音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

特集/検証・市町村障害者計画

自治体の声

福岡県田川郡川崎町

住民と共につくる障害者計画

中島利男

 総人口2万2000人の川崎町、高齢化率はすでに20%を超えており、このうち約27%、つまり4人に1人以上が一人暮らしの高齢者であり、しかも身体障害者の3割が高齢障害者の町でもある。
 さて、今回の障害者プランの策定は、1993年に老人保健福祉計画の策定を担当した教訓を十分に活かして策定に入る訳であるが、川崎町では特に住民が主体的に組織した「障害者プラン学習会実行委員会」の存在が特筆される。多種多様な分野の方々が参加するこの住民グループの努力(企て)が効を奏し、首長を交えたトーク集会や懇談会を意図的に開催しながら、町との共催での学習会の実施や企画・福祉職員の派遣、町議会議員による一般質問、そして町長による障害者プラン策定に向けた積極的な答弁を引き出すまでにもなった。まさに、住民の熱意、関心の高さで行政の目が醒め、職員にも「やらなければ」という意識を芽生えさせるまでになったのである。また、このことは見方を変えてみると、行政にとっては「待ちに待った障害者プラン策定の絶好のチャンス」であると言っても決して過言ではない。
 このような中で町は、次のような基本的なスタンスで、今後計画づくりを進めることとした。

①住民と行政とが真のパートナーシップをとるため、策定の実施要綱や委員会構成についても共に協議し決定する。

②できる限り当事者の参加を追求する。

③行政の押しつけ的、画一的な行政主導型ではなく「住民と共につくる」手法で進める。

④この計画は、「無駄なお金は使わない」ことを念頭に据え、町マスタープランの統一的な青写真の中で策定していく。

 以上が、この1年間、川崎町で模索されてきた方向性であるが、逆になぜここまで早期に策定方針を決められなかったのか、その要因は次のとおりだ。

①策定が努力義務であるということは、「すぐにつくれなくてもいい」「つくらなくてもいい」という裏返しでもある。たとえ国が自治体の自主性や主体性を尊重したいからと言っても、地方分権の論議すら進んでいない中では全くの「美名」としか言いようがない。今の県の指導は馬の耳に念仏状態。なぜ老人保健福祉計画時のように義務付けできなかったのかという不満が残る。

②ゴールドプラン、障害者プラン、エンゼルプランをリンクさせながら計画策定を進めていくことがベターだと分かっていても、現実的には財政力の弱い市町村では財源の確保が困難だ。職員は、策定したくともなかなか手が出せない、動けない状態なのである。

③やはり人(担当者や人材)の確保が厳しい。今の福祉職場は毎日ギリギリのところで仕事をしているのが現状。行革の荒波があまりにも重くのしかかってきている。

 このように策定しないでいいような状況の中で、いまだゆっくり眠ったままの多くの市町村が積極的に策定態勢を整え得る大きなポイントは、やはり国や県の指導力いかんにかかっていると言える。また、全国約3300の市町村がそんなに簡単に財源を増やしていくことはとても困難である。もっと広域圏対応の利便性・合理性等の議論を巻き起こす必要がある。そのためにももっと積極的に研修会や情報交換、強力なコーディネート態勢を築くべきである。
 今の市町村には、知らず知らずのうちに策定が到達点であるというあきらめの意識が蔓延し、「絵に描いた餅」でもやむを得ないという意識が依然として残っている。
 だがしかし、障害のある方には時間に余裕がない訳で、我々はただ座ってゆっくり勉強をしている暇はない。走りながら、汗をかきながら、目の前の問題に立ち向かわなければならないのである。
 川崎町では、今年6月2日から待望の手話通訳の職員が配置された。とにかく前に進むことによって少しずつ成果が生まれることを訴えたい。

(なかしまとしお 福岡県田川郡川崎町まちづくり課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年6月号(第17巻 通巻191号)17頁・18頁