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「第10節 婚姻・妊娠・出産・養育」に関する三役案への意見

加納恵子

① p.19 第2、1、差別が禁止されるべき事項や場面

【原文】
婚姻、妊娠、出産、養育に関わる場面において、障害に基づく差別と思われる事案は多い。

【修正案】
家族形成、婚姻、妊娠、出産、養育に関わる場面において、障害に基づく差別と思われる事案は多い。親も子も、障害等の有無にかかわらず、生まれ育ち、育てるうえでの必要な支援サービスを受けられることが必要である。

② p.19 第2、1、1)婚姻

【原文】
婚姻について最も多いと思われる事例は、障害者や相手方の家族や身内からの反対であろう。「どうやって子育てするの」「どうやって授乳するの」「どうやってお風呂に入れるの」「自分の面倒すら見れないのに!」など、家族や身内の反対の声に結婚をあきらめざるを得ないこともある。結婚を認めるにしても「子供は作らない」といった条件を付けられることもある。

【修正案】
婚姻について最も多いと思われる事例は、障害者や相手方の家族や身内からの反対であろう。「自分の面倒すら見れないのに!」「不幸になる」「家族に障害者はほしくない」など、家族や身内の反対の声に結婚をあきらめざるを得ないこともある。結婚を認めるにしても「子供は作らない」といった条件を付けられることもある。

③ p.19 第2、1、2)妊娠・出産

【原文】
将来の妊娠を心配して、または、生理介助に手間がかかることを理由に望まないあるいは本人に意味を理解させないまま子宮摘出等の優生手術をされた事例が日本にも存在したことはそれほど古い話ではなく、障害者についてだけそのような優生手術がなされる可能性は、現在においても否定はできない。

【修正案】
妊娠をさせないため、優生保護法のもとで優生手術をされた事例が日本にも存在したのはそれほど古い話ではない。障害者に対して、本人が望まないあるいは意味を理解していない不妊手術が、あるいは生理介助の手間を省くための違法な子宮摘出がなされる可能性は、現在においても否定はできない。

【理由】
妊娠・出産 に、「子宮摘出等の優生手術」とありますが、子宮摘出は優生手術に含まれません。優生保護法は第二条で優生手術を次のように定義しています。第二条 この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。命令、すなわち「優生保護法施行規則」の第1章が、優生手術の術式としてあげているのは 精管結紮(けっさつ)と卵管結紮のみで、子宮摘出はむしろ、優生保護法にさえ違反して行われた違法行為である。

④ p.20 第2、3) A)母子保健サービス

【原文】
また、子どもの予防接種、健康診断、両親学級、育児相談などに際し、親の障害の特性に配慮されていないため会場を利用できなかったり、コミュニケーションが取れず、適切な情報が提供されないこともあり得る。

【修正案】
また、子どもの予防接種、健康診断、両親学級、育児相談などに際し、親の障害の特性に配慮されていないため会場を利用できなかったり、コミュニケーションも取れないまま、適切な情報が提供されず、最もサービスを必要とする障害者に届いていないといえる。

⑤ p.20 第2、3) C)教育

【原文】
昔ほどではないにしても、緊急避難所にもなるかもしれない地域の学校ほどバリアフルな公共建築物はないとの指摘もある。

【修正案】
地域の学校は緊急避難所の指定を受けている場合が多いにも関わらずバリアフリー化が遅れている。

⑥ p.20 第2、3)D)親権

【原文】
確かに、子どもへのネグレクトも含めた虐待防止という観点からは、必要な改正であったと言えるが、その運用の過程で障害者に対する偏見から、障害があるというだけで安易に養育に関する権利が制限されるといった事態が発生した場合には、本法における差別にあたる場合も想定しなければならないところである。

【修正案】
これは虐待防止という観点からの改正であるが、その運用の過程で障害者に対する偏見から、障害があるというだけで養育に関する権利が制限されるといった事態が発生した場合には、本法における差別にあたる場合も想定しなければならないところである。

⑦ p.21 まとめの部分

【原文】
なお、これらの事項における差別に関しては、特に障害女性が被害を受けやすい傾向にはあるものの、性別で限定することなく差別が禁止されるべきである。

【修正案】
なお、これらの事項に関しては、性別で限定することなく差別が禁止されるべきであるが、特に差別や不利益を受けるリスクの高い障害女性の実態には留意する必要がある。

⑧ p.21 2、1)婚姻

【原文】
しかし、行政の相談窓口であるとか、法律に基づく支援の業務を担当する者、結婚相談や様々な「婚活」を支援する企画をする地方自治体や民間事業者については、本法の対象に含めるのが妥当である。

【修正案】
なお、行政の相談窓口であるとか、法律に基づく支援の業務を担当する者、結婚相談や様々な「婚活」を支援する企画をする地方自治体や民間事業者については、本法の対象に含めるのが妥当である。

⑨ p.22 第3 2.不均等待遇を正当化する事由

【原文】
例えば、障害女性の妊娠、出産に際して、医療機関が診察を拒否することは差別にあたるが、当該の医療機関にその女性が出産するための設備が備えられておらず、障害女性が安全に出産できない場合には、障害を理由にした診察拒否には当たらないとするのが妥当である。

【修正案】
全文削除
*設備のことを言い出せば、いくらでも「正当化理由」に使われてしまう。これでは、設備などの環境を改善していく可能性を狭めてしまう。

⑩ p.22 第4、1、2)妊娠・出産

【原文】
(例えば、知的障害者に対して、医療従事者は手術を行う際に、特に堕胎手術の場合には、どのような結果になるのかを説明した上で、その説明を理解していることが確認しなければ手術を行うべきではない。)

【修正案】
(例えば、知的障害者に対して、医療従事者は手術を行う際に、特に不妊手術、人工妊娠中絶手術の場合には、どのような結果になるのかを説明した上で、その説明を理解し手術に同意していることが確認できなければ、手術を行うべきではない。)

⑪ p.23 第4、3)養育

【原文】
A)障害を理由に親権剥奪が行われないようにするために、障害をもつ親が子育てができるように適切に情報提供されること、また、一般に提供される子育て支援を利用できること
B)障害を理由に親子分離の強制がされないようにするために、障害をもつ子どもの子育てについて適切に情報提供されること、また、一般に提供される子育て支援を利用できること

【修正案】
A)障害を理由に親権剥奪が行われないようにするために、障害をもつ親が子育てができるように適切に情報提供されること、また、一般に提供される子育て支援を障害特性に応じた配慮のもとに利用できること
B)障害を理由に親子分離の強制がされないようにするために、障害をもつ子どもの子育てについて適切に情報提供されること、また、一般に提供される子育て支援を障害特性に応じた配慮のもとに利用できること