1000字提言
当事者代表を含めたバリアフリーチェック機構の提案
伊東 弘泰
2月10日、小雪降る中、欧米の3人の海外コーディネーターらと、東京湾・ウォーターフロントプロジェクトのひとつ、「東京国際見本市会場ビッグサイト」を訪れた。今年からは「晴海」に代わり、国際福祉機器展の会場となるので、その下見である。
都市博中止でいくつもの建設プロジェクトが無くなったと聞いたが、広大な埋め立て地にはホテルをはじめ、さまざまな大型ビルの建設が行われており、まさに21世紀に向けての新都市づくりが進んでいる。見本市協会の運営部の方々の案内により、すみずみまで見る。
アメリカの大規模なものに比べても引けを取らぬものであった。しかし、である。高齢化社会の21世紀に利用される施設として、また、障害者のためのバリアフリー化が叫ばれる中、そうした配慮についてはきわめてお粗末なのには、なお驚き、がっかりさせられた。
新都市交通ゆりかもめの「国際展示場正門前駅」からはエレベーターの乗り継ぎでビッグサイトの入口フロアーに出る。それから会場迄、延々の距離。建物は大変大きく、東と西の展示場に分かれる。エスカレーターは係員に依頼すれば車いす用の幅の広いステップに切り替えられて展示場フロアーに降りていくことができる。別にあるエレベーターは狭く、標準的な手動車いすなら利用できるが、リクライニング型や、電動車いすでは、ぎりぎり入るか、利用不可能である。
問題はトイレ。男性用、女性用と各々分かれて車いす用があるのがありがたい。しかし、手すりがどういうわけか壁側にしかついていない。また、ついている壁側の手すりも便器との距離がありすぎ、人によっては役に立たないのである。かなり多くの車いす利用者には使えない「車いす用トイレ」が出来上がっているのだ。視覚障害の人のための配慮もきわめて不完全だ。
私は、ある自治体の会議で、建築物等の計画について、障害者や高齢者等、当事者の代表を含めたバリアフリー対応に関するチェック機構を提案したことがあるが、全く無視された。ビックサイトももしそうしたシステムが機能していれば誤ちを防げたかもしれない。あらためて、障害者、高齢者の当事者の代表が参加したチェック機構を提案する。
同行した3人の海外関係者が、日本の建築家の、障害者に対する配慮の無さに驚いていたのは、申すまでもない。
(いとうひろやす ㈱日本アビリティーズ社)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年4月号(第16巻 通巻177号) 27頁