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気になるカタカナ

レスパイトサービス

廣瀬貴一

 レスパイトサービス(respite service)または、レスパイトケアという言葉が最近よく聞かれるが、明確な定義が存在するわけではない。また、このサービスは、ショートステイやホームヘルプサービスといった障害者に対する援助と重なりあっている部分があるので、関係者の間に共通認識が成立しにくい。

 以前、厚生省の心身障害研究で、障害者の地域生活援助の一方法として取り上げたとき、これを家族援助の一つであるとしたうえで、一応次のように定義してみた。

 レスパイトサービスとは、障害児者をもつ親・家族を一時的に、一定の期間、その障害児者の介護から解放することによって、日頃の心身の疲れを回復し、ほっと一息つけるようにする援助である。

 その後、知的障害児者をもつ親・家族、関係者がこのサービスに関心を示し、いろいろな機会に議論、要望もされてきた。その結果、ここ数年、先駆的な実践も始まり、地方自治体が独自の助成をする例も出てきた。

 このサービスの特色の第1は、親・家族に緊急事態が生じた時だけでなく、彼等がブレイクダウンしない前に、介護疲れから開放するという目的をもっていることである。さらに、障害児者をもつ親に一般の人たちと同じように就労や地域社会での交際、余暇活動への参加の機会を提供しようとする積極的な意味がある。たとえば、両親が海外旅行をする際にも利用できるのがこのサービスである。

 形態としては、障害者本人が援助者つきの普通の住宅(セカンドハウス)に滞在するものと、援助者が家族を訪問し家庭で援助する方法が考えられる。前者の場合は障害をもつ人たちができるかぎり普段と変わらない生活が送れ、学校、通所施設などいつもの日中活動に参加できることが条件である。

 入所施設のショートステイは日常生活とかけ離れた環境にあり、昼間の活動からも切り離されることが多いので、緊急時は別にして、親・家族も自分が余暇を楽しむために利用することを躊躇するであろう。障害児者も満足し、親・家族も納得するものでなければ真のレスパイトサービスとはいえない。

 なお、このようなサービスは必ずしも宿泊を前提とせず、学童保育のような時間単位での要望も多いことが実践から判明している。

 また、余暇と結びついている場合が多く、単に障害児者をあずかるというのではなく、その間に、各種の余暇活動を準備することが普通である。

(ひろせきいち 光の園)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年10月号(第16巻 通巻183号) 27頁