委員提出資料
差別禁止法各則に関するJDF意見書
各則に関しまして、以下の考え方をJDFとして意見書の形でまとめて提出致します。
【労働・雇用】
○対象範囲
- 事業所規模に関わらずすべての使用者を対象とする。
- 採用から退職までにおけるすべての労働条件
○差別と正当化事由
- 使用者は労働者の募集、採用、昇進、福利厚生、教育・訓練、解雇、及びあらゆる労働条件における障害に基づく差別をしてはならない。
- 障害に基づく差別であるとして裁判上又は裁判外の救済手続を申し立てたこと及びこれに協力したことに基づいて、事業者が行う解雇その他の不利益な取り扱いについては、これを行ってはならない。
- 労働組合は、労働者の加入を、障害を理由として拒否してはならない。
- 合理的配慮が提供された上で行われる労働能力の評価については差別に当たらない
○合理的配慮の例示
個々の障害者である労働者の個別ニーズに応じた環境の整備
- 建物・用具等の物的環境(休息スペースの確保等を含む)
- 人的支援(介助者、ジョブコーチなどを含む)
- 意思疎通手段
- 労働条件の調整(医療やリハビリのための時間調整などを含む)
【政治参加】
政策決定過程のあらゆる段階に、障害者の参加の権利を妨げられることがないという基本的視点に立つ
○対象範囲
- すべての障害者が他の市民と同等に情報を入手したり提供したりする権利を享受し、かつ選挙権及び被選挙権の剥奪もしくは制限を受けたりすることがないように、公職の選挙権及び被選挙権(公職選挙法)を対象とする。
- 同じく上記の理由に基づいて、最高裁判所裁判官の国民審査、一の地方公共団体のみに適用される特別法の制定のための投票、日本国憲法改正の国民の承認に係る投票、地方公共団体の住民による各種の直接請求に基づく投票等も対象とする。
- 同じく上記の理由に基づいて、国会及び地方公共団体の議会への請願等も対象とする。
- 同じく上記の理由に基づいて、国会及び地方公共団体の議会の傍聴等も対象とする。
- その規模に関わらず、政治活動を行っているすべての政党。特に公職選挙法等で認められている「政党」を対象とする。
- 障害者政策に関する提言を行う国や地方公共団体の委員会や機関など。
- 国会や地方公共団体の議会そのものも対象とする(言語障害をもつ議員の発言権や議決への参加の仕方について、あるいは議場の構造の問題など)。
- 政治的意思表明を行う一定規模の集会やデモの主催者
- 上記に関わる情報の提供(入手)
○差別と正当化事由
- 国及び地方公共団体、政党等は、政治参加に関して、障害に基づく差別をしてはならない。
○合理的配慮の例示
個々の障害者である者の個別ニーズに応じた環境の整備
- 建物・用具等の物的環境(投票所、議場等へのアクセス、など)
- 人的支援(投票所、議場等における支援、など)
- 意思疎通手段(投票手段、選挙公報、政見放送および投票に関する情報等の提供、議会審議の手段、など)
【医療】
○対象範囲
- 事業規模に関わらずすべての医療機関を対象とする
- 医療機関が提供するすべての医療行為及び医療に関連する行為
○差別と正当化事由
- 障害を理由とした診療拒否、治療の放棄、その他一般的医療水準に満たない医療を提供してはならない
- 一般に提供されるインフォームド・コンセントを行わないで、本人の望まない治療行為を行ってはならない
○合理的配慮義務の例示
- 障害者が自らの意思と選択に基づいた医療を受けられるような適切な情報提供
- 障害に関わる検査・治療や、妊娠及び出産に関する検査・治療の内容と対応の方法について、障害を持ちながら十分な日常生活や社会生活を送ることができるような支援策等について情報を提供し、連携を図ること
(解説)
医療の場面では、機能障害・構造障害を予防し、治療し、障害者でない人に近づけることのみに主眼におかれがちです。機能障害・構造障害があること自体が良くないこと、克服すべきことではありません。
機能障害・構造障害は、ある部分までしか改善できなくとも、社会の中でより生活しやすい支援のひとつが医療やリハビリテーションです。障害者の生活が医療やリハビリテーション中心というのは、一時的なものであり、長期に必要であるとしても、同世代の障害者でない人の生活とかけ離れた生活を強いられてはなりません。
精神医療の現場は、特に人としての尊厳を傷つける行為が多く行なわれてきました。地域で暮らしていくための支援との連携が必要です。
また、障害者が二次障害や、他の病気をもつことが増えています。もともとの障害に理解がなく適切な医療を受けられないことも多くあります。
さらに、脳死移植、尊厳死、出生前検査、遺伝子検査等々医療に関連した問題も多く出てきています。障害に基づく差別につながらないことを考えていく必要があります。
【情報】
〇対象範囲
- 公的機関及び公共性をもつ団体や事業所
〇差別と正当化事由
- 本人の必要とする方法での情報の提供や発信を拒否すること
- 情報の提供や発信に当たり、不当な条件を課すこと
※(例)手話通訳者の立ち位置を制限するなど(裁判所など)
- 情報の提供や発信に要する費用を、それを必要とする障害者にのみ請求すること。
〇合理的配慮の例示
- 印刷物は点字印刷や拡大文字、音訳での利用を可能とすること
- 音声によるものは要約筆記を含む文字への変換や手話、触手話、指点字等への翻訳を行うこと
- 映像や画像によるものは文字や音声等での認識を可能とすること
- 文章によるものは平易な用語や文体、記号や絵等を用いた版を作成することなど
【司法手続き】
1.対象範囲
裁判所における司法手続(民事、刑事)及び検察庁並びに警察署における刑事司法手続、刑事施設等(刑事施設、少年院又は少年鑑別所)における処遇又はこれらに関連する行為(以下「司法手続等」という)に関与する者
2.差別と正当化事由
(1) 司法手続き等に関与する者は司法手続等において障害を理由として差別をしてはならない
(2) 合理的配慮義務に違反すること。
3.合理的配慮の例示
(1) 障害者が司法手続等の内容を理解することを容易にするための適切な情報伝達方法の使用
(2) 適切な情報伝達方法を使用しても、障害者が司法手続等の意味又は内容を十分に理解することができない場合における適切な補助者の付与
(3) 司法手続等の提供に関する運用、方針、手続における不利益除去対策
(4) 障害者に対する、その障害の種類・程度に応じた処遇
(5) その他、障害者の適正な司法手続及び処遇を受ける権利を実質的に保障するために必要な合理的配慮を行うこと。
4.準用
2および3は、裁判外紛争解決機関、検察審査会、保護観察所の行う保護観察に、その性質に反しない限り準用するものとする。
日本障害フォーラム(JDF)障害者差別禁止法案(前文、総則、検討規定)(2012.8.17版)
「障害に基づく差別禁止等に関する法律」 | 法律の名称案 差別禁止以外に救済等の規定を定めるという意味で「等」を挿入した。 |
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前文 わが国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、障害者基本法では、障害の有無にかかわらず、すべての人が等しくかけがえのない個人として尊重され、分け隔てられることのない共生社会の実現を目的とされ、これらの理念に基づいて、共生社会づくりのためのさまざまな取り組みが行われてきた。特に近年、様々な地域において、障害者の権利に関する条例が作られてきており、こうした動きは、国際社会におけるさまざまな取り組みと連動しながら行われてきている。 |
前文 新しい法律として前文は必要であり、前文には以下の要素が入れられるべきである。 (理由) |
総則 【目的】 |
総則 【目的】 |
【理念】 |
【理念】 |
【差別の禁止】 |
【差別の禁止】 |
【定義】 |
【定義】 |
2.障害に基づく差別 1.障害に基づく差別とは不平等待遇及び合理的配慮を行わない事をいう。不平等待遇とは、障害 |
2.障害に基づく差別 |
3.合理的配慮 |
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〇積極的差別是正措置について |
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【国・地方公共団体の責務】 |
【国・地方公共団体の責務】 |
1.国及び地方公共団体は、障害者の自立及び社会参加と平等の実現並びにそ の権利を確立するため、障害に基づく差別を防止し、差別を受けた人の救 済を図るものとする。 | 1.自治体(都道府県及び市区町村)は、障害者の自立及び社会参加と平等の実現並びにその権利を確立するため、地域性などを考慮して国と協力して障害に基づく差別の防止及び救済のため、施策の策定及び実施する責務があることを規定した。 |
2.国及び地方公共団体は、障害かつ性別等に基づく差別を防止するため、必要な措置を講じなければならない。 | 2.自治体(都道府県及び市区町村)は、障害者でありかつ性別による差別、いわゆる結合差別を防止するための必要な措置を講ずることを規定している。 |
3.国及び地方公共団体は、免許や資格等の付与の拒否或いは制限が障害に基づく差別にならないよう総合的、計画的に施策を行うこと | 3.いわゆる「障害に係る欠格条項」等の運用を含む関係法令の見直しに関連する規定である。「総合的に」とは、さかのぼって関係法制度を見直すことと、それのみならず、実質的に業務遂行等を可能にするために多角的に支援策を講じることを意図する文言(欠格条項を骨抜きにするためのもの)であり、「計画的」にとは、欠格条項等の見直しを施策の上で計画的に行うことを意味している。 |
4.国及び地方公共団体は、障害者が、どこで誰と生活するかについて選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないように十分な情報を提供し、必要な措置を講じなければならない。 | 4.障害の有無によって分け隔てられないという本法の目的や理念と、正当な理由がない限り障害を理由に分離されることが障害に基づく差別となることにかんがみ、国や地方公共団体の責務として、障害者が特定の生活様式を強いられることがないよう、必要な支援を行うことを規定したものである。 |
5.国及び地方公共団体は、障害に基づく差別を防止し、救済を図るために、 合理的配慮が確保されるよう必要な措置を講ずるよう努めなければなら ない。 | 5.障害に基づく差別の防止のため、国や自治体自らが適切な合理的配慮を供与することは、本法の一般規定上当然であるが、それとともに、当該区域内の学校、事業所、その他の場等で合理的配慮が供与されるよう必要な措置を講ずるよう規定したもの。 |
6.国及び地方公共団体は、障害に基づく差別及び合理的配慮等の状況について、これを明らかにするための調査及び結果の公表を行うとともに、障害に基づく差別の防止のための広報、研修並びに啓発活動を行わなければならない。 | 6.国、自治体(都道府県及び市区町村)は、障害に基づく差別の防止のため、当該区域内でその実態等の調査を行い、年次ごとに公表し、また障害に基づく差別の防止のため必要な広報活動や啓発活動などを実施することを規定したもの。 |
7.国及び地方公共団体は、障害に基づく差別を防止するため、関係する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。 | 7.国、自治体(都道府県及び市区町村)は、障害に基づく差別の防止のため、関係機関と協力のもとに当該組織内での体制の整備を行うことを規定したもの。発達障害者支援法を参考。 |
8.国は、地方公共団体が実施する、障害に基づく差別の防止並びに救済、その他の活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 | 8.自治体独自の取り組みについて、国の支援を義務化。(男女共同参画基本法20条を参考) |
9.本法の目的を達成するために、地方公共団体は、地域の特性等を考慮しながら独自の救済のしくみをつくることができる。 | 9.障害者権利条例をすでに持ち、独自の救済のしくみを行っている地域の独自性の担保並びに、今後の自治体レベルでの条例づくりの促進をもりこんだ。 |
検討事項 |
検討事項 |