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列島縦断ネットワーキング

[北海道]

「第11回DPI日本会議全国大会」札幌で開催


去る7月8日、9日の両日、札幌で第11回DPI日本会議全国大会が開催された。
全国大会が札幌で開催されるのは初めてのことだが、DPIの存在を周知することと2002年の世界会議を日本の札幌に誘致しようという壮大な計画のもとに開催された。

我妻 武

■ところでDPIってなに?

『ノーマライゼーション』の読者はすでにご承知の方が多いと思うが、障害者インターナショナル(Disabled Peoples' International)の略で、国際障害者年に障害当事者が、自らの声で発言しようと世界にいる仲間たちと連帯して行動しているNGO(非政府機関)組織だ。事務局はカナダのウィニペグにあり、様々な人種の障害者によって運営されている。

 DPIは「障害者のことは、障害者自身が一番知っている」ということから、真の「完全参加と平等」をめざすため活動をしている。国連の経済社会理事会、世界保健機構、ユネスコにも顧問として参加し、世界労働機構にも障害者の人権侵害に関する調査を提案し、実施している。日本会議の事務局は東京にあり、全国の草の根運動団体と連帯している。

■人権

 今回は前述の理由から広く市民に対する啓蒙も兼ねて、総会に先立ちドイツから来たテレジア・デグナーさんというサリドマイド障害を持つ女性による記念講演が行われた。

 彼女の話の中にも出ていたが、ドイツといえば忘れることができないのは、やはりナチ時代だろう。今年は戦後50年になるが、あの忌々しい時代(と言っても私はバリバリの、戦後生まれ)を忘れてはいけない。様々な証人や記録によるとナチは強固な優生思想を持っていたために、ゲルマン民族であっても障害者は容赦なしに収容所、もしくは子供が産めないように手術を施していたという。

 しかし、これは何も昔の話ではない。現在でも障害を持っているという理由だけで断種手術や様々な人権が侵されていることを彼女は警鐘していた。そういったことに対峙するにはやはり我々が声を上げることが大切だと述べていた。

 また開発途上国にいる仲間たちの人権を守るためにも世界の仲間たちと連帯して運動していかなければならないことを語っていた。

 ステージで力強く、そして誇らしく語っていた彼女はとても魅力的だった。

■福祉計画、町づくり

 2日目に行なわれたシンポジウムでは福祉計画や町づくりにどうかかわっていくかということがテーマに話された。大谷 強氏(川崎医療福祉大学)をコーディネーターに、野村龍太郎氏(大阪府福祉部)、樋口恵子氏(町田市議会議員)、廣井良典氏(厚生省社会援護局)らがパネラーとして発言した。

 それぞれの立場から現在進行している町づくり、福祉計画の在り方について報告がされた。実践的な例として大阪や町田の取組みが上げられたが、やはり障害当事者の意見をどう反映させるかが鍵らしい。会場には道内市町村の計画担当者も聞きに来るなど、会場と提言者で活発な議論が展開された。

■おわって

 最後に新役員の承認と国際会議誘致にむけてDPI日本会議も取り組むことが確認された。とてつもなく大きな夢だが、実現が望まれる。初開催にむけてホスト国の存在も問われる大事な大会になりそうだ。

 今回の全国大会では多くの仲間たちが集ったが、この勢いを今後の活動につなげたいものだ。

 最後になるが、10月2日の北海道議会の一般質問で、ある議員が地元障害者グループの意見を受けて、DPI世界会議誘致に向けて道の支援を求めた。その回答で道側から「課題もあるが、適切に対応したい」と前向きな反応があった。北海道では世界会議にむけて既に前哨戦が始まっている。


リポート「車イスでも利用できる温泉」


 寒くなると温泉が恋しくなる人も多いのではないだろうか。北海道も数々の秘湯名湯があり、最近は町おこしの材料として温泉を掘るのがブームにもなっている。

 しかし、高齢化社会の到来とか人にやさしい町づくりと言われているわりに車イスを使用している人が利用できる温泉は数少ない。

 北海道には札幌・定山渓温泉に札幌市の保養所があり、車イスの人も利用できるところがあるが、道東にある清水町に何とも立派な温泉が誕生した。この町は音楽の町として有名で、町民が第九を歌うためのホールなども作っているが、今度は『フロイデ』という名の温泉施設を作った。

 ここまで聞くとすごいと思うのだが、実際に見てみると、障害者の意見を聞いたのかという疑問もわく。

 確かに入浴設備はすごい。重度の障害を持つ人でも温泉を楽しめるのだが、入浴設備を設けた浴室からの眺めは悪い。大浴場に入浴するのは嫌だという人もいるし、家族と心置きなく入浴もできるのがいいという人もいる。しかし、大浴場にも何らかの配慮が欲しい。そうすることで、浴室を選択できる。

 この温泉施設にはレストランや休憩室もあるが、レストランは2階で利用は不可、休憩室も畳の部屋だ。せっかく車イスを利用している人にも利用できる温泉施設を作ろうとしたのに残念でならない。(食事は1階のホールに持ってきてもらえるが、やはりレストランで食べたい!!)

 もしこれから同じような温泉設備を作ろうとしている自治体や民間企業があるなら参考にしてほしい。

 読者の皆さんも話のタネに一度訪れてはどうでしよう。帯広から車で1時間程度で現地に行けます。公共交通機関の利用は難しい。

『フロイデ』

・住所 北海道上川郡清水町字熊四

(帯広から車で約1時間程度)

℡01566-2-1126

・利用時間 午前11時~午前0時

・料金 障害者1級は無料(付添家族2名まで無料)

    一般入浴は350円

・泉質 弱アルカリ・ナトリウム

・効能 神経痛、筋肉痛、皮膚病など

(わがつまたけし 『メビウス』編集人 札幌市在住)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1995年12月号(第15巻 通巻173号) 42頁~44頁