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高度情報化社会にむけて

パソコン通信は人の輪を広げる助っ人

吉川誠一

 平成4年2月に、稲城市社会福祉協議会が運営するパソコン通信のネット局『いなぎ・ハートフルネット」が開局された。私は、このネットのシステムオペレータを勤めている。

 私は、筋ジストロフィーで次第に歩行困難となった。一時期、人との出会いもないままに時は流れ、プログラマ養成のための在宅講習で、運命を変えたパソコン通信に出会った。

 パソコン通信は、家にいながらにして多くの人と文通ができ、大いに感激した。私は車イス生活をしているので、「切手を貼る」、「外に出る」、「ポストに投函する」といったことは、家族や近所の方などの手を借りなければならなかった。また、私は軽い難聴と言語障害があるために、電話でのやりとりは苦手である。しかし、パソコン通信は文字によるやりとりなので、聞き違いや間違いを伝えられる心配も少なく助けられた。

 実際のパソコン通信では、様々な人たちとの出会いがあり、障害の有無を越えた付き合いが可能であった。差別も区別もない『完全参加と平等』が実現される大きな利点があることに気づいた。また、在宅の生活では文通などによる文字のやりとりが多くなり、直接、誰かに会って会話を交わしている気持ちになれるのが不思議である。つまり、パソコン通信は〝もう1つの社会の窓口〟ともいえよう。

 そこで、「いなぎネットワーカー研究会』を作り、市と社会福祉協議会に協力を呼びかけ、平成3年6月に開局に向けて動き出した。現在、会員は380名(利用は100名程/月)で、平均600件の文字による交流を東京周辺や遠方の方とも活発に行っている。ネットの名称の通り、ハートフルで、居心地のよいネットにと日々、シスオペとして、ある時は1会員として活動している。そして、1人でも多くの人にパソコン通信の素晴らしさを広げようと講演、講座を企画している。

《参考文献》 略

(よしかわせいいち 東京都稲城市)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1995年12月号(第15巻 通巻173号) 33頁