかしい。

以上